ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強   作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ

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捜索、北の山脈地帯 Travel is compassionate(旅は道連れ世は情け)

 翌日。

 

 朝靄が立ち込める中、日の出前に〝水妖精の宿〟をでたハジメ達は、フォスが用意してくれた握り飯を食べながら門に向かっていた。極めて早い時間でありながら、嫌な顔一つせず、朝食にと用意してくれたのだ。「フォスさんは人格者だな」とハジメが思ったのは余談である。

 

 ハジメ達はウルの町の北門から北の山脈地帯に続く街道を行くルートで向かう予定だ。

 

 ウィル・クデタが行方不明になって5日が経つ。生存は絶望的だが、ハジメは諦めてはいなかった。自分が行方不明の時に、諦めずに探してくれた親と兄のように、自分も必ず探し出す、と息巻いているのだ。

 

 幾つかの建物から人が活動する音が響く中、表通りを北に進み、やがて北門が見えてきた。が、ハジメはその北門の傍に複数の人の気配を感じ目を細める。特に動くわけでもなくそこに待機しているようだ。

 

 朝靄をかきわけ見えたその姿は……愛子と生徒六人の姿だった。

 

「おっ、こんな朝早くに送り出してくれるとは優しいねぇ〜」

 

 おどけたようなハジメだが、内心では「何かあるんだろうなぁ」と考えていた。

 

 その証拠に、愛子がハジメに正面から向き合い、ばらけて駄弁っていた生徒たちも愛子の側に近寄ってくるのだ。おまけに、愛子たちの後ろに馬が人数分用意されている。

 

「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね? 人数は多いほうがいいです」

「駄目だ。アンタらに合わせてちゃ、時間が足らなくなっちまう」

 

 だが、ハジメの物言いに、愛ちゃん大好き娘、親衛隊の実質的リーダーの宮崎奈々が食ってかかる。昨日のハジメの威圧感や負い目を一時的に忘れるくらい愛ちゃん愛が強いらしい。

 

「ちょっと、そんな言い方ないんじゃないの? 南雲くんが私達のことよく思ってないからって、愛ちゃん先生にまで当たらないでよ」

「いや、馬とバイクの速度差なんざ分かり切ったもんだろ?」

「へぁ?」

 

 ハジメの言葉に理解が追い付かない奈々。ハジメは、論より証拠としてキャバリエーレを召喚し、雫も〝宝物庫〟からシュタイフを取り出す。

 

「な? 俺の言った通り、速度差が違うのさ。それじゃ、そこどいてくれ」

 

 突然、虚空から大型のバイク二台が出現し、ギョッとなる愛子達に、退くように言って、出発しようとするハジメ。

 

 それでもなお愛子が食い下がる。愛子としては、是が非でもハジメ達に着いて行きたかったのだ。その理由は、現在、行方不明の幸利の事だ。

 

 周辺村町に情報を集めているが、それらしい人物を見かけたという情報がない。しかし、人がいない北の山脈地帯に関しては、まだ碌な情報収集をしていなかったと思い当たったのだ。

 

 事件にしろ自発的失踪にしろ、まさか北の山脈地帯に行くとは考えられなかったので当然である。なので、これを機に自ら赴いて、ハジメ達の捜索対象を探しながら清水の手がかりもないかを調べようと思ったのである。

 

 愛子は、最初こそ一人で行こうとしたが、北の山脈地帯は強力な魔物が出るという噂と、このことを相談したことから優花も付いていく事になり、早朝に部屋を出ようとしたを問い詰めて芋づる式に他の生徒達も行くことになったのだ。

 

 なお、騎士達は、ハジメ達がいるとまた諍いを起こしそうなので置き手紙で留守番を指示しておいた。聞くかどうかはわからないが……

 

 清水が失踪したことを今知ったハジメは、時間が惜しいことと、探す人物が二人に増えたことから同行を許可した。

 

 ハジメが折れたことに喜色を浮かべ、むんっ! と胸を張る愛子。どうやら交渉が上手くいったようだと、生徒達もホッとした様子だ。

 

「……ハジメ、連れて行くの?」

「ああ、しゃあねぇだろ? なにせ、先生は、どこまでも〝教師〟でな。生徒のことになると妥協しないのさ」

「ハジメンのセンセー、優しい人なんだねぇ」

 

 ハジメが折れた事に、ユエとミレディが驚いたように話しかけた。そして、ハジメの苦笑い混じりの言葉に、愛子を見る目が少し変わり、若干の敬意が含まれた。ハジメ自身も、ブレずに自分達の〝先生〟であろうとする愛子の姿勢を悪く思っていなかった。

 

「でも、このバイクじゃ乗れても三人でしょ? どうするの?」

「そんな時のコイツだ」

 

 優花の尤もな質問にの回答として、ハジメと雫はキャバリエーレとシュタイフをしまうと、代わりにオプティマイオスを取り出した。これに、全員が「オプティ〇ス!?」と叫んだのは余談である。

