【完結】無惨様が永遠を目指すRTA   作:佐藤東沙

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6話 「戦力増強」 江戸(西暦1600~1800年頃)

 はいどーも皆さんこんにちは。早速ですが、この間私をガバの呼吸のガバ柱とか言った奴は前に出なさい。先生怒らないから。本当に怒らないから。私は屑運かもしれませんが、断じてガバじゃないから。

 

 …………誰も出てこないので、そろそろ始めて行こうと思います。無惨様と黒死牟がタッグを組んで、日の呼吸を絶やし尽くそうとしてるとこからですね。

 これ鬼殺隊からしたらクソゲーですね。無惨様と黒死牟、どっちか一人でもどうしようもないのに、それが二人一緒に襲って来ます。『一人よりも二人がいい』ってのは確か聖書の言葉ですが、何で鬼が実践してるんですかね……。

 

 ああそうだ、前に言いそびれましたが、薬より鬼殺隊壊滅を優先したのは、無惨様にストレスゲージを溜めさせないためです。縁壱トラウマをある程度解消してゲージを溜めないようにしとかないと、今度こそゲームオーバーになりかねないんで。

 

>「……弱いな」

>日の呼吸の使い手の鬼殺隊士を殺した無惨が、死体を見下ろしぽつりとこぼした。

>「同じ日の呼吸でも……縁壱に及ぶ者はおりませなんだ……。この時代でも……それは変わらぬようです……」

>「まあ……だろうな。あのような者が、そうそう現れるはずもない」

>それはつまり、強いのは日の呼吸ではなく縁壱だという事だが、それに気付いたからと言って手を緩める理由はどこにもない。

>むしろ、あのような者がもう二度と出てこないよう、日の呼吸は滅ぼされねばならぬ、と決意を新たにするほどであった。

 

 カルタゴかな? ここだと炭治郎の祖先に日の呼吸を教えてるか分かんないんで、本当に滅ぶかもしれないんですよね。いや縁壱の実子が残ってるか……。まあ滅んでも滅ばなくても大勢に影響はありません。

 

>「そういえば黒死牟」

>「はい……」

>「この間徳川とやらが幕府を開き、戦国の世が終わったと言っていたな」

>「その通りに……ございまする……」

>「ならば戦乱が減る以上、傭兵もやっているという鬼狩りどもの戦力は、何もしなくても勝手に減っていくのではないか?」

 

 無惨様が賢い……だと……!? というのは冗談にしても、そこに気付くのは鋭いですね。確実に知能(INT)上がってますよこれは。研究者ライフと珠世のおかげですね。

 

>「おそらく……そうはならぬ……かと……」

>「何故だ?」

>「未だ世に荒くれは多く……何かにつけ武を持ち出す風潮は……薄れてはおりませぬ……。鬼殺隊の戦力が……減るにしても……、……それはまだ先の事かと……」

>黒死牟はこの数十年、動けない無惨の代わりに情報収集に出ていた。

>故に世情については、肌で感じて知っていた。

 

 分析能力高めな兄上。こっちは素で頭いいタイプですね……。

 

 兄上の言う通りで、武力で全てを決定するという空気、いわゆる「尚武の気風」が抜けるには、五代将軍綱吉の生類憐みの令を待たなければなりません。やりすぎじゃねってレベルで倫理観を矯正して、ようやく完全な太平の世になる訳です。

 

 つまりこれから八十年、ひょっとしたら百年くらいは、鬼殺隊もそれなりに戦力を保ち続ける可能性があるという事ですね。その先は分かりませんが、平和な世で戦力を維持できるとしたら……ヤ〇ザ稼業?

 

>「そうか……ならばまだまだ殺らねばな。行くぞ」

>「はっ……お供いたしまする……」

>無惨と黒死牟は新たな獲物を探すべく、夜闇の中へと消えて行った……。

 

 はい早送りー。まあ「鬼殺隊に入ると謎の襲撃者に殺される」という噂が立って、生類憐みの令を待たずに衰退する可能性はあります。でも産屋敷の執念もカリスマも半端じゃないので、頭を潰さない限り鬼殺隊が消える事はありません。規模は原作より小さいでしょうけど。

 

 さて、ではそろそろ鬼ガチャに移っていきましょう。狙い目は言わずもがな、もういる黒死牟を除いた上弦の月の面々です。

 中でも有用性から人権とまで言われる必須級が、琵琶女こと鳴女です。ただ、彼女はまだ生まれてすらいないので、他から探します。もちろん上弦以外にも有能なのがいれば鬼にします。

