太陽のように笑う   作:のののひーもん

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こんにちは、

今回はこころが登場しません、すみません…。

それでも楽しんでいただければ幸いです。

それでは、どうぞ。


4話

こころと陽向が『世界を笑顔に』すると決めてから数週間が経った5月の中頃、陽向は放課後にとあるコンビニへと訪れていた。と言っても、客として、何かを買いに来た訳では無い。陽向はこのコンビニでバイトをしていたのだ。

 

 

「こんにちは、店長。」

 

「陽向くん、こんにちは。今日は早いね。」

 

「最後の授業が少し早く終わったからですかね?」

 

「なるほどね。あ、それと今日新しいバイトの子が来るから、何かわからないことあったら教えてあげてね。」

 

「はい、了解しました。今日もよろしくお願いします。」

 

 

陽向は休憩室へ入ると店長と挨拶をかわし、直ぐに着替えてレジへ向かった。するとそこには陽向と同じ歳くらいの茶髪で少しギャルっぽい見た目の店員がいた。その店員は陽向に気がつくと見た通りのフランクな挨拶を飛ばしてきた。

 

 

「おっ、やっほー、陽向〜☆」

 

「こんにちは、リサさん。早いですね。」

 

「うちは今日午前中だけで終わったからね〜」

 

 

彼女は今井リサ、羽丘女子学園に通う高校二年生であり、このコンビニバイトにおける陽向の先輩である。ギャルっぽい見た目から初対面の人には勘違いされることが多いが、根はとても真面目であり、それでいて誰に対しても優しく接することができる。

 

陽向がここで働き始めた際も、仕事についてはリサが丁寧に教えてくれたため、陽向はリサのことをかなり信頼していた。そして、そんな陽向の下心のない純粋な好意に、リサもまた陽向に対して好感を抱いていた。

 

 

「そう言えば、今日新しいバイトの人が来ると店長が仰っていたんですけど何か聞いていますか?」

 

「その話はアタシも聞いたけど、特には知らないなぁ〜。あ、女の子ってことだけは店長から聞いたかな」

 

「そうでしたか、それじゃあどんな人が来るのか楽しみに待ちましょう。」

 

「おぉ〜?陽向もやっぱり女の子には興味あるんだね〜?」

 

 

店長から聞かされた新しいバイトの人の話をしているとリサがそんなことを言い始めた。実際、陽向も女性に全く興味が無いわけではない。しかし、今回陽向の興味は女の子と(・・・・)仲良く出来るか、ではなくその人と(・・・・)仲良くできるかどうかにあった。

 

 

「女の子に興味、と言うよりもその人と仲良くなりたいだけですよ。」

 

「ふ〜ん?じゃあ彼女とかも興味無いの?」

 

「まぁ、死ぬまでにちゃんと愛し合える人と出逢えたら、恋人になりたいと思うかもしれませんね。」

 

「へぇ〜…、陽向って意外とロマンチックなこと言うんだね…。」

 

「なんか、ちょっと照れくさいですね…、アハハ。」

 

 

陽向としては自分の思ったことをそのまま言ってみただけだったのだが、リサの思わぬ反応に恥ずかしくなってしまった。また、以前こころと話していた時にも似たようなことがあったため、今後自分の考えを口にする時は気をつけよう、と陽向は心に決めた。

 

陽向が密かにそんな決意を固めていると、休憩室へと続く扉が開き中からすこしのんびりとした雰囲気の漂う、白髪の少女がでてきた。そして、少女は2人を見るなりやけに間延びした声で自己紹介を始めた。

 

 

「はじめまして〜、きょうからここでお世話になります。青葉モカで〜す。気軽にモカちゃんって呼んでくださいね〜。」

 

「あははっ! おもしろい子がきたね〜!アタシは今井リサ、よろしくね〜」

 

「ほんとうですね。 僕は夕崎陽向です。よろしくお願いします、モカさん。」

 

 

