【完結】無惨様が永遠を目指すRTA   作:佐藤東沙

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8話 「弓張月」 明治(西暦1850~1900年頃)

「鳴女と申します」

 

 新たに完成した、二代目無限城にて。以前からいた鬼たち全員――忙しくて中々動けないはずの童磨も含め――と、琵琶を抱えた一つ目の鬼、鳴女が顔合わせを行っていた。

 

「鳴女の血鬼術は先程見せた通りだ。何故こうしてわざわざ紹介したか、分からぬ者はまさかいまいな?」

 

 鳴女の血鬼術を端的に表すなら、索敵と瞬間移動だ。自分で移動できる目玉の化け物のようなものを複数生み出し、それと視界を共有出来る。さらに虚空に襖を生じさせ、別の場所の襖と空間を繋げる事も出来る。これで外に出ていた者を呼んだのだ。

 

 分かりやすく例えるなら、自立移動式監視カメラとどこでもドアである。未だどちらも小規模にしか展開できないが、『鬼殺隊に見つからない』と『産屋敷の居場所を見つける』双方を一気に解決できる可能性を大いに秘めた、非常に有用な血鬼術だ。

 無惨がわざわざ顔合わせさせるのも無理からぬ事であった。

 

「――いないようなので本題に入る。どうにもお前たちは最近たるんでいるように思う」

 

 半分くらいは難癖なのだが、鬼気を発しながら話す無惨に意見出来る者はここにはいない。それに完全に言いがかりという訳でもない。先代無限城に鬼殺隊を通したのは明らかな失態であった。その責任は最終的に無惨に帰するものではあるが、無惨がそれを認める事はないし、失態である事に変わりはない。

 

「これは危機感が足りぬからではないかと私は考えた。故に“十二鬼月”を制定し、序列をはっきりさせる」

 

 耳慣れない単語に鬼たちの間に困惑が走るが、それを見越していたように無惨は説明を続けていく。

 

「戦闘を行う上弦の月と、薬の開発を行う下弦の月に分かれ、それぞれ()から()の六名ずつ。数字が小さいほうが序列は上だ。基本的に下弦より上弦が上だが、上弦は下弦を守れ」

 

 今までも得手不得手で専門は自然に分かれてはいたが、それをはっきりとした形にし、上弦を明確に下弦の護衛にもしようという事である。狙ったわけではないが、戦闘要員も薬開発班もちょうど六名ずつ揃った事もこの制度を考え付いた理由なのであろう。

 尤も一番の切っ掛けは、黒死牟の進言であったが。彼は戦国時代の武家出身なので、序列には厳しいのである。

 

「上弦は純粋に強さのみで決まり、下弦は私への貢献度で決まる。上弦が上に行きたい場合は、誰でも構わぬから上の番号の者に戦いを挑み勝て。勝てば数字が入れ替わる。下弦は成果を出し私の役に立て。では発表する」

 

 上弦の壱が黒死牟、弐が童磨、参が猗窩座、肆が玉壺、伍が妓夫太郎、陸が鳴女。

 下弦の壱が珠世、弐が空木(うつぎ)、参が(しきみ)、肆が鳥兜(とりかぶと)、伍が馬酔木(あしび)、陸が堕姫。

 

 下弦の鬼たちは血の気が多いという事もなく、そもそも元から珠世の下に横並びのようなものなので特に不満はないようであった。堕姫だけはもっと上に行って無惨の役に立ちたいと顔に出ているが、新入りで不足している物が多い事は分かっているので口には出さない。

 上を狙う理由と手段があるとするなら、上弦の方であった。

 

「下の者は上を目指せ。上の者は下に蹴落とされぬように努力しろ。何かある者は」

「よろしいでしょうか」

「何だ猗窩座」

「“上弦が上に行きたい場合は、上の番号の者に戦いを挑み勝て”との事でしたが、それは今すぐでも構いませんか」

「いいだろう。黒死牟と童磨、どちらに挑む?」

「童磨に」

「俺かい?」

 

 鋭い目つきで童磨を睨む猗窩座と、いつものようにへらへらと笑う童磨。どう見ても水と油の二人だったが、ここで悪意なく油に火を注ぐ*1のが童磨である。

 

「そうかそうか、後から来た俺が上にいちゃ面白くないもんな。いいぜ、戦おうか猗窩座殿。友達同士で戦うのもたまにはいい!」

「………………」

 

