ありふれた悪魔狩人《DEVILHUNTER》で世界最強 作:ヴェルザ・ダ・ノヴァ
レイは、有希を何とか説得して家に帰した後、とある酒場で酒を飲みながら読書をしていた。銘柄は「バランタイン」という名のウイスキーである。
ジャズ調の曲が流れ、ペラリ、ペラリとページを開く音が支配する店内。そこに、扉が開く音が乱入してくる。入ってきた客は、真っ直ぐレイの近くまで歩いていく。流石に気になったのか、レイが斜め後ろへ振り向くと、ロングコートを着た黒髪の男性が立っていた。ハジメである。
「隣、良いか?」
「え?」
一瞬、レイは思考がフリーズするもすぐに我に返って、「どうぞ」と返しながらハジメを見つめている。
ハジメは、ビールとピザのLサイズを注文して席に着いた。酒を頼んでも未成年か疑われないのは、身長が成人男性よりも少し高く、大人びているからだろう。
待っている体勢なのだろうか、指を組んで両肘を立てて寄りかかっている。所謂、ゲンド〇ポーズと言うヤツだ。
「ん? ああ、気にしないでいいぜ。続き読みな、面白いんだろ?」
「じゃ、遠慮なく」
ハジメの言葉に甘えて、読書に戻るレイ。そうして、時間が過ぎていく。
三十分程経ったところで、少し気になったのか、ハジメはレイに声を掛けた。
「熱心に何を読んでるんだ?」
「恋愛小説ですよ」
「ほ~、恋愛漫画ならたくさん持ってるが、小説は持ってないな………面白いか?」
「ええ、とても。人が人を愛する。とても素晴らしいことだと思いますよ。真実の愛は美しい」
熱弁を振るうレイに少し笑ってしまうハジメ。レイは、彼の気に障ったのだろうかと思い「変ですか?」と問うた。それにハジメは「いいや」と答えると、そこにやっと店主がビールを持ってやってきた。
「はい、ビールね」
「ビールでこれだけ遅えってどういう事だよ。で、ピザは?」
「今焼いてるから、待っててくれ」
その回答に、ハジメは店主に横顔を見せて舌打ちした。
そうして、ビールの入ったジョッキをを持つと、レイに向けて掲げた。
「乾杯」
「あ、乾杯」
レイは、ハジメの言葉に気付き、グラスを持ってハジメのジョッキに当てた。
コツンといういい音が鳴ると、ハジメはビールを飲み始めた。ゴクッゴクッという喉を鳴らす音がどれだけ美味かを教えてくれる。
その飲みっぷりに、レイは思わず微笑み、グラスに口をつけた。
「ところで、アンタは各地を歩いて回ってるらしいが、どっから来たんだ?」
ビールのジョッキから口を外したハジメは質問をした。だが、レイは答えはせずに前を見ていた。
「ま、言いたくないこともあるよな」
ハジメはそう言って、ビールを煽る。
すると、レイは立ち上がって「それでは、これで」と言い放ち、酒場を出ていった。
そこに、待ちに待ったピザをもった店主がやってきた。
「はいピザ、お待ちどお」
「やっとか……おい、バジル盛り過ぎだろ?」
「ん? それぐらい普通だろ」
「ったく」
ハジメは、不貞腐れながら後ろを振り返る。その先には悪魔の気配がした………
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レイは酒場を出た後、細い裏路地に来ていた。奥に進んでいると、突然レイの影が巨大化し、陰から、全身に鎧を身に纏い、背中に長さ2mはありそうな大剣を背負った悪魔が出てきて、レイに話し掛けた。
「今宵、扉を開くとのことだ」
「………そうですか」
「されど、これで人間界を去るというのも口惜しいものよ」
「やはり、通り魔事件の犯人は貴方でしたか」
「人間の血肉は我の好物。そも、ひ弱な人間が我が力となるのだ。光栄であろう」
そんなことを言っている悪魔の後頭部に白く丸い何かが投げつけられる。パリーンという皿が割れる音が鳴り響いた。
「何者だ?」
BGM:D.M.C (Gut Guitar Ver)
鎧の悪魔とレイが振り返ると、片手でピザを口に押し込んで歩いてくるハジメがいた。「あぐっ、ムグッ」という咀嚼音を響かせながら真っ直ぐ二人の方へ歩いていく。
「つけてきたんですか?」
「兄貴に1分負けたが、ピザLサイズを6分で完食は自己記録更新だ」
レイの質問に答えず、自身の記録に不満を思うハジメ。
「ふざけた真似をっ!!」
