更新遅くなってしまって申し訳ありません。
今回もかなり長くなってしまいましたが、楽しんで読んで頂ければ幸いです。
5月の末、高校生活初の中間テストがおわり、陽向はこころと2人で久しぶりに放課後の楽しいこと探しをしていた。というのも、最近の陽向はバイトで忙しくしていたために放課後にこころと楽しいこと探しをしていなかったのである。そのため、
「ふっふ〜ん♪ふっふ〜ん♪」
と、こころは現在かなりの上機嫌で陽向の隣を鼻歌交じりに歩いている。
「ねぇ陽向!今日は〜いったい〜っ、どんな楽しいことしようかしら?」
学校を出てしばらく歩いて来たところで、こころは陽向にそう聞いた。それを聞いてしばらく唸ったあとに陽向はこころにとある提案をした。
「んー…、一度駅前広場に行ってみない?あそこなら色んな人がいるから楽しいことが見つかるかも。」
「それだわ!さすが陽向ね!そう決まれば早速行きましょう!」
陽向の案にこころも賛成のようで、その日の楽しいこと探しの場所は駅前に決まったようである。すると、こころは早速と言って駅前広場へ向かって走り出した。それを見た陽向は、どこまでも楽しそうなこころに自分も自然と笑顔になるのを感じながら、こころをおって走り出したのだった。
〜〜〜〜数分後〜〜〜〜
途中、前回のように陽向にお礼を言う人に何人か遭遇しながらも2人は無事に日が暮れる前に駅前広場に到着した。
「着いたわ!それじゃあ陽向、どうすればいいかしら?」
「そうだね、まずは「きゃー!薫さまっ!握手してください!」ん?なんだろう?」
陽向の声を遮って女性の歓声が聞こえてきたため、2人がそちらを確認するとそこには高い背に凛々しい顔立ちをした陽向達と近い歳の女性が、たくさんの女性に囲まれていた。
「ふ……、構わないが子猫ちゃん……、君のその透き通る白い肌を傷つけてしまわないか心配だ…。いいかな?そっと…、いくからね?」
「……あぁ……」
「あぁ…、また失神者が…。」
「あぁ……!また……私の美しさのせいで……!かのシェイクスピア曰く、これは運命なのか、神は我々を人間にするために、何らかの欠点を与えるのか……!」
まるでミュージカルの王子のような言動をする彼女に、取り巻きの1人が失神してしまい、それを見た彼女は自らの美しさを嘆き、それを見て取り巻きはさらに歓声を上げていた。
「あれは何かしら!?なんだかとっても楽しそうね!」
「うん、まるでミュージカルのゲリラライブみたいな……、……これだっ」
彼女たちを興味津々で見つめるこころに陽向も答えようとしたところ、途中で陽向が何かに気づいたかのように声を上げた。
「ライブだよ!さっきこころが鼻歌を歌ってて気づいたんだけど、こころの声はとても綺麗だからみんなにこころの歌を聴いてもらえばきっとみんな笑顔になれるよ!」
「凄いわ、陽向!!確かにそれならあたしも楽しいし、みんなにもきっと笑顔になってもらえるわね!!」
陽向のアイデアにこころは目を輝かせた。そして、それに気分を良くした陽向はこころにさらなる提案を持ちかけた。
「それじゃあ、せっかくだからここでなにか歌ってみる?」
この提案がこころにとって魅力的でないはずはなく、こころは
「もちろんよ!早速始めましょう!」
と、即答した。
「わかった、それじゃあ、せーっの、」
「「ら〜♪らら〜〜♪ららら〜〜〜♪」」
ーーーーー???
