ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強 作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ
ブルック再び
昼より少し前の時間帯、冒険者ギルド:ブルック支部の扉は開いた。入ってきたのはここ数日ですっかり有名人となったハジメ、雫、ユエ、シア、ミレディの五人である。ギルド内には、何時もみたいに何組かの冒険者達が思い思いの時を過ごして、ハジメ達の姿に気がつけば片手を上げて挨拶してくる者もいる。男は相変わらず女性陣に見蕩れ、ついでハジメに羨望と嫉妬の視線を向ける。しかし、そこに陰湿なものはない。
ブルックに滞在して一週間、その間に四人を手に入れようと決闘騒ぎを起こした者は数知れず。雫を口説こうとすれば峰内で意識を刈り取られ、ユエを口説こうとすれば〝股間スマッシュ〟という世にも恐ろしい所業をなすため直接口説く事は出来ないが、外堀を埋めるようにハジメから攻略してやろうという輩がそれなりにいたのである。
だが、ハジメに話し掛けた者は「コイツなら女が惚れても仕方ねぇよ」みたいな納得顔でハジメと仲が良くなり、ハジメに決闘を仕掛けてる者もいたが、正々堂々と打ち負かされて病院送りにされている。
そんなわけで、この町では、〝股間スマッシャー〟たるユエと〝コンシャスブレイカー〟*1たる雫、そして決闘の際、銀色の髪がよく目立つことから〝シルバーデビル〟と言われるハジメ達は有名であり一目置かれる存在なのである。
ハジメの二つ名であるシルバーデビルのデビルは、冒険者パーティーとハジメがトータスで一から始めた〝Devil May Cry〟からである。この二つ名をハジメが知ったときにあることを思い出してしばらく目のハイライトがオフになったのは言うまでもない。
ちなみに、ミレディは内輪だけでウザさを発揮してハジメにツッコまれミレディが某錬成師を思い浮かべ、自分の存在感が薄いとシアが涙したのは余談である。
「おや、今日は勢ぞろいかい?」
ハジメ達がカウンターに近づくと、いつも通り、キャサリンがおり、先に声をかけた。キャサリンの声音に意外さが含まれているのは、この一週間でギルドにやって来たのは大抵、一人か二人でだからだ。
「ああ。明日にでも町を出るからな。あんたには色々世話になったし、一応挨拶をしに来たんだ。ついでに、目的地関連で依頼の確認をな」
「あんたもよくやるねぇ。この前も結構な量の依頼こなしてきたじゃないか」
「奉仕活動程度だよ」
世話になったというのは、ハジメがミレディとギルドの一室を無償で借りていたことだ。せっかくの重力魔法なので色々と試すのに、それなりに広い部屋が欲しかったのである。キャサリンに心当たりを聞いたところ、それならギルドの部屋を使っていいと無償で提供してくれたのだ。
なお、雫とユエにシアは郊外で重力魔法の鍛錬である。
依頼というのは、ハジメがブルックで暇なときにやっていたのだ。依頼も【薬草採集】や【魔物の魔石収集】などハジメからしたら地球にいたころよりも簡単な仕事である。
「そうかい。行っちまうのかい。そりゃあ、寂しくなるねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ~」
「勘弁願うよ。住人の半分以上が変態とアホ共の町じゃねぇか」
ソーナといいクリスタベルといい、ぶっ飛んだな連中がこの街にはやけに多く、しかも町中に妙な派閥が幾つか出来ていて、日々下らない優劣を競いあっている。一番大きな派閥は〝ハジメお兄様と雫お姉さまを応援し隊〟だ
二人が「うぼぁあ」という声と共にorz状態になったのは言うまでもない。ちなみに、実はハジメ達が通っていた高校で隠れてこの派閥があったらしいが、それはまた別の話である。
そんな出来事を思い出し顔をしかめるハジメに、キャサリンは苦笑いだ。
「まぁまぁ、何だかんで活気があったのは事実さね」
「馬鹿どもが暴れただけだろ…」
「で、何処に行くんだい?」
「フューレンだ」
そんな風に雑談しながらも、仕事はきっちりこなすキャサリン。早速、フューレン関連の依頼がないかを探し始める。
フューレンは、中立商業都市のことで大陸一の商業都市らしい。ハジメ達の次の行先は【グリューエン大砂漠】にある七大迷宮の一つ【グリューエン大火山】である。その為、大陸の西に向かわなければならないのだが、その途中に【中立商業都市フューレン】があるのだ。
