太陽のように笑う   作:のののひーもん

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こんにちは、今回のは何だか長くなってしまいました。すみません…。

それでも楽しんで読んでいただければ幸いです。

それではどうぞ。



3話

テストが全て終わり、1-Cの生徒たちが帰り支度を始める中、こころは誰よりもはやく支度を済ませて陽向のもとへとんできた。

 

 

「さぁ陽向!早く行きましょう!」

 

「うん、わかった。でも、荷物をまとめるから少しだけ待ってね。」

 

「えぇ、わかったわ♪」

 

「ありがとう。」

 

「ん〜♪」

 

「「「「「「…………………。」」」」」」

 

 

まさに、はやる気持ちを抑えられない、といった様子のこころを見て陽向は朝教室に着いた時と同じような微笑ましい気持ちになっていた。そんなこころをみていた陽向はつい無意識的にこころの頭を撫でていたのだが、クラスメイトたちにはもう既にこの行為にツッコミを入れるだけの気力は残っていなかった。早くも1-Cの中で、陽向とこころのやり取りを気にしてしまったらキリがない、という共通認識が確率されつつあった。

 

 

「…よし。お待たせ、こころ。じゃあ行こっか。」

 

「えぇ!今からとっても楽しみだわ!」

 

 

そう言って2人は仲良く並んで教室を出ていった。

 


 

「それで、まずはどこに行くの?」

 

 

校門を出たところで陽向はまずどこへ向かうのか、こころにたずねてみた。それに対してこころは…、

 

 

「決めていないわ!」

 

 

…とてもいい笑顔で答えた。

 

しかし、こころからすれば『どこにどんな楽しいことがあるのかわからない』からこそ探しに行くのであって元々知っているのであればそれはただ楽しいものを『見に行くだけ』になってしまうのである。こころとしては楽しいことに変わりないのでそれでも構わないのだが、今回は『楽しいこと探し(・・)』にいくのでそれらは別の機会になるだろう。

 

 

「そっか、じゃあ試しに商店街の方に行ってみよっか。」

 

「えぇ!とってもワクワクするわね!」

 

 

最も、こころの考えをそこまで理解出来ていようがいまいが、どちらにせよ陽向はいちいちそんなことを気にすることも無いため、自然に行き先の提案を出した。そしてこころもそれに賛同する形で2人は商店街の方へ向かっていった。

 

商店街へ向かう道すがら、陽向はふと気になったことをこころに聞いてみることにした。

 

 

「そう言えば、こころは今までどんな楽しいことを見つけてきたの?」

 

「たくさんあるわよ!シロツメクサでかんむりを作ったり、流れ星を探しに山を登ったり、おなかいっぱいにお菓子を食べたり!」

 

「たしかに、どれも楽しそうだね。もし良かったら今度シロツメクサのかんむりの作り方教えてくれる?」

 

「もちろんよ!沢山作りましょう!」

 

「ありがとう。実はそのかんむりを「…あのっ」…ん??」

 

「あら、なにかしら?」

 

 

2人が他愛のない会話を繰り返しながら歩いていると、突然2人の前に小学生くらいの女の子が現れた。その子はもじもじと恥ずかしそうにしながら口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返していた。そんな少女をこころは不思議そうに見つめていたのだが、陽向はその少女に見覚えがあった、

 

そして、少女は遂に意を決したように息を吸い込むと、陽向に向かって頭を下げながら言った。

 

 

「あのっ、昨日は本当にありがとうございました!」

 

「…?…あぁ、もしかして昨日キーホルダー落としてた子?」

 

「…!はい、そうです!本当は昨日ちゃんとお礼を言いたかったんですが…、ちゃんと言えなくてごめんなさい。」

 

「ううん、大丈夫だよ。むしろ、ちゃんとお礼を言いに来てくれてありがとう。君は偉いね。」

 

「…っ!?…えへへ…///」

 

そう言って陽向はその子に近づいていき優しく頭を撫でてあげた。するとその少女は驚いて顔を上げるも、すぐに笑顔になりしばらくの間陽向に撫でられていた。しかし、この状況でたった1人事情を知らない者がいた。

 

 

「ねぇ陽向、この子は陽向のお友達なの?」

 

「んー…、お友達とは少し違うかも…? 実は昨日の朝にこの子が通学路で泣いているのを見つけて、なんでも大事なキーホルダーを落としたって言うから、一緒に探したんだよ。」

 

 

実は昨日の入学式に陽向が出席出来なかった理由の一つ(・・・・・)がこれである。陽向が昨日と今日遅刻してしまったのは単なる寝坊ではなかったのだ。それを聞いてこころは陽向の優しさと少女の誠実さに嬉しくなった。

 

 

「それでお礼を言いに来てくれたのね!とっても偉いわ!」

 

「…お兄ちゃん、この女の人誰?」

 

