それがし、理伊 茶之介という、真の勇者(さむらい)を目指す者でござる。
今はしがない旅人でござるが、いつかは名をはせ、できればどこかの国の王様になれたらいいなと夢見ているのでござる。
さて、ある日、それがしはその第一歩として酒場の看板を見つめているのでござるが、その依頼の一つに悩んでいるのでござる。
それは何の変哲のない、「隣町・岩塊の街への宅配」の依頼。
手軽で何の危険のなさそうな依頼なのであるが、前に見た二つの悪夢が頭にこびりついて、躊躇してしまうのでござる。
一つの夢では、強盗団の要求を断った結果、奴らに秒殺されてしまい
その次の夢では、強盗団の要求に従い、お金を渡して乗り切るものの、途中で路銀が尽きて野垂れ死に
というどちらも悲惨な末路を迎えてしまったのでござる。
これはもしや夢が、「この依頼にはかかわるな」ということを教えてくださっているのではありますまいか?
でも、手軽な依頼だし……むむむ。
そして悩んだ末……
* * * * *
「ご苦労だったな、ほれ、報酬の1500Gだ」
「おお、ありがとうでござるっ」
それがしは、酒場の主人から金貨をほくほく顔で受け取ったでござる。
ふぅ、今回もうまくいってよかったよかった。
結局それがしはあれから、例の依頼を受けず、山を隔てた先にある月明の街に移動し、その周辺で依頼をこなしていったでござる。
宅配依頼を受け、敵に出会ったら逃げ、時には命の危機に関わったりしながら、依頼をこなしていき申した。
そのおかげで、懐も少し暖かくなったでござる。よかったよかった。
でも、一つ困ったことがござる。というか、壁のような。
なかなか、相方が見つからないのでござる。やはり一人では、護衛や宅配といった依頼がせいぜいで、ダンジョンに潜る討伐や退治の依頼には厳しい。
以前、受けようとしたら、酒場にいた町人から「一人でダンジョンに潜るのは無謀だぜ~」と忠告をいただいたし。
何事も、無謀はいけないでござるな、うむうむ。
それがしも、最初に見た悪夢での末路からしっかり学んでいるでござる。
というわけで、それがしは依頼をこなす傍ら、酒場を見て、よい相方がいないか探しているのでござるが、なかなか見つからず……むむっ!?
あそこに、やたら強そうなご婦人がいるのではありませぬか!
これは僥倖!!
と駆け寄ろうとしたそれがしは、その一歩目で足を止めた。なぜならそのご婦人には……
たくさんのしわがあった!!
たくさんのしわがあった!!
大事なことなので二回言ったでござる。
いくら強くても、それがしはご老人は遠慮いたしたいのでござる。仲間になるなら、その、もう少し若いほうが……ごにょごにょ。
* * * * *
さてさて、そしてまた宅配依頼を受けて馬車に揺られていると……。
「キキィー!!」
犬人(コボルド)の一団と遭遇いたしたでござる。だが、数は少なく、漢力丹を飲みながら戦えば危なくないでござる。
よーし、行くでござるぞー!!
……
「キキィ……!」
それがしの一撃で犬人は倒れたでござる。これで残り二匹でござるな。
でも、それがしもかなり傷ついたし、そろそろ回復すると……。
と、懐に手を伸ばしたところで、衝撃がそれがしを襲った!
漢・力・丹・が・な・い!?
しまった、買い忘れたまま出発してしまったでござったか……。それがしの額を冷たい汗が流れるのを感じたでござる。
あの悪夢が頭をよぎったでござるぞ。
神様仏様、どうかそれがしをお守りくだされ!!
そして結局、命を失う一歩手前になりながらも、それがしはなんとか敵を全滅させたのでござる。
これはやはり、ご老人を遠慮したばちが当たったのでござろうか……?
でも、悪いことばかりではなかったでござるぞ。
これの報酬で、お金がたまって、ついにさむらいへの第一歩、刀を買うことができたのでござる!
前途は明るい!!……といいでござるな。はてさて。