ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強 作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ
西日が、アンカジの都を照らす頃。
ジェイドは、自分が被っていたローブをニアに被せて観光区の宿場に向かっていた。
理由としては、大きく分けて二つ。一つは、小屋が家として使えないということ。あの小屋だが、本当に何も無い物置小屋だったのだ。別の部屋には大量のルタや高価そうな銀皿等があったことから、おそらく、あの犯罪者たちは盗んだものをあの小屋に蓄えているのだろう。
今回、接敵したのも盗品等を置きに来た時に偶然鉢合わせ、ジェイドの身なりや言動からリーダーの男が貴族かなにかと勘違いして、手を出したのだ。
もう一つは、ジェイドとニア共に約一ヶ月風呂に入っていないからである。ジェイドの場合は、途中のオアシスなどで体を洗っていたことから多少は綺麗だが、ニアに関しては牢屋生活だったため風呂には一回の入っておらず不衛生だった。
そのため、二人は風呂に入ることのできる宿を探しに観光区に向かっていたのである。
「(しかし、子を売るということは、人身売買組織が相手か…となれば、商品としてニアがもう一度攫われる可能性は高い。となれば、攫われる前に探し出し、潰すしかないが…)ッ?」
ジェイドは、ニアを攫った組織への対応を考えていると、不意に手をくいくいと引っ張られ、引っ張ったニアを見ると少し不安そうな顔をしていた。どうやら、怖い顔をしていたジェイドを心配したらしい。
ジェイドは、ニアに「なんでもない、大丈夫だ」と言って、宿探しに専念することにした。
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その後、夜まで悩んだ結果、ジェイドとニアは〝宿屋サンカ〟という宿に入った。紹介文では、料理も美味く防犯もしっかりしており、目的のふろにも入れるという。その分少し割高だが、金は盗賊共から失敬しているので問題はない。
ちなみに、サンカとは〝流浪人〟という意味である。
その宿で、風呂に入ってから食事して、現在二人は部屋でのんびりしていた。
ジェイドは、どこで覚えたのか吠舞羅の手入れをして、ニアは初めての宿なのかはしゃいでいた。ニアのキャッキャッする声をBGMに刀を手入れするジェイド。
平穏な時が流れている。しかし、それでも影は蠢くものである。
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同時刻。
ある建物の中で、ひょろっとした男が報告書類を捌きながら葉巻を吸っていた。顔は、目にはクマが出来ており、普段からそんな表情をしているのかニタニタ笑いが似合いそうな顔で、醜い成金男のようである。なお、声は横〇亘似である。
「今日も、たくさん売れましたねぇ~。いやはや、今日も葉巻が美味しいものです」
男がクツクツと笑っていると、ドタドタドタッという音が部屋の外から響いており、その音に男が眉を歪める。その後、すぐに部屋のドアが開き、いかにも下っ端のような男が入ってきた。
「頭! 耳に入れたいことが!」
「騒がしいですねぇ~、貴方は子どもですか? もっと静かに来れないんですか、まったくぅ」
「す、すみません、エドガーの頭…」
自然と毒を吐く男エドガーに下っ端の男が謝罪する。
「そんなことはど~でもい~ので、早く用件を言いなさい。私は、貴方と違って暇じゃないんですよ」
だが、それを言外にさせたエドガーは用件を催促した。
「あ、はい。商品が一人逃げました!」
「………なに?」
下っ端の言葉に、エドガーの雰囲気が一瞬で変わり、殺気立ったものに変わる。
「何故逃げたのですか?」
「なんでも、監視の目をすり抜けて逃げちまったらしいです。魔法を撃って止めようとs「何をしているのですか!? 商品に傷がついたら値段が下がるでしょう!? まったく、この組織には低能な人間しかいないのですか? で? 見つけたんでしょうねぇ?」あ、はい! なんでも、この男が連れているのを見たらしいです」
下っ端の男はそう言いながら、人物像の紙をエドガーに渡す。そこには、髪をかきあげ、オールバックのような髪型をしている紅眼の男が書かれていた。
