チートTS転生したら、碁の神様と出会った俺の人生 作:クロス・クロス・クロス
緒方さんと対局してから、俺は中規模のアマチュアの囲碁大会に参加した。
意外と大人気ない眼鏡白スーツの緒方さんとアキラが大会に俺の応援をしに顔を出したお陰で、俺は注目され、気合いが入っていた佐為が対局は全て中押して勝利。
前世ではただのオタクだったので、人に注目されるなんてなかったので、大分戸惑うことになった。
運営委員から、優勝コメントを求められたので、俺は無難に「勝てて嬉しいです」と言っておいたが、何故か大会は盛り上がった。
小学生女子が大人を蹴散らして、優勝した事実は衝撃だったようだ。
緒方さんに「控え目なコメントだ」と言われたが、敵を作る必要はない。
女の子ということで、年配のお爺ちゃんお婆ちゃん達もかなり優しげに声援を送ってくれた。いやぁ、照れるね。
こうして、俺と佐為のアマチュア棋士の活動が始まったのだが、俺がさらっとアマチュアの大会で優勝したことを両親に教えたら二人は良く分かっていなかったが、爺ちゃんは凄く喜び、大会の棋譜を渡したら、穴があくほどじっと棋譜を見て、ヒカルは天才だ!と叫んではしゃいでいた。
佐為のおかげで、ちょっと財布に余裕ができ、新しい碁盤を買おうかな。とカタログ見てたらじいちゃんが買ってくれたよ。
値段を知って両親が驚き、試しにカタログの一番高い値段の囲碁のページを見せたら二人は絶句していたが。
二人から見て、囲碁世界は摩訶不思議なモノらしい。
碁盤の慣らしで、あかりとお茶を飲みながら、まったり碁を打ち、新年のアマチュアの囲碁大会に参加しようと思っていたら、アキラから連絡がきた。
珍しいなぁ、と思って電話に出ると、
「父さんがちょっと困っているというか、残念がっているんだ」
「残念?」
「ヒカルと対局出来なくて」
「なるほど」
緒方さんを倒した後、囲碁サロンに塔矢パパが来たらしい。
たが運の悪いことに、俺と塔矢パパとはすれ違っていた。
アキラは比較的時間があるが、緒方さんと特にアキラパパは忙しい。
アキラの話だと、アキラパパに佐為とアキラや緒方さんの対局の棋譜を見せたら、暫く何事か考えはじめて一言。「彼女と対局したい」と、呟いたようだ。
その後、しばらくは問題なかったが、あまりにもすれ違っうので、仕事を無理矢理休んで、俺と対局しようとしたが、流石に緒方さん達に止められた。
アキラに聞いた話しだが、十二月は特に忙しいみたいで、四冠を持っているのは大変だな。と思う。
佐為なら、タイトルを手に入れられるだろうけど。一つでも大変そうだ。
やはり、プロは目指さない方が良いかな。
「それでね、ヒカル」
「なに? アキラ」
「来年、家に来ない?」
「え?」
アキラの話を纏めるとこう言う話だ。
塔矢パパは新年から忙しい。棋院の打ち初め式は、今年は一月六日。
それと、一月の一日から三日は、挨拶周り。
けれど、それが終われば、どうにか時間が出来るらしい。
そこで、アキラパパは俺もとい佐為と対局をしたいらしい。
『あの者と……』
佐為が噛み締めるように、呟く。
古本屋で、塔矢パパの棋譜が載っている本を読んで、対局するのを夢見ていたからな。
かなり嬉しそうだ。
「あ、確認だけど、それは本当に家に行っても良いの? 正月の貴重な休み、家族で過ごす時間だと思うけど?」
「うん、大丈夫だよ」
「分かった、行くよ。楽しみにしてる」
「うん、分かった」
こうして、俺と佐為は来年、塔矢パパと対局することになった。
★
「やっばり似合うね。あかり」
「えー、ヒカルの方が可愛いよ!」
十二月最後の日、午後。
俺とあかりは近所の神社でこども神楽に参加していた。
小学一年のときに、近所の神社で神楽を舞っている子供達を見て、彼女達の動きをスキルを使って真似したら、偶然神社の神主の奥さんに見られてしまい。熱烈にスカウトされた。