 今の猗窩座の顔に表題をつけるなら、“憎しみで鬼が殺せたら”である。その内心はここにいる全員が分かり過ぎるほど分かっており、分かっていないのは当の童磨だけ。つくづく、人の逆鱗を踏み抜く才能に溢れた男であった。

 

「……黒死牟、鳴女、流れ弾を処理して被害を減らせ。玉壺と妓夫太郎は下弦を守れ。猗窩座、童磨、前へ出ろ」

 

 怒った時の無惨に勝るとも劣らない形相になっている猗窩座と、にこにこと楽しそうな笑顔の童磨が前に出る。合図も待たず猗窩座が殴り掛かり戦いが始まったが、無惨がそれを咎める事はなかった。

 

 

〇 ● 〇 ● 〇

 

 

「死ね!!」

「さすが猗窩座殿だ、迫力あるねえ!」

 

 猗窩座が童磨の顔を殴り飛ばそう……いや、消し飛ばそうと突進し、童磨は笑顔を崩さず後ろに飛び退りながら迎撃の血鬼術を発動させる。

 

 ――――血鬼術 冬ざれ氷柱

 ――――破壊殺・乱式

 

 童磨が尖った氷柱を横向きにして何本も射出すると、猗窩座は拳から衝撃波を乱れ打ちしそれらを砕く。今度こそその頭に一撃を食らわさんと猗窩座が突っ込み、童磨が両手の鉄扇を振るい迎え撃った。

 

 ――――血鬼術 散り蓮華

 

 蓮の花弁を模った氷が扇の軌跡に沿うように出現し、猗窩座に襲い掛かる。猗窩座は舌打ちすると床を強く踏みしめ、進路を180度変えるようにバク転。そのまま少し離れたところに着地した。

 

「うーん、やっぱり格闘では猗窩座殿の方が強いかな? でも楽しいねえ、友達と遊ぶのは」

 

 童磨の軽口――本人だけはそう思っていないだろうが――を完全に無視し、猗窩座は己が血鬼術を展開する。

 

 ――――術式展開 破壊殺・羅針

 

 猗窩座の足元に戦いの羅針盤が顕現する。それは純粋に戦うためのものでありながら、まるで空を溶かし込んだ雪の結晶の如き色と形で、どこか優美さと儚さを感じさせるものだった。

 

 ――――破壊殺・空式

 

 猗窩座が再び拳を振るうと、衝撃波が虚空を引き裂き童磨へと向かう。童磨は横に跳んで攻撃を避けるが、猗窩座はそれを正確に捕捉する。

 

 戦いの羅針盤は闘気を感知する。どんな者にも、それこそ赤子にも闘気はある。羅針盤の探知から逃れる事は、何人たりとも出来はしない。闘気を消しでもしない限り。

 

 ――――血鬼術 寒烈の白姫

 

 だがそれは、どんな攻撃にも必ず対応できるという事ではない。氷蓮の花に咲いた女性の口から、広範囲を凍て付かせる冷気が吹き付けられる。猗窩座は衝撃波で吹き飛ばすが、あまりの範囲と威力によって、ほんの僅かながら手が凍ってしまっていた。

 

 羅針盤は相手からの攻撃を探知し、また、闘気の発生源たる相手の居場所も分かるため、正確無比な攻撃を繰り出す事も可能になる。だがあくまで補助用の能力であり、他に一切の性能を持たない。猗窩座本人が対応しきれない攻撃は、どうしようもないのである。

 

 それでも猗窩座の技量は高い。高いがために普段はそんな事は問題にならないのだが、今回の相手は上弦の弐(一つ上)。今はまだ無惨の見立てのみによる順位付けだとは言え、それが正しい事は証明されつつあった。

 

 ――――破壊殺 鬼芯八重芯

 

 このままではジリ貧だと判断した猗窩座は、大技に打って出る。本来崩しも牽制もなしの大技など当たるものではないが、広範囲の乱打と高速の突進という、技量と性能の合一がそれを可能にする。

 

「おおっ!?」

 

 体術において猗窩座に劣る童磨は避けきれず、身体を穴だらけにしながら吹き飛ばされる。だがそこで手を緩める猗窩座ではない。放たれた矢の如き脚技が童磨を追撃する。

 

 ――――破壊殺・脚式 飛遊星千輪

 

 下から突き上げる右足が、蛇行する衝撃波を伴い童磨に迫る。即座に身体を再生させた童磨は反撃せんとするが、大技を繰り出す時間はない。両の手の鉄扇を無尽に振るった。

 

 ――――血鬼術 枯園垂り

 

