拝啓 歩む者へ 【途中完結】   作:モクロック

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ウソツキライフメモリ その3

古い一戸建ての店からガタイの良い男と俯く女が出てきた。二人はそのまま、店脇に駐車されている黒いバンへと乗り込む。

 

 

「まあ、安心してくれ。確かにあんたは罪を償うことになるが、身の安全は保障される……向こうとはちょっとした知り合いでね」

 

「違う……そうじゃないの」

 

「違うって?何が」

 

「なんで私みたいな罪を犯した人間を助けるの? 助けてもらうのにこんなことを言うのも変だけど……」

 

 

そんな麻里の言葉に松口はきょとんとする。そして少し笑う。

 

 

「え?」

 

「ああ、いや悪い悪い……そんなこと聞く奴は中々いないから……そうだな、なぜ助けるか……それは人間だからだ」

 

「……へ?」

 

 

「俺たちは害虫駆除業者であって殺し屋じゃない。そして害虫から人間を守るのが仕事……つまりそういうことだ。それにあんたは罪を償ってやり直せそうな気がしたから、なんでこんなことをしたかは知らないが……それでもだ」

 

 

「……ありがとう」

 

 

 

彼女の言葉の後しばらく静まり返る車内、そこで松口が唐突に口を開く。

 

 

「あー、このままだと居眠りしそうだ……なんでもとはいかないが、聞きたいことがあったら答えるぜ」

 

 

その言葉で彼女はふと疑問に思っていたことを聞くことにした。

 

 

 

 

「それなら……啓さんが出ていくとき渡していたあのUSB(・・・)、あれは何?」

 

 

 

 

 

 

 

-----

 

とある公園、ボロボロの遊具に雑草に覆われたこの場所に人がいることなどめったにない。

しかし今夜は珍しく人影があった。

 

 

「ったく、ふざけた野郎もいたもんだ……よりによって今日、俺の財布を盗むなんて

おかげで俺の報酬がだいぶ減らされそうだしよぉ……

貸し出された化け物のうち二匹は見つけた反応を出したが、そのあと通信が途絶えちまうし……下っ端だからって質の悪いのを貸し出しやがって くそっくそっ!!!」

 

眼鏡をつけた短髪の男は携帯を見つめながらぶつぶつと文句を垂れる。スーツ姿やその見た目から誠実さを感じられないこともないのだが、発言と歪んだ表情が全てを台無しにしている。

 

「今日中に見つけないと……おっ?」

 

携帯の画面には数匹のテラフォーマーのデータが表示されている。そのうちの一つに赤いアイコンが灯った。

 

「よし…そのまま持って来い!…マッハで来い!」

 

男の言葉が通じたのかどうかはわからないが、一体のテラフォーマーが5分と経たずに男の目の前に現れ、手に持っていた財布を男に渡した。

 

「よぉくやったぁ!!! これで最悪の事態は避けられたぁ!!!」

 

「後をつけられていたとしても、か?」

 

 

突然の声に慌てる。よく見れば何者かが立っている。

 

 

「あぁ?誰だよお前?」

 

 

雲が流れ、月が顔を出し、姿が映し出される。

立っていたのは、スキーゴーグルのようなものをつけた半袖姿の若い男だった。

 

 

「駆除業者だ、お前らみたいな害虫共の」

 

「あぁ? んだこのガキ……知らねえ、やれ」

 

 

男の言葉でテラフォーマーが若い男の元へと向かう。

人間を遥かに超えた筋力による疾走が、目にも止まらぬほど素早い拳が若い男を襲う。が、軽やかな足さばきで攻撃を避けて見せた。

 

そして腰ベルトのあたりから何かを取り出した。

 

 

「ん…!? おいっ!なんでてめぇがそれ(・・)を持ってんだよ!!!今、この財布の中に入っているはずのUSBをなんで!!?」

 

 

「いや、これはお前のいう記憶装置(USBメモリ)じゃない。これは俺の(モノ)だ……

 

人為変態(じんいへんたい) 」

 

 

 

何か呟くとそのままUSBメモリを口に咥えた。直後、若い男の体が目に見えて変異していく。

白い鎧にも見える甲羅のようなものが腕全体、首や頭の一部を覆っていき、手首には刃にも見える棘が生えていた。

 

 

「なっ…なんだぁ!!!?」

 

 

驚くスーツの男を横目に、襲い掛かるテラフォーマーの胸に棘を素早く刺して引き抜く。するとテラフォーマーは力なくその場に倒れた。

 

「大人しくしていてくれ。身柄は拘束させてもらうが、命を取るつもりはない……その様子だと手術の存在自体知らなそうだしな」

 

ゆっくり近づく得体の知れない存在に恐怖を覚える……だが男もここで捕まるわけにはいかない。

 

「ふざけるなぁ!お前はここで終わりなんだよぉ!!!」

 

男が携帯をタップする。するとどこに潜んでいたのだろうか、5体のテラフォーマーが飛び出してきた。

 

「そこにいるバケモノをミンチにしろ!!!いいな…絶対だぁ!!!!!」

 

指示を出しつつ男は一目散に走り去っていく。

 

若い男は追いかけようとするも、テラフォーマー達が一斉に襲い掛かりそれどころではなかった。

 

 

「…目標が逃げた。捜索を頼む」

 

ゴーグルを触り、連絡を送るとため息をついた。

 

 

バケモノ(・・・・)、か……その認識は確かに間違ってないな……

それにしてもこういう場面だと糸出せる奴とか飛べる奴のほうが良かったと考えちまうな……それに俺のベースはそもそも戦闘向きの生物でもないし……」

 

 

 

確かに男にこの能力を与えた生物は獰猛な捕食者ではない。

しかし深い深い海の底、競争相手も餌資源も数少ない世界でしぶとく貪欲に生き抜く生物である。

 

その生物は想像絶する水圧や少ないとはいえ確かに存在する天敵に対抗するための進化を遂げていた。

 

深海7000メートルの水圧に耐えるため、強固な炭酸カルシウムの外骨格を持った。

そんな鎧すら噛み砕く天敵に対抗するために尾の先に鋭い棘を発達させた。

 

そうして厳しい環境に抗った彼らは近縁種と比べ体が大型になった。そしてその見た目から日本の伝承に登場する巨人の名が彼らの和名となった。

 

 

 

 

 

 

 

咲島 啓

 

国籍:日本

16歳 男 175㎝ 58㎏

■■■所属

 

 

 

MO手術:甲殻類型

 

 

―ダイダラボッチ―

 

 

 

 

 

 

 

「それでもきっちり駆除してやる 覚悟しろ」

 

 

 

 

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