【完結】無惨様が永遠を目指すRTA   作:佐藤東沙

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10話 「最終決戦・其の壱」 大正(西暦1915年頃)

 満月に暈がかかる、星の見えない薄曇りの夜だった。無惨が踏みしめる白い玉砂利が、骨の軋むようなざらついた音を立てた。

 

 今無惨の目の前にあるのは、大きな武家屋敷だ。開け放たれた障子から、布団に横たわる一人の男と、その横に座る一人の女が見えていた。

 男は産屋敷家の当代当主、産屋敷耀哉。そして女はその妻、産屋敷あまね。前者は二十代前半、後者は二十代半ばから後半といったところだったが、産屋敷耀哉の顔の上半分には赤黒い腫瘍が浮き出ており、この歳にしてすでに死相が見えていた。

 

「初めまして、だね……、鬼舞辻……無惨……。我が一族が、鬼殺隊が千年追い続けた、鬼……」

「お前が産屋敷だな?」

 

 何とか自力で上半身を起こし、すでに見えなくなった瞳で無惨を見据える産屋敷に、酷くつまらなそうな顔を見せる無惨。奇しくも二人の顔は鏡に映したように瓜二つだったが、その表情は正反対だった。

 

「ついに無惨が……来た、私の目の前にまで……。あまね……。彼は、無惨は、どういう姿をしている……?」

「三つ揃えにコートを羽織った、二十代後半の男性に見えます。ただし瞳は猫のように縦長、色は薄い紅梅色です」

「そうか……。君は、我々産屋敷一族に酷く腹を立てているだろうから……。私だけは、こうして直接、殺しに来ると、思っていた……」

 

 絞り出すような産屋敷の声だったが、無惨はそれを鼻で笑った。

 

「フン……私が殺すまでもなく死にかけているとはな。興醒めだ、心底興醒めだ。お前はすでに屍と大差ない。ただ死んでいないだけだ。どう長く見積もっても、あと半年も持つまいよ」

「ふふ……医者には、一年前に同じ事を言われたよ……。だがこうして生きている……全ては、君を倒さんがためだ……無惨」

「そうか。身の程もわきまえず、千年私の邪魔をし続けて来た一族の長だ。絶望に沈めてから殺してやろうかと思っていたが、もはやどうでもよくなった。言い残す事はそれで終わりか?」

 

 無惨の右手がびきりと音を立て、その内心を表すように禍々しく変形していく。

 

「君と私は同じ血筋なんだよ……。君が生まれたのは千年以上前だろうから、もう血は、近くないけどね……」

「それがどうした? まさか、命乞いのつもりか?」

「君のような怪物を血筋から出してしまったせいで……私の一族は呪われていた……」

「呪い? 訳の分からぬ事を……私がそんなものをかけたとでも言いたいのか?」

「いや、おそらく君ではないのだろう……。神か仏か、かけた者は分からない……だが、かけられた内容はわかる。短命の呪いだ……」

 

 無惨は訝しげに眉根を寄せるが、その雰囲気に構わず産屋敷は続けた。

 

「生まれてくる子供たちは皆、病弱ですぐ死んでしまう……。今は代々神職の家系から妻を貰い……寿命も延びたが、それでも三十年と生きられない……。昔、一族が絶えかけた時……同じ血筋から出た鬼を倒すために力を注げば、一族は絶えないと、神主に助言を受けたんだ……」

「くだらぬ」

 

 この上なくつまらない事を聞いたと言わんばかりに、無惨は顔を歪めて吐き捨てた。

 

「迷言もここに極まれりだな、反吐が出る。そんな事のために私を千年邪魔してきたのか? お前の……いや、お前たちの病は頭にまで回るようだな。そんな事柄には何の因果関係もなし」

 

 薄く笑みを浮かべ無惨は言い放つ。まさに天上天下唯我独尊と言わんばかりの、傲慢極まりない笑みだった。

 

「なぜなら、神も仏もこの世にはいない。私ほど人間を殺した者はおらぬだろうが、それでも天罰とやらは私に下っていない。当然だ、存在せぬ者が天罰を落とせるはずがなく、呪いなぞかけられるはずもなし。呪いだ短命だなぞは、単なる遺伝病でしかない」

 

 無惨は見下しきった嗤いを浮かべると、出来の悪い教え子を諭す教師のように言った。

 

