ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強 作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ
「
開戦を宣言したハジメは、キャバリエーレに跨って台から飛び降り、魔物と悪魔の大群に突撃した。
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ハジメがキャバリエーレで飛び出していくのと同時に、愛子は作っておいてもらった壁の上の土台の上に登り、全員の視線が自分に集まったことを確認すると、すぅと息を吸い天まで届けと言わんばかりに声を張り上げた。なお、手にはカンペを持っているが、距離が離れているため、市民たちには見えない。
「聞いてください! ウルの町の勇敢なる者達よ! 私達の勝利は既に確定しています!」
いきなり何を言い出すのだと、隣り合う者同士で顔を見合わせる住人達。愛子は、彼等の混乱を尻目に言葉を続ける。すべては、教え子の頼みを叶えるために!
「なぜなら、私達には彼がいるからです! 今、戦場で戦っている彼が! その男の名は、南雲ハジメ!」
その言葉に、皆が口々に「南雲ハジメ?」「今戦場で戦ってる男だろ?」とざわつき始めた。キャバリエーレで突貫しているハジメがギョッとしたように愛子を見る。
「彼がいる限り、敗北はあり得ません! なぜならば、彼は二千年前に伝説となった男、魔剣士スパーダの息子だからです! って、ええ!?」
愛子はカンペに書かれている事実に目を広げ驚愕する。歴史担当の教師のためトータスの歴史も簡易的に覚えている愛子はスパーダの名前も覚えてはいた。その息子が教え子にいるという、「お忍びで総理大臣の息子に授業してたんだよ」とドッキリされるような状況である。
簡易的に覚えている愛子でこれなのだ。市民たちは「あの伝説の!?」「噓だろ!?」「っていうか、あの御伽噺実話だったんだ…」とビビりまくっている。愛ちゃん護衛隊たちとデビットたちは「アイツ、そんな偉いやつだったの!?」と別ベクトルで驚愕している。
そして、次の瞬間には爆発的なコールが鳴り響いた。
「「「「「「ハジメ様、万歳! ハジメ様、万歳! ハジメ様、万歳! ハジメ様、万歳!」」」」」」
「「「「「「剣士様、万歳! 剣士様、万歳! 剣士様、万歳! 剣士様、万歳!」」」」」」
ウルの町で神のように崇められそうになっている剣士の誕生であった。どうやら、不安やら恐怖やらが諸々吹き飛んだようで、町の人々は皆一様に、希望に目を輝かせハジメを伝説の剣士として讃える雄叫びを上げた。
それを遠眼に見たハジメは、
「優花の野郎、俺を利用しやがったのか…?」
ハジメの脳裏に、木陰でこそこそと話し合う二人の姿が思い出される。
実はこの時、優花は愛子にこの演説をするように頼んでいたのだ。勿論、理由はある。
一つは、この先、ハジメの活躍を煩わしく思った国や教会が手を出しにくくするためだ。
町の危急をハジメが救ったとすれば、市井の人々は勝手に噂を広め、〝伝説の魔剣士〟の名はますます人々の心を掴むはずだ。その時は、単に国にとって有用な人材というだけでなく、人々自身が支持する〝伝説〟として、国や教会も下手な手出しはしにくくなり、より強い発言権を得ることになるだろう。
二つ目は単純に、大きな力を見せても人々に恐怖や敵意を持たれにくくするためだ。一個人が振るう力であっても、それが自分達の支持する、そして信じてきた御伽噺にある力ならば、不思議と恐怖は安心に、敵意は好意に変わるものである。その力は教会も手こずるはずだ。
しかし、結局はハジメを思ってとはいえ、ある意味利用しているともいえる。
ハジメは、これが終わったら一発殴る、と決めた。
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先程の事を一時的に頭から追い出して戦闘に集中したハジメは、小型の敵は轢き殺し、中型と大型にはドンナー&シュラークが何筋もの紅い閃光を放ち穿ちながらゲリュオンに近づいていく。
しかし、そのゲリュオンが大群を横切るように走り始めた。おまけに、走った跡に通る大群の時を進めて進軍を速めている。ゲリュオンの能力が早速発動し始めたのだ。
「チキンレースがお望みか?」
ハジメは不敵な笑みを浮かべてキャバリエーレのスピードを上げ、魔物の大群にドンナー&シュラークをぶっ放しながらゲリュオンを追いかけるが、そこに、突然上から薄らと蒼く光る矢が三発飛来してきた。先端には矢じりの代わりにアメリカンフットボールのような球がついており、明らかに触れたらヤバそうな見た目をしている。
この矢は〝バリスタ〟といい、敵に向けて球部分に爆発物が入っている矢を迫撃砲のように馬車から射出されるゲリュオンの武器だ。
ハジメはそれをキャバリエーレのハンドルを切って躱していき、後ろで起こった爆発の熱と風を背中で感じた。
