今日は和真さんのスキルや、如何にして呼吸にたどり着いたのかについての話です。
「そういえばさぁ」
ある日の休日。学生組+エルフナインが俺とクリスの家で勉強会をしようと言い出し、そこへついてくるように社会人組がやってきたとある日のこと、唐突に奏が口を開いた。各々、ノートに走らせたペンを止め、くつろいでた社会人組もそっちに視線を向ける。
「和真のスキルって一体いくつあるんだ?」
「あっ、それ私も気になってました!」
「いいから、お前はまず課題を終わらせろ」
「えぇ〜……。」
響が真っ先に食いついてきたがこいつは手を止めると課題が全く終わらない。
「でも、それは私も気になっていました」
「えぇ、私もよ」
「私もです」
上から翼、マリア、セレナが口にする。
「確か、職業が『勇者』になったことで向こうのスキルが全部習得されてるんでしたっけ?」
「未来、課題は?」
「終わりました」
渡された課題のページを見ると、確かに課題は終わっている。答えも問題ない。
「流石だな、良く出来てる」
「兄貴、あたしも終わったぞ」
ふむ、クリスも範囲は終わってるな。教えたところはちゃんと復習しているらしい。
二人の顔を見ると、どっちも私も気になりますって顔をしている。
「はぁ、わかったわかった。響達の課題も終わったら答えてやるよ」
「よしっ、やるぞ響!」
「切歌と調は私とセレナが見るわ」
「がんばります!」
「……早く終わらせる」
「デス!」
何故かやる気なる社会人組と学生組。なに?そんなに気になるの俺のスキル?
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「はっきりいって、全部を全部把握してるわけじゃないんだ」
「どういうことですか?」
響、切歌、調の課題が終わると淹れてきたコーヒーを飲みながら約束のスキルの説明をする。
「俺のスキルは言う慣れば向こうの世界の全ての技能だ。軽く1万は超える。だけど、使い方だけは脳にインストールされてるらしくてな、多分、俺がクリスやキャロルのこと忘れてたのはこれが原因だろう。『テレポート』の衝撃と脳が処理に追いつかなくて処理落ちしたってわけだ」
「今は大丈夫なんですか……?」
「ああ、『多重思考』スキルのお陰でな。あのライブ会場に辿り着くまでにいくつかのスキルを脳が理解したんだろう。その中にあった『多重思考』はその名の通り、一度にいくつもの記憶、思考を処理できる。これのお陰でこっちに来てからは記憶が飛ぶなんて、滅多なことじゃ起きてないよ」
「それなら良かったです」
俺の返答に調とエルフナインはホッとしたようだ。マリアやセレナ、キャロルのことを思い出したのは良かったがまた忘れてしまうのは俺も勘弁だ。
「それで、他にはどんなスキルがあるの?」
「そうだなぁ……戦闘系はお前らも知ってるだろうが、『潜伏』、『千里眼』、『魔眼』、『デコイ』、『暗器』、『狙撃』、『高速思考』、支援魔法、攻撃魔法。他に料理や掃除なんかの家事系スキル。ちゅんちゅん丸の手入れのための『鍛冶』スキル。あとはLINKERとかポーションを作るときに使った『調薬』スキルに魔道具を作るときに使った『エンチャント』とかだろうな」
「これだけで大した量だな」
「あとは、『手品』スキルとかありましたよね」
「そうだったな、まぁ正確には『宴会芸』スキルなんだけど」
アクアがよく使っていたからそっちの言い方のほうが馴染み深い。
「クリスさんは他に何か知らないんですか?一緒に住んでるんだから」
「……そうだな、『釣り』スキルとか『騎乗』スキルとかあったな」
あぁ、そういえばそんなのもあったな。
「『釣り』はわかるが『騎乗』とはなんですか?」
「乗馬でもするのかしら?」
「似たようなもんだ、人間が乗るものであれば馬からジャンボジェットまで操作可能ってスキルだ」
「乗り物の範囲が規格外デス!」
切歌のツッコミにまぁここまで範囲が広いとなと心のなかで同意する。
「そうだな、久しぶりに使えそうなスキルでも探してみるか」
俺は冒険者カードを取り出し、それに触れる。こうすることで記載しきれなくなったスキルの羅列が頭の中に流れ込んでくる。気分は仮面ライダーWのフィリップの地球の本棚に近いな。
「……あぁ、これも使えるようになったのか」
「なんか面白そうなの見つけたのか?」
「あぁ、切歌ちょっと手伝ってくれ」
「わかったデス」
そういって、他の皆をリビングに残し切歌を連れて隣の部屋に移った。
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「「お待たせしたデース!」」
『えぇぇぇぇぇぇえぇ!?』
「き、切ちゃんが二人……。」
現れた俺達に皆は面食らってる、勿論片方は俺だ。ドッペルゲンガーのスキル『変身』を使い、姿を完璧に真似たのである。
「「どっちが本物でしょうッ!?」」
さぁて、どっちが本物なのかわかるかな?