せっかくの大型都市のため、一度は寄ってみようという話になったのである。
「う~ん、おや。ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。ちょうど空きが後一人分あるよ……どうだい?受けるかい?」
「連れを同伴するのはOKなのか?」
「ああ、問題ないよ、荷物持ちや奴隷を連れてる冒険者もいるからね。むしろ、一人分の料金で五人も雇えるんだ。断る理由もないさね」
「そうか……なんかあるか?」
ハジメは後ろにいる雫達に意見を求める。
「う~ん、特にないわね」
「…んっ、それに急ぐ旅じゃない」
「そうですねぇ~、たまには他の冒険者方と一緒というのもいいかもしれません。ベテラン冒険者のノウハウというのもあるかもしれませんよ?」
「それにぃ~、また面白いことがあるかもっ♪」
「それじゃ、この依頼、受けさせてもらうぜ」
「あいよ。先方には伝えとくから、明日の朝一で正面門に行っとくれ」
「分かった」
「あんた達も体に気をつけて元気でおやりよ?この子に泣かされたら何時でも家においで。あたしがぶん殴ってやるからね」
「大丈夫よ、ハジメは優しいしね」
「……ん、お世話になった。ありがとう」
「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有難うございました!」
嬉しそうに笑うシア、この町は樹海の外とは思えぬほどに、温かく居心地のいい街に思えた。キャサリンにソーナやクリスタベル、それに少し引いてしまうがファンだという人達は、シアを亜人族という点で差別的扱いをしなかった。
土地柄かそれともそう言う人達が自然と流れ着く町なのか、それはわからないが、いずれにしろシアにとっては故郷の樹海に近いくらい温かい場所であった。
「あんたも、こんないい子達泣かせんじゃないよ?精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」
「ああ、大事な、大切なヤツ等だ。命がけで守ってくよ」
キャサリンの言葉に慈愛に満ちた笑みでそう答えるハジメ。そんなハジメに、キャサリンが一通の手紙を差し出す。疑問顔で、それを受け取るハジメ。
「コイツは…?」
「あんた達、色々厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びのようなものだよ。他の町でギルドと揉めた時は、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかもしれないからね」
バッチリとウインクするキャサリンに、思わず「へぇ~」みたいな顔になるハジメ。手紙一つでお偉いさんに影響を及ぼせるアンタは一体何者だ?という疑問がありありと表情に浮かんでいる。
「おや、詮索はなしだよ?いい女に秘密はつきものさね」
「まぁ、確かに
「なんて言ってたかは知らないけど、素直でよろしい!色々あるだろうけど、死なないようにね」
謎多き、片田舎の町のギルド職員キャサリン。ハジメ達は、そんな彼女の愛嬌のある魅力的な笑みと共に送り出された。
その後、ハジメ達は、クリスタベルの場所にも寄って、ハジメは数着服を選別でクリスタベルから頂いた。その服が昔ダンテが来ていたモノと同じでハジメが驚愕する出来事があったが……詳しい話は割愛だ。
最後の晩と聞き、遂に風呂場と部屋に堂々と強行突破したソーナちゃんが、ブチギレた母親に亀甲縛りをされて一晩中、宿の正面に吊るされるという事件の話も割愛だ。なぜ、母親が亀甲縛りを知っていたのかという話も割愛である。
そして翌日早朝。
愉快痛快なブルックの町民達を思い出にしながら、正面門に来たハジメ達を迎えたのは商隊のまとめ役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。どうやらハジメ達が最後のようで、まとめ役らしき人物と十四人の冒険者が、やって来たハジメ達を見て一斉にざわついた。
「お、おい、まさか残りのヤツ等って〝DMC〟なのか!?」
「マジかよ!嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」
「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」
「いや、それはお前がアル中だからだろ?」
いろんな噂やら嬉しいけど怖いやらそういう声が聞こえてため息が出るハジメ。そんな彼に、商隊のまとめ役らしき人物が声をかけた。