「はじめまして!あたしは花咲川学園高等部一年の弦巻こころよ!陽向の友達なの!」

 

 

しかし、こころの想いとは裏腹に少女は何故か少し拗ねたような口振りで陽向に問いかけた。陽向はそんな彼女の様子に気づいた(気づきはしたものの何故拗ねているのかは分かっていない)のだが、こころはそんな少女の心境に全く気づくことなく、自らの自己紹介を始めた。

 

「お友達…? …それじゃあ…、私もお兄ちゃんとお友達になりたい!」

 

「僕と…?全然構わないけど。」

 

「やったぁ!それじゃあ、今日はおうちに帰らないとダメだけど今度会ったら一緒に遊ぼ!」

 

「うん、わかったよ。約束するね。」

 

 

こころの自己紹介にどこか少しほっとしたような反応を示した少女は、それならばと自分も陽向と友人になることを申し出てきた。陽向はその少女の心境の変化にも気づきはしたものの(やはり何故かはわからなかった)『まぁ友達が増えるのは良い事か。』と思い、あっさりと了承した。それを聞いた少女はここぞとばかりにたたみかけてきたが、やはり陽向はそれもあっさりと了承した。

 

その後、少女は満足したように笑いながら陽向に手を振って帰っていった。そこでこころは昨日陽向が入学式にいなかったことを思い出した。

 

 

「陽向が昨日遅刻しちゃったのはあの子の落し物を探していたからなのね!」

 

「あぁ、ん~……確かにそれもあるんだけど…。」

 

 

こころの問いに陽向は苦笑いを浮かべながら答えた。しかし、口にした答えは妙に歯切れの悪いもので、その反応はこころの疑問をさらに増やすだけであった。

 

 

「もしかして、他にも何かあるの?」

 

「うん…、…実はね「おぉ…!君はもしかして、昨日の少年かい?」…へっ?」

 

 

増えてしまったこころの疑問にさらに答えようとした陽向だったが、またしても陽向の言葉は遮られてしまった。2人が声のした方を見てみると、そこには松葉杖をつきながらも真っ直ぐこちらへと向かってくる少しだけガタイのいいおじいさんと、そのおじいさんを心配するように付き添うおばあさんがいた。2人は陽向たちの前までやってくると急に頭を下げてきた。

 

 

「昨日は主人を助けていただいて、本当にありがとうございました。」

 

「そんな、どうか頭をあげてください。それよりも足は大丈夫でしたか?」

 

「あぁ、少しひねっただけだからすぐに良くなるらしい。本当に迷惑かけて悪かったな。」

 

「迷惑だなんてとんでもない、折れてなくて良かったです。」

 

 

先程とは違い、陽向は完全に2人のことを覚えていたため過不足なく応じていた。しかし、先程と既視感を感じるやり取りに、こころはまたしても1人で置いてきぼりを食らっていた。そんなこころに気づいた陽向はこころに聞かれる前に事の顛末を話した。

 

 

「このおじいさんは、昨日の朝にジョギングをしていて足を痛めてしまったそうなんだ。そこでたまたま通りかかった僕が家まで運んだんだよ。」

 

「あら、そうだったのね!大人の人を一人で運べるなんて陽向は力持ちなのね!」

 

「いやいや、おじいさんの家が思ったより近かったから運べたんだよ。」

 

 

陽向の話を聞いたこころは陽向のことをキラキラとした眼差しで見ていた。そして、こころにそんなふうに見られた陽向は謙遜しつつも少しだけ照れてしまっていた。そんな二人を見て、おじいさんはニヤニヤとし始めた。

 

 

「おっ? もしかしてその子は…、少年のこれか?」

 

 

そう言っておじいさんは小指だけを立ててクイクイっと動かした。

 

 

「…あっ、いえ、違いますよ。この子はクラスメイトで…」

 

「何言ってんだ、はずがしがらなくてもいいんだぞ少年!」

 

「……??」

 

 

陽向は少し遅れてそのおじいさんの言動の意味を理解したのだが、それをおじいさんは『照れている』と受け取ってしまったようで、さらに誤解が深まってしまった。また、こころはおじいさんの言動の意味がわからず小首を傾げており、少し収集がつかなくなってきてしまっていたのだ。そこでおばあさんが優しい頬笑みを浮かべてこういった。

 

 

「あらあら、それならこれ以上お邪魔してはいけないわ。 あなた、帰りましょう。」

 

「そうだな! それじゃあ少年、また今度改めてお礼させてもらうよ。」

 

 

そう言って2人はあっという間去っていってしまった。結局陽向は誤解をとくことが出来なかったが、また次に会った時にとけばいい、とすぐに思い直していた。一方こころは先程のおじいさんの言動の意味が未だわからず、陽向に聞いてみることにした。

 

 

「ねぇ陽向、さっきのおじいさんが言っていた『これ』ってなんのことなのかしら?」

 