 

>「中々有能な者というのは見つからぬものだな……」

>先日鬼にした者を人間に戻しながら、無惨はぼそりと独り言ちた。

 

 と言ってもそうそう見つかんないんですけどね。近くに珠世(サポートSSR)と黒死牟(戦闘SSR)がいるせいで、無意識にハードルがガン上がりしてるのが原因です。

 

>「無惨様……。少しばかり……提案がございます……」

>「なんだ、言ってみろ黒死牟」

>「はい……。初めは……ごく僅かな例外を除き……どのような者も弱きもの……。人に教えられ……鍛え上げて強くなりまする……。故に……有能な者をお望みなら……、育ててみるのは如何でしょうか……」

>「ほう……」

>無惨は黒死牟を見る。

>全く人を喰っていないにもかかわらず、血鬼術を発現させ、さらにそれを呼吸法と融合させてより強くなった(育った)男を見る。

>「……一理あるな」

>ゆえにこそ無惨は、黒死牟の言葉に理を見出した。

>とは言え自分が育てる気はさらさら無かったが。

 

>理由は単純、面倒だからだ。

>面倒ごとなど願い下げ。

>自分の時間は自分の為だけに使いたい。

>後から自分の為になるとしても、それでも極力他人の為などに時間を割きたくない。

>傲慢で身勝手で、自儘で自己中心的。

(よわい)六百をゆうに超えても、縁壱に刻まれ斬られても、無惨の本質は全くもって変わってはいなかった。

 

>「ならば黒死牟、お前が育ててみるが良い。そういう経験もあるのだろう?」

>「は……承知いたしました……」

>なので無惨は、有能な部下に丸投げした。

 

 これは割と珍しいパターンですね。黒死牟が育てられるのは剣士なので、強い剣士が味方として出て来るかもしれません。これは後々のフラグにもなりますが、すぐにどうこうという事はないです。なので今は気にせず、早送りしつつ鬼ガチャを回しましょう。

 

 ……駄目…………没………………却下……………………NG。

 ……回すのは良いんですが、ちょっと基準が厳しすぎますねこれは……。

 

 鬼にして大体一年以内に、何らかの形で強くなる兆しを見せなければリセ。

 『人間と同じ物を食べられる薬』は使ってますが、それでも食うに困って人間を襲うと、将来的に無惨様に面倒ごとを持ち込むと判断されてリセ。

 強くなっても、将来的に黒死牟に遠く及ばないと判断されたらリセ。

 そもそも鬼にする時血が多過ぎて人生がリセットされる事も(ただし再起動はしない)。

 

 …………いやほんと厳しすぎません? いくら有能な鬼以外は不要と言っても、限度ってもんが……。下弦相当くらいならいたと思うんですが、それでも駄目とか厳選厨にも程がありますよ。6Vにあらねばポケモンにあらず、みたいな思考はやめて頂きたい。

 

 あ、でも無限城は大体できてますね。ログによると――――怪我を負って働けなくなった大工に、治療の対価として作ってもらったようです。鬼にして怪我を治し、そのまま(主に元鬼殺隊士の鬼を労働力として)建築に当たってもらい、完成したら大工の鬼は人間に戻して鬼の時の記憶を消して放り出し、元鬼殺隊の鬼は処分する、って感じですね。

 まあ交渉とかのめんどくさいところは大体珠世がやったようですが。というかその大工を見つけて来たのも珠世のようですが。ほんと有能だな珠世……そら“SSR以外は不要”みたいな感じにもなるわな無惨様……。

 

 しかしそろそろ戦力を増やしてもらわないと、最終決戦で困る事になります。鬼殺隊と産屋敷……というか正確には「無惨を殺そうとする意志を持ち、かつ行動に移す者」を一人残さず消さないとトロフィーは取れないんで。

 

 極論、鬼殺隊に勝つだけなら無惨様と黒死牟のみでも可能ではあります。しかし一人も逃がさず殲滅するには、戦力を増やすか、何らかの形で「敵を逃がさない」方法が必要になります。だから索敵の他に、無限城に落として逃亡阻止も出来る鳴女が重宝される訳です。でも鳴女が見つかるかは分かんないんで、いい加減上弦の一人も増やさないと……。

 

 

>雪化粧の山と太平洋に挟まれた、出歩く者も少ない冬の漁村。

>冷たい潮風が吹き付けるその場所に、鬼舞辻無惨は足を運んでいた。

 

 ん? 漁村? ってことは……。

 