 扇による連撃が氷を伴い、猗窩座の技と衝突する。だが空中で不安定な童磨と、地に足をつけ安定していた猗窩座とでは、結果は分かり切っていた。

 

「うわあ、すごい威力だなあ」

 

 口調は軽いが、童磨の身体はもはやボロボロだ。飛遊星千輪は童磨を吹き飛ばすのではなく、その胴体に大穴を開け、他の箇所にも大きな傷を刻んでいた。勝敗はついたかのように思われたその時、猗窩座の足からがくりと力が抜けた。

 

「っ……!?」

 

 のみならず、口から血を吐き呼吸もままならない。肺に激痛が走る。

 

「吸っちゃったねえ」

 

 ――――血鬼術 粉凍り

 

 童磨の血を霧状に散布し、吸った者の肺を凍らせ破壊する、“呼吸殺し”の血鬼術。童磨は最初からこれを密かに撒き散らしていたが、今になってようやく吸わせる事に成功したのだ。猗窩座の羅針盤は反応してはいたが、童磨本人の闘気に紛れてしまい、気付けなかったのである。

 

 ――――血鬼術 冬ざれ氷柱

 

 ようやく見せた猗窩座の隙を逃さず、未だ宙にいる童磨が技を繰り出す。最初に見せた鋭い氷柱が、驟雨の如く天から降り注ぐ。猗窩座はとっさに避けようとするが、肺が損傷しているために普段通りの動きが出来ず、左足を床ごと刺し貫かれた。

 

 それでも鬼にとっては軽傷だ。即座に肺を再生させ、氷柱を破壊するべく裏拳を振るうが、上から追加される氷柱に手を取られ、放置せざるを得ない。僅かな時間だったが、童磨にとってはそれで十分だった。

 

「!」

 

 刺し貫かれた箇所から、びききと肉が凍ってゆく。冬ざれ氷柱がその真価を発揮し始めたのだ。猗窩座は脚を切り捨て逃げようとするが、さらに氷柱が降り注ぎ、その身体を貫き凍らせ固めてしまった。

 

「く、そ……!!!!」

「いやいや、やっぱり強いね猗窩座殿。でも残念、そうなっちゃったら戦えないよね?」

 

 猗窩座は氷柱に刺し貫かれ地に縫い留められ、身体が内側から凍りつき動けなくなっていた。青筋を浮かばせ食い殺さんばかりの視線を向けているが、いかな鬼とは言え物理的に動けないのではどうしようもない。

 着地した童磨の方は身体中に穴を開けて満身創痍だったが、あっという間に再生してしまった。結果として残るは動けぬ猗窩座と無傷の童磨。誰が見ても勝敗は一目瞭然だった。

 

 そも、飛び道具もあるとはいえ基本格闘のみの猗窩座と、猗窩座には及ばないが体術を使え、氷で相手を拘束できる童磨では相性が悪いのだ。日輪刀でも持ってこない限り、鬼は互いに互いを殺す手段がなく泥仕合に陥りやすいので、拘束手段があるという時点で童磨は強い。

 

 また、鬼はたくさん食べる事で基礎スペックが上昇し強くなるが、教団からの寄付が山ほどある童磨と、自分で熊や猪を狩るくらいしかない猗窩座では、食事量に差がつくのもやむを得ない事である。

 

「……そこまで。童磨の勝ちだ」

 

 無惨が勝敗を宣言すると、猗窩座の身体を貫いていた氷が消え、傷が即座に再生していく。猗窩座は未だ凄まじい顔で童磨を睨んでいたが、もう殴り掛かる事はなかった。

 

「(猗窩座さんが勝てばよかったのに……)」

「(馬鹿!)」

 

 下弦の空木がぼそっと呟き、隣にいた馬酔木が肘打ちを食らわせて黙らせる。鬼は耳が良いので近くにいた者達には聞こえていたが、誰も何も言わなかった。無惨はこの距離なら心を読めるが、やはり何も言わなかった。

 

「…………他に何かある者は」

 

 童磨がまた余計な事を言い出す前に、無惨が皆を見回し尋ねる。誰も何も言わない事を確認し宣言した。

 

「では()()。受け入れろ」

 

 何を、と尋ねる間もなく、鬼たちの瞳の細胞が蠢き始め、まるで刺青の如く文字を形作る。左目には『上弦』もしくは『下弦』。そして右目にはそれぞれ、壱から陸の指定された数字が。