 

 ポンポンと大型の物体を消したり出現させたりするハジメに、おそらくアーティファクトを使っているのだろうとは察しつつも、やはり驚かずにはいられない愛子達は、「乗れないやつはトレーラーだ」と言って、さっさと運転席に行くハジメに称賛やら畏敬のような眼差しを向けるのだった。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 そうして、山脈地帯を見据えて真っ直ぐに伸びた道を、大型トラックが爆走すること数時間。

 

 ハジメたちは〝北の山脈地帯〟に到着した。山脈地帯は標高千メートルから八千メートル級の山々が連なっており、どういうわけか生えている木々や植物、環境がバラバラという不思議な場所だ。紅と橙色で彩られた秋山のような場所もあれば、緑生い茂る真夏の山のような場所もある

 

 また、普段見えている山脈の先には更に山脈が広がっており、北へ北へと幾重にも重なっている。かつて、とある剣士が何処まで続いているのかと、五つ目の山脈越えを狙ったことがあるそうだが、先が見えない故に辞めたらしい。

 

 ハジメ達は、その麓に四輪を止めると、見事な色彩を見せる自然の芸術に見蕩れた。女性陣の誰かが「ほぅ」と溜息を吐く。

 

 ハジメは、もっとゆっくり鑑賞したい気持ちを押さえて、六輪を〝宝物庫〟に戻すと、代わりにとある物を取り出した。それは、全長三十センチ程の鳥型の模型とデビルズガントレットだった。

 

 ハジメが偽物の鳥七機を空中に投げる。そのまま、重力に引かれ地に落ちるかと思われた偽物の鳥達は、しかし、その場でふわりと浮いた。愛子達が「あっ」と声を上げる。

 

 七機の鳥は、その場で少し旋回すると山の方へ滑るように飛んでいった。

 

「あの、あれは……」

「え? あぁ、〝無人偵察機オルニス〟だ」

 

 ハジメが〝無人偵察機〟と呼んだ鳥型模型、改め、オルニスは、ライセン大迷宮のラジコン騎士達を参考に、ミレディのアドバイスを貰いながらハジメが作り出したものだ。生成魔法を使って重力魔法を鉱物に付与し、重力石*1を生成した。それに、ゴーレム騎士を操る元になっていた感応石を組み込み、更に、片割れの鉱物に映る景色をもう片方の鉱物に映すことができるという遠透石を頭部に組み込んだのだ。

 

 ちなみに、ミレディはこの遠透石を使ってハジメ達の細かい位置を把握していたらしい。

 

 ハジメは、デビルズガントレットのディスプレイに遠透石を組み込み、〝オルニス〟の映す光景を映すことが出来るようになったのである。

 

 しかし、人の脳の処理能力には限界がある。雫でも、単純に上空を旋回させるという用途でも四機の同時操作が限界である。だが、ハジメの脳の処理能力は悪魔の血により強化され、旋回させるだけならば七機同時操作が可能である。

 

 なお、〝瞬光〟に覚醒してから脳の処理能力はさらに上がり、三機までなら自らも十全に動きつつ、精密操作することが可能である。また、〝瞬光〟使用状態では、タイムリミット付きではあるが同時に十二機を精密操作することも可能だ。

 

 この広大な場所を地上から地道に探すのは骨が折れる。故に、オルニスで空から一気に見ていくのだ。

 

 愛子達のペースに合わせてたら、遅くなるからというのもあるかもしれないが。

 

 ハジメ達は、冒険者達も通ったであろう山道を進んだ。魔物の目撃情報があったのは、山道の中腹より少し上、六合目から七号目の辺りだ。ならば、ウィル達冒険者パーティーも、その辺りを調査したはずである。そう考えて、オルニスを三機ほどその辺りに先行させながら、ハイペースで山道を進んだ。

 

 小一時間と少しくらいで六合目に到着したハジメ達は、一度そこで立ち止まった。理由は、そろそろ辺りに痕跡がないか調べる必要があったのと……

 

「はぁはぁ、きゅ、休憩ですか……けほっ、はぁはぁ」

「ぜぇー、ぜぇー、大丈夫ですか……愛ちゃん先生、ぜぇーぜぇー」

「うぇっぷ、もう休んでいいのか? はぁはぁ、いいよな? 休むぞ?」

「……ひゅぅーひゅぅー」

「ゲホゲホ、南雲達は化け物か……」

 

 愛子と愛ちゃん護衛隊達の体力が予想以上になく、休む必要があった。もちろん、本来、愛子達のステータスは、この世界の一般人の数倍を誇るので、六合目までの登山ごときでここまで疲弊することはない。ただ、ハジメ達の移動速度が速すぎて、殆ど全力疾走しながらの登山となり、気がつけば体力を消耗しきってフラフラになっていたのである。