鎧悪魔はハジメの態度に激昂し、背に負う大剣を片手で一気に引き抜き、その勢いのままハジメに振り下ろす。それを、ハジメはバク転ジャンプで回避し、ホルスターからエボニー&アイボリーを取り出し、体が鎧悪魔に向くと同時にエボニー&アイボリーを連射した。
「なにっ!?」
鎧悪魔は大剣でガードするが、弾速の速さにたたらを踏み後退する。そこに、追い打ちをかけるように銃弾の雨を全身に浴びせながら前進するハジメ。
「流石の強さですね……」
「ほぉ~、俺のことを知ってるのか?」
「人間界に来て一ヶ月が経ちます、噂は聞いていますよ。悪魔に改造され、あのダンテの弟になった男。デビルハンター、ハジメ・ナグモ」
「それは、自分が人間じゃないって告白でいいんだな?」
「はい」
その返事を聞いて、ハジメはアイボリーをレイに向けた。
「なら、覚悟はできてるな?」
「ええ、貴方から逃げるのは無理でしょうから。ただ一つだけ、質問したい事があります」
「なんだ?」
「貴方は今、半分悪魔の存在です、そんな貴方に聞きたい。人間と悪魔は愛し合うことができるのでしょうか? 相容れない二つの存在が」
「さぁな。愛し合ってるように見えて、実際は冷え切っているなんて話はザラだ。「っ! それは!」だが、俺は、愛し合えると思うぜ。真の愛の前に、壁なんてものはないんだからな」
その答えで満足したレイは、「そうですか」と呟いて目を瞑った。
「聞きたい事はそれだけか?」
「はい」
その返事を聞き、ハジメはアイボリーの引き金を引いた。
上から反撃しようとしてきた鎧悪魔に向けて。
「え?」
鎧悪魔は、心臓部分の胸に風穴を開けられ、血を流しながらドザアアァァ! と音を立てて落下した。
鎧悪魔を見下ろしたハジメは、レイに一言零す。
「ついてこい」
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ハジメとレイは、彼がいつもいる高台に来ていた。
「不意打ちでもしてくるのかと思ったぞ」
「貴方と戦っても勝てはしない」
「悪魔のクセに弱腰だな」
レイが自嘲気味にハハッと笑い、ハジメに顔を向ける。
「悪魔と言っても、貴方と戦えるほど力はない。それに、僕の役目は終わった」
「終わった?」
レイの話によると、今夜、魔界と人間界を繋ぐ門を通して強大な悪魔が人間界にやってくるという。レイは、その手伝いとして悪魔信者の人間に召喚されたのだ。
「なぜ、それを教える?」
「本当は、止めてほしいのでしょうね」
しかし、行動と裏腹に、レイはそれが嫌だった。
「主は傲慢だ。この街の全てを破壊するでしょう。コーヒーの美味いあの店も、夕焼けが綺麗に見えるこの高台も、なにもかも」
話しているうちに、レイの頬に
「アンタの恋する女も、死んじまうって訳か」
「僕は、どうしたらいい…!? 彼女を、有希を失いたくない! 彼女は、魔界で虐げられてきた僕にさえ優しくしてくれた! あの笑顔をもう見れないなんて、そんなのは嫌だ……!」
レイは悲しみのあまり四つん這いになり、悔しさを拳に、力いっぱい床を叩く。しかし、悪魔としての力は弱く、人間と同程度の力故に、地面に罅さえ入りはしない。
恐らく、レイにとって〝福谷有希〟という女性は、心の支え的な人だったのだろう。魔界は弱肉強食の世界。弱者に居場所はありはしない。しかし、そんなレイに居場所を作ったのが、有希だったのだ。
悲しみに打ちひしがれるレイに、ハジメは諭すように語り掛けた。
「たしかに、アンタは出来損ないなんだろうな、悪魔としては。だが、そこまで有希って女を思いやれるなら、人間として生きていく事はできる」
「人間として……僕が……?」
ハジメは、レイの不安そうな疑問に、不敵な笑みを浮かべて答えた。
「アンタが言う〝主〟ってヤツが現れる場所に案内しな。お前の、悪魔の枷を外してやる」
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一方その頃、福谷邸では、辺り一帯が静まり返っていた。有希はというと、自室に閉じ込められていた。高台でレイと会って帰ってきた後、玄関で信明に頬を叩かれ、部屋に入れられ、南京錠で鍵を閉められてしまったのだ。
そんな静まり返った福谷邸に、「ぐああああああ!!」という信明の悲鳴が上がる。