「手加減無しか? 俄然燃えてきたぜっ!」
ハジメはさらにスピードを上げ、ゲリュオンを追いかける。それが煩わしく思ったのか、ゲリュオンは体を斜めにドリフトするように滑らせて一回転し、曳いている馬車でハジメをぶっ飛ばした。
しかし、代わりに止まってしまう。それが、ゲリュオンのミスだった。
ハジメはぶっ飛ばされるのと同時にソードマスタースタイルからトリックスタースタイルに切り替えて〝フリッパー〟で体勢を整え、〝エアトリック〟で止まっているゲリュオンに一気に近づく。
このエアトリックは敵に一気に近づくことのできるスキルの一つなのだが、如何せん飛距離が短いのである。もし、ゲリュオンがこのまま走ったままハジメを振り切ろうとしたならば、ハジメは近づけなかっただろう。
しかし、ゲリュオンはハジメを撃退する為にスピードを落とした、落としてしまったのだ。結果、ゲリュオンはドリフトをした代償に体勢を整えるために止まらざるを得なくなる。そのため、ハジメとゲリュオンの距離は短くなる。故に、ハジメはエアトリックでゲリュオンに近づくことが出来たのだ。
ゲリュオンに近づいたハジメはトリックスターからソードマスターにスタイルを戻し、魔剣ジェネシスを持ち上段に構える。そのまま、空中から一気に落下すると同時に魔剣ジェネシスをゲリュオンの頭部に叩きつけた。所謂〝兜割り〟である。
それにより、脳震盪を越したのかダウンするゲリュオン。この隙を見逃すハジメではない
ハジメはジェネシスからバルログに武器をチェンジし、ティオをぶっ飛ばしたときのようにイグニッションを発動して赤く燃える拳を引き、溜めるように構える。
紅い閃光が一瞬放たれ、拳に力を溜め終わると同時にゲリュオンのダウン状態が終わりを遂げる。
四肢を地面に踏みしめて立ち上がるゲリュオン。だが次の瞬間に、その横面に力を溜めたハジメの拳が突き刺さる。
「
しかし、ゲリュオンはライジングドラゴンを食らっても気にせずに走り出し、そのまま次元の狭間に入っていく。
「チッ、何処に消えたっ!?」
ハジメは辺りを見渡して警戒していると、背後からゲリュオンは現れて突撃してきた。それをサイドロールで回避し、ドンナー&シュラークをぶっ放す。しかし、それも大したダメージにはならない。
ゲリュオンは、様子を見るためかバリスタを撃ちながらハジメの周りをグルグルと回る様に走りだす。
ハジメは、ガンスリンガーにスタイルチェンジして、バックステップでゲリュオンから距離を取りながらドンナー&シュラークを撃ち、様子を見る。
すると、ゲリュオンは黒い球を周りに出現させ、狭間に消える。
「チッ、余計なもん出してくれるぜっ」
そう吐き捨てながら、黒球から距離を取るハジメ。しかし、その背後にゲリュオンが突進してきていた。
「ッ!? しまt、グハッ!」
ゲリュオンに轢かれ、吹っ飛ばされるハジメ。黒球に気を取られ、完全に意識外からの攻撃に対応できなかったのだ。不運はさらに続き、吹っ飛ばされた先には黒球が浮かんでいる。
ハジメはそれを見てスタイルをトリックスターにチェンジする。それと同時に黒球に思い切り触れてしまった。次の瞬間、ハジメの周りの時間が全て某車に乗るライダーの怪人の能力が使われた様に遅くなる。
あの黒球は、ゲリュオンの時間操作能力が付与されており、触れる事で発動し、触れた本人とその周りの時間がスロー再生のように不規則あるいは恒久的になる。言うなれば〝タイムラグ〟である。黒球はさしずめ〝黒鈍球〟と言うべきか。
その黒鈍球に触れ、動きがスローモーションになるハジメ。そこに己で出した故に効果が効かないゲリュオンはハジメに突進していき、もう一度吹き飛ばす。それもバリスタのオマケ付きである。
ハジメはさらに吹っ飛ばされるが、先程トリックスターにスタイルチェンジしていたことが功を奏し、フリッパーで体勢を戻し着地する。
「やってくれるなぁ、ならコイツだ!」
ハジメは、近接武器をバルログからキングケルベロスに持ち替え、ゲリュオンに近づいていく。ゲリュオンも同じように突撃してきた。
ゲリュオンが眼前に来たところでハジメはエアハイクの二段ジャンプで回避し、ゲリュオンの方を向いて着地し、同時にキングケルベロスの〝クリスタル〟という前方に氷柱を出現させて敵を浮かす技である。それをキングケルベロスの氷属性を最大にしてゲリュオンを氷漬けにする。
後は簡単である。ハジメは、魔剣ジェネシスでダンスマカブルを放つ。
斬り上げ、からの上段斬り。これを二回繰り返してからの薙ぎ払い、ミリオンスタッブ、さらに一回転回し切りをし、魔剣ジェネシスを逆手に持ち替え切り上げ、返しでもう一撃切り上げる。
「これでお休みっ!!」
最後に、叫びながらジェネシスを野球バットのように振って氷漬けのゲリュオンを叩き切った。
「いい夢見ろよ!」
最後の捨て台詞としてか、ハジメはそう叫んだ。
一ヶ月もお待たせして申し訳ありませんでした……
ゲリュオン、強すぎ……設定資料集まらねぇ…