 

 ちなみに、優花は雫とほぼ同スペックのようで息切れはしていない。流石、デビルハンター。

 

 四つん這いで必死に息を整える愛子達に、ハジメは若干困ったような苦笑い浮かべつつも、どの道、詳しく周囲を調べる必要があるので休憩を兼ねて近くの川に行くことにした。オルニスからの情報で位置は把握しているので、未だ荒い呼吸を繰り返す愛子達に場所だけ伝えて、ハジメ達は川に先行した。ウィル達も、休憩で立ち寄った可能性は高い。

 

 優花を愛子達の護衛として残らせ、山道を歩むハジメ達、そんな彼等の耳にも川のせせらぎが聞こえて来る。耳に心地良い音だ。シアの耳が嬉しそうにピッコピッコと跳ねている。

 

 そうしてハジメ達がたどり着いた川は、小川と呼ぶには少し大きい規模のものだった。索敵能力が一番高いシアが周囲を探り、ハジメもオルニスで周囲を探るが魔物の気配はしない。取り敢えず息を抜いて、ハジメ達は川岸の岩に腰掛けつつ、今後の捜索方針を話し合った。

 

 しかし、しばらく経ったところで突然ハジメ達の上から水が降ってきた。

 

「「「「!?」」」」

「どお? 熱いかなぁ? と思ってやったミレディちゃんのサプライズは! ねぇ、今どんな気持ち? 頭から水被ってどんな気持ちなのっ♪」

 

 犯人はミレディだった。どうやら、話し合いが退屈になってしまったようで悪戯したようである。しかし、やられた方はたまったもんじゃない。おかげで全身びしょ濡れだ。

 

 四人が俯いて目元に影が差すと、次の瞬間、バッと顔を上げて不敵な笑みを浮かべた。

 

「……「「「やったな~!/やったわね!/やりましたねぇ~!」」」」

 

 そこからは、プチ戦争である。ハジメが重力魔法で作った水弾をミレディに撃ち込み、それを回避されてユエに当たってやり返されたり、シアがドリュッケンで川の水を打ち上げ、それが雫に浴びせられてやり返したりのお祭り状態である。そこに、疲労感溢れる愛子達がやってきたことでプチ戦争は終結した。

 

 五人の服をユエが魔法で温風を作り出して乾かし、ハジメが遊びながらオルニスを使って見つけた、川の上流にある手がかりのありそうな場所に向かって出発した。愛子達は本音を言えばまだ休憩したかったが、何か手がかりを見つけた様子となれば動かないわけには行かない。疲労が抜けきらない重い腰を上げて、再び猛スピードで上流へと登っていくハジメ達に必死になって追随した。

 

 ハジメ達が到着した場所には、ラウンドシールドや鞄などが散乱していた。ただし、ラウンドシールドは、なにかがぶつかったようにひしゃげて曲がっており、鞄の紐は牙か何かで半ばで引きちぎられた状態で、だ。

 

 周囲を見渡さば、皮が禿げている木、半ばで立ち折れた木や枝。踏みしめられた草木、更には、折れた剣や血が飛び散った痕など、次々と争いの形跡を発見した。

 

 それらを発見する度に、特に愛子達の表情が強ばっていく。しばらく、争いの形跡を追っていくと、シアが前方に何か光るものを発見した。

 

「ハジメさん、これ、ペンダントでしょうか?」

「ん? ああ……遺留品かもな。確かめるか」

 

 シアからペンダントを受け取り汚れを落とすと、どうやら唯のペンダントではなくロケットのようだと気がついた。留め金を外して中を見ると、女性の写真が入っていた。おそらく冒険者、もしくはウィルの持ち物だろうと推測し、ハジメはロケットを回収した。

 

 その後も、遺品らしきものを発見し、身元特定に繋がるものだけを回収していく。どれくらい探索したのか、日は落ちかけており、そろそろ野営の準備に入らねばならない時間に差し掛かっていた。

 

 未だ、野生の動物以外で生命反応はない。ウィル達を襲った魔物との遭遇も警戒していたが、それ以外の魔物すら感知されなかった。位置的には八合目と九合目の間で、山を越えていないが、魔物の一匹くらい出てもおかしくないため、ハジメ達は逆不気味さを感じていた。

*1
重力を中和して浮く鉱物




 文字数が足らなくなってしまったので区切ります。

 そして……

 特報!

 かつて、神に抗う七人の人間と一人の悪魔がいた……

 七大迷宮を作った解放者たちの伝説が語られる。

「君のような人を、探していた」

「あなたの名前は……?」
「私の名はスパーダ。ただの剣士です」

 これは、稀代の錬成師と“天災”と称される魔法使い。そして、伝説の魔剣士が、“神”に抗う物語。

 ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強 零 伝説の魔剣士(Legendary Dark Knight)

 作成決定!

伝説の悪魔は今、世界を超える!!
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