モンスター狩るのも楽しいけど、環境生物捕まえたり、魚釣ったり、獣人と戯れるのもMHW、MHWIの楽しみ方の1つですよね?
「さて、第4期調査団の皆様。時間でございますな。新大陸でもお元気で」
ウツラウツラとしていた意識が不意に戻ってくるのを感じた。どうやら半分寝ていたらしい。ギルドのお偉い方のありがたいお話はどうも眠くなって困る。
「皆様がその力強さと勢いで、調査を前に進め、拡大させることを期待しています。
最後のご確認となりますが、ご乗船後は後戻りはできません。思い残しがあるのならば、引き返すのもまた1つです」
話の内容と周囲の雰囲気から察するに、ちょうど話の区切りがつくところらしい。タイミングよく目を覚ませたようだ。
壇上に立つ初老のギルド職員は会場に集まった僕らを見渡している。あ、目があった。…危ない所だった。直前で起きられて良かった。「迷いは無いか?大丈夫か?」と目で問うているあの爺さんにグースカ寝ている所を見られでもしたら大変だ。最悪、気が緩んでいると見なされて船から引きずり降ろされかねない。
「…よろしいようですね。それではこれより 新大陸に向け出航します。
皆様に 導きの青い星が輝かんことを」
そう言って爺さんは深く一礼をした。導きの青い星がどーのこーのって所は何言っているのかわからないけれど僕らの幸運を祈ってくれているのは何となくわかる。
これから新大陸へと旅立つ僕らは、口さがない人達からすれば島流しをされるも同然の身分らしい。彼らからすれば、一定ラインの優秀さを持ちながらも危険と困難がテンコ盛りの新大陸古龍調査団に入団するのは意味不明の行為なのだ。それはもはや刑罰同然で、だから島流しなんて言葉を使ったのだろう。
そんな僕らを必要としてくれて、やりたいことを認めてくれて、心配してくれて、健闘を祈ってくれるあの爺さんはきっと良い人だ。権力を握った高齢者にありがちな高圧的な話し方をしないのも高評価。
…そんな爺さんの話、聞いてなかったんだよな。悪いことしたかも知れない。
「会場後ろの出口から退出して頂き、そのまま船まで参ります。お知らせした番号の船にご乗船下さい。港までは職員が誘導いたしますので」
爺さんが会場後ろを手で示すので振り返ると、控えていた他の職員が扉を開けていた。近くにいた参加者はもう席を立って扉から出て行こうとしている。気が早いことだ。
「よし!私達も行くわよ!」
ジッとしていられない人は近くにもいたようだ。我らがお嬢が席を立ち、僕と釣りバカとじい様の3人に声をかける。すると席に座ったまま、釣りバカが口を開いた。
「うーん、もう少し待ちましょう。何せおおよそ270人が移動するのですから。急いだところで詰まるだけですよ?」
「そうですな。ある程度人が捌けてから動きましょうぞ。なに、お嬢が乗るまで船は行ってしまいませんし、新大陸も逃げはせんのですから」
ついでじい様もお嬢を宥める。そんな座ったままの2人と混み合っている出口をお嬢は順に見やった後、ムゥッとむくれて座りなおした。
「もう!そんなこと言ったって待ちきれないじゃないの。じい様も釣りバカもワクワクしないわけ?」
「そんなことないですよ。新大陸での釣り生活が待ちきれません」
「私もテトルーという獣人に興味が尽きませんのでな。楽しみです」
「だったらなおさら、何でウズウズしないわけよ!?いい?新大陸にはまだ見ぬ生き物達が私を待ってるのよ?どんな子がいるのか気になって落ち着いてなんかいられないじゃないの!」
お嬢は再度高ぶり、席を立って机をベチベチと叩いた。さすがお嬢。生き物が絡んだ時の情熱は留まるところを知らない。
けれどちょっと、周りを考えて欲しい。お嬢が盛り上がっているせいで少し人目を引き始めている。ここに集まった第4期調査団の面々は基本的に初対面同士の者が多い。そんな中でもう4人組になっているってことだけでも目立つのに、見目麗しい我らがお嬢が興奮していたらさらに目立つ。他3人は平気かも知れないけど小心者の僕にとってはあまり嬉しくない状況だ。それに何も始まってもないのに騒ぐっていうのもどうかと思うしね。
