【対魔忍RPG】まりの大冒険 ふたたび   作:unko☆star

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その①

首都圏有数の犯罪都市、センザキ――

かつて東京のベッドタウンとして栄えた頃の面影はもはや無く、数々の犯罪組織や魔界の住人たちがひしめき合う闇の繁華街――

そんな街の通りを、臆するそぶりもなく歩く一人の少女の姿があった。

 

「久しぶりだなあ…もうあれから1年になるのかあ…」

 

対魔忍・篠原(しのはら)まり。

五車学園(ごしゃがくえん)に通う学生対魔忍(たいまにん)だ。

学生でありながら人並み外れた怪力と土遁の術を操り、クラス委員も務める真面目な少女。

もっとも、生来の天然・ドジっ娘な性質が災いして十分に力を発揮できないことも多いのだが――

 

(いろいろあったなあ…魔人さんに出会って…紅さんに出会って…オークさん達にもお世話になって……ふふっ)

 

1年前、彼女は任務の帰りにある事件に巻き込まれ、偶然知り合った流浪の対魔忍『心願寺紅(しんがんじくれない)』と手を組みこれを解決した。

五車では“本の魔人事件”として記録されているこの騒動、表向きはまり一人の手柄とされているが、実際は紅の協力無くしては解決できなかった事件であった。

 

(プライベートでセンザキに来るのは初めてだけど…まずは、あのときの酒場に行ってみようかな…オークさん達にはちゃんとお礼できてなかったし…紅さんにも、会えるかもしれないし…)

 

1年前はおっかなびっくり歩いた道を、迷いなく進んでいくまり。

“本の魔人事件”、そしてこの1年で積んだ修練の数々が、確実に彼女を成長させていることが見て取れた。

 

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

「あれ…?」

 

酒場への道を急ぐまりの目に、見慣れない光景が飛び込んできた。

荷台に屋根と調理場を設け、暖簾を下げた古風なリヤカー…今や珍しい、移動式の屋台だ。

 

(へえ…センザキにあんなのがあるんだ……って、なにか言い争いしてるような…?)

 

どうやら店主らしい男が何度も頭を下げ、客がそんなことにはおかまいなしで怒鳴りつけているらしい。

 

「だから酒を出せってんだろうが、えーーーつ!?」

「すみませんが、何度も申し上げました通り今日はもう店じまいでして…」

「九竜会の俺様に出す酒が無いってのか、あーーん?」

「いえ、ですからその…話を…」

 

(ああ…あのお客さん酔いすぎだよ…全然お店の人の話聞いてないし…)

(そういえば、去年魔人さんに出会った時もこんなシチュエーションだったなあ…)

 

少し懐かしい気持ちが沸くが、ともかく黙って見過ごすことはできない。

 

「あのぅ…そのくらいにしませんか…?」

「おーん?なんだあテメェ…?」

「お店の人、今日はもう閉店だって言ってるじゃないですか…別にお客さんのことがどうとかじゃなくて…とりあえずまずは落ち着いて…」

「なめるなっメスブタァッ」

 

ドンッ。

 

「はうっ」

酔っ払いがまりを突き飛ばす。

不意を突かれたまりが後ろ向きに倒れる。

 

ドサッ。

 

――かに思われたが、何者かがその背中を受け止めた。

 

「まったく、相変わらず揉め事に首を突っ込むのが好きなようだな、君は」

 

それはまりがよく知った声であった。

 

「紅さん!」

「久しぶりだな、まり。春の任務以来か」

 

まりを支えた女性――心願寺紅がまりに微笑みかけた。

 

「すまないが、店主はこの後私と約束があるんだ。今日は別の店に行ってくれないか」

「何度も言わせるなってんだろ!俺は九竜会だぞ!?俺が酒を出せって言ったら出すんだよえーっ!」

「九竜会?…ああ、お前あそこの構成員なのか。あのシフォンとかいう女のいる…」

「貴様―っ美鳳(メイフォン)様を愚弄する気かあっ」

 

上司の名前を間違われて激昂した酔っ払いが懐から銃を取り出した。

 

ビシッ。

「痛ぅっ!?」

 

――が、瞬く間に紅の鋭い手刀で弾き飛ばされてしまった。

 

「本の魔人を取り逃がしてからは大人しくアミダハラに帰ったと思っていたが…。またセンザキに出しゃばってきているのか。ご苦労なことだな」

「ほ、本の魔人だあ…?テメェなんでそんな古い話を知って…る…」

 

手刀を食らった痛みが酔いを中和したのか、焦点の定まらなかった男の目がようやく紅をはっきりと見据えた。

その顔がみるみる青ざめていく。

 

「おまっ…対魔忍………あのときの…」

「なんだお前、あのとき私にのされた連中の一人か」

 