自室のベッドに腰かけていた有希は、その叫び声に反応してドアに走って近づく。
「お父様! どうしたの、お父様!」
そう叫んで声を掛ける有希だが、返事は帰ってこない。
不安に駆られた有希は、どうにか部屋から脱出し信明の元に向かおうと、部屋を見わたす。すると、机の隣にある椅子に目がいった。その椅子に駆け寄ると、掴んでドアの元まで運ぶと、ドアに打ち付ける。
数回打ち付けることで、ドアをロックしていた南京錠が壊れ、ドアが勢いよく開く。
有希は、「お父様!」と叫んで呼びかけながら、信明の叫び声が聞こえた方向であるエントランスへ走った。
向かったエントランスには、何らかの魔法陣と、その魔法陣を囲むように置かれた蠟燭。その上に血を流して倒れる信明の姿がある。魔法陣の上に倒れている時点で、誰もが生贄、もしくは、依り代の類だとわかるだろう。
「お父様!」
有希は信明に近寄り、何回も呼びかけるが反応はない。
そこに、後ろから何者かが近づいてきて、ダガーを有希の首筋に突き付ける。
「動くな。部屋にいれば、恐怖することなく死ねただろうに」
「あ、貴方は……!」
その正体は、執事だった。彼は、最近、悪魔信者の道に入り、悪魔召喚の儀式の準備を行っていたのだ。レイを呼び出しのも執事の仕業だった。
「どうしてこんなことを……!」
「もうじき、この街に強大な悪魔が召喚される。私が施した儀式によってな」
その言葉と共に、魔法陣にさらに呪文が書き加えられていく。
「私は、その悪魔と共に人間界を破壊するのだっ!」
その言葉に、有希は恐怖し、家から出ようとドアを開けようとするが、封印の術でも施されているのか開く気配がない。
有希が背後へ振り向けば、そこには、ダガーを振り上げる執事の姿。恐怖のあまり、有希は目を閉じて次に来るであろう衝撃を待った。
だが、次の瞬間、有希のいる場所だけを避けるように扉越しに何十発もの銃弾が撃ち込まれた。一発目で執事の手からダガーが弾かれ、残りの弾は蠟燭や家具やらを纏めて吹き飛ばしていく。
「くっ!」
執事は、魔法陣を破壊されかけたことに怒り、銃弾が来た方向を睨みつける。有希も、いきなりの銃声に驚き、銃弾の来た横側を見ている。
そのボロボロになった扉を蹴り壊して、片手にアイボリー、もう片方の手にフレイロフを握る一人の男、ハジメが入ってくる。
「南雲ハジメかっ!」
「おっと、悪いな。少しノックが強すぎたみたいだ」
ジョーク気味にそう言って、屋敷の中に踏み入るハジメ。
「市長がお前に関わった時から嫌な予感はしていたが、今やもう遅い!!」
執事のその言葉に反応したのか、魔法陣が光り起動し始めた。恐らく、あと2分ほどで完全起動し、この場に悪魔を召喚するだろう。
しかし、その魔法陣の向こう側にある窓が蹴破られ、レイが中に入ってきた。
「有希!」
「レイ!」
レイは、倒れている信明に気が付き、彼の駆けていく。それを執事は恨むような眼で睨んだ。
「レイめっ! サタン様を裏切るつもりかっ!!」
信明を連れて魔法陣から距離を取るレイ。しかし、魔法陣は輝きが増していき、だんだんと屋敷を飲み込むかのように魔法陣の範囲が広がっていく。
もう間もなく悪魔が召喚されることを悟った執事は、儀式が成功したことに喜び気色の悪い笑い声をあげた。だが、その横面をハジメに蹴り飛ばされ、屋敷の外に追い出される。
「さぁて、害獣退治だ!」
邪魔者を片付けたハジメは、魔法陣に走っていく。だが、すでに召喚されてしまい、魔法陣から腕が出現して魔法陣の周りを横薙した。
ハジメは、それをジャンプして回避し、アイボリーを銜えながら魔法陣の上にあるシャンデリアに捕まって様子見している。
悪魔サタンは、段々と魔法陣から這出てきて、次の瞬間、ハジメを喰らおうと口を開けて魔法陣から飛び出し攻撃してきた。
しかし、ハジメは、敢えて落ちることでそれを回避し、アイボリーをもう一度手に持ってサタンに銃口を向けた。
「人間界に遠路はるばる、ご苦労さんっ!」
そう言って、サタンの片目を撃ち抜いた。それにより怯んだのか、口を閉じて代わりに殴りかかってきたサタン。ハジメは、その腕を避けて、フレイロフを振るい腕を切り落とした。
