複数主人公の復活トリップ夢小説(名前あり)   作:夢豚のソテー

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002 友達

 

起きてみると知らない天井。自分の家とは違う香りに、家族じゃない誰かの声。

……とりあえず、この世界に来て初めての朝がきた。

やっぱり昨日のことは夢じゃなかったと分かる。けれど、今日はあんまり落ち込まなかった。

 

(なんだか、嬉しいことがあるような、そんな予感がするんだよね……)

 

そう、ひさしぶりに昔からの友達に会えるような、そんな予感が。

根拠は、何もないのだけれども。きっと誰かに会える、そんな気がする。

 

「あ、おはようございます」

「おはよう〜、ナナカちゃん。よく眠れたかしら?」

「大丈夫です、ありがとうございます」

 

突然見知らぬ子どもが上がり込んだというのに、ツナの母親である菜々ママは快く迎えてくれた。

いい人だな、と思うのと同時にこんなに天然で大丈夫か?とも思う。

リボーンも突然現れたのだから、もしかして慣れているのかもしれないけど。

 

「今日は後で一緒に学校に行きましょうね♪」

「えっと……学校?」

「しばらくここにいるんでしょう?中学にはいかないとねえ〜」

 

転入手続きとかどうなってんだろう。あと戸籍とか……。

しかし奈々ママの様子から、なんとかなりそうだな、というかなるようになれだ、とナナカは何も言わなかった。

 

「それと、あなたに荷物が届いてたわよ。昨日ウチに来たばかりなのに不思議ね?」

 

そう言われて、足下を見ると段ボールが2つ置いてある。

中にはなぜか並盛中学の制服と、二つ折りの携帯電話、それと鍵のかかった小さな金庫のようなものが入っていた。

 

(誰が送ってきたんだろ…?)

 

差出人の名前はない。それどころか宛先もない。どうやって届いたかも謎だ。

 

「あら、制服持ってたの? 準備がいいわね。早く行きましょ!」

 

入っていた制服を試しに着てみると、ぴったりだった。これも謎だ。

とりあえず、菜々に連れられてナナカは学校に向かうことにした。

 

 

「あれ? ナナカだ、どうしたの?」

 

転入手続きが終わるまでの間、並中を散策していたナナカはどうやらツナの教室の近くに来ていたらしい。

 

「この学校に転入することになったみたいで……」

「マジで!? じゃあこんな時期なのに2人も転校生かぁ」

「また?」

「10代目! 誰ですかその女は!?」

 

突然会話に闖入してきたその声の方向を振り向いたナナカは、ここ最近びっくりしてばっかだなということを自覚しつつも驚いた。

 

「獄寺君!この子は今ウチに居候してる、佐藤ナナカだよ」

 

(うわー!本物の獄寺君だ!!)

 

獄寺隼人はナナカのお気に入りキャラのうちの一人だ。口は悪いが情に篤い、銀髪のダイナマイト少年。

その彼が目の前で動いて話してることにちょっと感動した。

 

「居候? 10代目の家にもですか?」

「にも、ってどういうこと?」

「ウチにも来たんですよ居候。今朝転校してきたアイツ……」

 

獄寺君の家に居候?

そんな話、漫画の中では聞いたことないな…?

どういうことだろ?というか誰?

 

「ああ、あの子か、確か名前は……」

「ボォーーーーーース!!!!!!」

「ぐはぅ!!?」

 

全力疾走からナナカにタックルをかましてきたのは

 

「サキ!!?」

 

ナナカのクラスメイトで友達、そしてナナカを「ボス」というあだ名で呼ぶ、

福島サキだった。

 

「な、なんでここにいるの!?」

「ウチも聞きたいですよー! 突然わけ分からんうちに気付いたら獄寺君の家に!!?」

「二人は……知り合いみたいだね?」

「うん、その、サキは元の世界の友達」

「ってことは、こいつが落ちてきたやつのうちの1人だな」

 

急に声が聞こえて、足下を見るとやっぱりリボーンだった。

 