駅前にて突如歌い始めた2人の高校生に、道行く人々は驚き足を止め、そしてその楽しげな歌声にそのまま耳を傾け続けた。更に、それを見てこころと陽向は気分が良くなったようで、さらに歌い続ける。
しかし、こころは突然歌うのを止めてしまった。
「どうしたの?」
「なんだか少し物足りないわ。」
「物足りない? んー…。もしかして演奏がないからかな?」
「それよ!きっと歌だけじゃなくて楽器で演奏すればみんなもっと楽しくなるわ!どこかに楽器を演奏できる人がいないかしら?」
そう言ってこころは辺りを見回した。すると、2人から少し離れたところに楽器らしき物を持った少女を発見し、こころは陽向をおいて、まっすぐそちらへ向かって行った。
「ふっふっふ…、いいもの、みーつけた!」
「えっ、えっ!? あっ、制服……花咲川の……。」
「そうよ!あたしは花咲川学園高等部1年、弦巻こころ!あなたの名前は?その荷物って楽器でしょ?」
こころは少女に話しかけるなり、早速楽器のことについて聞き始めていた。少女のほうは、見るからに内気そうであり、その上初対面のこころに同時に複数の質問をされて戸惑っているようであった。それを見て、こころより遅れてやってきた陽向は少女に助け舟を出した。
「こころ、あんまり1度に聞いたら困っちゃうよ?」
「それもそうね、ごめんなさい。」
「えっ、あっ、ううん、大丈夫だよ。」
「それじゃあ、改めて。こころと同じく、花咲川学園高等部1年の夕崎陽向です。見たところ同じ花咲川学園の方かと思われるのですが、もしかして先輩ですか?」
「あっ…、うん。松原花音といいます。2年生です。」
少女…、花音は陽向が来て少し落ち着きを取り戻したようであった。しかし、それでもまだ状況は飲み込めないようで、陽向はひとまず、こころが花音に声をかけることとなった経過を話すことにした。
「ーーーと、いうわけなんです。」
「だから花音!あたし達と一緒に演奏してくれる?」
「へ……?あっ、待って、離して、ください…っ。私、このスネアドラムはもう、売るつもりで…。」
陽向が話を終えると、こころが花音をぐいぐいと引っ張って行く。しかし、花音にはもうドラムを演奏するつもりが無いようで、こころが引っ張るのに抵抗を始めた。それを見てさすがに花音を不憫に思ったのか、陽向が助け舟を出した。
「こころ、そんなに引っ張ったら危ないよ? それより、そのドラム売るつもりって言ってましたけど、なにか事情があるんでしょうか?」
「え、えっと…、事情っていう程じゃないんだけど。私、ずっと1人でドラムやってるのに、全然上手くならなくて…。それでもうドラムやめようと思って…。」
そういった花音の様子は酷く落ち込んだようで、それを見た陽向は、
「なるほど…、そういう事だったんですね。わかりました。 それじゃあ僕達と一緒に演奏しましょう!」
…こころと一緒に花音を引っ張り始めた。
「…え? ええぇぇ!?なんでそうなっちゃうの〜!?」
「こころ、今の花音さんの話を聞いてどう思った?」
「とっても変だと思ったわ。だって、あなたが上手いかどうかをどうしてあなたがきめるの?人に聞いてもらわなきゃ、わからないじゃない!」
「え…、そ、それは…。でも、そ…そんな勇気…ない…し。」
先程まで自分の味方をしてくれていたはずの陽向が突然こころと一緒に自分を引っ張り始めたことに対して、花音はとても困惑していた。しかし、こころの思いがけない言葉に、花音は動揺した。
「勇気なら、あたしたちがあげるわ!」
「ーー!!」
そう言ったこころは花音の目を真っ直ぐに見つめた。
「あたし、今ここで歌うことがとっても楽しいの!あなたも、一緒にドラムを叩いてくれたら、もっともーっと楽しくなる!」
「それに、周りで見ている人達も、きっと笑顔になってくれるし、それを見れば花音さんも楽しくなる。そうなれば、もう上手いとか下手とかどうでも良くなってしまうんじゃないでしょうか?」
「楽しくなったら…、下手とか…、どうでも…いい…。」
そう言って笑い合うこころと陽向を見て、花音はその胸に、ほんの微かだが確かに勇気が灯るのを感じた。
「そうよ!楽しくなくちゃ意味ないわ!たから、花音、あなたが必要なの!」
「僕からもお願いします!花音さんのドラムで僕達をもっと笑顔にしてください!」
そう言って笑いかけてくる2人の笑顔を見て、胸に灯った勇気が少しずつ大きくなっていくのを花音は感じた。
「私…、やってみる。できるか分からないけど…、それでも、やってみたい。」
「ん〜っ♪花音!今のあなた、とってもいい顔よ!」
「本当だね。よし、それじゃあさっそくみんなで歌おう。」
「えっ、い、いまから…!?」
「そうね!さっそく3人でここにいる人たちを笑顔にするわよ!」
「ふ、ふぇぇぇ〜…!!やっぱり恥ずかしいよ〜…!」
そうして、3人は演奏を始めた。それは、歌詞もなく、曲と呼べるものかも怪しいようなものだったが、2人の歌声と、花音の奏でたリズムは、周りにいた人たちを笑顔にし、そして、花音自身も知らないうちに笑顔になっていた。花音はそれに気づくことは最後までなかったが、それでも、確実に変わったことが一つだけあった。
ーーそれは、この日から、『世界を笑顔に』するための2人が、3人になったことである。
いかがでしたでしょうか?
久しぶりに書いたので以前よりも出来が悪くなってしまっているかもしれませんが、これからも頑張って続けていきたいと思いますので、良ければこれからもお読みいただきたく思います。
それでは、失礼します。