その勢いのまま、フレイロフをサタンの眉間に突き刺した。血が噴水のように飛び散り、辺り一面とハジメを真っ赤に染め上げる。
「悪いがこっから先は立ち入り禁止でな。さっさとお帰り願おうか!!」
ハジメはそのままサタンごと魔法陣の核に剣を突き刺し、サタンを魔界に押し戻した。
魔法陣が消滅したことを確認したハジメは、アイボリーをコートの裏側にあるホルスターに隠すようにしまい、フレイロフをヒュンヒュンヒュンッと風を切りながら回転させて血を払い背負った。
一方で、レイたちは、魔法陣から離れた場所にいた。
有希が、致命傷を負った信明を心配して頭を持ち上げるように支えている。
「レイ、お願い……!」
「ここまで大きな傷はやったことないけど、頑張るよ…!」
レイは、己の魔力をフル稼働させて信明の治療を試みる。薄緑色の光が信明の傷を照らし、癒していく。
しかし、信明はレイ悪魔だと思いを嫌っている。故に、精一杯の嫌悪を示し、レイを睨んだ。
「…な、何をする、この悪魔めっ…! こんな…ことをしても、有希との仲は…私は認めんぞ…!」
「お父様!」
信明の言葉に、「そんなことを言ってる場合じゃないでしょ」と言わんばかりに有希は声を上げる。
しかし、父親としての信明の言葉は何ら間違いではないだろう。信明としても、娘の幸せは願っている筈だ。ただ、連れてきた男が
〝もし、娘に何かあったら〟。この考えが、娘の幸せを思う気持ちと、二人の愛の邪魔をする。
しかし、その考えは、次のレイの言葉で消え去ってしまう。
「安心してください。そんなことは微塵も考えてません。僕は…ただ、有希が悲しむことが嫌なだけなんです」
そう言ったレイの目には、涙を流す有希の姿が映っていた。
「市長さん、今回の依頼は蹴らせてもらうぞ。レイは愛を知ってる。人として十分やっていける筈だ。俺が殺せるのは、愛を知らないクソだけなんでね」
ハジメはそう言って屋敷を出ていく。
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数日後、八重樫家では今日も修練をする声とバシイィィンッ!という竹刀が防具に当たる音が響き渡り、屋敷の近くを通る人たちをビクつかせている。
そんな八重樫家道場で、ハジメと虎一の二人が門下生を見渡しながら話をしていた。ハジメの手には、手紙と一枚の写真がある。その写真には、花束を持つレイと有希の二人が写っていた。
「二人の交際は、正式に信明に認められたそうだ」
「ふ~ん、ソイツはいい話だな」
ハジメは、写真に写る二人を見つめて笑った。どうでも良さそうに見えるが、内心では心から祝福をしているだろうなと、虎一はハジメと話に花を咲かす。
そこに、横からひょっこりと雫が現れた。
「南雲君?何を見てるの?」
「なに、大したものじゃないさ、っていうか、前の呼び捨てはどうした?」
「あれは、テレビが壊れたショックに、ついやっちゃっただけだから…」
「それ、学校ではやんなよ。マジで」
雫の言葉にジト目で睨むハジメ。たしかに、学校で雫がハジメのことを呼び捨てにしたら、某キラキラ君が突っかかって来るだろう。そんなの、面倒でしかない。
「……別にいいじゃない」
「良くねぇよ」
しかし、名前呼びを偶にはしたいという雫に、ハジメが突っ込み、二人の話はエスカレートした。
「父さん、ハジメ君の事認めてるし、交際すればいいのに……いっそのこと外堀埋めるか…」
その様子を見ていた虎一がそう思案し始めた。
次回予告
「たまにいるんだよ、俺のことを嗅ぎまわるやつが……。
こんな、真っ当で平凡な仕事を調べて、何が楽しいんだか…。まぁ、つきまとうなら、それなりのリスクは背負ってもらう。なにせ、こっちは………悪魔どもにもつきまとわれてんだからなぁ…
次回、Devil May Cry トータスに行く前の物語。
第四話『My Daily Life』
え? ヤンデレストーカーもいる? 勘弁してくれ………」
(※次回投稿はキャラ紹介の予定です。Devil May Cryの前に乗せます)
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アフターライフ
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