「大体、私が鬼になったがためにお前たち産屋敷に呪いがかけられたというのなら、神仏とやらはなぜ私に直接呪いをかけぬのだ? それこそ、神仏ですら私をどうにかする事など出来ないという証明ではないのか? 神仏にどうにか出来ぬ事が、人間にどうにか出来るというのか? 産屋敷、お前の言葉は何から何まで破綻している。狂人の戯言だ」

 

 無惨には数百年の研究者としての積み重ねがある。その日々で培われた論理性と、千年経っても一切変わっていない自己中心的な性格が言わせた言葉であった。

 

「君はそのように物事を考えるんだね……だが、私には私の、考え方がある……」

「そうか、それで話は終わりだな? 私の寛容にも限度がある、冴えない遺言だったな」

 

 向こうも終わっているだろうし、もう時間稼ぎはよかろう、と口の中でだけ無惨は呟く。いい加減話を終わらせようと、再度右手を変形させてゆく。

 

「君がこの千年、見ている夢を当てようか」

「……何?」

 

 ぴくりと無惨の眉が小さく跳ね、動きが止まった。

 そこで無惨はふと気づく。この屋敷には、人が少なすぎるという事に。

 

 曲がりなりにも鬼殺隊の長なのだ、最低でも護衛の数名はいて然るべき。いや、いなければならない。だが、産屋敷とその妻と思われる女の他には、庭で紙風船をついて遊んでいる童女二人のみで、他に人の気配はない。

 童女は顔つきや肉質からすると産屋敷の子供だろうから、ここにいる事はおかしくない。だが、無惨が来る事を予想していたような口ぶりだったにもかかわらず、ここにいる事は明らかにおかしい。

 

(しかもこの奇妙な安堵感と懐かしさ……何だこれは? 気色が悪い)

 

「君は永遠を夢見ている。不滅を夢見ている……」

「……その通りだ、そしてそれは間もなく叶う。お前たち、産屋敷と鬼殺隊を滅ぼしさえすれば」

「君の夢は叶わないよ、無惨」

 

 その言葉に無惨は無言をもって返したが、眉が再びぴくりと動いた。

 

「永遠とは、人の想いそのもの。想いこそが永遠であり、不滅なんだよ」

「くだらぬな。妄言を垂れ流す事しか出来ぬのか?」

「私がここで死んでも、私の想いは消えない。私の代わりはすでにいる。私がいなくなっても、鬼殺隊にとっては痛くも痒くもないし、消える事もない……。私自身の生死は、すでに重要ではなくなっているんだ」

 

 無惨は何かを言わんと口を開いたが、声が喉から出るその前に、どこからともなく琵琶の音が響く。無惨が口の端を吊り上げると、その後ろから黒死牟が姿を現した。

 

「遅かったな」

「申し訳ございませぬ……。元柱と思しき者がおり、少々手間取りました……。ですが、全て終わりましてございます……」

「ならば良い。もはや時間を稼ぐ理由は無いな」

 

 風向きが変わる。どこかなまぐさい風が吹いた。産屋敷は何とはなしに嫌な予感を感じたが、それはひとまず置き、情報収集に努めた。

 

「無惨がこの場に、自分以外の者を呼ぶとはね……。声が小さくてよく聞こえないが……あまね、誰が来たんだい……?」

「袴姿で、刀を差した鬼です。額と顎から首にかけての二ヶ所に炎のような痣があり、眼が六つあります」

「刀に、痣……? それはひょっとして、痣者のような……?」

「実際に見た事はないので確証はありませんが、おそらくは……」

 

 あの鬼は元鬼殺隊だったのではないか、と二人が口にする前に、無惨が話を再開させた。

 

「さて、産屋敷。『人の想いは永遠』『代わりはすでにいる』だったな?」

「…………その通りだよ。それがどうかしたのかい?」

「何も知らないまま殺してやろうかと思っていたが、気が変わった。黒死牟」

「はっ……」

 

 黒死牟は、手に持っていた三つの物体を産屋敷めがけて投げ放つ。攻撃ではないかとあまねは一瞬身体を固くしたが、すぐ近くまで転がって来たそれを見て、言葉を失った。

 

「な……ぁ……」

「あまね……? どうしたんだい、あまね?」

 

 目を見開き顔を強張らせ、尋常ではない様相だ。産屋敷にそれは見えていないが、ただ事ではないと察する事は出来た。だが、そんな事に頓着せず無惨は話を続ける。

 

