カゲロウ・ソードワールド外伝~東方華陽炎   作:壱ノ瀬 葉月

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二人の剣士は、純粋に「戦い」を欲する。


第5話<剣士>

 紅魔館に来てから一ヶ月。仕事――正確にはフランに怪我をさせたことの罰なのだが――にも慣れ、他の手伝いをする余裕が出てきた頃だ。レミリアに呼び出されていた。

「咲夜と買出しに行ってきなさい」

「じゃあレミリアも一緒に来ないとな」

「……?」

 疑問に思っているらしく、首をかしげる。肩をすくめつつ、彼女に言う。

「だって、俺の仕事……じゃないな、罰はレミリアの護衛じゃないか」

 

 

 

 というわけで、俺は咲夜、レミリアと共に人間の里に出かけた。レミリアは吸血鬼であり、日光が駄目だということで俺が日傘を差している。食料はもちろん、本なんかも購入している。<外の世界>から来るものと、幻想郷に住む妖怪が書くものの二種類があるらしく、レミリアは外の世界から来る本を好んで読んでいる。なんでも、こちらにはない表現が面白いらしい。

 そして、ある店である人に声をかけられた。

「こんにちは。レミリアさん、咲夜さん」

 そこには、白い薄手の服――シャツというものに、緑の服とスカートを着た二本の剣、恐らく刀を持った白髪の少女が立っていた。

「……彼女は?」

魂魄 妖夢(こんぱく ようむ)。半人半霊の剣士よ。半人前って言われてるけど」

「あれ?その方は?」

 と俺に目線を向けて聞いてくる。

「イチハ・リーゼリヴ・ノヴァ、漆黒の魔剣士って呼ばれてた人だ。よろしく」

「はい、よろしくお願いします!それより、今・・・」

 そこで目付きが変わる。おっとりというかほんわかというか、そんな優しい目から鋭い刃物のような目。それだけで俺は察することができる。

「ああ、剣士だ。言いたいことは、手合わせでもどうですか、だろ?レミリア、いいか?」

 レミリアは嬉しそうに頷くが、声は普段どおりだ。

「いいわよ。あなたの戦い方、私はまだ見てないしね」

「ありがとう。咲夜、合図頼む」

 日傘を咲夜に渡し、頷いたのを確認してから前に出る。

「イチハさん……でいいですか?弾幕は有り無しどっちがいいですか?」

「どちらでも」

「じゃあ、無し。剣だけの真剣勝負で」

「オッケー……使い方あってる?」

 という俺の言葉にレミリアは頷く。ちょっと安心した。

 俺と妖夢は人里から離れ、広いところへ移動する。《人間の里では妖怪は争ってはいけない》という暗黙の了解があり――これは霊夢から聞いた――、一定の距離をとって俺達が立つ。だが、恐らく先の会話を聞いていたのだろう、その距離の1.5倍ほど距離をとって人が周りに集まってきた。

「寸止めでいいな?」

 そう聞くと、妖夢は静かに頷く。

 二人同時に剣を抜き、軽く構える。

「それでは、戦闘……開始!」

 二人同時に動く。妖夢は頭上に振り上げてから袈裟斬りを仕掛ける。剣を割り込ませて防ぎ、そのまま弾く。水平斬りに繋げたが、後ろに下がって避けられる。が、それは計算通りだ。振り抜いた姿勢から刃側を自分の後ろへ向け、魔力を溜めつつ構える。4連撃技《レイディアン・クライ》。防がれても後ろに下がれるので、追撃を避ける余裕ができる。

 剣が光り始めたのを見て、表情が驚きに染まる。動きを見て防ごうと試みるが、追いきれないらしく構えた位置から予測できる場所に刀を用意することだけらしい。そのまま1撃目。防がれたが、姿勢を崩すことができた。やはりこの《剣技強化》には対応ができないらしい。次とその次はギリギリのところで避けられるが、そこでさらに姿勢を崩せた。追い討ちをかけるように刺突を――。

 首から指一本分離れた位置に撃った。妖夢は疑問からか突きの威力からか、固まってしまっている。後ろに下がり、普段の通り背中の鞘に収める。

「そこまで!勝者、イチハ・リーゼリヴ・ノヴァ!」

 その瞬間、周りにいた人たちから歓声が上がる。見渡すと最初の2倍くらいに増えている。その中には霊夢と魔理沙がいた。魔理沙が手を振っているので、振り返そうと少し手を上げたところで、背後から声がした。

「いやぁ~素晴らしい戦いでしたねぇ~!」

 振り返ると、そこには黒い羽の生えた女性がいた。

「よろしければ先ほどの技のことを……あ」

 金属のこすれる音がして、そちらに向くと咲夜がナイフを抜いていた。

「ま、また後でお話、聞かせてくださいねぇー!」

 そういって反対のほうへと慌てて飛んでいった。後から聞いたが、彼女は「」を発行している鴉天狗で、名を射命丸 文(しゃめいまる あや)と言うらしい。咲夜がナイフを抜いた後の反応からして、頭の回転速度は相当だろう。なぜ咲夜がナイフを抜いたかは聞けなかったが。

 そのときはそんなことも知らず、アレは誰だったんだと、飛んでいったほうを見ながら考えていた。と、不意に袖を引っ張られる。引っ張っているのは妖夢だった。もうしばらく悩んでいたようだが、意を決して口を開いた。

「イチハさん。良ければ、私の師匠になっていただけませんか?」

「師匠……と言われてもな……。剣と刀じゃ扱い方が違うし、戦術的に前に師匠がいたんだろうけど、その人のことも剣術のことも知らないし……」

「大丈夫です。イチハさんは戦い方のコツを教えていただければ、それで」

 俺はしばらく、彼女の瞳を見つめた。翡翠色の瞳からは、不安や恐怖などはなく、強い決意だけが浮かんでいた。

「……分かった。まあ、俺は従者だから、主人に相談しないとだけどな」

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

「い、いや、まだ師匠になるとは……」

 駄目だ。もう人の話を聞いていない。レミリアのほうを見ると、咲夜に何か耳打ちをしている。咲夜が頷いた次には、時間操作の感覚が襲い、気付いたときにはレミリアが隣……いや、レミリアの隣にいた。

「週3回、彼女のところに行ってあげなさい。そして、彼女を一人前の剣士にしてあげて?」

「……分かった」

 そうして、その日はそこで別れたのだった。




次回<大きな壁>
 自分と彼女とを隔てるものは大きかった。
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