>寒々とした空の下、一人の若い男が壺を覗き込んで不気味に笑っていた。

>壺の中には魚の骨や鱗がぎっしりと詰まり、悪臭を放っていたが、男にとってそれはむしろ好ましい事であるようだった。

 

 壺に魚……やっぱり玉壺かあ……。いや能力的にも性格的にも当たりの部類ではあります。血鬼術が強力で数を出せるので雑魚散らしには最適ですし、壺を売って金策もしてくれます。結構頭が回って探知や探索が得意なので、鳴女抜きで産屋敷の居場所を探せる可能性もあります。

 

 ただ、ほら、ビジュアルがね……。ちょっと強烈過ぎてね……。あとあの「芸術」も、さすがについてけないというか……。このゲーム、映像がめっちゃリアルなんで……。

 

>「ヒョッヒョッ。我が芸術を追い求める事が出来るなら、私は喜んで鬼になりましょうぞ!」

>「そうか。精々私の役に立て」

>言うと同時に無惨は、自らの血で濡れた手刀を男の胸に突き立てた。

 

 ああ、鬼にしちゃった……。強力な鬼になるのは間違いないんですけど、複雑です。

 

 ちなみに玉壺は黒死牟と比べてエピソードが少ないですが、単に語るべき内容が少ないってだけです。漁村で生まれ育った変人で、その変人っぷりに無惨がたまたま目をつけて鬼にしてみたら予想以上に強くなったという、三行どころか一文で済む内容しかないので。

 原作だと過去はほとんど分かりませんが、少なくともこのゲームではそうなってます。

 

 ま、私の心情以外に問題はないので次行きましょう次。百年以上かけて上弦一人だけとか、ほんと効率悪いんでどんどんガチャらないと。という事で早送りー。

 

 

>「どうだ珠世、新入りどもは使えるか?」

>「はい、以前よりは楽になりました」

>無限城にて。新たに入り、珠世の下についた鬼たち数名について、無惨がその様子を尋ねていた。

>彼らは無惨の許可と本人の同意を得て珠世が鬼にした者たちであり、珠世の手伝いになる事を望まれていた。

>最近無惨は外に出る事が多いので、教育は珠世に任せていたのだ。

 

>「そうか。日光克服薬の進捗は」

>「正直に申し上げるなら、(かんば)しいとは言いがたいです。詳細はこちらに」

>珠世が差し出した紙束を、無惨は素早く読み進めていく。

>その内容と行間を読んだ無惨はため息を吐いた。

>「新入りどもは手足にはなるが、手足以上にはならぬか」

>要するに指示された事は何とかこなせるが、それ以上の事はまだ出来ないという事である。

>ここに来て日が浅いという理由は多分にあるが、無惨にとっては満足の行く話ではなかったようだ。

>「藤の花の毒を扱えるのは、現状私と無惨様しかいないというのもありますね」

>「血の濃さからするなら、黒死牟が扱えてもおかしくはないのだがな」

>「人にも鬼にも、向き不向きがありますから……」

>「剣はあれほど器用だというのに、不器用な奴だ」

>無惨は再度ため息を吐くが、怒りも失望もしない。

>黒死牟が鬼殺隊に負けでもすれば怒るだろうが、試し程度にやらせてみた薬学で成果を出せずとも怒りはしない。

>怒りは期待の裏返し。黒死牟は薬学に期待して鬼にした訳ではないのだから。

 

>「それに、無惨様にこのような事を申し上げるのは釈迦に説法でしょうが」

>鬼に向かってこの表現は正しいのだろうかとふと思いつつも、珠世は言葉を続ける。

>「薬の開発には試行回数と、“勘”と呼ぶべきものが必要になります。前者はこれから増やせますが、後者ばかりはどうにも……」

>試行回数は人手があれば増やせる。

>だが“勘”とは即ち発想であり、人が増えてもどうにもならない時はどうにもならない。

>だからこそ、未来に生まれる発明王はそれを『1%の閃き』と呼び、『最初の閃きが良くなければいくら努力しても無駄』と言ったのだ。

>「勘か……確かにな。やはり薬学でも、有能な者は必要か」

>これまでは鬼殺隊壊滅のため強い者を優先して探してきたが、これからは珠世のような鬼にも注力すべきかと無惨は心を新たにした。

 

 現代だと、新薬の開発に成功する確率は2万5千分の1だそうです。それが本当かは分かりませんが、人材も予算も時間も山ほど必要なのは確かです。それを少人数でやってるんですから、そりゃ開発速度も遅いでしょう。むしろ何百年もやってるとは言え、きちんと成果を出してる辺り十分有能です。

