「じゃ、じゃあ……クー・フーリン、さん?
俺はどうですか?」
葦咫のルーツを瞬時に看破してみせたクー・フーリンになら、
自分が何者かと言う事も分かるかも知れない。
期待に胸を膨らませる光侍であった、が……
「普通だな」
「え?」
「そこら辺にいる、ただの人間だ。お前は」
「そ、そうですか……」
切って捨てるような即答。
感情を切り替える間も無く、どんな表情をすればいいかも分からなかった。
「ま、まあまあ! いいじゃん、光侍!
あたしなんて妖怪だよ、妖怪! 光侍が普通の人間だって事が
分かっただけいいじゃん! ね? えーと、えーと……
んーと、んーと……」
フォローになっているのか、いないのか。
放心する光侍を思いつく限りの言葉で何とか慰めようとする葦咫。
ただ、その真摯な気持ちだけは伝わる。屈託の無い、本当に純粋な娘なのだ。
「うん、ありがとう、葦咫……」
「しかし、ランサー。ただの人間が、レイシフトにも似たような現象で
世界を飛び越えるなどと言う事が可能なのだろうか?」
「ああ? まあ、な。そう言われると何とも言えねえが」
アルトリアの指摘に、クー・フーリンも思わず頬を掻き、眉を潜める。
カルデア一行が行った「レイシフト」とて、決して手軽に行えるものではない。
マスターとしての素養がある以外は、光侍と同じく普通の人間と変わりがない立香とて、
レイシフトを行うための適正無くしてはこれを実現させる事は出来ない。
まして、異なる世界を飛び越えると言う行為自体が、
本来は人智を超えた力でも介在しない限り、実現させる事は難しいだろう。
「如何します、マスター? コウジとアシタ。この2人の処遇を」
「う~ん……」
腕組みをしながら考え込む立香が出した結論は……
「私達もこの世界に来たばかりで、これから調査をイチから始める所だし、
あなた達さえ良かったら、一緒に行ってみない?」
「え? いいんですか?」
「面白そう! そうしようよ、光侍!」
「面白そうって……大したタマだな、嬢ちゃん」
「あたしたちも、知りたいもん。この世界の事。自分達の事!」
「葦咫……」
葦咫の言葉に、ハッとする。この娘はいつだって、自分より一歩前に進んで、
目の前に広がる世界へと視野を向けている。
ならば自分も、立ち止まってはいられない。光侍もまた、決断した。
「お願いします。俺たちも、連れて行って欲しい。足手まといにはならないつもりです。
危ない所を助けてくれた、あなたたちの役に立てるなら」
「先輩、それでは……」
「よし、決まり! これからよろしく!」
「はい!」
固い握手を交わす、光侍と立香。
人理を救った、カルデアのマスターとの出会いは、
光侍と葦咫にいかなる変化を及ぼすのか……?