「かつて私の部下は言った。“人間が滅べば共に滅ぶ存在が、本当に永遠なのですか?”とな」

 

 だからこそ無惨は、『人間と同じ物を食べられるようになる薬』を飲んだのだ。あの時代にそこまで想像が至った珠世は、慧眼と言う他ない。

 

「人の想いなど人が滅べば共に滅ぶ、儚いものでしかない。極論だが、全ての人間を殺し尽くせばお前の想いとやらも消えてなくなる。だがそこまでする必要はない。お前と同じ考えを持つとしたら、鬼狩りとお前の一族くらいしかいないのだからな」

「ま、さか…………」

「私の部下は有能だ。お前が隠そうとしていた()の場所を、見つけて来る程度には」

 

 先程投げられた三つの物体を、産屋敷は手探りで探し出す。盲目ではあるが、手で触れるだけで“何か”を……いや、“誰か”を判別するのは、彼にとっては造作もない。だが、能力があるという事は、必ずしもその者に幸福をもたらす訳ではないのだ。

 

「かなた……くいな……! ……輝利哉……!!」

 

 よく知る“顔”をその三つの物体に見つけてしまう産屋敷。偽物であってくれと願うが、手に伝わる感触や血の匂いが、まごう事なき本物だと、自らのよく知る息子と娘だと伝えて来る。

 産屋敷はその短い人生の中で初めて、頭の中が真っ白になった。

 

 そう、無惨が鳴女に命じた追加調査二つのうちの一つは、産屋敷の血族を全て見つけ出す事だったのだ。そして鳴女はそれによく応え、当代産屋敷とは別の場所にいた息子と娘を、見事見つけてみせた。となれば後は簡単だ。戦力的に最も信頼する部下を送り込み、いるであろう護衛ごと首を刈り取ってしまえばいい。

 

 無惨がわざわざ産屋敷と喋っていたのは、こちらに変事があればあちらに逃げられてしまうかもしれないと思ったための、時間稼ぎである。でなければ無駄な時間を過ごすなどという事はしない。元からの気質もあるが、研究者たる無惨は時間の浪費が嫌いなのだ。

 

「お前も鬼狩りもこれから殺す。一人残らず(みなごろし)にする」

「鬼舞辻……!!」

「これでお前の想いとやらも消える。人の想いなど永遠には程遠いと、お前の言葉は妄言だったと立証される。産屋敷も鬼狩りも、今宵で終わりだ」

「鬼舞辻、無ざぁぁぁあああああんんん!!」

「うるさい」

 

 無惨が振るった右腕が鞭のように伸び、産屋敷の首を刎ね飛ばす。息子と娘を殺され、般若のような形相となった父親の首が、くるくると回転しながら宙を舞った。

 

 だがその首が、地面に落ちるその前に。閃光と轟音が、全てを吹き飛ばした。

 

「なっ…………!」

 

 火薬だ。それも尋常な量ではない。かなりの大きさがある産屋敷邸を、跡形もなく消し飛ばすほどの量である。当然無惨と言えども、無傷では済まない。

 

 身体のあちこちを吹き飛ばされ、焼け焦がされる。ここまで肉体が損傷したのは縁壱以来だ。だがあの時とは違う。損傷こそ大きいが、日輪刀による傷ではない以上どうという事はない。苛立ちを吐き出すように大きく吼えた。

 

「産ッ屋敷ィ!!」

 

(爆薬!? 自分が死ねば爆発するようにしていた? いや、妻と子供はまだ生きていた。つまり奴は、最初からこうするつもりだったのだ。最初から妻と子供ごと自爆するつもりだったのだ! 屋敷に人の気配がなかったのはこのせいか! 何か仕掛けてくるとは思っていたが、ここまでとは! 狂人めが!!)

