拝啓 歩む者へ 【途中完結】   作:モクロック

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ウソツキライフメモリ その了

 白の鎧に包まれた啓の元へ5体のテラフォーマーが襲い掛かる。

 

 一体が拳で顔を狙い、その瞬間もう一体が蹴りを行う。

啓も顔を横に避けつつ体を捻り攻撃に対応する。そして蹴りを行った個体の目を切り裂く。

 しかしテラフォーマーの方は痛がるそぶりもなく攻撃を繰り出す。

 

 

「これじゃダメだな」

 

 

 左右、正面から迫りくる拳を後ろに飛び退いて回避する。しかしそこにもテラフォーマーが待ち構える。

 その個体に対し冷静に勢いをつけた肘鉄で腹部を打つ。

 

 するとどういう訳かその個体は痙攣を起こしながら地に伏した。

 

 

「なるほど、操作用の神経機器はその位置に埋め込まれているわけか……弱点が増えてる分にはありがたいな」

 

 

 テラフォーマーはゴキブリから進化していることもあり、ゴキブリと同じく胸部にある食道下神経節、胸部神経節…つまり胸部の器官が弱点であるが逆に言えばそれ以外での弱点はない。さらに痛覚が存在しないため、腕をもがれようが頭を失おうが攻撃の手を止めない。

 しかし、今戦っているクローンには制御するための神経機器が埋め込まれているため、破壊されると生命活動にも支障をきたすようだ。

 

 一体動かなくなったものの、残りの個体は気にも留めず攻撃の手を緩めない。

 正面から来る個体が拳を振るう。啓はそれに対し体をかがめて避け、素早く棘を胸に突き刺した。そして左からやって来る個体に対し、伸ばしていた腕を残っていた左手で引っ張った。引っ張られたテラフォーマーは自分がつけていた勢いのまま地面へ叩きつけられた。

 

 倒れた個体が起き上がるまでの間に右手の棘を抜く。棘を抜かれたテラフォーマーがゆっくりと倒れこむためそれを避けるが、倒れる個体の後ろに潜んでいた両目が傷ついたテラフォーマーの拳が啓へと放たれた。

 

 

「くっ……」

 

 

 不意打ちではあったが咄嗟に腕で受け止める。衝撃で少し後ろに押されたがその腕には傷一つない。

そして次の攻撃が放たれるがそれを避け、脇腹へと蹴りを放つ。

その隙を見逃さないとばかりに起き上がったテラフォーマーが殴りかかるが、待っていたのは棘による串刺しであった。

 

 

「さて、あとは……もう一匹いたよな?」

 

 

 蹴りを食らった個体に歩み寄る彼の背後から一体が襲い掛かる。公園を囲うポールを足場に飛び込んだことで勢いも速さも増していた。

 

 

「はあっ!!!!!」

 

 

 しかしその攻撃は啓を捕らえることは出来ず、逆に強力な回し蹴りを腹部に食らい、別のポールへと叩きつけられることとなった。

 

 

「ここまでしても逃げ出さない…か。機械による操作も恐ろしいな……なあ」

 

 

 次の瞬間走りこんで来たテラフォーマーの腹部は振り向きざまに振り抜かれた棘によって切り裂かれた。

 

 

「テラフォーマーのほうはいいとして……次はあの男を見つけないとな」

 

 

 啓は倒されたテラフォーマーを見つめつつ、捜索班である協力者たちへと連絡を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 とある住宅地。人が活動する時間帯であれば賑やかであるが、深夜の今は静寂に包まれている。

 そんな中、男が一人携帯を片手に急いでいた。

 

 

「こっ……このまま真っ直ぐだな?」

 

 

「ソウダ、ソシテ突キ当リノ角ヲ右ダ」

 

 

「右だな!? そうすれば迎えがいるんだな!?」

 

 

 あんなバケモノは懲り懲りだ……早く帰って何もかも忘れたい……

 男は焦る気持ちを抑えつつ、携帯から聞こえる機械じみた声に従い突き当りまで走る。

 