ということで僕はお嬢の手をヤンワリと掴み、止めに入った。
「やめてね」
強い口調にならないように気を付けながら一言かける。こちらを向いたお嬢と目を合わせた後ユックリ首を振って見せ、続いて回りにチラリと目線をやって見せる。
お嬢は熱しやすい性格だが愚かじゃない。むしろ賢明だ。だからこそ、これだけで僕の言わんとするところを察してくれる。フゥと1つ息を吐いて落ち着き、再び椅子に座ってくれた。
「…わかったわよ。けど、楽しみでしょうがないの」
ポツリと出た一言は先ほどより小さな声だったけど、同じくらいの熱量を有していた。クールダウンしてもなお、お嬢の情熱は燃え尽きない。それはとても素晴らしいことだ。
それに止めはしたものの、お嬢がはしゃぐ気持ちもわからなくはない。実際にこの場にいる全員がお嬢の「早く新大陸へ」と急く気持ちに共感しているはずである。ただ元々活発な性格の上、まだまだ年若いお嬢が逸る気持ちを抑える術を知らないだけの話。だからその分、僕ら共の者がその都度教えていけばそれでいい。おいおい大人になれば良いのだ。無理に大人びさせて彼女の持ち味を潰すことは避けたい。
お嬢が望む方向へ歩いていけるよう手助けする。それが今の僕の、僕達の役目だ。その為とあらば、新大陸へだってついていく。
…けどやっぱり、注意するのは苦手だな。この重くなった雰囲気が嫌だ。かといって甘やかすのも間違いだ。うーん、なかなか難しい。
窘められたことで伏し目がちになってしまったお嬢を見つつ、どうしたものかと思っていると、お嬢は急にペチリと自分の頬を叩いた。そして「うん。反省反省」と小さく呟く。どうやら独りでに立ち直ってくれたらしい。この切り替えの早さもお嬢の美点だ。
そんなお嬢は、話題を切り替える為か僕に話を振ってきた。
「アンタは?新大陸楽しみ?私は生き物、釣りバカは魚、じい様はテトルーって感じで新大陸に目標があるけどアンタはどうするの?」
「皆の手伝い」
「そうじゃなくて。アンタのやりたいことを聞いてるの。勿論私達の手伝いもしてもらうつもりだけど、助け合いたいじゃない。別に今何かに詳しくなくたって向こうで詳しくなれば良いんだし。アンタの興味のあることとか、やりたいことってないわけ?」
中々答え辛いことを聞いてくる。お嬢の言う通り、僕以外の面々は既に専門分野を持っているから新大陸でやることが既に決まっているのだが、僕はまだやりたいことが定まっていない。入団面接の時にはお嬢を支えるために新大陸に行きたいと言ったのだがよくそれで通ったなと自分でも思う。
僕自身の何か、ねぇ。
「まだ特にない」
思ったことを素直に出す。志が無いとでも言われてしまうだろうか?内心口が滑ったと思い臍を噛んだが、それでもお嬢は柔らかく笑ってくれた。
「そう。なら、見つかると良いわね」
「…うん」
いつもはそんな風に見えないのに、穏やかに笑った時にはお嬢が高貴な身分のお嬢様に見えるから不思議だ。お嬢としての快活な笑みではなく、お嬢様としての温和な微笑み。久しぶりに目にした表情に見惚れていると釣りバカが割り込んできた。
「なら試しに釣りはいかがで「それはいい」…そうですか。残念です」
「ほほっ、無理強いはいけませんぞ」
「そうよ。私だって生き物好きを押し付けずに我慢してるんだから」
「押し付けてはいませんよ?ただ釣りの魅力をですね…」
そのまま3人で盛り上がり始める。先ほど言ったことを覚えていてくれているようで声量は抑え気味だが、ワイワイと各々の専門分野の魅力を語り合っている。それを見ていると、好きなことや打ち込めるものを見つけたいと思えた。何せあれ程までに楽しそうなのだから。
ただ僕は生き物にも、釣りにも、獣人にも手を出すつもりはない。それら方面に関してはお嬢達がいるのだからわざわざ僕が加わったとしても新大陸における調査において貢献になれるとは思えない。お嬢達とは違う分野で何か自分の領域を持ちたいものだ。そうすることできっと、お嬢の、そして新大陸古流調査団の役に立つと思うから。