 

 

 ……っと、早送りが止まりました。新たなガチャ結果が出て来たようです。今は――1800年ぐらいですね。あと半世紀で明治って時期です。

 

>着物が肌にべたりと貼り付く、酷く蒸し暑い夜だった。

>土が剥き出しの道の上に、ぼたぼたと落ちた血が続き、まるで轍の如くなっていた。

>血の先、おぼつかない足取りで歩んでいたのは、幼さを残す青年だった。

>眼は血走り息は荒く、白かった道着は血で赤く染まっていた。

>驚くべきはそれが全て返り血である事だった。

>土砂降りの大雨にでも遭ったかのようなその返り血は、未だに途切れる気配はなく、青年の固く握りしめられた拳から滴っていた。

 

>「鬼を作った覚えのない場所で、鬼が出たとの大騒ぎ」

>そんな青年の前に、男が姿を現した。

>「態々出向いて見てみれば、五十を超える惨殺死体。それをやったのがただの人間とはな」

>縦に裂けた薄紅の瞳に、隠そうともしない好奇心を宿した男。鬼舞辻無惨が姿を現した。

>「何とも、興味深い。強い鬼になりそうだ」

>「どけ…………。……殺す……ぞ」

>青年が言い終わる前に、無惨はその眼前に立っていた。まるで瞬間移動でもしたかのような、恐るべき速さだった。

>青年は反射的に格闘の構えを取り、拳を無惨に叩き込まんとする。

>それは人間離れして速かったが、人間ではない無惨の方がなお速い。

>無惨の手が首にかけられ、青年は軽々と吊り上げられた。

>「辛そうだな。どうだ鬼にならないか。鬼になれば何もかも忘れられる。お前を苦しめる全てを忘れ、新たな生を始められる」

>薄い唇を吊り上げ、どこか面白そうに勧誘する無惨を見る事もなく、青年は酸欠の為にぼやけた頭でうわ言のように呟いた。

>「……どう……で…………もい……い…………。…………全て……が…………」

>無惨は三日月のように口をゆがめると、青年の顔に血塗れの手刀をねじ込んだ。

>「薬学に長けた鬼は必要だが、やはり強い鬼も作らねばな。お前は私が与える血の量に耐えられるかな?」

 

 猗窩座ですね。父親が自殺して、婚約者とその父親が毒殺されるとか、本当に運の無い男です。不運に鬼が一切関係してないので、もうそういう星の下に生まれたとしか言えません。

 

 まあそれは置いといて、配下として見るならこれも当たりです。基本的に戦闘しか出来ませんが、その戦闘がとにかく強いので。向上心も強いので無惨様も気に入ります。「努力する姿」が意外と好きみたいですね無惨様。

 性格に少しは難はありますが、問題にはならないレベルです。というか性格に難のない鬼はほぼいないので、猗窩座程度ならどうという事はありません。女には甘いですし。

 

 

 にしても半天狗が出ませんね……時代的にはもういるはずなんですが。これは無惨様がスルーしたっぽいです。手当たり次第に鬼を作ってた原作ならともかく、ここだと鬼にする段階から選別してますからね。人間時代の半天狗はただの小物の犯罪者で戦闘能力もないので、強くなるとは思われなかったんでしょう。

 

 ちなみに半天狗もキャラとしては当たりです。本体が隠れて分裂体を出せば、炭治郎のような索敵能力持ちでない限り、負ける事はほぼありません。分裂体は範囲攻撃が出来て頸を斬られても平気なので、雑魚散らしも柱の足止めも可能という高性能です。強い。

 

 ただ、雑魚散らしならもう玉壺がいるので、半天狗がいなくても戦力的にはあまり問題にはなりません。というかそろそろ戦力的には十分なので、あとは鳴女さえいれば間に合います。出来れば妓夫太郎兄妹も欲しいですが、いなくても何とかはなります。童磨はいりません。

 

>蓮の花の屏風の前で、無惨は虹色の瞳の男に血を流し込んだ。

>「私の役に立つがいい」

 

 とか言ってる間に童磨が鬼になってました。なんでやねん。新興宗教の教祖として目立ってたから目をつけられたんですかね……?