ずい、と紅が前に歩み出る。酔っ払いは素早く後ずさる。

 

「なんなら今から続きをしようか?せっかく再会できたんだ、今度は()()()相手になるぞ」

「あっ…あっ……」

 

もはや酔いは完全に冷めたようであった。男はへっぴり腰でガクガクと脚を震わせ、顔面蒼白となっている。

 

「あのぅ…」

まりが男になにかを差し出した。

「?」

 

「これ、落としましたよ。危険なものなんですからちゃんと安全装置をかけてくださいね」

「!!?はひーーっ!」

 

それは先ほど男の手から弾かれた銃…だったはずなのだが、重心がぐにゃぐにゃに曲げられて“ひねり揚げ”のようになってしまっていた。

まりが素手でねじってしまったのだ。

 

「ひーーっ!!!!」

男は差し出された銃を払いのけ、一目散に逃げていった。

 

 

――――――

 

――――

 

――

 

 

「やるじゃないか。随分気の利いたあしらい方を覚えたな」

「い、いえ、そんな大したことじゃ…えへへ…」

まりが照れ臭く頬をかきながら赤面する。

“本の魔人事件”以来、紅はまりにとって最も尊敬する対魔忍の一人だ。

 

「今日はまた任務の帰りか?」

「いえ、今日は完全にプライベートで…その…紅さんに会いに…」

「…そうか。思えば春の任務の時はゆっくり別れを言う暇も無かったからな…。私も心残りだったんだ」

「そうですよ!せっかく紅さんと学校に通えると思ったのに、いつの間にかいなくなっちゃうんですから!私の友達にも紅さんを紹介したかったのに!」

「いや…あれはその…まあ…色々と事情があってな、はは…」

紅は気まずそうに視線を逸らした。

 

 

――紅の生家、心願寺一党は、かつて五車に反旗を翻したふうま一族による反乱“弾正(だんじょう)の乱”に加担したことで里を追われた一族である。

もっとも積極的に反乱に加わったわけではないため、五車の長『井河(いがわ)アサギ』は追放に反対であった。

 

――が、紅の祖父『心願寺幻庵(しんがんじげんあん)』は追放を受け入れた。

心願寺を追放せよとの動きにはふうまの力を削ぎたい政府による横槍があったとされ、逆らえば無用な血が流れると判断したのだ。

かくして幻庵は隠居の身となり、紅も祖父の意思を継いで五車に所属しない流浪の対魔忍として生きてきた。

 

――しかし今年の春、心願寺の忍が井河アサギを暗殺せんとする事件が起きた。

紅は井河アサギから特別の許しを得て五車に学生として潜入し、従者の『槇島(まきしま)あやめ』と共にこれを捕らえた。

 

――「あなたが望むなら、このまま五車に残ってもいい」

アサギからの願ってもない申し出を、紅は固辞した。

(おじいさまが五車と心願寺のため、苦渋の思いで結んだ誓約を、今さら私が破るわけにはいかない…)

 

かくして、紅は再び五車を去り、以前と同じく流浪の対魔忍として生きる道を選んだのだ。

 

 

「お二人とも、有難うございました。紅さんと…」

「あ、私、篠原まりです」

「篠原さん。本当に有難うございました。助かりました。」

 

屋台の店主が何度も頭を下げる。

見るからに苦労を重ねてきた風貌で、真っ白な頭のところどころが丸く禿げあがっている。

 

――後に、実はまだ30代なかばであったことを知らされたまりは驚愕することになる。

 

「こちらは森浦(もりうら)さんだ。今日はこれから仕事の依頼を聞く予定だったんだが…場所を変えたほうがいいだろうな」

「では、私の家に…少し離れていますが…」

「あ、それなら私、屋台引きますよ!こういうの得意なので!」

 

「いえそんな…助けていただいたうえにそんなことまで…」

「お言葉に甘えさせてもらいましょう、森浦さん。彼女はこう見えてかなりの力持ちなんですよ」

(えへへ…紅さんに褒められてる…)

 

顔をニヤけさせたまりが屋台を引いて歩きだす。

 

「…まり、もし良ければなんだが…このまま私の仕事を手伝って貰えないか?」

「えっ」

「せっかくのオフに申し訳ないんだが、君の力があれば私も心強い。もちろん報酬も」

「やりますっ!私、頑張りますっっ!!」

 

(また紅さんと一緒に戦える!)

 

高揚感でハイになったまりが恐るべきスピードで屋台を引いていく。

 

――家と逆の方向に進んでいることを告げる森浦と紅の声で引き返したのは、100メートルほど進んでからであった。

 




ハーメルンに対魔忍二次創作を放てッ

まりの大冒険は2020/5/22まで復刻中なんだ
みんなで対魔忍になるんだ
絆が深まるんだ

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