 周りの者の瞳を見て皆が驚く中、無惨が下弦の一人に顔を向けた。

 

「樒、どうした? 不満か?」

「め、滅相も無い! 光栄です! ですがその……買い出しとかで人間に会う時、どうしようかと……」

「擬態しろ。今までと同じ感覚で出来るはずだ」

 

 無惨に言われ、樒はいつものように瞳の形を変えてゆく。きちんと変化している事を隣の鳥兜に確認してもらうと、彼は無惨に深々と頭を下げた。

 

「あ、ありがとうございます。お手数をおかけして、申し訳ございません」

「構わぬ。他の者は――何も無いな。鳴女」

「はい」

 

 べべんと琵琶の音が響き、黒死牟、童磨、猗窩座が元居た場所へと飛ばされる。他の者達も三々五々持ち場へと戻ってゆき、やがて無限城は常の姿を取り戻した。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 はいどうもこんにちは、過去最高に調子に乗っていたら「屑運イキリ太郎」とか「これはフラグ、次絶対ガバる」とか言われた走者です。ガバは決してないですが、イキるのは仕方ないと思ってほしいところです。それだけ鳴女の血鬼術は有用なんです。何しろ人権ですからね。

 

>トロフィー「充ちる弓張月」を獲得しました。

 

 おっと、これは十二鬼月を制定した時に取れるトロフィーです。弓張月ってのは半月のことで、要するに上弦の月と下弦の月のことです。「人員が充足した」という意味なので、「満ちる」ではなく「充ちる」を使っている……と公式のQ&Aに載ってました。

 まあ「満ちる」にも引っかけてるんでしょう、月なので。

 

 しかし原作と別キャラでも取れるのは知ってましたが、内実が全然違っても取れるんですね。原作だと下弦は無惨様自ら解体しちゃってたので、薬開発要員の方がなんぼかマシですが。

 

 あと当然ですが、ここの下弦は大半オリキャラですね。鳥兜(とりかぶと)で何となく分かりましたが、毒のある植物が名前の由来っぽいです。空木(うつぎ)は多分ドクウツギでしょう。堕姫は一見関係ないですが、本名は梅で、これは青い実に毒があるれっきとした有毒植物です。

 戦闘要員ではなく薬を開発する人員なので、それらしい名前と言えます。珠世だけは違いますが、一人だけ特別という意味なのかなと深読みも出来て面白いですね。

 

 

>「妓夫太郎さんはズルいです」

>「はぁ?」

>無限城の研究室。下弦の弐たる空木が、上弦の伍の妓夫太郎に対しむくれた顔を見せていた。

>「何の話だぁぁ?」

>「だって上弦になれるくらい戦いの才能があるのに、薬作りの才能まであるなんてズルいです。私にはどっちもないのに」

>妓夫太郎は彼女の本気を疑ったが、どう見ても嘘を吐いているようには見えなかった。

>「上弦ったってよぉ、一番下みてえなもんじゃねえかよぉぉ」

>下に鳴女がいるが、明らかに戦闘能力は低い。それは鳴女本人すら認めるところだろう。

>彼女はあくまで血鬼術の有用性による抜擢であり、しかも現段階ではまだ未熟。

>将来性に期待されて上弦の陸とされた事は、鬼たち皆が分かっていた。

>それより上だと言われたところで、到底喜べるものではない。

 

>「分かってませんね、上弦になれたってだけで凄いんです。無惨様がどれくらい鬼を作って人間に戻してってなされたのか知りませんけど、作った人間化薬の量からして、百や二百なんて数じゃないはずです。その中から選ばれたんですから、本当に凄い事なんですよ」

>「…………」

>むすーっとしながらすり鉢でごりごりと薬草をすり潰す空木に、妓夫太郎は何も言う事が出来なかった。

>「私だって戦おうとした事はあります。でも黒死牟さんには『稀に見る才能の無さだ……』って言われて、猗窩座さんには無言で顔を逸らされて、玉壺さんには『強力な血鬼術に目覚めれば、何とか……?』って言われたんですよ! 血鬼術なんて全然使えないのに! 五十年以上生きてて、使える気配すらないのに!」

>妓夫太郎にはすり鉢の中身どころかすりこぎごと削れてすり潰されているように見えたが、こういう時の女には何も言うべきではないと知っていた。

>数少ない、吉原出身の利点だった。

>「それでもちょっとずつはやってたんですけど、この間で思い知りました。私に戦いは向いてないって。あれ柱だったらしいんですが、それでも人間相手にあんなザマじゃ、戦い以前のお話です」