 

 性能的には問題はないんですよ。氷の血鬼術はシンプルに強力で搦め手も豊富で、体術だって高レベル。文句のつけようのない強さです。さすがは上弦の弐としか言えません。

 ただね、この男はもう、人格がね……。

 

>数年後。童磨は無限城に呼ばれていた。

>発現した血鬼術が、薬作りに役立つと無惨が判断したためだ。

>また、一応程度だが、薬学への適性を見るという目的もある。

>薬学の適性検査は、普段は鬼にして比較的早い段階で行うのだが、教祖の童磨は何かと忙しく、まとまった時間が中々取れなかったのだ。

>教祖を辞めてしまえばそんな事もなかったのだろうが、その立場に利用価値があると考えた無惨が現状維持を命じたため、今にまでずれ込んだのである。

 

>「やあやあ初めまして、俺は童磨。よろしくね」

>「初めまして、珠世です。よろしくお願いします」

>にこにこと屈託なく笑う童磨と、折り目正しく一礼する珠世。

>二人の初対面は対照的な所作から始まった。

>「話は聞いてるよ、何百年も薬を作ってるんだって? すごいねえ」

>「いえ……」

>「でもそんなに時間をかけても、日光を克服する薬は作れてないんだよね? だから俺が呼ばれたんだよね?」

>軽薄な上に煽るような口調に珠世は少しばかりイラつきを感じたが、年長者としての矜持から表には出さなかった。

 

 言ってるそばからコイツはもう……! 童磨がいると他キャラのストレスゲージが上がるんですよ! しかも悪気がないから手に負えません。本人“は”有能だから首にする理由もなくて尚更手に負えません。タチの悪いサイコパスだなマジで!

 

>「……ええ、そうですよ」

>「そうかそうかあ、じゃあ無惨様のためにも頑張らないとねえ」

>「では、血鬼術を見せて頂けますか? 確か氷だとか」

>これ以上話していたくなかった珠世は、挨拶もそこそこに本題を切り出した。

>「うんそうそう、ホラこれ」

>童磨は珠世の心情はさっぱり分かってはいなかったが、それでも本題を振られれば見せる事に否やはない。その掌に氷の蓮が咲いた。

>「これが……」

>「これ以外にも色んな形に出来るぜ。まだ威力も規模もそこまでじゃないけどな」

 

>珠世は氷の血鬼術を見ながら、無惨の言葉を思い出していた。

>曰く、鬼の姿や血鬼術はその者の望みや思想を――畢竟(つまり)、心そのものを表すと。

>珠世自身や黒死牟、さらに最近増えた他の鬼を見る限り、その言葉はきっと正しい。

>ならば、この童磨という鬼の心とは?

>人間だった頃とほぼ変わらぬであろう姿に、凍て付く氷の血鬼術を発現させた――いや、“心を表すもの”として氷が発現した、この鬼の心とは?

>笑顔で友好的に接してくるにも関わらず、奇妙に言葉に熱が籠らず、どこか()()を感じざるを得ないこの鬼の心とは?

>ひょっとしたら、ひょっとしたならば、この男はひどく空虚で、ひどく哀れな存在なのでは――――

>「これで薬作りも上手く行くかな? 何百年も目的の薬が作れないなんて可哀そうだもんな。俺の血鬼術のおかげで完成するんなら、これほど喜ばしい事はないぜ」

>「…………」

>――――という考えは、怒りのために全てどこかに飛んで行った。

>珠世と童磨は、どうにも相性が悪いようであった。

 

>「ああでも俺には仕事があるからなあ。こっちには中々来られそうにないよ」

>じゃあ何で来たんです? という言葉が珠世の喉元まで出かかったが、それは何とか飲み込んだ。主命に従った男に言っていい言葉ではない。

>無論、理屈と感情は別物なので、納得した訳ではないが。

>「だからコイツを貸しておくぜ」

>童磨がどこからか両手に鉄扇を取り出し上下に重ね合わせると、その間に氷の人形が現出する。

>人形の大きさは10㎝くらい。全体的に作りは粗かったが、童磨本人を模しているようで、その両手には彼と同じ扇があった。

>「……これは?」

>「『結晶ノ御子』って言うんだ。効果は、ホラ」

>人形が自身の扇を広げると、その上に小さな氷の花が咲いた。

>サイズこそ小さかったが、先程童磨が見せた蓮と同じものだった。

>「見ての通り、この子も俺の血鬼術を使えるんだ。と言っても俺の半分以下にまで威力は落ちるし、今はまだ一種類しか使えないんだけど。将来的には俺と同じ強さと種類の術を使わせたいなあ」