「色々とやってみるか」
小さく呟いた。すると3人は揃ってこちらを向き笑ってくれた。口下手で、これといった強みもなく、未熟で欠点の多い僕を受け入れてくれるお嬢達が大好きだと、僕は改めて思った。
そんな優しいお嬢の笑顔が、少し意地の悪いものに変わった。
「そういえばアンタ、さっき居眠りしてたしてたわよね?さっき周りに迷惑かけるなって感じの雰囲気出してたけど人のこと言えるのかしら?」
「居眠りは良くないですね」
「何?そうだったのですかな?」
他2人にはバレていなかったようだが、お嬢には居眠りがバレていたようだった。それを出されると少し弱い。
「あの爺さんには、悪かったなって」
「そうかしら?怪しいものねぇ」
「そうですな。前もこの老骨の説教を聞かずに寝ていましたし」
「私の話もです。反省してほしいですね」
案の定、じい様と釣りバカによる説教が始まりかける。…いや、ちょっと待て。じい様の言葉は甘んじて受け入れる必要があるが、釣りバカに説教されるのは納得いかない。大体釣りバカが言っている、僕が釣りバカの話を聞いている時に寝落ちしたエピソードって、釣りバカが魚や釣りについて延々と語ってきた時のことじゃないのか?終始「釣りはいいですよ」って言われ続けて、話の終わりが見えなかった時のことだろ?それは眠くなるのも仕方ないのでは?
反論したいのもヤマヤマだが下手に言い返すとじい様が恐ろしい。お嬢に対しては甘いのに僕には容赦がないのだ。お嬢、ずるい。チラリとお嬢の方を見るとニヤニヤとあくどい笑いを浮かべていた。クソ、悪戯少女が。
何とか抜け出す手段を考えていると、いつの間にか会場内にいる人数が少なくなっていることに、気づいた。良し、これをダシにしよう。
「じい様、移動」
じい様を片手で制しながら、もう片手で出口を示す。怒り状態に移行しかけていたじい様も、人が少なくなったことに気付いたらしい。
「ふむ、では話は後にして参りますかな」
できれば、ずっとずっと後にして忘れてくれると嬉しいです。
席を立つ前に忘れ物が無いか確認する。先ほど支給された導蟲の入った虫籠やスリンガーは置いていったら致命的だ。それに配られた書類も必要なものばかり。持ち込んだ荷物は言わずもがな。置き忘れていいものなんて何もない。
「さて、行くわよ!」
お嬢が荷物を背負って立ち上がった。本来は共の者であり体力のある方である釣りバカか僕が持つべきなのだが、「新大陸でそれは通じないわ」とお嬢本人に断られてしまった。お嬢に体力が無いわけではないため、僕らの心情以外に荷物を持たせることでの問題が起きないことが幸いだ。
釣りバカとじい様もそれに続く。そして僕も続いて立ち上がったところで、ふと壇上に未だ立ち、旅立つ4期団を見送っている爺さんのことが目に入った。
お嬢には疑われてしまったが、悪いと思っていることは本当だ。それに僕らの前途を祈ってくれたこともある。
僕は黙って彼に向かい深々と頭を下げた。謝罪と感謝を込めて。
長めの礼を終え、顔を上げると爺さんは少し驚いて見えたもののニコリと笑ってくれた。
その様子を見ていたのか、お嬢も爺さんに向かって元気に手を振り、
「行ってきます!」
と一声挨拶をした。爺さんはそれに対してもニコリと笑い、上品に手を振りつつ、
「行ってらっしゃいませ」
と返してくれた。お嬢は笑い、歩き出した。
…思えば新大陸に行くにあたり、お嬢が「行ってらっしゃい」と言われたのはこれが初めてなのではないだろうか。お嬢の本家は新大陸行きには反対だったのだから。だとすると、その一言を言ってくれた爺さんには益々感謝しないとな。
さて、それでは。
「行ってきます」
MH世界って寡黙な人が少ない気がするので、口数の少ない人物を描けたらと。
ネームドキャラからの視点ではなく、オリ主を登場させたのは彼らの思考や口調をトレースしきれないと考えたからです。結果持て余すかもしれませんが。
出発回です。早く環境生物や魚、大自然を描写したい。そして5期団の主人公を登場させたい。