「もしもし ……ああ、ちょうど終わった。
……駅か、15分あれば着く。
時間帯は?……紛れるにはちょうどいいという訳か
……いやUSBがあるからいい。そのまま待機していてくれ
……ああ、また後で」
携帯をズボンのポケットに突っ込み外へと出る。
物取り事件の話題で盛り上がる生徒を横目に、駅へと続く国道沿いの道を進む。
雲が続々と流れ、くれる日の光を覆っていく。
慣れてはいる、が油断はできない。地味ではあるが信じられないほどの情報が動く仕事だ。それこそ国、いや世界が傾くほどの…
無事に、何事もなく終わることを信じて先を急ぐしかなかった。
2621年
■■県 ■■市 夏石(旧夏石町)
この地は遥か昔に大きな市と合併したものの、良くも悪くも今も田舎の部類である。ハイテクと人の波が世界を埋め尽くすこの時代において珍しい穏やかで古臭い町。そんな世界を住人は生きている
水面下から忍び寄る悪意になど、微塵も気付かずに
――――――
「はっ………はっ…」
街灯がぼんやり照らすだけ、人気のない川の土手。今夜は曇り、月の灯は届かず
そんな場所を一人、若い女が走っていた。
必死の表情で、躓きかけながら………彼女は逃げていた。
「誰か……助けて……」
すると彼女の祈りが通じたのか、街灯の近くに人影が一つ見えた。すぐに助けを求めようとした。
「あの……助け……」
しかし、その言葉の続きは出てこなかった。なぜなら彼女は気付いてしまったのである。
「じょうじ」
その人影が、人間のものでないことに
目の前の存在は2メートルほどの筋肉質な体で茶色い光沢を放ち、頭には触覚、それでいて顔や体は人間にそっくりであった。
今までこんな生物を目にしたことなど女はなかった。
現実離れした存在を前に女の足は止まった。
不幸なことに、その人型の化け物には彼女の声が届いていた。
彼女の姿を認めるや否やこちらへと近づいてくる。
滲み寄る足音が、不気味な光沢を放つ体が、そして本能に訴える嫌悪感が、脳内に伝える。—逃げなければ―、と
そのとき、背後からも足音が聞こえた。
彼女はハッとする。
(さっきから付いて来る誰か……怖いけど、この人に…)
ストーカーかもしれない者に助けを求めるなど無謀なことであることは承知している。それでもこの状況でなりふり構ってなどいられない……
震える体に力を入れ、足音のする方向を振り向く。一か八か…
結果から言えば最悪の決断だった。
「じょうじ」
そこにいたのも、人ならざる化け物であったからだ。
(なんで、なんで……)
じわりじわりと迫る二体を前に凍り付くしかなかった。得体の知れない恐怖と現実離れした光景を前に、冷や汗の一つも出ない。頭では逃げようと考えても、もう逃げられないことを悟ってしまったかのように体は動かなかった。
「だ…………誰か…」
「おい」
次の瞬間、化け物の一体が何者かに殴り飛ばされた。
突然のことに混乱する女をよそに、突如現れたフードの男は足早に情報を伝えてくる。
「土手下の道に黒いバンが停まっている。それに乗り込め」
怪しさはあったものの、今はそれに頼るしかない……女は迷わず土手を下った。
「早く乗れ!」
土手を下る途中、乗車口が開いている黒いバンから男の急かす声が聞こえる。
先程の情報が本当であったことに安心したと同時に、気付く。
「あの、さっきの人は!?あの人も逃げないと!」
「あいつなら大丈夫だ!それよりも早く!!!」
男の言う通り乗り込むと、無慈悲にドアが閉まりバンは急発進した。
緊張の糸が切れたからだろうか、女の意識が遠のいていく。
そんな彼女が車内から最後に見た光景は、二体の化け物とフードを脱ぎ捨て、白い鎧に覆われた男の姿であった。
――――――
「テラフォーマー……火星で急激な進化を遂げたゴキブリ、そんなものをこの夏石で見ることになるとは世も末だな」
「アネックス計画とアネックス1号乗組員150人のおかげでそれまで蔓延していたAEウイルスの原種を稼いで無事発見。それで綺麗に事が収まったと思ったら今度はテラフォーマー共を多方面で違法利用する連中が現れて……面倒なモンだ」
(………どうしよう、出るに出られない)
女…【
車の中で気を失った自分を運転していた男がここまで運んだのだろう。それはいい、そこまでは。
問題は私が起きたタイミングだ。私が起きたとき隣の部屋で男が二人、何やら重要そうな話をしているのだ。
声からして運転手と先ほど助けてくれたフードの男だろう。
話している内容が内容だ……下手に出ていったらどうなるかわからない……
することもないため部屋の中を見渡す。壁や床は少しくすんでいるものの、部屋はシンプルかつ綺麗に整頓されていた。
部屋の向こうではまだ話は続いている。
(それにしても……まさか宇宙探査の裏でこんなにヤバいことが動いていたなんて……正式に発表されたら世界中で大混乱は避けられなさそうね…)
「面倒で大変なものに巻き込まれた……あんたも大変だったな」
「!?」
突然部屋の扉が開くと一人の若い男……声からして先程から会話をしていたうちの一人が立っていた。
「
鋭い…というよりかは不機嫌そうな目付きの青年
彼女が彼らに出会ったのは果たして幸か不幸か……
投稿はだいぶ遅いですが、それでも待っていて下さる方がいたら幸いです。
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