>んなもんあるんなら最初から出せや、という言葉を再び飲み込み、珠世は無理矢理笑顔を作った。

>「そうですかありがとうございますではお仕事の方もお忙しいでしょうし今日はもう結構ですよ」

>「えっ、でもお前が薬作りに向いているかどうか一応確かめておけ、って無惨様が……」

>「大丈夫ですあなたにはきっと向いてませんさあお帰りはあちらです」

>「わあ、ほとんど何も見てないのにそんな事が分かるなんてすごいね!」

>童磨の背中を押して追い出そうとしている珠世の額に、びしりと青筋が浮いた。

>奇しくもその表情は、無惨によく似ていた。

 

 早口珠世再び。しかし、まさかここまで相性が悪いとは……いやナチュラルボーン煽りスト童磨と相性良い奴って思いつかないですけど。無惨様ですら「あまり好きじゃない」って言ってたってどっかで見た覚えがありますけど。

 

 それでも有能なのがどうしようもないです。夏でも氷を用意出来るって、時代的には凄い役に立ちますからね。

 でも今ルートでは配下の絶対数が少なく、薬学で協力させなければならない都合上、“共食いの呪い”がありません。そこに煽り野郎の童磨は劇薬です。童磨を殺したいがためだけに無惨の呪いを外す鬼が出ても驚きません。

 

 それでも使えるのは間違いないんで、なるべく他の面々と会わせないようにすれば何とかなるでしょう多分。普段は教祖やってて不在ですし。

 

 ともあれ、なんだかんだで今回は上手く上弦を配下に出来てますし、目的は達成出来てると言えると思います。これでガバと屑運という汚名も返上ですね。いや私はガバじゃないですが。

 

 

>「この者は如何でしょうか……。素質も才覚も……中々かと存じますが……」

>「なるほど、私に推薦するだけあって悪くはない。だが、お前に届くほどかと考えるとな……」

 

 おっと、場面は変わって無惨様と兄上が出てます。兄上が育てた剣士を無惨様に紹介してるところです。さっき言ってた『育てる』ってのを実践してる訳ですね。

 

 兄上は“透き通る世界”で肉体的な素質を直接視認出来るので、これはと思った者に剣を教える辻斬りならぬ辻師匠になってます。『身体能力が高くなる=戦いの才能がある』ではないし、一度に多数を教える事も難しいので、あんまりはかどってはいないようですが。

 

>「そうですか……。では……いつものように……?」

>「ああ。おい」

>「はっ、はい!」

>『師匠の主』という事でガチガチに緊張していた黒死牟の弟子が、直立不動で無惨に返事を返した。

>「お前は、私の役に立つ気はあるか」

>「し、師匠にはひとかたならぬ御恩があります! その御主君となれば、言うに及ばず!」

>この男は黒死牟に剣を習ったおかげで、とある藩の剣術指南役に抜擢されたのだ。

>指南役は家柄は無関係で本人の腕次第とはいえ、有名な流派を修めている訳でもない者が任命されるのはかなり珍しい。零細武家の五男坊としては大出世と言っていいだろう。

>故に男は黒死牟に並々ならぬ恩を感じ、その念が無惨にも向けられているのである。

>「ならば産屋敷の居場所と、青い彼岸花を探せ」

 

 あ、鬼にしないで人間のまま使う事にしたようです。鬼と違って情報漏れのリスクはありますが、有効な手段です。無惨様あんまり期待してないっぽいですが。

 

>「――これまで分かっているのはこんなところだな。何か分かったら黒死牟に知らせろ」

>「たまに様子を……見に来る……。これからも……精進することだ……」

>「はっ!!」

>「では――――どうした?」

>無惨は誰かに話しかけられたような素振りを見せたかと思うと、虚空を見つめる。

>鬼の始祖とその配下の鬼は、テレパシーのような事が出来るのだ。

>ただし通常は無惨からの一方通行で、無惨へ連絡する事が許されているのは黒死牟と珠世の二人だけ。

>黒死牟はここにいるので、相手は自動的に珠世という事になる。

>その珠世は軽々しく連絡するような性格ではなく、またそれを証明するように、切羽詰まったような声色だった。

>《無惨様、急いでお戻りください!》

>《落ち着け。何があった?》

>《無限城が鬼狩りに襲撃されました!!》

>《なんだと!?》

 

 ファッ!!!!???? 無限城があるのに襲撃!? 襲撃ナンデ!?

 




今日の主な獲得トロフィー

「感染拡大」
 累計で千人以上の人間を鬼にした者に贈られる。鬼にした対象の生死は問わない。

「無限の主」
 無限城を完成させた者に贈られる。
 

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