 

 

「アア……迎エガ待ッテイル。タダシ……

 

 

アノ世カラノナ」

 

 

 

 

 

 角を曲がった男が最期に見たのは先程まで操っていたはずの化け物だった。

 

 

 

 

 

 

― — — — —

 

 

 戦闘から数日後

 部屋のソファに座りテレビを眺める啓、そこにいくつかの資料を持った松口が声をかけた。

 

 

「巷で話題の物盗り犯、自主…か」

 

「しかし、これでよかったんだろうか…」

 

「ああ、これで良かったと思うぜ……彼女が危険に晒されることはこれでなくなった」

 

 

 松口は、それに……と言葉を続ける。

 

 

「俺たちは駆除専門だ……彼女がどんな理由で犯罪に手を染めたかなんて知ったところでどうしようもない……たとえ自分の大切な者のためだったとしてもな」

 

 

「マツ、お前やっぱり調べ―」

 

 

 松口は手で制し、啓の言葉を止める。

 

 

「目についただけだ。それよりも本題だ」

 

 

 松口は手に持っていた資料を机に広げる。

 

 

「まず、以前から追っていたあの男はお前も知っている通り姿を消した。捜索班が住宅地の路地で血痕を発見したそうだ……まあ、恐らくそういうことだ。二度と見つかることはない……よって確保し組織に関する情報を聞き出す計画は失敗に終わった」

 

 

「そうか……」

 

 

「まあ、聞き出すのは失敗したが……もう一つの狙っていたものは手に入った」

 

 

「あのUSBか」

 

 

 松口は頷くと資料のうちの一つを啓に渡した。

 

 

「現物はあの男を誘き寄せるために使ったからもうないが、コピーを取っておいた。

面倒な仕掛けがかけられてたが、何とか解析できた。するとな……あまり喜ばしくない情報があった」

 

 

「それは、この情報のこと…だな」

 

 

 啓は資料のある項目を指差した。

 そこにはこう記載されていた。

 

 

『野外における新型テラフォーマー操作装置実験予定』

 

 

「そうだ…操作装置の実験ということはテラフォーマーそのものが運び込まれる。この予定では世界各地の実験候補地が載っている……そして日本にも候補地がある」

 

 

啓はその部分を読み驚愕することとなる。

 

 

「赤木岳……ってこの山、夏石からそう遠くないぞ!?」

 

 

「もし本当にここで実験することになれば、俺たちが調査、駆除を担当することになるだろう……向こうの戦力によっては本部に応援を願うかもだな」

 

 

「本部か………」

 

 

 

 

少し考えると啓は松口に一つ疑問を投げかけた。

 

 

 

「なあ、もし俺たちが本当に(・・・)日本公認の対テラフォーマー組織に所属していたら……どうなってたんだろうな?」

 

 

「唐突だな……北川についた()のあれか? さあな……ただ、俺たちの所属しているところが世界規模だったからこそ裏で色々阻止できているのは事実だな」

 

 

 啓の何か言いたげな表情を横目に、松口はさらに話す。

 

 

「それにお前は日本というよりこの街(・・・)を護りたい気持ちのほうが強いだろ……それでいいんだよ」

 

 

「それも…そうだな」

 

 

 啓が納得したのを確認すると、松口はわざとらしく元気のある声で今日の内容を伝える。

 

 

「よし、そろそろ作業始めますか……啓は資料の確認を頼む、俺はデータや変身薬の確認をしてくる」

 

 

「了解……さて、生活費(・・・)学費(・・)のために働きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 松口の言葉に納得した啓はペンを持って資料の確認に取り掛かり、松口はUSB型の変身薬ケースを持って別の部屋に移動する。

 

 

 

 ペンとケース、両者が手にするそれには、【雲と時計】のマークが刻まれていた。

 

 

 

 




これにて第一話完結です。
この度は、本作を読んでいただきありがとうございます。

今後の話も楽しんでいただけるように頑張りますので、読んでいただけると幸いです。
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