「おもしれーことが分かったぞ。

 ナナ、サキ、この世界に落ちてきたのはオレの分かった範囲ではお前ら含めて4人だ」

「よっ…4人!?」

「しかも全員、この並盛に落ちてる。良かったな、すぐ見つかりそうで」

「4人いれば寂しくなくていいですね!」

「えっ、サキそういう問題!?」

 

でも知り合いに会えたことや、いい知らせにナナカは少し安堵した。

安心すると同時に、なんというかドキドキや楽しい気分が盛り上がってきた。

 

「ね、ボス…! なんかウチ楽しくなってきましたよ〜!」

「そうだね…!」

 

何と言っても、漫画の世界に来てしまうなんて滅多に出来ない体験だろうし、それが大好きなリボーンの世界ってことも嬉しい。

 

「こうなったら、リボーンのキャラたちと遊びまくっちゃいましょうよ!」

「いいねー! たとえば……」

 

そういうとナナは、ちょっと二人の会話についていけてないツナに聞いた。

 

「ツナ、他にも友達紹介してよ!」

「あ、そうだね! …あれ? そういえば山本は?」

「野球バカなら今日は来てませんね」

 

ツナが山本のことを気にかけたのが気になるのか、獄寺は機嫌悪そうに素っ気なく言った。

 

「あのバカが風邪なんか引くわけないですよね。どうしたんスかね」

「ほんと、どうしたんだろ……」

 

彼らがこんな話をしているとき……。

山本の家はいろんな意味で大変なことになっていた。

 

 

 

「おい、大丈夫か!? あんた!?」

「……ん?」

 

鳥海チトセ、やはりナナの友達でごく普通の中学生は、よく知っている声に起こされた。

むくりと起き上がって、目を開く。

 

「……………」

「いやー、良かった! 屋根突き破って空から突然落ちてきたから、死んでんのかと思ったぜ!」

 

──これ、夢?

目の前に、現実だったら絶対あり得ない人がいる。

 

「あは……わたし死んだのかな……」

「ははっ、死んでなんかねーよ! 面白いやつだな〜!」

 

そう言いながら、彼…山本武は、チトセの顔を覗き込んできた。

 

「…………!!!!!!!???????」

「どこかケガしてないか? 頭にコブとかできてないか?」

 

(近い近い近い! 何で!? なにこれ!? 夢っぽくないし!!?)

 

「ん? どうかしたか?」

「どどどどどっどうもしてるよな、してないような!??」

「?」

 

おっ、落ち着けチトセ!深呼吸だ!!

そしてニコニコとした山本の視線がなんか恥ずかしい!!?

 

「と、りあえず?ここって…並盛町…だったりはしないよ…ね?」

「ああ、並盛町な」

 

マジですか。

 

「ここって、もしかして竹寿司…?」

「よく知ってんな、近くに住んでんのか?」

 

マジデスカ。

 

気が遠くなりそうだ……と、上を見上げると、穴。

そういえば…さっき『屋根を突き破って』って。

 

「ご、ごめんなさい、わたし屋根壊して…! バイトでもなんでもして弁償しますので!!」

「……?…ああ!

 もしかして、チトセって今度入ることになってたバイトの人?」

 

「……へ!?」

「早く言ってくれよー。確か、住み込みのバイトが来るって」

 

何か勘違いしたあげく、勝手に納得した山本はうんうんと頷き、

 

「年、オレと同じくらいじゃんか……、大変だな。まぁ、これからヨロシクな!」

「よ、ヨロシク?」

 

これっていろいろまずいんじゃ…

……ええい!どうにでもなれ!!

