――繰り返す。私は何度でも繰り返す――
建物の尽くは倒壊し、大地は豪雨によって水没し、
曇天の空を覆う分厚い雲の隙間から柔らかな光が差し込む。
終わりを告げる光。俄に残る天気雨が流星のように降り注ぐ。
まただ。またこの光景だ。
『あいつ』は、高笑いと共に何もかもを蹂躙し、何もかもを奪い、破壊し、
何事も無かったかのように去っていく。
そしてその姿を誰にも認識される事は無い。
名もなき人々には、大災害級の嵐がやってきたようにしか思われないのだから。
ワルプルギスの夜。
世界に呪いと災厄を呼ぶ存在「魔女」。その集合体。
残酷な運命を塗り変えるため、
ワルプルギスの夜の襲来を予見し、独り戦い続ける魔法少女がいた。
暁美ほむら。
しかし、ワルプルギスの夜の力は強大過ぎた。
何度挑んでも、どれだけ策を講じても、ワルプルギスの侵攻を食い止める事は出来なかった。
けれど、諦めるわけにはいかない。それだけの理由がある。
だから、繰り返す。例え出口の無い迷宮の中を永遠に彷徨う事になっても。
さあ、また砂時計を返そう。砂が落ち切るまでの束の間の時を。
「…まどか……今度こそ、私は――」
――運命を変えたいなら、神浜市に来て。この街で、魔法少女は救われるから――
舞台は変わり、ワルプルギスの夜の襲来によって
壊滅的被害を受ける事が運命づけられた街、見滝原市から
やや離れた場所に位置する新興都市、神浜市。
そこには、謎の生物インキュベーターと契約を交わした魔法少女達が多く存在した。
魔女と戦う運命を背負いし魔法少女。
その神浜に、妹のういを探すためにやって来た少女、環いろは。
何故か、妹の存在をつい最近まで忘れてしまっていた彼女は、
現地の魔法少女達と出会いながら、ういの行方の手がかりを探している内、
神浜市の裏側で暗躍する組織「マギウス」を取り巻く事件へと巻き込まれていく。
マギウスが掲げる「魔法少女の解放」とは?
いろはの妹、ういは何処に行ってしまったのか?
――みかづき荘。
「……朝……」
いろはが下宿している屋敷。窓から差し込む朝の光で目が覚める。
「起きたのね、いろは」
「あ、やちよさん。おはようございます」
みかづき荘の家主にして、ベテランの魔法少女。七海やちよ。
神浜に点在する怪現象「ウワサ」を追っている。
出会った当初は刃を交える事もあったが、戦いの中で
いろはと心を通わせるようになった。
「朝ごはんが出来てるわ。私はフェリシアと二葉さんを起こしてくるから」
「分かりました」
まだ夢の中の同居人達を順番に起こしに行くのは、やちよの日課。
1年前までは大きな屋敷で独り暮らしだったはずが、
随分と大所帯になったものだ。
「待っててね、うい。必ずお姉ちゃんが見つけてあげるから……」
決意を胸に秘め、また新しい一日が始まる。