「う〜ん、どちらでしょう」
「姿形はそっくり」
「私達でもわからないわね……。」
「そうですね、姉さん。わかるとしたら……。」
俺達二人を皆が見比べる。だが皆姿が同じ俺達を見分けることができない。だけど、一人だけ本物の切歌を指差す。
「こっちが本物の切ちゃん……。」
「大正解デースッ!さすが、調!」
切歌は調に抱きつく。やっぱり、調の目だけはごまかせないか。
「ふっ、まぁ、バレるよな」
「男言葉の切歌というのは珍しいですね」
俺は変身を解除せずに、切歌の姿と声で話す。
「それにしてもまた随分と便利なスキルですね」
「ドッペルゲンガーって言うモンスターのスキルでな、俺も一度騙された」
エルロードでダクネスに化けた、えっと……なんつったっけ?ラヴクラフトとかいう奴が使ったスキルだ。
「で?いつまでその姿でいんだよ?」
「あぁ、それもそうだな」
クリスに言われてスキルを解除すると、ぐにゃりと輪郭が歪んでもとの姿へと戻る。
「いきなり当たり引いたんじゃないか?」
「これなら他にも使えそうなスキルもあるかも知れませんね!」
まぁ確かに、まだ半分くらいしか見れてないからな。もう一度、冒険者カードに触れてスキルを探す。
「おっ、これも良さそうだな。『テレパシー』スキル。念話ができるようになるスキルか、うん?でも条件付きだな」
「確かに先生は戦ってるとき呼吸してるからあんまり喋らない……。」
「それを補うには丁度いいスキルね」
「それで、条件って何さ?」
俺は記憶を探り、その条件を探す。そして、
「ッ!」
俺はパンッと音がなるほど力を入れて冒険者カードを床に叩きつけるとゲシゲシと踏みつける。
「ちょっ、何してるんですか和真さん!」
「使えるかこんなふざけたスキル!!」
「そんなに取り乱すなんて、条件ってそんなに厳しいんですか……?」
皆が気になったように俺を見る。俺は顔が紅潮するのを感じながら絞り出すように言葉を出す。
「接吻……。」
『え?』
「だ〜か〜ら〜……接吻だよ、接吻!キスって言った方がいいか?」
「き、キス……。」
「しかもディープの方じゃなきゃだめらしい……もうやだあの世界のスキル……。」
通りでこんなスキル、向こうでは聞いたはずがないわけだ。恋人くらいだろ、こんなスキル使えんの……!
「封印だな、このスキルは……。」
『異議なし』
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あのあといくつかのスキルを見直したが結局、『変身』以外特に使えそうなのはなかった。
「まだなんかわかんないこととかあるか?俺が分かる範囲なら答えるが」
「はいデス、先生!」
「はい、なんでしょう、暁切歌さん?」
「先生はこんなに沢山のスキルを持ってるのにどうして呼吸を習得したんのデスか?」
切歌の問いかけはある意味自然だと思う。ノイズと戦うだけなら魔法とスキルで事足りるし、フィーネやネフィリムと戦った後ならともかく何故それよりも早く呼吸を習得したのか。
まぁ、一言で言うなら。
「どっかの誰かさんたちに『覚悟のないやつがでしゃばるな』っていわれたからかな〜?なぁ、お二人さん?」
俺がニコニコしながら翼と奏に問いかけると二人は思いっきり目をそらす。そりゃそうだよなぁ、俺にその言葉をかけたのは何を隠そうこの二人なんだから。
「え?そんなこと言ったの、二人共?」
「「…………。」」
マリアの問いかけに二人は顔をうつむかせて無言だ。無言は何よりも雄弁にその答を物語っていた。心なしか二人を見つめる皆の視線が冷たい。
「まぁ、落ち着けよ。マリアたちだって響に似たようなこと言ったことがあるはずだぜ?」
「「「「「ウッ!」」」」」
クリスはフィーネのもとにいたとき、マリアたちはF.I.Sにいたときに色々言ってたからな。
「まああの頃の俺は二課に入って二ヶ月、精神的にも若かったからな。ブチギレて言っちまったんだよ、俺。『覚悟はあるさ、必ずあの世界に帰るって覚悟がな。この世界の人間なんて知ったこっちゃねぇ。お前ら知ってるか?あのライブ事件で生き残った女の子、今とんでもないバッシングを受けてるらしいぜ。なんで一人だけ生き残ったんだ、人殺し!ってな。そんな奴らのために命かけるお前らの気が知れねぇ、誰かのために戦うなんて聞いてるだけで馬鹿らしい』ってな……。」
「それって……。」
「私のことですよね」
「それでどうなったの?」
「もう、喧嘩も喧嘩、大喧嘩!」
「最終的におやっさんに拳骨食らって喧嘩両成敗。お互いギスギスした空気が続いてな、俺だって命かけた仕事してんだ、このままじゃいけないと、二人にある提案をしたんだ」
「提案、ですか?」
その時のことを思い出し、俺と奏、翼は苦笑いを浮かべる。そして、三人同時に口を開き、あのとき俺が口にした言葉を真似る。
「「「おやっさん(旦那)(叔父様)に勝てたら覚悟を認めてくれ」」」
