争いとは、相容れない価値観の違いから発生する。
「グレイゴーストォォォッ! 今日こそはァァァァッ!!」
「重桜のエースか……!」
例えその果てに、共通の目的を見据えていたはずであったのだとしても……
全体の7割を海に覆われたこの蒼き星に突如として出現した
謎の勢力「セイレーン」。
人類に牙を剥くセイレーンに対抗すべく人工的に生み出された少女たち、
Kinetic Artifactual Navy - Self-regulative En-lore Node…通称「KAN-SEN」。
しかし、セイレーンは自らの技術を提供する事によってKAN-SENの勢力を
大きく二分させた。
毒をもって毒を制すの考えから、セイレーンの技術を積極的に取り入れる事で
飛躍的な勢力拡大を成し遂げた重桜、鉄血などに代表される
「レッドアクシズ」と、
その正反対に人類の力のみでセイレーンを打倒する事を志すユニオン、
ロイヤルなどから成る「アズールレーン」。
両者の間に生じた溝は深く、今もこうしてアズールレーン所属の
ヨークタウン級2番艦、エンタープライズと
レッドアクシズ所属の翔鶴型空母2番艦、瑞鶴による激しい戦闘が
繰り広げられていた。
すべては、セイレーンの掌中で踊るウォーゲームでしか無いのか…
「でぇぇぇぇぇえええッ!!」
水上をジグザグに滑るように疾走し、瑞鶴が研ぎ澄まされた刀で斬りかかる。
「チッ…!」
対するエンタープライズは大型の弓で鍔迫り合いに持ち込む。
「フッ…! よくやる…!!」
「……!!」
そのまま強引に押し切ろうとする瑞鶴だったが、エンタープライズは
刀の切っ先を受け止めたままの状態で、弓の弦を引き始めた。
「何ッ…」
「喰らえッ!!」
零距離発射。
エンタープライズの思惑をいち早く察した瑞鶴は咄嗟に距離を空け、
退避しようとする。
放たれた矢は蒼き炎を纏い、艦載機へと姿を変えた。
「イカれてる…!」
瑞鶴に迫る艦載機群が機銃を一斉掃射。
「舐めるッ…なああああああああッ!!」
弾丸の尽くを超高速の剣舞で叩き斬って応戦。
両者一歩も譲らず。永遠に続くかと思われた戦いに一石を投じる何者かの砲撃。
「!?」
「誰!? どこからの攻撃だ!?」
瑞鶴とエンタープライズの間を断ち割るかのようにして撃ち込まれた
砲撃によって水柱が高く高く立ち昇る。
「おうおう、派手にやってんじゃねえか」
そこには、左目を眼帯と前髪で覆い、巨大な対艦刀を担いだ女が不敵な笑みを
浮かべて仁王立ちしていた。エンタープライズや瑞鶴と同じく、
艤装を纏って水上に立っている。
「なっ……!? 貴様、何処の所属のKAN-SENだ!?
我らレッドアクシズの同盟者か!? それともアズールレーンの……」
「どっちでもねえ。それに俺はカンセンじゃねえ。艦娘だ」
「カン……ムス……? 一体貴様は…」
「俺の名は天龍」
自らを艦娘と名乗る女…天龍の登場により、戦場は一気に混迷を極める。
「瑞鶴! どうにも状況が不鮮明だわ! ここは一時撤退するのよ!」
「翔鶴姉…くっ! 覚えていろ、グレイゴースト!
それと邪魔をしてくれた天龍…とか言うの!
この借りは必ず返す!」
随伴していた姉、翔鶴の指示により、瑞鶴は戦場から去って行った。
「追い払えたか…」
「瑞鶴に翔鶴…随分と聞き慣れた名前だが、どうにも俺が知ってる連中とは
違うみてえだな」
静けさが戻った海。エンタープライズは謎の乱入者、天龍の方へ向き直る。
天龍もまた、穿った視線でエンタープライズをまじまじと見つめていた。
「お前ら、艦娘じゃないようだが、何だって互いに潰し合うような真似してんだ?
ぶっ潰すなら深海棲艦だろうが」
「深海棲艦…? 済まない、それはセイレーンの間違いではないのか?」
「話が噛み合わねえな。まあ、そもそもここが何処だかも
分かってねえんだけどよ。
気がついたらこの海にいた。ここは何処だ?」
「どうやら、色々と話を整理する必要があるようだ。
良ければ、我らの拠点へ来てくれ。そこで少し情報をまとめよう」
「いいぜ。どうせ行くアテも無えからな」
艦娘とKAN-SEN。出会うはずの無い者達の出逢い。それは偶然か、必然か。
はたまた、世界を取り巻く異変が生み出した産物か……