 

「無惨様……! ご無事ですか……!?」

「大事ない! ……いや、次にまた何かあるはずだ! 警戒しろ!」

「御意……!」

 

 日輪刀と同じ鉄で作られた撒菱のようなものが爆薬に混ぜられており、それによって身体の再生が遅らされている。単に無惨に一矢報いたいだけなら無用な代物。つまり、これで終わりではないという事である。

 それを証明するかのように、無惨の足に矢が突き立った。

 

「なんだと!?」

 

 人の気配も放たれる音も聞こえず、突き刺さるまで気づかなかった。鬼の知覚を潜り抜けたその一矢はまさに絶技と言うしかないものであったが、これではかすり傷にもならない。ゆえに無惨は矢は一旦放置し、発射元を割り出そうとしたが、その時矢と同じ方向から男が一人突貫してきた。

 

「おおおぉぉぉぉおお!!!!」

 

 男は弓を投げ捨て刀を大上段に構え、無惨に向かって斬りかかる。無惨がそちらに向くより早く、未だ身体の再生しきらぬ黒死牟が刀を抜き放ち割って入った。

 

「このお方に、これ以上手は出させぬ……!」

「どけぇ! お館様の最期の頼みだ、叶えねばならぬ!!」

 

 涙ながらに叫ぶ柱らしき男と、動画の逆再生のように肉体が復元してゆく黒死牟。二人は鍔迫り合いを演じるが、それはほんの僅かな時間で終わりを告げた。

 

 ――――月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦

 

 黒死牟が刀を振ることなく三日月の斬撃を繰り出す。男は反射的に大きく飛びのいたが、その頬から血が一筋落ちた。

 

「お館様!!」

「お館様ァ!!」

 

 複数の男女が息を切らせてやって来る。全力で走って来たらしき彼らを認めると、男は大きな声で叫んだ。

 

「この男が鬼舞辻無惨だ! どこまで効くかは分からんが毒を打ち込んだ! 夜明けまでここに拘束し日光で斃す!!」

 

 毒は鬼に効くか分からないため、ぶっつけ本番にならざるを得なかった。だが日光弱点は古い記録から得た知識であり、男は勝算は十分にあると踏んでいた。

 

 彼の声に柱と思しき人間たちは目の色を変え、刀を抜き放ちそれぞれの技を放たんとする。刀が届かんとするその時、無惨は口角を吊り上げ牙を剥き出しにし、地獄のような表情を作った。

 

「少々予想外はあったが予定通りだ!! 鳴女!!」

 

 べべんと琵琶の音がどこからか響き、ここにいる者のみならず、()()の鬼殺隊士の足元に障子が開く。鬼狩りは一人たりとも生かして返さぬという、無惨の意志の表れだった。

 

「これが策の全てか!? 小賢しく目障りな鬼狩りども! 今日がお前たちの命日だ!!」

「貴様は必ず私が倒す、お館様の仇必ず倒す!!」

「やれるものならやってみろ!!」

 

 鬼と人間。互いに互いを滅ぼし尽くさんとする者たちは、光差さぬ無限城の中へと落ちて行った。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 はいどーもこんにちは、お館様の勘に戦慄してる豪運走者です。原作ではある程度無惨の来るタイミングが計れましたが、ここではそんなものはないはず。なのに準備万端待ち構えてるとか、産屋敷は超能力でも使えるんですかね……?

 

 短命の呪いについてもよく分かんないんですよね。一応ゲーム内では無惨様を倒すと産屋敷の寿命が人並みに延びる仕様になってますが、“呪いがある”と明言されてはいません。

 

 原作だと輝利哉は長命でしたが、他の一族がどうなったかは出てません。なので偶然彼だけ長命だった可能性はゼロではないです。

 「無惨を殺したから呪いが解けたんだ」とも言えるんですが、それは状況証拠から出された結果論の域を出ないんですよね。無惨様が生きてる状態では、呪いが本当に存在しているという確たる証拠も、無惨様と呪いに直接的な因果関係がある確たる証拠も全くないです。何百年か前の神主が言ってただけです。

 

 つまり、「無惨を殺してみないと、呪いの有無もそれが解けるかも分からない」って事です。そりゃ怒るわ。確かに無惨様は殺されるに足る悪人で悪役ですが、「人類の害になるから殺す」と「呪いが解けるかもしれないから殺す」では大分差があります。

 つっても産屋敷だって子々孫々の寿命がかかってる以上、藁だろうが蜘蛛の糸だろうが縋らなきゃならんでしょうし、謎の勘で確信してたのかもしれません。もうこうなると、どっちが正しいかというよりも、どっちが勝つかという話ですね。少なくともこのルートだと、そういう性質が強くなってます。

 

 

 まあその辺の話は置いといて、スキップ不可のムービーが終わったので早送りです。本来はここでプレイヤーが操作して戦闘に入るんですが、敵との戦力差が大きい場合はオート戦闘でも確殺出来るため、早送りして大幅なタイム短縮が見込めます。だから今まで戦力を増やしてたんですね。