モカの挨拶は聞く人によっては馴れ馴れしく聞こえてしまうかもしれないが、モカ本人の雰囲気と陽向、リサ両名の性格が見事に噛み合い、咎められるどころか3人の会話を円滑に回すことに成功していた。そこで早速リサがモカのことについて色々聞くことにした。

 

 

「ねぇモカって呼んでいい?」

 

「いいですよ〜」

 

「やった!あたしの事もリサって読んでいいからね! それで、モカは今何歳なの?」

 

「モカちゃんは〜、15歳の高校一年生ですよ〜」

 

「じゃあ年下だったんだ〜、アタシは羽丘女子学園の高等部二年、16歳だよ☆」

 

「えぇ〜、リサさんも羽丘なんですか〜?あたしも羽丘なんですよ〜」

 

「うっそまじ!じゃあ学校でもアタシの後輩だったんだ!すごい偶然!」

 

 

早くもリサによるマシンガントークでモカの情報が次々と顕にされていたが、陽向は特に気にすることもなく2人が早くも仲良くなっていることを嬉しく思いながら会話を聞き流していた。すると今度はモカが陽向に質問を飛ばしてきた。

 

 

「じゃあ、夕崎さんも高二なんですか〜?」

 

「ううん、僕はモカと同じ高一だよ。学校は花咲川なんだけどね。同じ一年生同士仲良くして貰えるとうれしいな。」

 

「おぉ〜、じゃあこれからは、ひーくんって呼ぶね〜。一年生同士仲良くしようね〜」

 

 

モカは陽向の言葉に少しの迷いもなく答えてみせた。これはモカのマイペースによるものだったのだが、陽向にとってその反応はとても嬉しいものだった。するとそこでリサが少しだけ拗ねたような声音(しかし顔はむしろニヤニヤとしていた)でもって割って入ってきた。

 

「ちょっとモカ〜?アタシとも仲良くして欲しいんだけど〜?」

 

「わぁ〜、モカちゃん初日からモテモテ〜。困っちゃう〜」

 

「あははっ、ほんとにモカって面白いなぁ〜」

 

「でしょ〜?」

 

「でも、そろそろちゃんと仕事を教えてあげましょう、お客さんも来そうですし。」

 

 

そう言って外を見る陽向につられてリサとモカも扉の外に目をやると、学校帰りと思われる高校生が入ってくるところだった。

 

 

「仕方ない、続きは終わってからにしよっか」

 

「は〜い、それじゃあ改めて、よろしくお願いしま〜す」

 

 

そう言ってモカはリサと陽向に教わりながら仕事を始めた。

 


 

日が完全に沈み、街灯があちこちでつき始めた頃、陽向たち3人は無事にその日の仕事を終えて、コンビニの従業員出入り口から外へ出てきた。外へ出るなり大きく伸びをしていた陽向は後ろに続くモカに労いの言葉をかけた。

 

 

「モカ、今日はお疲れ様。人生初のバイトはどうだった?」

 

「ひーくん…、モカちゃんはもうお腹ペコペコでフラフラですよ〜…」

 

 

陽向に声をかけられたモカは初めてのバイトでなれない事が多かったことと、接客による気疲れで本人の言うようにフラフラとした足取りで外へ出てきていた。

 

「モカ本当に頑張ってたもんね〜!アタシが作ったクッキーで良ければ食べる??」

 

「わ〜い、美味しそうなクッキ〜!リサさん、ありがとうございま〜す」

 

 

そんなモカを見かねたリサが自分の手作りクッキーを渡すと、モカは受け取った瞬間からサクサクとクッキーを頬張り始めた。口いっぱいにクッキーを詰め込み幸せそうに咀嚼する様を見て、クッキーを作ったリサだけでなく陽向までもが幸せな気持ちになっていた。だが、しばらくモカを眺めていた陽向が突然モカにこんなことを聞いてきた。

 

 

「そう言えば、モカって家はどっちなの?」

 

「ふぉっひはよ〜」

 

 

相変わらずクッキーを口いっぱいに詰めていたモカだったが陽向の言葉に反応し、家の方向を指で指し示した。そして、それは偶然にもリサと陽向の家と同じ方向であった。

 