 

「オレは山本武。あんたは?」

「鳥海、チトセ」

「あー、とりあえずもう今日は学校はサボリだな…。と、チトセ、病院行こうか」

「へ!? なんで病院!?」

「頭ぶつけただろ? この近くに診療所があるから一応行っておこうぜ?」

 

いやいやそんなご迷惑は…などとチトセが言おうとすると、山本はひょいっとチトセを持ち上げた。

 

「!!!!?????」

「バイトの子に初日からケガされちゃ困るからな。それに心配だし」

 

山本は軽々とチトセを──俗にいうお姫様抱っこというやつで、外に連れ出した。

 

「ややや山本さんこれは一体」

「呼び捨てでいいぜ! いやなんかごねそうだったし」

 

なんて強引な。というか山本ってこんなキャラだったっけ!?

 

「できたら降ろしていただきたいような……」

「でもチトセ、靴はいてないのな」

 

確かに靴はいてないけど! いやむしろナイスなのかこれは!? とチトセが混乱し始めたとき、

 

「うわ、チトセちゃんじゃん、何してるの」

 

聞き慣れた声とともに、スーパーから買い物袋を持った見慣れた人物が。

 

「って、えええええええええええええええ!!!???」

 

それは、チトセの友達の小石川クロだった。ここで言う友達とは、もちろん元の世界での。

 

「ありゃー、熱々でいいですね〜お二人さん」

「やっぱりクロさまだ!? てか、なんでそんなにナチュラルに生活してるの!!?」

「あ、やっぱり最近来たんだ。時間軸のずれ、ってやつかなぁ?」

「最近…というか、今来た…」

「ボクもう2週間くらいはここにいるし」

「な、なんで!!???」

「だからぁ、時間軸のずれだってば。たぶんね」

 

そう言うとクロは、山本に対してあぁ初めまして、などとしゃべり始めた。

まさしく彼女はクロだ。

小柄で細身な体格や、年齢のわりに子どもっぽい表情などももちろんチトセの知る彼女だったが、なんというか主に、この独特なキャラがクロだ。

 

「クロさまの顔がアニメっぽくなってる……あんまり違和感感じないけど……」

「ちなみに言うと、チトセちゃんもだから」

「ええ!!?」

「ほらぁ、そろそろ行きなよ、この状態で立ち話もあれだし。お邪魔虫は退散しますから〜」

「あ、ねぇ! ちょっとクロさま!?」

 

それだけ言い残すと、彼女は走って行ってしまった。

 

「チトセの友達は面白いなー」

「お、面白い、かな…」

 

ギリギリアウトで変な人じゃないか?というか、クロさまどうやって生活してるんだろ…。

しかし、そこで診療所についてしまったため、チトセは深く考えるのをやめた。

 

 

 

「わぉ、愛なんて知らない〜アイシカタわからない〜♪」

 

所変わって、鼻歌を歌いながら商店街を歩く小石川クロ。

軽くステップを踏みながら、歌に合わせてくるりと回る。楽しそうに。

 

「え〜いえんにひとりぼっちの〜♪」

「ワォ、ずいぶん上機嫌だね」

 

掛けられた声の主を見つけて、クロの顔がほころぶ。さっきの悪戯っぽい笑顔とは大違いだ。

そしてそれは、最強にして最恐の風紀委員長である雲雀も同じく、他の風紀委員が見たら卒倒しそうなほど穏やかな表情で彼女を見ていた。

 

「恭弥〜!」

「なにかいいことでもあったの?」

「ん、ボクと同じとこから来た子と会ったよ。やっぱり知ってる子だった」

「ふぅん、探していた人を見つけたわけだ」

「まぁ、居場所は予想通りだったかな。たぶん、他の子達もどこにいるか分かったし」

 

そういうと、クロは少し心配そうな顔をした。

 

「今……何月何日だっけ」

「新学期が始まったばっかりだから…9月3日だけど?」

「そっか……」

 

そういうと、クロは空を見上げた。

 

「……曇ってきちゃったね。雨が降る前に帰ろう、恭弥」

 

さっきまでよく晴れていたというのに、今はどんよりとした灰色の空。

太陽は厚い雲に隠されてしまい、青い空はほとんど見えない。

 

まるで、これから起こる事件を予言しているようだった。

 

 


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