「あぁ、さっきのおじいさんは、僕とこころが恋人同士なんじゃないかと思ったんだよ。」

 

「恋人…?それってお父様やお母様みたいに愛し合っている人たちのことよね?…あたしにはよく分からないけれど、あたしと陽向はそう見えるのかしら?」

 

 

おじいさんの言動に納得のいく答えを得られたこころだったが、恋人というものにいまいち要領を得られていないため、なぜ自分たちがそのように見えたのかはわからなかった。最も、既に1-Cの人間にとって2人は恋人以外の何者でもないのだが、もちろん2人ともそんなことは分かるはずもなかった。

 

 

「どうなんだろう。よく分からないけど、仲良しに見えるならそれでいいんじゃないかな?」

 

「それもそうね!」

 

 

結局、2人が周りにどのように見られているかは大して気にすることでもなかったようで、こころも陽向もすぐに気持ちを切り替えた。

 

 

「それじゃあ改めて、商店街に「すみません!もしかして昨日私を助けてくれた人ですか?」…ん?」

 

 

気を取り直しした2人の前に三度人が現れた。

 

 


 

その後、陽向の元に何人もの人が訪れ、そして皆感謝の言葉を述べて去っていった。その中には昨日の朝だけでなく、昨日の夕方や今朝助けてもらった、というものまでいた。

 

しかし、そのせいで2人が商店街に着く頃には既に辺りが暗くなり始めており、今から『楽しいこと探し』を始めてしまっては帰りが遅くなってしまう。そして、陽向はそれが自分のせいだ、と落ち込んでしまっていた。

 

 

「ごめんね、こころ…。僕のせいで『楽しいこと探し』出来なかった。」

 

「いいえ!あたしはとても楽しかったわ!それに、陽向がたくさんの人を助けたことはとても素晴らしいことよ!」

 

 

しかし、陽向の陰鬱な気持ちとは裏腹に、こころはキラキラと輝く瞳で陽向を見つめていた。また、その言葉には嘘や気遣いは一切なくただ純粋に陽向の行動と優しさを褒めるものだった。それにより、陽向も少しずつ気持ちが軽くなり、

 

「ーーありがとう。」

 

と、いつものような笑顔を浮かべていた。 しかしここでこころからひとつの疑問がもたらされた。

 

 

「陽向はどうしてそんなにもたくさんの人を助けるの?」

 

「え、どうして……?」

 

 

なぜ、と言われても、陽向は今まで人助けに意味など考えたことはなかった。ただ漠然と困っている人を見ると助けなければならない気がしていたので助けていたので、こうしてその理由について考えることはなかった。

 

しかし、しばらく考え込んだ後に陽向は口を開いた。

 

 

「笑顔…、かな?」

 

「笑顔?」

 

「うん、みんなが笑顔になってくれると僕も嬉しくなるんだ。それに、皆も笑顔でいる方がきっと楽しいから。だから笑顔じゃない人がいたら笑顔にしてあげたいって思うんだよ。」

 

「笑顔の方が楽しい…?」

 

「それで、もしも

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー世界中の人が笑顔になったら…、

 

 

 

きっとすごいとおもわない?…なんて、アハハ…。」

 

 

「ーーっ!!!?」

 

 

話している途中で恥ずかしくなってしまい、陽向は照れるように笑んだ。しかし、それを聞いたこころは突然何かを閃いたように大きな声を出した。

 

 

「それだわ!!」

 

「え?」

 

「今まで考えた中で1番楽しいこと見つかったわ!!」

 

「え、どこどこ?」

 

 

そう言って陽向は辺りを見渡してみるが別段変わったものは見られなかった。こころはそんな陽向の顔を両手で掴み、自らの顔に近づけた。

 

 

「今陽向が言ったことよ!」

 

「もしかして、世界中の人を笑顔に…?」

 

「そうよ!陽向!あなたは天才だわ!こんなこと誰に思いつけないもの!『世界を笑顔に!』ん〜♪とっても素晴らしいわ!」

 

「えっと、ありがとう…?」

 

 

思いもよらなかった好感触に陽向は嬉しくなるのを通り越して戸惑ってしまっていた。しかし、それも少しのことで、こころのキラキラとと輝くとびきりの笑顔を見ていると、陽向も笑顔になっていて、そんなこころであればいつか本当にできてしまうかもしれない、と思ってたからである。

 

しかし、そうと決まれば陽向の立ち直りもまた早かった。

 

 

「それじゃあ、これからは2人で一緒にどうすれば世界を笑顔に出来るか、考えないとね。」

 

「えぇ!あたしたちで必ず、世界を笑顔にしましょう!」

 

「おぉ〜〜。」

 

 

 

こうして、日が沈みゆく商店街の片隅で『世界を笑顔に』するための第1歩が踏み出されたのだった。

 

 

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