undesired enders   作:tCADE

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「グランドオーダーを越えし者」

 人理継続保障機関フィニス・カルデア。

立香とマシュが所属する組織の名称である。

 

 西暦2016年。何者かによる歴史介入によって

古の昔より連綿と紡がれてきた人類史すべてが焼却され、

歴史そのものが滅び去る危機に瀕した。

 

 アルトリアやクー・フーリンと言った

人類史に名を残す英雄の在りし日の姿「サーヴァント」と契約を結び、

使役するマスターとしての素養を持つ立香は

人類史のターニングポイントとなる

7つの特異点修復を目的とした「グランドオーダー」の旅へと旅立つ。

 

 過酷な冒険の旅を潜り抜け、人理焼却を企てた元凶へと辿り着いた立香は

グランドオーダーの旅の中で巡り会ったすべてのサーヴァント達と力を結集し、

ついに奪われた未来を取り戻すことに成功する。

 

 カルデアが秘密裏に推し進めていた人工サーヴァント計画――

つまりはデミ・サーヴァントとしてこの世に生を受けたマシュ。

人理焼却を企てる一派のテロ行為によってカルデアが炎上する中、

立香がマスターとして初めて契約を交わしたサーヴァントとなったと同時に

唯一無二のパートナーとして共にグランドオーダーを戦い抜いた。

 

 しかし、最終決戦の後に体内の魔術回路が不全に陥り、

マシュはかつてのように戦う事が出来なくなっていた。

先の戦いで苦戦を強いられたのはそのためである。

 

 多くの犠牲と代償を払いながらも平和を取り戻した立香たちは

大規模な人理焼却の影響で歴史上に散発したいくつかの微小特異点の調査のために

この場に訪れ、光侍と葦咫と出遭う事になったのだが……

 

「……この世界の人間じゃない?」

「信じてもらえないかも知れませんが……」

 

 情報収集のために話を聞くことにした立香だったが、

彼女が求める答えを光侍たちが持っているはずも無かった。

「おかしな事を言うものだ」と首を傾げられるか、

ともすれば「からかっているのか」と憤慨されかねないと

覚悟しながら光侍が答えると、

 

「いや、信じるよ」

「え……?」

 

 対する立香は笑顔を浮かべ、あっさりとそれを肯定した。

 

「私達も似たようなもんだし。そう言う事もあるでしょ。ね、マシュ?」

「は、はい…レイシフト、と呼ばれるものですが、これについては少し説明が長く……」

 

 方法は違えど、立香たちカルデアの一行もまた、光侍たちのように世界を超えてきた者。

グランドオーダーの中でいくつもの人知を超えた超常現象を潜り抜けてきたためか、

立香の態度は至って平静で、包容力のある余裕を湛えていた。

 

「そうだな。それに、そっちの嬢ちゃんはどうにも普通の人間じゃないようだしな」

「あたし? あたし、人間じゃないの?」

 

 さらに、クー・フーリンは葦咫の素性を看破していた。

 

「俺たち風に言えば魔力……妖気みてえなもんを感じる。そいつはただの人間には無えもんだ。

カルデアにも似たような連中がいるが、そう言う奴らは「妖怪」とも呼ばれるらしいな」

「そうなんだ…どうしよう、光侍。あたし、妖怪なんだって」

「いや、どうしようって言われても……」

 

 思わぬ形で判明した、葦咫のルーツ。驚きと半信半疑が入り混じった、ぽかーんとした気の抜けた声。

顔を合わせる光侍ともども、動揺せざるを得なかった。


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