『な、なんて命知らずな……。』
八人同時に同じ言葉を口にした。まぁ、相手があのおやっさんだからな……。
「といっても、スキルと魔法だけじゃ勝てるわけ無いと山で一ヶ月こもって修行した結果身につけたのが全集中の呼吸ってわけだ」
あの山での修行は原作の柱稽古をそのまま再現した。
「半月、山をフルマラソン、飯も走りながら。体力がついたら剣速を上げる特訓、これには緒川さんに協力してもらった。筋肉の緊張や弛緩を利用して長時間その動きが保てるようにな。続いて柔軟、これはおやっさんに力技でほぐしてもらった、マジで股さけるかと思った。次に太刀筋矯正、木が特に多い密林で木を避けながら的を切る訓練、途中いくつもの振り子が不規則に狙ってくるからな、しかも全部鉄製喰らえば勿論やばい。次におやっさんとの無限打ち込み、最後に筋力強化。丸太を背負って走ったあと、滝に打たれる、最後に自分より二周りほど大きい岩を一町まですすめる。これで修行完了。あとはただひたすらに剣を振り回していた」
そこで『直感』スキルが導き出し、たどり着いた『無我の境地』。気づけば俺はヒノカミ神楽を完成させていた。そこから派生させいくつかの呼吸をモノにした。
「なんというか、思ったよりも漠然とした修行ですね」
「仕方ないだろ、元は漫画の剣術だ。寧ろ、よく再現できたと思うよ」
「で、司令との戦いの結果はどうだったんですか?」
「………俺の自爆負けだよ」
『えっ?』
俺が苦い顔で伝えた言葉に全員呆ける。まぁ、当然といえば当然なんだがな。
まだペースが掴めていなかった俺は攻撃の呼吸に集中しすぎて息を吸うことを忘れて最後の一撃を叩き込む瞬間に酸欠で死にかけたんだからな。
「痣まで出して戦ったのにアレだったが……覚悟はくんでくれたらしくてな、今の関係になれたってわけだ」
「ん〜……。」
俺の話が終わると一同の視線がさっきからうんうん唸っている響の方へと映る。
「どうしたの、響?」
「未来。私達が和真さんと会ったのって……ライブから二週間も経ってないときだったよね?」
「そういえば」
「おい、ちょっと待てよ。確か、兄貴が先輩達と喧嘩したのって……二課に入って二月くらいって話だったよな?さっきのがそのときの兄貴の本音なら行動と言動があってねぇぞ」
「どういうコトデス?」
「つまり、口ではあんなこと言っていても誰よりも先に響さんのことを心配して動いていたということですか?」
今度は俺に視線が向く。
やべ、バレた……。
若干、顔が熱くなっているのがわかると今度は奏と翼がクスリと笑う。
「あとから聞いた話だったんだが、響のことは旦那にしか教えてなかったんだってよ」
「ああ。さらにはこの世界の人間のことなんて知らんと言っていたのに、実際にはその逆。怪我を追ってまで立花達を守っていた」
「それでようやく気付いたんだよ、和真は……ただ自分の気持ちを素直に話せないひねくれ者だって、ね。翼?」
「えぇ、だから私達はこの人を認めたの」
二人の話を聞くと、他の奴らがなんか妙な目で俺を見る。まるで、手のかかる子供を見るような慈愛のこもった目だ。
「……なんだよ?」
その視線がこそばゆくて視線をそらしてしまう。というか、なんだこの構図は俺はS.O.N.Gの副司令で教師、ここにいるのは部下と生徒だぞ。立場がどう考えても逆だろう。
「ふふっ、いいえ。なんでもないわ。ただ、貴方は今も昔も変わらないんだなって思っただけよ」
「確かに……兄貴のひねくれ方は今も昔も変わんねぇよな」
「ひょっとしてクリスの性格も和真さんの影響を受けてるんじゃない?」
「はぁっ!?」
「確かにデス!」
「……似たもの義兄妹」
「クリスちゃん、和真さんのこと大好きだもんね!」
「余計なこと言うんじゃねぇ!」
「いひゃい!いひゃいよ!」
途中からクリスに矛先は変わり、顔を赤くして響のほっぺたを引っ張るクリス。
ふぅ、やれやれ……。
「お前ら、飯食ってくだろ。少し待ってろ」
「あっ、私も手伝います」
「サンキュー、未来」
俺はそう言って、キッチンに入っていく。ホント、コイツラといると……昔を思い出す。
『カズマさ〜ん、ご飯まだ〜?』
『カズマ、今日のご飯はなんですか?』
『カズマ、なにか手伝おうか?』
帰りたい、だけど、帰りたくないと思う俺もいる。この矛盾と俺は向き合っていかなければいけない。だけど、いまは、な。
どうせ、後悔することになるのなら今は楽ちんな方を選びなさい……まさか俺があの教団の教義を実演することになるとは、今思えばアイツと俺の相性は思ってた以上に悪くなかったのかも知れないな。
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カズマさんには趣味にギターを追加してアニソンとか披露させたいのですがどうでしょう?
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