>空木はすり潰された薬草を粗い布に包んで汁を絞り出す。その絞り方がまるで鶏を絞め殺しているようで、妓夫太郎の口がさらに重くなった。

>「だから私が珠世様と無惨様のお力になるためには、()()しかないんです。でも――――」

>空木がキッと妓夫太郎を強く睨む。

>『下弦』『弐』と刻まれた瞳が、妓夫太郎を強く睨む。

>実力的には全く大した事はないはずだったが、妓夫太郎はその視線に僅かにたじろいだ。

>「私には才能がありませんでした。頑張って頑張って珠世様の右腕くらいにはなれたかもしれませんが、腕は腕。妓夫太郎さんみたいに、頭になれる才能はありませんでした。だから妓夫太郎さんはズルいです。私が欲しいものをみんな持ってるんですから」

 

>妓夫太郎は醜い姿ゆえに、誰にも蔑まれ罵倒されて生きてきた。

>本気で自分を羨ましがる者に出会ったのは初めてだった。

>だから、何を言えばいいのか分からず、結局口をついて出たのはいつものような言葉だった。

>「……お前だってズルいよなあぁぁ。梅ほどじゃねえが美人だし、肌にシミや傷もねえ。いいもん食ってんだろうなあぁぁぁ」

>「鬼に美醜とか関係あるんですか? ほら」

>空木の顔から鬼独特の紋様が消え、額の一本角も消えてゆく。

>瞬き一つの間に現れたのは、妓夫太郎の良く知る顔。妓夫太郎自身の顔だった。

>「んなっ……」

>「どうです、上手いものでしょう? 擬態は得意なんです。これだけは無惨様も褒めてくださったんですよ」

>絶句する妓夫太郎に、ふふんと得意そうな空木。二人とも同じ顔なので違和感が凄まじい。

>しかし次の瞬間には、女物の着物の上に乗っている方の妓夫太郎が沈んだ顔になっていた。

>「と言っても無惨様は顔どころか骨まで変えて、子供の姿にもなれるんですけどね……。女装も上手くて最初誰だか分かんなかったしすっごい綺麗だったし、凹みますよホント……」

>はあぁぁぁぁぁ、と地の底まで沈んでゆきそうな溜息を吐く空木だったが、顔を戻すと妓夫太郎に向き直った。

>「ま、何が言いたいかと言いますとね、鬼に姿形はあんまり意味がないって事です。それでも納得できないんなら、玉壺さんを思い出してください」

>「ああ…………」

>妓夫太郎はうっかり納得してしまった。

>未だかつて経験した事のない、とてつもない説得力だった。

 

 玉壺は無限城の自宅警備員やってます。各所に壺を配置して、いつでもどこでも血鬼術を発動させられるようにしてます。おぞましいセコムとして非常に役に立ってます。

 でもこの役立ち方は草。確かにある意味、美醜とかそんなものを超越した姿ですからねあれ。

 

 にしても、空木がオリキャラの割に結構馴染んでますね。これは準レギュラーくらいにはなるかもです。てか擬態が得意な鬼とか、薬なんか作らせてる場合じゃないような……。昼に動けないのは難ですが、それでもスパイとかやらせたら凄そうです。

 

 

 さて、めでたく鳴女と妓夫太郎兄妹が入りましたが、こうなるとあんまりやる事はありません。と言うのも、鳴女の成長も日光克服薬の開発も、時間経過でしか進まないからです。

 

 無惨様は鳴女に血を多く分け与え、さらに大量に食事をさせて血鬼術を成長させようとしてますが、さすがにすぐには無理です。また“眼”による産屋敷の捜索にも時間は必要です。まだ数を出せない事に加えて、“眼”は日光で溶けるせいで昼間には動かせなくなるので。

 

 日光克服薬の方は喉元まで来てる段階です。弱すぎて無惨様には効きませんが、数分だけ日光を克服できる薬は実はもうあります。堕姫と妓夫太郎が入ったので、あとは切っ掛けがあれば一気に完成するでしょう。無ければまだしばらくかかります。

 どっちにしろ、今は早送りするしかないです。

 

 ……ん? 早送りが止まった? この時期、何かめぼしいイベントってありましたっけ……。

 

*1
誤字ではない。




今日の主な獲得トロフィー

「充ちる弓張月」
 十二鬼月制度を制定し、その席を全て埋めた者に贈られる。
 原作と顔ぶれが異なっていても構わない。
 

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