 

 ただこの「敵との戦力差」ってのが曲者でして……高難易度だと、相当な差がないと確定では勝てません。体感ですが、ゲーム始めたばっかの初心者が操作しても勝てる、くらいの差がないと負ける事があります。まあ今ルートなら大丈夫でしょう多分。

 

 

 にしても無惨様、大分賢くなってしかも気も長くなってましたね。多少なりとも頭無惨が改善された無惨様とか、手の付けられないラスボスそのものですよ。言ってる事もやってる事も悪役ですが、悪役として一枚剥けた感。この調子で勝ってほしいところです。

 

 原作でもそうでしたがここでもスリーピース*1着てましたね。気に入ってるんでしょうか? この時代のスーツはフルオーダーしかないはずなんで、最低でも完成まで三ヶ月はかかる上に値段も安くないです。平安生まれがよく買おうと思ったもんです。意外と流行に敏感だったりするんですかねえ。

 

 

>鳴女の血鬼術によって空間が歪む、鬼の居城たる無限城。

>そこに落とされた鬼殺隊士たちを出迎えたのは、デッサンの狂った金魚たちであった。

>「ギョギョギョギョ!」

>「うっ、うわあああ!!」

>「な、なんだこれ!? こいつらが鬼って奴なのか!?」

>金魚は人間の手足が生えていたり、鎌のような刃を持っていたりと様々だったが、大きなものでは3mを超えていた。

>そんなものが次々に襲いかかって来るのだ。パニックに陥った隊士たちは、実力を発揮する事も出来ず次々に倒れて行った。

 

 玉壺が雑魚散らしに大活躍です。さすがおぞましいセコム。少数精鋭は突破には向いてても防戦や殲滅戦には向いてないもんですが、数を出せるこの血鬼術はそれを補ってくれます。本当に有能ですね、見た目によらず。

 

>さらに鬼殺隊を追い詰める出来事があった。

>金魚に襲われる者の中に、ひょっとこの面を被った者が交じっていたのである。

>「な、なんであいつらがここに!?」

>「言ってる場合か! 助けねえと!」

 

>ひょっとこの面。それは、日輪刀を打つ鍛冶師の証である。

>正確には、日輪刀を打つ鍛冶師が住む隠れ里の住人は、全員この面をつけている。

>ゆえに面を被っているから鍛冶師だとは限らないのだが、どちらにせよ剣士ではないために戦闘能力は持たない。

>襲われているところを見たのならば、助けねばならぬ道理であった。

 

>無惨が鳴女に命じた追加の捜索、その二つのうちの残り一つ。

>それこそがこれ、『日輪刀を作る者たちの居場所の捜索』。

>当初は直接居場所たる隠れ里を襲撃する予定だったのだが、鬼殺隊壊滅と被りそうだったため、どうせならという事で無惨が同時に行うように命じたのだ。

>結果としてひょっとこ面の彼らは、鬼殺隊に少し遅れて無限城に落とされる事になったのである。

>大半は落下死したが、運よく生き残った者たちは訳も分からず逃げ惑う羽目になっていた。

 

>「くっ、数が多過ぎる……!」

>「ひっ、ひいいっ!」

>「なっ、後ろから!」

>「駄目だ、支え切れねえ!」

>玉壺の金魚はさして強くはない。少なくとも柱なら、赤子の手をひねるように倒せる相手である。

>それでも数が多く毒を持つものまで混じっている事と、鳴女が無限城を操作し不利な地形を強いている事により、一般隊士では荷の重い敵となっていた。

>しかもそこに『守らねばならない対象(足手まとい)』まで追加されたのだ。

>彼らの命は、まさに風前の灯火であった。

 

 鬼特効武器を作る連中とか生かしておけないからね、仕方ないね。鍛冶師連中をまとめて処理しようとしたのは無惨様のいつもの短気でしょうが、何だか上手い方向に転がってます。そら戦闘能力ゼロが戦場に紛れ込んだら、邪魔にしかならないですよね。

 

 にしても、ひょっとこ面が金魚に襲われるのはもう運命なんですかね……? 別に狙った訳でも何でもないんですが、変なところで原作再現になりました。後は玉壺が霞柱に首を落とされないようにするだけです。霞柱いるか分かんないですけど。

 

 