「その銀髪の男。名前を〝ジェイド〟って言うらしいんですが…」
「…ほぅ~、ジェ・イ・ドですか…」
「頭? 知り合いですか?」
「い~え、知りませんねぇ~。探し出しておきなさい」
「は、はい!」
下っ端の男、大急ぎで部屋から出ていった。
またも部屋はエドガー一人になり静寂が訪れる。しかし、それをエドガーの笑い声が壊した。
「ジェイドですか…名前を変えたようですが、私は覚えてますよ…
────────────────檜山大介君?」
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翌日。
朝食を食べ、宿をチェックインしたままでたジェイドとニアは商業区に向かっていた。目的は、日用品と服装の新調である。
ジェイドは赤茶色の服一着で旅をして、ニアもここ一ヶ月下着すら取り替えていない。昨日、風呂に入ったときに着替えのことを失念していたジェイドは、翌日速攻で買いに行こうと決めたのだ。
そうして、最初に衣服店に来た二人は服を選んでお互いに見せ合うようなことをした。まるで親子の様である。
「…どうかな?」
ニアは、ワイシャツにスカート、その上に子供用のロングコートを着ており動きやすそうな服装だ。
「いいんじゃないか? 随分と動きやすそうだ」
「えへへ~」
褒められたことが嬉しいのか二へッと笑うニア。次は、ジェイドの番となるが……ジェイドだが、服のセンスが終わっていた。ラフそうで今と変わらなそうな服ばかり持ってくるのだ。結局、ニアが服選びをし、それを着ることになったジェイド。
その服装だが、20年前の某悪魔なお兄ちゃんとそっくりだった、「ダンテェ……」と言わせたら、本人と見間違うくらいに。
ジェイドも、自分に碧は似合わないと思っていたが、ニアに似合っていると言われれば脱ごうにも脱げなくなり、結局買うことにした。その時、案外、自分も気に入ってるしなと思うジェイドであった。
その後、二人は昼食を取り、日用品を買いに行った。だが、ジェイドが周りの違和感に気付く。
「……? ふむ……」
「お兄さん、どうしたの?」
「つけられてるな……二十人か、走るぞ」
ジェイドはそう言うと、ニアを背負って路地裏に突っ込んだ。
「な!? おい、追え!」
ジェイドとニアを追跡していた男たちは、リーダーの男が二人が逃げたのを見て追いかけるよう指示し、路地裏に入っていく。
ジェイドは、右に左に素早く走って動いて追っ手を撒こうとするが、一手二手先を行かれてしまい追いつかれてしまう。
「チッ! やはりヤツの庭で戦うのは悪手かっ」
ジェイドは、一旦人ごみのある街道に出て、姿を隠そうとするが路地裏を考えもなく進んできたために、どっちに行けばいいのかわからなくなってしまった。
完全な失態だと、今更後悔しても遅い。追手の声はすぐそこまで来ている。どっちに進むべきか悩んでいるその時…
「お兄さん! 右!」
ニアが、きっぱり言い切ったことから、すぐさま右の道を進んでいく。
「道は覚えてるから任せて」
ニアは、そう言いながらサムズアップする。それをジェイドは「でかした!」と褒め、ニアのナビゲーターに従って右に左に進んでいくと、大混雑している活気ある街道に出た。
「あとは、宿に戻るのみか…ッ!?」
ジェイドは宿に向けて走ろうとするが、行く道には、追手たちがしっかり全員付いて来ていた。読まれていたのだ。
ジェイドは、一旦屋台の後ろに隠れてニアを降ろすと、道端に落ちていた布を拾って頭に被ってニアと手をつないで宿へ歩いていく。その間、二人は一言も言葉を交わさずに歩いていく。ジェイドが追手たちをチラッと見れば、ここには居ないと考え、ジェイドたちとは逆方向に走り去っていった。
そのことに、ホッとするジェイド。だが、突然ニアの腕が震え出した。
「ニア、どうした?」
ジェイドは、ニアに問いかけるが、ニアは一転に視点が固定されて動かない。それどころか、涙を流し始める。そして、あるものを指さした。それは、
「? あの男がどうかしたのか?」
「私を…檻に入れた人……!」
「なにっ!?」
ジェイドは、今日の自分とニアの運勢と神を呪った。ここまで、不運が連なる日があるだろうか? ニアを攫った組織への対応を考えた次の日に、その組織の追手(だと思われる集団)に追いかけられ、ニアを攫った張本人の組織が現れる。きっと、某エヒ何とかさんが、何かしたに違いない!