 

「アタシたちと同じ方向じゃん!それなら3人で一緒に帰ろっか!」

 

「そうですね、こんな時間に女子高生だけっていうのも心配ですし。モカもそれでいいかな?」

 

「…んっ。美味しかった〜。あたしもそれでいいよ〜。それと、リサさんごちそ〜さまでした。」

 

「はーい、お粗末さまでした」

 

 

リサの提案に陽向と、ようやくクッキーを食べ終えたモカも賛成し、3人は一緒に帰ることになった。そうして歩き始めた3人は、他愛のない会話をしながらお互いの事を紹介していった。

 

モカには4人の幼なじみがいて、その4人とバンドを組んでいること。リサにも1人幼なじみがいて、その人も音楽に携わっていること。そして、陽向がこころと一緒に『世界を笑顔に』するために活動していること。3人はお互いのことを語り合い、陽向とリサは知り合って1ヶ月足らず、モカに限っては今日知り合ったばかりだと言うのに3人の仲はかなり良くなっていた。するとここで、陽向の話を聞いたリサがモカが来る直前に話していた話題を掘り返してきた。

 

 

「ねぇ陽向、その『こころ』って子はどうなの?」

 

「…?…どう、っていうのは、もしかして恋人として、とかそういう話ですか?」

 

「そうそう!聞いた限りだとお互い知り合って間もないのにすごく仲が良いみたいじゃん?」

 

 

そう言ってリサは陽向ニヤニヤ顔で見つめていた。実際には自分も出会って1ヶ月足らずでかなり仲良くなってしまっているのことを完全に棚上げしているのだが、この場唯一それに気づいたモカはあえてそれを無視した。かわりに、モカは陽向の恋愛観についての話を掘り下げることにした。

 

 

「おぉ〜?ひーくんはそのこころって人のことどう思ってるの〜?」

 

 

そう言ったモカの顔はリサと全くおなじニヤニヤ顔だった。二つのニヤニヤ顔に囲まれて、普通であれば照れて少し大袈裟に否定してしまうなどがほとんどなのだが、陽向は特に照れるわけでもなく、ただいつものように柔らかい笑みを浮かべて答えた。

 

 

「僕なんかにこころはもったいないですよ。それに、リサさんには言いましたけど、僕はちゃんと愛し合える人と出会わない限り恋人を作る気はありませんよ。」

 

 

陽向がそう答えてすぐ隣を歩いていたリサとモカが突然足を止めた。

 

それを不思議に思った陽向が振り向くと、そこには先程までとは打って変わって真剣な表情をした2人が陽向を真っ直ぐ見すえていた。その眼差しに、普段から笑顔を絶やさない陽向も、背筋が自然と伸びるような微かな緊張を感じた。そうしてしばらく見つめあっていると、リサが先に口を開いた。

 

 

「陽向…、アタシは陽向の恋愛観をどうこう言うつもりは無いけど、これからさき、『僕なんか』なんて言葉は絶対に言わないで欲しい。陽向が自分のことをどう思ってるのか分からないけど、アタシは先輩として陽向のこと、すごくいい子だっておもってるから…。」

 

「リサさん…。」

 

「あたしは、今日初めてひーくんに会ったけど、そんなあたしでもひーくんが優しい人だってわかるよ。だから、あたしもひーくんにそんなこと言って欲しくないかな。」

 

「モカ…。」

 

 

2人の言葉に、陽向は後悔した。こんなにも優しいふたりの前で自分を貶めるようなことを言ったことを。そして、こんなにも優しい2人に………、

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー出会ってしまったことを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぅ…、はぁ…。……2人ともごめんなさい。もうあんなことは言いません。……それと、……ありがとう。」

 

 

そう言って頭を下げた陽向にリサとモカはいつもの笑顔を取り戻し、声を揃えて言った。

 

 

「「どういたしまして(〜)!」」

 

 

 

その後、3人は再び並んで帰路についた。街灯に照らし出された3人の影は先程までより近づいているように思えた。

 

 

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