ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強 作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ
現在、ハジメ達は町に出ていた。目標は、食料品関係とシアの衣服、それと医薬品関係だ。
町は喧騒に包まれ、露店の店主が呼び込みをし、主婦や冒険者の人々と激しく交渉をしている。飲食関係の露店も始まっており、朝から濃すぎな肉の焼ける香ばしい匂いや、タレの焦げる濃厚な香りが漂っている。
ハジメ達は道具類から集めようとするが、
「えっと、道具類の店は…」
「ねぇ、ハジメ。ちょっと、あれを見て」
「ん?雫、どうしt、うわっ」
「もの凄い混んでますね~、どうしますハジメさん?」
「あ~、そうだなぁ……先にシアの服、揃えるか」
「…んっ」
という訳で、シアの衣服から揃えることにした。
キャサリンさんの地図には、普段着用の店、高級な礼服等の専門店、冒険者や旅人用の店と分けてオススメの店が記載されている。やはりキャサリンさんは出来る人だ。痒いところに手が届いている。
四人は早速、ある程度の普段着もまとめて買えるという点から、とある冒険者向きの店に足を運んだ。その店は、流石はキャサリンがオススメするだけはあり、品揃え豊富、品質良質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという期待を裏切らない良店だった。
ただ、問題が一つ……
「あら~ん、いらっしゃい♥可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」
変態級の化け物がいた。身長2m強で画風の違う濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めている。動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組みながらくねくねと動かし、逞しい手足と腹筋が丸見えの服装をしている。某平和の象徴も顔負けの筋肉達磨である。
雫、ユエ、シアの三人は
「あらあらぁ~ん?どうしちゃったの三人共? 可愛い子がそんな顔してちゃだめよぉ~ん。ほら、笑って笑って?」
どうかしてんのはお前の方だ、笑えねぇのはお前のせいだ!と盛大にツッコミたいところだったが、雫とユエ、シアは何とか堪える。人類最高レベルのポテンシャルを持つ三人だが、この化物には勝てる気がしなかった。
しかし、形容しがたい物凄い笑顔で体をくねらせながら接近してくる化物に、つい堪えきれずユエは呟いてしまった。
「……人間?」
その瞬間、化物が怒りの咆哮を上げた。
「だぁ~れが、上級悪魔すら泣いて逃げ出す、見ただけでSAN値がゼロを通り越してマイナスに突入するような化物だゴラァァアア!!」
ユエがふるふると震え涙目になりながら後退る。シアは、へたり込み……少し下半身が冷たくなってしまった。雫は涙目になりながらハジメの背に隠れている。しかも、「あの人、怖い」と幼児退行している。収拾がつかなくなってきた為、ハジメが化け物に近づき話始めた。
「すまないな。えっと、名前を聞いてもいいか?」
「ええ~、いいわよ~ん♥おねぇさんの名前はクリスタベルよ、よろしくねぇ~ん」
「OK,Ms.クリスタベル。さっきも言ったが、すまない、彼女達が悪かったな」
「いいのよ~ん。それでぇ? 今日は、どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」
ハジメが謝罪すると化物改めクリスタベルは再び笑顔? を取り戻し接客に勤しむ。
「ああ、彼女の服を何着か見繕いに来てな。だが、俺には女の服ってのはよくわかんなくてな、オススメはあるか?」
クリスタベルの一喝を浴び、腰を抜かしてしまったシアを手で示すハジメ。シアはもう帰りたいのか、ユエの服の裾を掴みふるふると首を振っているが、クリスタベルは「任せてぇ~ん」と言うやいなやシアを担いで店の奥へと入っていってしまった。
で、結論から言うと、クリスタベルの見立ては見事の一言であり、店の奥へ連れて行ったのも、シアが粗相をしたことに気がつき、着替える場所を提供するためという何とも有り難い気遣いだった。
シアの新しい服は以前着ていた服と違い、白シャツの上にコートを着て、短パンに脹脛から太股までを覆う足カバー、膝までの長さを持つブーツを履いている。首にはバイクに乗る時などにつけるゴーグルを掛け、指貫手袋をしている。*1
大体の人はわかると思うが、シアの服装はレディと同じものである。ハジメはシアの服装に思わず「姉さん?」と言ってしまい、場が大パニックになったが、それは別の話である。