男が近づいてくる中、ジェイドは路地裏から遠回りして宿に戻ることにした。
ちなみに、日用品は後日光速で買いに行き、ジェイドさん、技能に〝光速移動〟を身に着けた。
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そうして、数日後。
ジェイドは、いよいよ最初の大迷宮である【グリューエン大火山】の前に来ていた。ニアは、お留守番である。行きたがっていたが、場所が死と隣り合わせの大迷宮な為、万が一の場合を考えて、今回は見送ってもらった。今度、美味しいものを食べに行く約束をして。
しかし、ここで問題が一つ。グリューエン大火山は、某天空の城を包み込む巨大積乱雲のように、巨大な渦巻く砂嵐に包まれているのだ。規模は、グリューエン大火山を覆い隠すほどである。
おまけに、砂嵐の中には強力な魔物がうじゃうじゃいるという話だ。普通の人なら、超えるだけで限界だろう。
「一吹きの風は疾風となりて、全てを払う
ジェイドがそう唱え、吠舞羅を上段から斬り下ろす。すると、吠舞羅から生じた風が巨大な刃になり、砂嵐を一撃で割った。その光景はまるで、グリューエン大迷宮がジェイドを歓迎しているようだった。
本当なら、ゆっくり確実と行きたいが、そうも言っていられない。ニアが待っているのだ、最短で終わらせる。と息巻くジェイドは、疾風の如き速さで、グリューエン大火山を登っていく。
グリューエン大火山の入口は、頂上にあるとの事だ。つまり、火口に近づかなければならない。普通、マグマの近くを通るので、ぐだるのが普通だろう。しかし、ジェイドは暑い太陽が照り付けるグリューエン大砂漠を一ヶ月かけて歩いた猛者だ。さらに、かつて、悪魔と戦った時に油断して重傷を負った時に悪魔の因子が混じり、体質が変化して熱変動に耐性が付いたのである。
ちなみに、某ハジ何とかさんとその兄弟たちは地獄の業火も耐えられるらしい。
そうして、頂上に辿り着くと、入り口の階段を降りて………いかずに、火口へ飛び込んで落下していった。階段を下りるよりもこっちの方が早いのは確かである。
ジェイドは、マグマに近づくと〝トリックドッジ〟で通路に着地する。火口から結構な距離を落ちてきたジェイドは、そのまま通路の中に入っていった。
通路の中には、龍のようにうねっているマグマが頭上にあり、足元と頭上の両方に気を付けなければいけない。
おまけに、至る所からマグマが噴き出ており。予兆もなく来る為、天然のトラップとなっている。だが、ジェイドはそれを何とも思わないかのように疾走した。途轍もない速さで通路を進んでいき攻略していく。
たとえ、魔物が出てこようが〝疾走居合〟で斬っていく辻斬りスタイルで走り去っていくのだ。
本来ならもっと時間がかかるのだろうが、ジェイドは火口を落ちたことでそれを短縮したのだ。この大迷宮を作った人も、まさかマグマに飛び込みかけ、最終エリア付近に落ちてくるなんて考えてもみなかっただろう。
そうして、ジェイドは最終エリアに到達した。そこは広大なマグマの海が広がる灼熱地獄。そして入り口から細い一本道とその先に繋がる広場のような場所に“それ”はいた。それは、黒ヒョウがゴリラ化したような体に、天使のような翼を四つ背中に持つ左目が潰れた黒い魔物、否、悪魔ベオウルフがそこにいた。
「ん? 貴様、我が根城に何の用だ! 」
「? 貴様がこの大迷宮を作ったのか?」
「否。この暑さが丁度良い故に住んでいるだけだ」
「なるほど。なら、今後の挑戦者のためにも消えてもらうぞ!」
ジェイドはそう言って、吠舞羅を抜いてベオウルフに立ち向かっていく。ベオウルフは仁王立ちで、ジェイドに近づき、右腕を振ってジェイドに殴りかかり、それを左腕でもやると、最後に右腕を地面に叩き付けジェイドを潰そうとするが、ジェイドは最低限の動きだけで躱躱していく
そのまま、ジャンプしてベオウルフの頭に近づき斬りつける。ベオウルフは頭を攻撃されるのが嫌なのか、頭をおさえて後退する。それを見逃さず、ジェイドは吠舞羅を納刀し、抜刀体勢になる。
「吹き荒れる風よ。我が刀に纏いて、全てを斬り裂く刃となれ!」
ジェイドは、術を唱えると鞘から一気に吠舞羅を引き抜いて一閃を放つ。その斬撃は、エネルギーブレイドの要領でベオウルフは袈裟斬りにした。
おもわず、たたらを踏むベオウルフは、一度、端の方に移動すると、何回か地面を踏み鳴らすと、空から岩石が落ちてきた。その岩石をジェイド目掛けてぶっ飛ばすが、逆に弾き返せれてベオウルフにクリティカルヒットした。
それにより、ベオウルフはダウンした。ジェイドが、止めを刺すために近づく。だが、それはベオウルフのフェイクで、ジェイドが近づいてきたのを悟ると、一気に起き上がって右腕を叩きつける。だが、ジェイドの方に軍配は上がった。それを交わし、ジェイドはベオウルフの顔を真っ二つに裂き、完全に殺した。
そのベオウルフの死体が光り輝き、魂のような球体が出てくるとジェイドの手足に装着され、格闘魔具ベオウルフとなった。
「ふん、案外簡単だったな」
ジェイドは、そう言いながらベオウルフの装着具合を確かめ、この先のマグマの海にポツンとある中央の島に移動し、神代魔法を獲得した。
「ふむ。空間魔法か……」
空間魔法を修得し、魔法陣の輝きが収まっていくと同時に、カコンと音を立てて壁の一部が開き、更に正面の壁に輝く文字が浮き出始めた。
〝人の未来が 自由な意思のもとにあらんことを 切に願う〟
〝ナイズ・グリューエン〟
ジェイドはその言葉に、目を瞑り黙禱をすると、ショートカットの魔法陣に乗り、アンカジに帰還した。
後に、〝アンカジの悲劇〟と呼ばれる大事件が待っているとも知らずに。
今の小説の基本文字数は5000~6000なんですが、このままでいいですか?
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減らして(4000~5000)
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このままでいい
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増やして(一万文字ぐらいまで)