今では毎年午後に行われる、こども神楽舞のエースになってしまった。
ちなみに、囲碁と違って俺は踊りなどの才能があるみたいで鼻血などはスキルを使っても出ない。
それだけが救いだな。
「そう言えば、アキラくんは?」
「一応は声をかけだけど、どうだろうな」
あかりの問いにそう答える。
あかり以外に友達が居ないので、新しく囲碁友達になったアキラを神楽舞いを見に来ないか? とさそったのだが。
大晦日、恐らく家族か一門で忘年会参加している可能性が高い。
「ヒカル! あかりさん!」
「あ、アキラくん」
「よっ、アキラ。それと緒方さんも」
「元気そうだな。……へぇ、似合っているな」
後ろから声をかけられて、振り返ると和服を着たアキラと緒方さんの二人が此方に歩いてきた。
どうやら、緒方さんの車に乗せてきてもらったみたいだ。
「ん、ありがとうございます」
「わたしも似合いますか?」
「ああ、似合っているぞ、なぁ」
「う、うん、二人とも綺麗だよ」
緒方さんに話を振られて、少し慌てるアキラ。
俺の衣装は中央配置だから、他よりも綺羅びやかな衣装となっている。
「頑張って、舞うから楽しみにしてろ、アキラ」
「う、うん、分かった」
「ヒカル、周りと合わせてね。まだ、入ったばかりの子もいるからね」
「大丈夫だ。考えて舞うから」
その後、今年のこども神楽舞は、好評で終えることが出来た。
ただ始まる前に、アキラと話をしていたところを、神楽舞のメンバーや神社のお手伝いさんに見られて、アキラが彼氏と間違われて大変だった。
アキラもお手伝いのお姉さん達に茶化されて、恥ずかしそうにしていた。
ドドメに神主の奥さんから「今年は神様ではなくて、一人に向けて舞ったでしょう?」と アキラを見ながら言われて、俺も動揺してしまったのだ。深い意味は無いが、わざわざ来てくれたアキラの為に舞ったのは事実だが。
それが更に誤解を生んだ。
ちなみに、俺とアキラが仲良くしていたので、あかりが拗ねてしまい、今夜は俺の家に泊まって子犬のように甘えていた。
うん、可愛いなぁ。常に俺にくっついて、若干本当に百合っぽくなってきたなあかり。ちょっと将来が心配。
「もう時間か、残念だな」
「ご、ごめん」
「あー、気にするな。忙しいのは分かってるから、それじゃあ、良いお年を、それと塔矢パパに楽しみにしています。と伝言を頼む」
「分かった」
★
――緒方の車 車内
「碁だけではなく、舞まで見事だったな」
「はい、能などを見たことがありますが、ヒカルの舞はプロのように上手でした」
そう言って、ヒカルの舞を思い出し、頬を緩めるアキラ。
久し振りに顔を合わせたアキラが見たのは、ウィッグを付けてロングヘアに中央で踊る為に綺羅びやかな神楽舞の衣装を身に着けた、艶やかな美少女ヒカルだった。
薄っすらと紅などの化粧も施され、アキラはドギマギしてしまった。
「これは明子さんの勘が当たったな」
「え?」
「いや、何でもない」
緒方は父親だけではなく、母親にも目を付けられたヒカルに少しだけ同情した。
「ああ、それと後ろに置いてあるデジカメだが」
「え、はい。これですね」
「明子さんに渡してくれ」
「あ、見たことあると思ったら、これは母さんのだったのか」
「ああ、きっと驚くだろうな」
この後、家に戻りデジカメを母に渡したアキラは、しばらくして、やや興奮気味の母に「頑張りなさい。応援してるからね」と、何故か応援され。
普段以上にヒカルのことを根掘り葉掘り聞かれることになった。
明子さん。
同世代の友達すら居ない息子が囲碁絡みだけど、女の子の話をする。
しかもやや興奮気味。
ボーイッシュで男勝りと緒方君から話を聞いていた。
そんな時に、神楽舞をするから見に来てと誘われている事を知り、緒方君にデジカメ渡して、偵察を頼んだら可愛らしい神楽衣装の美少女。更に舞っている姿の写真は気品のある舞姿。
ギャップが凄くて驚くことに