ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強   作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ

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ウル戦線

BGM:Mermaid Rock

 

 ハジメがゲリュオンと戦い始めた頃、戦場にドゥルルルルルルルルル!!!という独特な音と共に鋼鉄の雨が魔物と悪魔の混合大群に襲い掛かった。

 

 無慈悲な毎分一万二千発の死の雨は、大地を鳴動させ、雄叫びを上げて突撃をする大群を、種族も強弱も関係なく、僅かな抵抗も許さずに一瞬でミンチに変えていく。それも、一発で一体など生温いと云わんが如く、標的の身体を貫通し背後にいる数十体諸共を地獄に送り込んでいく。

 

 その正体は、雫の持っている電磁加速式ミニガン“メツェライ"である。照準を定めるのを苦手な故に銃を苦手とする雫だが、メツェライならば狙いを定めずとも、大群に向けてトリガーを引くだけで数える事すら億劫となる紅い死の雨が空を疾駆し、魔物の大群を屠っていく。

 

 そんな雫の左隣には、シアが右肩に己の体ほどある円筒形の物体を担ぎ引き金を引く。引き金の主であるロケットランチャー〝カリーナ=アン〟は、バスンッ! という空気の噴射音と共に六連ロケットミサイル“マルチプル”を容赦なく放つ。

 

 だがこれで終わらず、シアのカリーナ=アンを左横腹にて構え直し、銃口が夕日を彷彿とさせる朱色の光を放ちながらエネルギーがチャージされ、放たれた。

 

 “マルチプル”は、音とは裏腹に尾翼で空に白線を描きながら、チャージ弾”ハイエクスプローシヴ“と共に敵先頭集団の後方に着弾し、大爆音と共にドーム状の炎を巻き上げて消し飛ばしていく。

 

 爆発の中心に近い魔物ほど粉微塵に爆砕し、離れていた魔物も衝撃波と爆風で皮膚を蝋燭のように溶かすほどの火傷を負う熱風を吹かせ、骨や内臓を激しく損傷しのたうち回る。

 

 そのシアの左隣には、優花が体育座りを半分崩したような体勢でシュラ―ゲンを使い飛行する魔物、悪魔を撃ち落としている。シュラ―ゲンの最大出力で、どこぞの宇宙戦艦の三連主砲の如き蒼い閃光が、プテラノドンモドキの一体を木っ端微塵に撃ち砕き、余波だけで周囲の数体の翼を粉砕して地へと堕とす。さらには、燃焼器官を持つ悪魔〝ヘルバット〟を撃ち抜くことで自爆させ、自爆範囲内の敵を諸共屠っていく。

 

 雫の右に陣取っている魔法組も負けず、ユエが魔法で大群を殲滅する。それには、新技も使われていた。

 

「〝雷龍〟」

 

 ユエが魔法の行使を始めると同時に、空に暗雲が立ち込め、その暗雲から雷で構成された蛇を彷彿とさせる東洋の龍が出現する。

 

 体を左に右にとうねりながら天から見下ろす巨大な雷の龍に、魔物たちは己の運命を決定させたとも知らずに硬直を余儀なくされる。そして、天の裁きの如く、ユエの細く綺麗な指のタクトに合わせて、雷龍は魔物達へとその顎門(アギト)を開き襲いかかった。

 

ゴォガァアアアアアアアアア!!! 

 

 雷龍は、凄まじい咆哮をあげると共に全てを喰らい尽くさんと大口を開けば、魔物の軍勢はその大口に吸い込まれるかのようにで次々と喰われていくかの如く滅却される。だが、これで終わることはなく、雷龍は方向転換を行い魔物達を包囲するようにとぐろを巻く。進軍していた魔物は、突然眼前に出現した雷壁に突っ込み塵となり、逃げ場を失くした魔物達の頭上で再び大口を開き、自殺するかのように龍の口飛び込んでいく。

 

 魔物は荘厳さすら感じさせる龍の偉容を最後の光景に塵へと還された。そして、雷龍は【腹が満たされた】と言わんばかりに咆哮を上げて霧散した。

 

 これがユエのオリジナル魔法〝雷龍〟である。

 

 この魔法は〝雷槌〟という空に暗雲を発生させ、雷を落とす魔法と重力魔法の複合魔法だ。本来落ちるだけの雷を重力魔法により束ね、任意でコントロールし、口に発生させた重力場で対象を引き寄せることが出来る。魔物達が自ら飛び込んでいたように見えたのはその影響だ。

 

 さらに、この魔法を作るにあたり、ハジメに聞いたことのある東洋龍を形作っている点が何ともユエの魔法に対するセンスを感じさせる。おまけに、魔力量は上級程でも最上級程の威力を持つコストパフォーマンスの良さから、正にユエの自慢の一品だろう。

 

