広町は普通に過ごしてるだけですよ~?   作:開屋

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 元々一話にする予定でしたが、ゲーセン回はもう一話くらい続けて書かせていただきます。短編の名折れじゃけぇ....


ゲームセンター

「にしてもいきなり広町がゲーセン行きたいって言ったのはビックリだったなぁ」

 

 思わぬお誘いを受けた透子が言う。

 

「まぁね~。前に行ったときも楽しかったし、また行きたいなぁって思って」

 

 七深が答える。実際七深の言ったことも本心ではあるのだが腹の内ではゲームセンターで同級生と一緒に遊ぶという事がものすごく『普通の女子高生らしい』と思っているからである。

 

「そう言えば前も行ったっけ。まぁ今回も瑠唯さんは来なかったみたいだけどね。まぁ透子ちゃんの誘い方も適当だったけど....」

 

「まぁ瑠唯さんは....前の時は私は都合があって来れなかったんだけど、今日は特に予定もなかったし大丈夫だったよ」

 

「そう言えばシロは前の時は来なかったんだっけ、それにしても八潮は相変わらずツレないなー」

 

 透子は苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

「そういえば七深ちゃんは何かやりたいゲームとかあるの?」

 

 つくしが尋ねる。

 

「んーとね、前にやったクレーンゲームってやつ」

 

「あぁ、前に広町が超絶技巧テク見せてくれたやつだったっけ」

 

「そうだったっけ?」

 

 当の本人には心当たりのない七深が言う。

 

「超絶技巧って....どんなことやったの?」

 

 唯一その場には居合わせなかったましろが透子に尋ねる。

 

「箱に入ってるパターンの景品あんじゃん?アレを取るのにアームの爪を箱の隙間に差し込んでとったんだよね」

 

「そ、それはすごいね....七深ちゃんってクレーンゲームも得意だったの?」

 

「それが、その時が初挑戦だったんだって。しかも一発だよ?」

 

 一周回って呆れたように透子が言う。まぁ無理もないだろう。

 

「初めてでそんなことやったの....?やっぱり七深ちゃんってスゴいね....」

 

 ましろも自然と透子と同じような表情になる。二人の表情に何かを感じたのか七深もまた複雑な表情を浮かべる。その様子を見かねたのか

 

「ま、まぁその辺は別にしてせっかく来たんだし楽しもうよ!」

 

 つくしがフォローに入る。

 

「おっ、珍しく二葉がリーダーっぽいことしてる」

 

「わ、私はホントにリーダーだもん!」

 

 つくしと二葉のやりとりで再び場はほぐれた。

 

 

 

 

 そこから一通りの景品を見て回る四人だったが、あるところで七深が立ち止まる。

 

「おっ、何か面白そうなの見つけた。これにしようかな~」

 

「なになに?何かいいもの見つけた?....ってこれ?」

 

 つくしが景品を見て小首を傾げる。

 

「何かの怪獣みたいなぬいぐるみ....かな?」

 

 よく分からない七深の食いつきにましろも思わず語尾が上がる。

 

「ま、まぁ七深がいいと思ったものを取ったらいいんじゃね?」

 

「それならこれにしよっと。....そういえばつーちゃん、この手のぬいぐるみってどういう風に取ったらいいのかな?」

 

「えっ?私?」

 

 急に話を振られたつくしが思わず聞き返す。つくしは少し考えてから

 

「うーん、とりあえず一発では取れないと思うから回数をかけてちょっとずつ近づけていく形だと思うよ」

 

「私もそんな感じだと思うな」

 

 ましろもつくしと同調する。店員の職務怠慢か、はたまた景品の人気の無さが原因なのか、ぬいぐるみは最初のセンターポジションよりも少し近い部分に転がっている。

 

「なるほど、直接掴みに行く感じだね、よ~し、取るぞ~」

 

 そう意気込んだ七深は100円玉を筐体に入れた。

 

 

 

 

 

「うーん、ある程度までは近づいたんだけど最後の一押しがなかなか上手く行かないな~」

 

 1000円くらい使ったところで景品は取り出し口の近くまでは来ていたが、そこから落とすまでに至らない状況だった。

 

「これよくあるパターンだよ、ここまでは来るんだけど最後がなかなか攻めきれないっつー感じ」

 

 透子も経験者なのか、ため息を吐いて言う。

 

「ここからが正念場だね....」

 

 ましろも妙な緊張感を含んだトーンでそう言って見守る。と、ここで七深がふと『あるもの』に目を付ける。

 

「ねぇ、ちょっとやってみたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「やってみたいこと?」

 

 つくしが尋ねる。

 

「うん、上手く行ったらもしかして一発で取れるんじゃないかな~って思って」

 

 そう言って七深はもう一度100円玉を入れる。

 

「何て言うか、広町さんが言うと冗談とか誇張じゃなくてホントにそうなりそうな気がするんだよね....」

 

 つくしが苦笑いを浮かべた。一方の七深はじっと中の景品を見てボタンを押す。

 

「ってちょいちょい!大分景品から離れた所だけどそんな所で大丈夫?」

 

 七深の思わぬ挙動に透子がツッコむ。確かに透子の言った通りで七深はこれまでとは違って景品の真ん中の所から大分離れた所にアームを運んでいる。七深はそれを意にも介さず2つ目のボタンに手をかける

 

「いや、これってもしかして....何かテレビで見たことあるかも」

 

 ここでましろが何かに気づいた。確かに七深の運んだアームは景品本体からは大きく外れていた。

 

 

 

 

 が、付属しているタグの非常に狭い隙間を針の穴の如く、か細いスペースをアームは景品を持ち上げたのである。そのまま景品は片方のアームがタグを挟んだままギリギリ落ちそうになりつつも、どうにか持ち堪えてとうとう取り出し口まで運んだのである。

 

 

 

 

「やったー!取れたぞ~!なるほど、こういう風にしていろいろ工夫をして取っていくものなんだね~」

 

 七深が景品を持って喜ぶ

 

「....ってあれ?どうしたのみんな....?」

 

 そりゃこんな顔にもなるさ、と言わんばかりの表情で残りの三人は七深を見つめていた。彼女はまた失敗したのである。




 私が見たところではそれなりのサイズのバルタン星人のぬいぐるみがクレーンゲームの景品でありました。割と人気だったようです。
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