 柱の話が出たので、そっちについても説明しておきましょう。このゲームでは、柱の顔ぶれが原作と変わる事があります。特に鬼が少ない、もしくはいないにもかかわらず鬼殺隊が存在しているルートだと大きく変わり、ゲームオリジナルのキャラが入ります。原作の最後のように、柱の定員九名に満ちていない場合もあります。

 

 原作柱は鬼に襲われたから鬼殺隊に入ったってのが多いので、鬼に襲われないなら鬼殺隊には入りません。花柱と蟲柱の胡蝶姉妹はほぼおらず、風柱の不死川(しなずがわ)実弥(さねみ)、水柱の冨岡(とみおか)義勇(ぎゆう)、蛇柱の伊黒(いぐろ)小芭内(おばない)、岩柱の悲鳴嶼(ひめじま)行冥(ぎょうめい)もいない事が多いです。皆元は一般人ですからね。

 

 特に悲鳴嶼行冥は、ここだと黒死牟に「鬼殺隊には入るな」って忠告されてるはずなのでいません。さっきも原作岩柱のポジにいたのは別人でしたしね。他のは暗くて顔が表示されてなかったんで分かりませんが。

 

 霞柱の時透(ときとう)無一郎(むいちろう)、音柱の宇髄(うずい)天元(てんげん)、恋柱の甘露寺(かんろじ)蜜璃(みつり)はいるかどうか微妙なとこです。

 

 霞柱はあまねのスカウトが成功すればいます。猛反対する兄を何とか出来ればですが。

 

 音柱は原作沿いルートでもいたりいなかったりします。そもそも鬼に襲われた訳でもないので、鬼殺隊に入る事に拘る理由はないですからね。

 

 恋柱は時代的に「女性が戦う」って考えが薄いので、家族に反対されます。鬼殺隊は女性でも入れますが、ここだと「世の為人の為」って感じの組織ではなさそうなので、おそらく家族の説得はムリです。なのでいないでしょう。

 

 逆にほぼ確実にいるのは、炎柱の煉獄(れんごく)杏寿郎(きょうじゅろう)です。煉獄家は実質的に産屋敷家の傘下……というか家単位での主従のようなので、剣才のある彼はまず間違いなく隊士になってます。なので多分どっかにいます。

 

 

>「弱い」

>隊士の頭が熟れすぎたザクロのように爆ぜる。

>「弱い」

>衝撃波で隊士が巻藁のように吹き飛び壁に叩きつけられ、壊れた人形が如く動かなくなる。

>猗窩座は無惨からの命を忠実に遂行していたが、敵のあまりの弱さに苛立ちを募らせていた。

>「弱い、弱い弱い弱い! 剣を手にしておきながら、鬼狩りを名乗っておきながら、何故ここまで弱いのだ! 虫唾が走る!」

>吼えながらも手は止まらない。拳を突き出し目の前の隊士を殺そうとするが、それを急遽中断すると、裏拳を背後へと叩き込む。その拳は、人体から出たとは思えぬ金属音を立てて防がれた。

>「チッ、やっぱ効かねえか」

>「強いな!」

>猗窩座は追撃をかけようとするが、それは男が持つ刀が突如爆発した事で防がれる。

>一瞬驚いたその隙に、男は後ろに飛び退き距離を取っていた。

>「その練り上げられた気配、柱と見た! 名乗れ! 名を聞いておきたい!」

>先程までの不機嫌もどこへやら、猗窩座は喜色を浮かべて名を尋ねる。

>左目の周りに派手な化粧をした筋骨隆々な男は、軽口でそれに返した。

>「人に名を聞く時にはまず自分からって習わなかったか?」

>「なるほどそれもそうだ。俺は猗窩座、上弦の参だ」

>意外と素直に名乗った猗窩座に、男は少しばかり意外そうな顔を見せるが、すぐに気を取り直した。

>「俺は派手の神、宇随天元。音柱だ」

>鎖で繋がれた、二振りの巨大な包丁のような刀を構えた男は、実に(かぶ)いた台詞で自らを示した。

 

 おっと、ここでも音柱は入隊してたみたいですね。猗窩座VS音柱とは、原作ではなかった組み合わせです。こういう対戦カードが組まれる事があるのもこのゲームの良いとこです。

 これは面白くなって来ましたよ! ゆっくり見たいところです、RTAでさえなければ!

 

*1
ベスト付きのスーツ。三つ揃え。ジャケット、ベスト、スラックス(長ズボン)の三種類から成る事から。


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