 そんなユエのさらに右に陣取るはティオだ。その突き出された両手の先からは周囲の空気すら焦がす黒い極光が放たれる。あの竜化状態で放たれたブレスだ。どうやら人間形態でも放てるらしい。

 

 一撃で地形すら変えかねない純黒の炎は、射線上の一切を刹那の間に灰燼とし、大群の後方にまで貫通した。ティオは、そのまま腕を水平に薙ぎ払えば、それに合わせて真横へ移動する黒炎は触れるものを骨も残さず消し飛ばした。

 

 純黒の極光が消え、あとに残ったものは抉れた大地の他に見る影はない。

 

 だが、その一撃で相当の魔力を消耗したようで、ティオは肩で息をし体をフラつかせた。しかし、すぐさま指にはまった指輪に一つキスを落とし、魔晶石の指輪にストックされた魔力を取り出すことによって回復し再びスっと背筋を伸ばす。ブレスの一撃によりティオが担当する範囲の魔物の先陣はあらかた消滅し、多少の余裕が出来たティオは、魔力消費の比較的少ない魔法を行使する。

 

「吹き荒べ頂きの風 燃え盛れ紅蓮の奔流 〝嵐焔風塵〟」

 

 少しでも魔力の消費を低減させるため、敢えて詠唱し集中力を高める。そうして解き放たれた魔法は火炎の竜巻だった。その規模は地球の基準で表すならF4クラス。直径数十mの渦巻く炎が魔物の群へと進撃し、範囲内の魔の全てを巻き上げる。宙へと放り出され足掻くすべも持たない魔物達は、そのまま炎渦に晒されて獄炎の竜巻を出れるのは灰燼と化した時のみだった。そんな紅蓮の竜巻“嵐焔風塵”は、存分に戦場を蹂躙していく。

 

 後ろに残るは、灰燼によって生み出された舞い散る灰色の雪のみだった。

 

 そんな爆炎の中、雫とユエの間にいる一人の少女が瞑目したまま静かに佇んでいた。ミレディ・ライセンその人である。

 

 左側の攻撃が薄いと悟った魔物達が、破壊の嵐から逃れるように集まり、左翼から攻め込もうと流れ出す。既に進軍にすら影響が出そうなほど密集して突進して来る魔物群。

 

 そして、遂に双方の距離が五百メートルを切ったその瞬間、ミレディは、スっと目を開いてもむろに右手を掲げた。そして、一言、囁くように、されど世界へ宣言するように力強く魔法を唱える。

 

「〝禍天〟!」

 

 それはミレディが長い間使い続けた、7つの神代魔法が一つ。世界の法則の一つに干渉する魔法〝重力操作〟によって引き起こされた魔法だった。

 

 魔法に関しては天性の才能を持つユエを以てしても、魔力の練り上げとイメージの固定に長い“タメ”を必要とし即時発動は未だ困難な魔法なのだが、長年使い続けてきたミレディの手にかかれば、発動は一瞬、されど絶大な威力を発揮する。

 

 ミレディの詠唱と同時に、迫る魔物群の頭上に渦巻く闇色の球体が数か所に出現した。直径50m以上はありそうな数々の黒球を、ミレディはそのまま大地に落下させた。

 

 次の瞬間、魔物達は〝跡形もなく消滅した〟。実際には、落下した衝撃で全て圧殺しただけなのだが、少なくとも防壁の後ろでこの戦いを見ているウルの人々にはそう見えていた。

 

 だが、それでは終わらず、重力を発生させる方向を下から横へと変えることで黒球は周りの魔物や悪魔たちを轢殺しながら魔物たちの流れを逆走するように前進していき、200mを超えた辺りで消滅した。

 

 だが、この一連の魔法で数えるのも億劫になってくる程の魔物達を屠っている。さすがは、神代を生き、神に挑んだ者達の長とも言うべき実力者である。

 

 そんな戦場に断末魔のような嘶きが響き渡る。ハジメがゲリュオンを倒したのだ。

 

 そんな大地に、戦場に流れる風は、街へと流れていく。その強烈な匂いに、吐き気を抑えられない人々が続出しているが、それでも人々は、現実とは思えない〝圧倒的な伝説の力〟と〝蹂躙劇〟に湧き上がった。町の至るところからワァァアアアアアア!!!と大歓声が上がっている。

 

 やがて、魔物の総数が減り、密集した大群のせいで隠れていた北の地平が見え始めた頃、遂にティオがダウンした。渡された魔晶石の魔力も使い切り、魔力枯渇で動けなくなったのである。

 

「むぅ、妾はここまでじゃな……もう、火球一発すら出せん……すまぬ」

 

 横座りに倒れながら顔だけを雫の方に向けて申し訳なさそうに謝罪するティオの顔色は比喩表現無しに顔面蒼白となっていた。どうやら、死力を尽くす意気込みで魔力を消費したようだ。

 

