キングスクロス駅。魔法使いの卵達が、魔法魔術学校ホグワーツへ学びに行くために作られた電車の駅である。
駅構内では様々な魔法使いの親子が、これからの生活を語りあっていた。
「......憂鬱だ」
この俺、 ケヴィン・アレスティンもまた今年からホグワーツ1年生という訳だ。俺もまた父とともに生活用品、__ほぼ本だが、が入ったトランクを転がし父ともに語っていた。
「まあまあ、行ってみるといいところだぞ?ご飯はうまいし、仲のいい友人もできる、なにより魔法を学ぶのにあれほど素晴らしい場所はない!」
「父さん、学ぶだけなら、うちの図書館でもできるだろ」
やれやれ、といった顔をして父はケヴィンの頭に手を置いた。
「はあ、お前を図書館から外を出さなかったのも悪いんだろうな...」
「父さん!!」
「本のなかでは学べないことがホグワーツではたくさんある、......恋とかな」
そう言って父はぱちりとウィンクをした。......うへぇ。
「おっさん、気づけ、恥ずかしいこといってんぞ」
「......とにかくだ、ホグワーツでひとり好きな女の子を作ること、帰ってくるまでに、一人はだ、もし出来なかったら......図書館入館禁止!!!!」
そう言って、俺に杖を振り上げ無理矢理電車に乗せた。
「いや、ちょっとまてえええええええええ!!!」
電車は唸りをあげ、ゆっくりゆっくりと進んでいった。
「ここ、すわってもいい?」
さらりと流れるブロンドの髪に、真っ白い肌。そして、ごてごてした変な服を着た女の子。
「なんだ、ルーナか」
「なんだとは失礼なんだな」
そう言って、ルーナは俺の返答を聞く前に向かいの席に座ってきた。
ルーナ・ラブグッド。父親は雑誌編集長をしており、よく取材の情報収集でうちの図書館に来ていた。それの付き添いでルーナとはよく顔を合わせていた。ジッとルーナの顔見見つめながら言った。
「......なあ、ルーナ、俺はお前を好きなんだろうか」
「それを私に聞いてるところでダメだと思うな」
そう言ってプイと顔を背け、窓を眺めていた。俺もコイツのことは昔から知っているが、異性として見たことはなかった。
「はあ、好きな人なぁ...」
「どうしたの?」
ポツリポツリとルーナに、父に言われたことを語った。
「ふーん、お父さんも心配なんだね」
「心配っていうかなぁ...」
「まあ、意外と早く見つかるかもしれないよ」
そう言って、カエルチョコを開けた。
「そういや、ルーナはいきたい寮とかあるのか?」
「んー、多分だけどレイブンクローだと思うな、うちの家族はみんなレイブンクローなんだもん」
「あー、それで行くと俺もレイブンクローかね、あー、たぶんだけどレイブンクローに好みの女の子なんていねえよ...」
「それは私にも失礼なんだな...」
ルーナはムッとした声で呟いた。
実際のところ、この言葉は半分合っていた。しかし、もう半分は間違っていたと言うほかないだろう。俺もこのとき、恋愛にそこまでお熱になるとは思わなかったんだから。
そこからは、トランクの本を何冊か取り出し、ルーナも勝手にそれをとって、好きに読んでいた。
そんな静寂の時間は、突如開かれたコンパートメントの扉を開ける音によって壊された。
「今年はおかしな雑誌の家のやつがホグワーツに来てるってホントなんだな」
ブロンドの髪を輝かせた、不気味なほど青白い肌の少年。俺はこの少年を知っている。
「なんのようだ、ドラコ・マルフォイ......」
後ろのデカイ取り巻き二人は瞳をギョロギョロと動かし、こちらをせせら笑った。
「ここでは『さん』をつけろよ、アレスティン、年長者なんだからな」
嫌味たらしくドラコは笑い、言った。
「まあ、しかしアレスティン、君は聖28氏族ではないが純血の家系だ、こっちのコンパートメントに来るといい、歓迎するよ」
「俺を誘いたかったら、もう少しロマンチックで詩的な言葉を探すんだな」
「私は行ってもいいよ」
「ルーナ、ちょっとお口チャック」
そんなやり取りをしていると、青白い肌を徐々に赤らめ、目をかっ開いていた。
どうやら照れているようではないようだ。違うか、違うな。
「後悔するぞ、アレスティン!ハリー・ポッターのようにはならないことだな!行くぞ!」
ドラコは取り巻き二人を連れて、どこかへ行ってしまった。なにしに来たんだ、あいつ......。
「そうだ、一個上にはハリー・ポッターもいるんだったか」
ルーナはコテンと首をかしげ、考える仕草を取った。
「ハリー・ポッター...?」
「生き残った男の子だよ、お前の父さんの雑誌でもたまに出るだろ」
いや、まあ、クヴィラーにはマジでちょっとしか出てないが......。断然、しわしわ角なんとかの方が出ていることだろう。
そうこうしている内に車内ががやがやと賑わってきた。もうそろそろ、ホグワーツに着くらしい。
「さて、学校生活どうなるかねえ......」
ぼそりとケヴィンの口から、そんな言葉が出た。車窓を見ると、本の挿し絵でしか見たことのなかったホグワーツ城がそびえ立っていた。
学校生活や、新たな本に学友、そしてまだ見ぬ好きな人に思いを馳せながら
ケヴィンは本の頁に目を落とした。