「君達が最後の護衛かね?」
「ああ、これが依頼書だ」
ハジメは、懐から取り出した依頼書を見せる。それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。
「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」
「ほぉ~、これまた面白い名前だな?」
「え?そうでしょうか?」
「ああ。俺の故郷にはユンケルって栄養ドリンクがあるからな。苦労してそうな名前だよ」
モットーは「なるほどね。まぁ、大変だが慣れたものだよ」と苦笑い気味に返した。
「まぁ、期待は裏切らないと思うぞ。俺はハジメだ。こっちは雫にユエとシアそれと、ミレディだ」
「それは頼もしいな……ところで、この兎人族……売るつもりはないかね?それなりの値段を付けさせてもらうが」
モットーの視線が値踏みするようにシアを見て、その視線を受けて、シアが「うっ」と嫌そうに唸りハジメの背後にそそっと隠れる。
確かに、兎人族で青みのある白髪の超がつく美少女だ。商人の性で、珍しい商品に口を出さずにはいられないのだろう。恐らく、冒険者と一緒なため奴隷と判断し、即行で所有者たるハジメに売買交渉を持ちかけるなど、優れた商人なのだろう。
一般的な認識として樹海の外にいる亜人族は、すなわち奴隷であり、珍しい奴隷の売買交渉を申し出るのは商人として当たり前のことだ。モットーが責められるいわれはない。
「ほぉ、随分と懐かれていますな…中々、大事にされているようだ。ならば、私の方もそれなりに勉強させてもらいますが、いかがです?」
「フッ、すまねぇが」
ハジメはシアの肩を抱き寄せる。
「家族みてぇに大事な仲間を売る趣味はねぇんだ。それが例え、どこぞの神だろうとな。分かってもらえたか?」
「…………えぇ、それはもう。仕方ありませんね。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会をご贔屓に願います。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」
ハジメの発言は、下手をすれば聖教教会から異端者とされかねない、相当危険な爆弾発言だ。それ故に、モットーはハジメがシアを手放すことはないと心底理解させられた。
ハジメが、すごすごと商隊の方へ戻るモットーを見ていると、周囲が再びざわついている事に気がついた。
「女のために、そこまで言うか……痺れるぜ!」
「流石、シルバーデビルと言ったところか。自分の女に手を出すやつには容赦しない……ふっ、漢だぜ」
「いいわねぇ~、私も一度くらい言われてみたいわ」
「いや、お前、男だろ?誰が、そんなことッあ、すまん、謝るからっやめっアッ──!!」
ハジメは護衛仲間の愉快な発言に手で頭を抑えた。やっぱりブルックの町の奴らはアホばっかだと。そんな事を思っていると、背中に何やら〝むにゅう〟と柔らかい感触を感じ、更に腕が背後から回されハジメを抱きしめてくる。
ハジメが肩越しに振り返れば、肩に顎を乗せたシアの顔が至近距離に見えた。その顔は真っ赤に染まっており、実に嬉しそうに緩んでいる。
「うん?どうした?シア」
「うふふふ、なんでもないですよぉ~、うふふふ~」
シアは惚れた男から〝神にだって渡さない〟と宣言されたようなものなのだ。どのような意図で為された発言であれ、嬉しいものは嬉しいのだ。
ハジメのいろんな意味で〝やりすぎ〟だった発言だが、ハジメは危機感など皆無である。
早朝の正門前、多数の人間がいる中で、背中に幸せそうなウサミミ美少女をはりつけ、周りにもこれまた美少女を纏わりつかせる男、南雲ハジメ。
商隊の女性陣は生暖かい眼差しで、男性陣は死んだ魚のような眼差しでその光景を見つめる。ハジメに突き刺さる煩わしい視線や言葉は、きっと自業自得だろう。
今の小説の基本文字数は5000~6000なんですが、このままでいいですか?
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減らして(4000~5000)
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このままでいい
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増やして(一万文字ぐらいまで)