「……いえ、大丈夫よ。あとは任せて寝てなさい」

 

 雫の言葉にティオは頷き、そのまま倒れ伏した。

 

 実際、その総数は既に、一万を割り八千から九千を下回っている。最初の大群を思えば、壊滅状態と言っていいほどの被害であろう。しかし、魔物達は依然として進軍を行っている。よく見れば、リーダー格の魔物たちが命令を出して進軍させているようだが、大抵の魔物はその命令に困惑しながら突進してきている。

 

 だが、悪魔たちは魔物たちと違って勢いが衰えることなく進軍してきている。だが、そもそも魔界から出ている時点で召喚された可能性が高く、召喚された悪魔は基本的に召喚者に追従するのだ。それを鑑みると、勢いが衰えないのもうなずける。それにプラスして、「弱者は強者に支配されるべき」という考えが根底に組み込まれているからか、ウルの人々を蹂躙する為という意味でも進軍を強めているのである。

 

 そんな目の前の魔物たちだが、悪魔は殲滅するとしてだが、魔物たちは司令塔を無くせば、忠実な本能に、ハジメ達との実力差をその身に刻んでいるがために山脈地帯へと逃走するはずだ。

 

雫は、そう思考しながらシュタイフを〝宝物庫〟から取り出し、シアに話し掛ける。

 

「シア乗って!ハジメと一緒に、奥にいる群れのリーダーたちを叩くわ!」

「へっぴり腰の魔物たちをさらに混乱させて山に帰すんですね、わかったですぅ!」

 

雫の考えを理解したシアはドリュッケンを背中に背負って雫の後ろに乗り、そのままシュタイフが高台から飛び降りて進軍してくる魔物群に突っ込んでいった。雫の運転するシュタイフは魔物たちの遠距離攻撃を躱しながら互いの距離を詰めていき、ゼロに達する瞬間、雫とシアはシュタイフを足場に魔物たちの最前列を飛び越し陣営に深く入り込み攻撃を開始する。

 

 敵陣に深く切り込んだ雫は、そのまま“次元斬”を起動。数m内の魔物達の身体に見えない斬撃が走りバラバラにする。

 

さらに、雫の位置から離れた場所に跳躍したシアは、着地地点にいる悪魔の頭を踏み台にさらに飛び、ハジメと雫のちょうど中間辺りに着地すると共に地面にドリュッケンを振り下ろした。それにより衝撃波が発生し、それにより発生した土礫が付近の悪魔をぶち抜いてミンチにしていく。さらに、範囲数メートルの敵を吹っ飛ばすことによって碌に受け身も出来ない魔物も悪魔も頭を自重で潰れ、地面に擦れて紅葉おろしと化していった。

 

シアは、振り下ろしたことで地面に3分の1ほど埋まったドリュッケンに備わっている衝撃機能を使い、ゼロ距離で地面に叩き込まれた衝撃波によって逆噴射の容量で半円を描きながらドリュッケンを引き抜いた。

 

「ッ!?」

 

すると、突然地響きが起こり、悪魔や魔物を吹っ飛ばして一体の悪魔が飛び出し、その巨体でシアに突進を行う。

 

「「シア!!」」

 

シアは、悪魔〝ベヒモス〟の突進によって吹っ飛ばされ、地面を数回転がってうつ伏せで倒れ込んでしまう

 

「ま、まだ…!ッ!?」

 

歯を食いしばりながら立ち上がろうとするが、ベヒモスも待ってはくれず、シアに向かって再度突進してくる。ハジメも雫も距離的に間に合わず、絶体絶命かと思われた次の瞬間、ベヒモスに向かって一筋の紫色の稲妻が落ち、ベヒモスは白く発光してその場に崩れ落ちた。

 

「……へぁ…?」

『ヨォ!ウサミミのネェチャン!命拾いしたなァ!』

 

BGM:Crimson Cloud

 

突然の展開について行けないシアに誰かが喋りかける。その声は、シアの頭上から聞こえていた。シアが顔を上にあげると、そこには紺色の猛禽類の悪魔〝グリフォン〟が対空していた。

 

「……『朝に思考し、昼に行動し、夕に食事し、夜に就寝せよ』…。で?君はいつまで呆けているつもりだ?」

「ひぁ!?」

 

グリフォンに気を取られ、油断したシアは背後からの声に驚き、その場を跳躍して距離を取る。シアの背後にいたのは、腹部分に穴が開いていたり、焦げ付いていたり、両腕の裾が破け、二の腕まで晒しているボロボロの魔術師の服を着た、全身に刺青を入れ、手にステッキを持つ痩せた青年だった。

 

「シア!大丈夫、か、って、お前は……!?」

 

なんとかシアの元までたどり着けたハジメは男を見て驚愕した。男の持つ杖に見覚えがあったからだ。

 

その杖、清水幸利のものだった。

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