満足出来る服を買えた四人は、クリスタベルにお礼を言い店を出た。その頃には彼女?の笑顔も愛嬌があると思えるようになっていたのは、クリスタルベルの人徳故だろう。
「いや~、最初はどうなることかと思いましたけど、意外にいい人でしたね。店長さん」
「ん、人は見た目によらない」
「けど、なんでハジメはあの人見ても平気だったのよ…」
「…逆に俺がただの人間にビビると思うか?」
「「「思わない/ですぅ~/わね」」」
そんな風に雑談しながら、次は道具屋へ行くことにした四人だが、いつの間にか数十人の男達に囲まれていた。冒険者風の男が大半だが、中にはどこかの店のエプロンをしている男もいる。
その内の一人に、ハジメは見覚えがあった。この男、ハジメ達がキャサリンと話しているとき冒険者ギルドにいた男だ。
「雫ちゃんとユエちゃんとシアちゃんで名前あってるよな?」
「ええ、そうだけれど……」
雫とユエは何のようだと訝しそうに目を細め、シアは亜人族であるにもかかわらずちゃん付けで呼ばれたことに驚いた表情をする。ハジメは「こいつら、何してんだ?」と眉を顰める。
雫の返答を聞くとその男は、後ろを振り返り他の男連中に頷くと覚悟を決めた目で雫を見つめた。他の男連中も前に進み出て、ユエかシアの前に出る。
「「「「「「雫ちゃん!俺と付きあってくれええっ!!」」」」」」
「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」
「「「「「「シアちゃん!俺の奴隷になれ!!」」」」」」
つまり、まぁ、そういうことである。シアだけ口説き文句が異なるのは亜人だからだろう。奴隷の譲渡は主人の許可が必要で、昨日の宿での出来事でシアとハジメ達の仲が非常に近しい事が周知されており、まず、シアから落とせばハジメも説得しやすいだろう……とでも思ったのかもしれない。
で、告白を受けた三人はというと、
「………なぁお前等、昼ここなんてどうだ?」
「いいわね、そこにしましょ」
「んっ」
「はいですっ」
四人は昼食をどうしようか話しながら何事もなかったように歩みを再開した。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!返事は⁉︎返事を聞かせてく「「「断る/わ/ります」」」…ぐぅ」
まさに眼中にないという彼女達の態度に男は呻き、何人かはorz状態に崩れ落ちた。しかし、何処の世界にも諦めが悪い奴はいる。まして、三人の美貌は他から隔絶したレベルだ。多少、暴走するのも仕方ないといえば仕方ないかもしれない。
「なら、なら力づくでも俺のものにしてやるぅ!」
暴走男の雄叫びに、他の男連中の目もギンッと光を宿すと、三人を逃さないように取り囲み、ジリジリと迫っていく。そして遂に、最初に声を掛けてきた男が、雄叫びを上げながらル◯ンダイブで雫に飛びかかった。
雫は冷めた目付きで閻魔刀を抜こうとするが、それより先に動いた者がいた。
「ほいっ」
「ぐあっ?!」
「おぅらっ!」
ハジメが飛びかかってきた男をアイアンクローで掴み、男連中に向けて投げ飛ばし、男連中がボウリングのピンのように倒れる。
「しゃあっ!ストライクぅう!!」
「「ナイスボール!」」
「お見事ですぅ!」
それを見てハジメがガッツポーズをして、雫、ユエ、シアの三人が褒めている。そんな茶番をしてから、ハジメは男達の方へ歩いて行く。
「さて、おい、お前等!」
ハジメはさっきアイアンクローした男の胸ぐらを掴み、男達の中心に行く。
「次に俺達に手を出そうとしたら………………こうなるぞ?」
『焼き尽くせ……!』
ハジメはそういうと、バルログを装備して連れて来た男にラッシュを叩き込み始めた。しかも、何発かは男の股間にヒットし、その際、マ○オがコインを取得した時のチリンッという効果音を響かせた。*2
パンチを打つ度に地面が陥没し、全身が火傷を負っていく。最後に、とどめの一撃で男を壁に向かって投げ叩きつけた。*3
それから、ハジメは他の男達に顔を向ける。
「
「「「「「「は、はいいいいい!!すみませんでしたああああああああ!!」」」」」」
ハジメの力に、喧嘩を売ってはいけないと悟った男達は、踵を返して我先にと逃げ出した。告白したその代償が、全身ズタボロに加え、大事なタマタマを潰されることなどシャレにならない。
この日、一人の男が死に、第二のクリスタベル、「マリアベル」ちゃんが生まれ、クリスタベル店長の下で修行を積み、二号店の店長を任され、その確かな見立てで名を上げるが……それはまた別の話である。
次回はいよいよライセン大迷宮です。