荒野の空、イジツの片隅、ユーハングの情景   作:星1頭ドードー

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エンマと桜の木の下で

 ラハマ。

 この町の一角に私の両親が住む邸宅が存在する。だが、邸宅とは名ばかりの代物。外見は寂れた雰囲気を醸し出しており、昔の面影は余り残っていない有様。

 その理由は、私の両親が悪党共に詐欺まがいの要求をされ何度も引っ掛かり、財産を搾り取られて続けた事が原因だ。

 にも拘わらず、まだ自分達は財産があると思い込んでいるのだから、懲りていない。

 両親が変な書類に署名をしないよう監視をし、飛行隊のお仕事もこなしていれば、それなりに疲労も貯まるもの。

 それでも私はお仕事を終えれば実家に戻り、花々の手入れをする。私にとって心が安らぐ貴重な時間だから。

 それに、ここには私が守りたい物が存在する。

 

 ソメイヨシノ。

 穴からやってきたユーハングの人達が残していったとされる桜の木。私のご先祖様がどのような経緯で頂いたのかは分からない。

 最初はとても小さな苗木であったと聞いていたが、二十年、三十年と月日が経つ頃には立派な巨樹へと変化したと聞かされた。

 私に自我が芽生えるであろう年頃の時に見た、あのソメイヨシノの美しい姿が忘れられない。

 巨樹から満開に咲き誇るソメイヨシノの花。咲き始めは淡い白色の花々が、次第に色を付けて染まり、そして散りゆく間際には桜色の綺麗な花を魅せてくれる。

 それだけではない、時折吹く風に乗せられて飛び散るソメイヨシノの花は、まるで別世界を見せてくれているかのように幻想的で美しい光景であった。

 あの日からだろう。私がソメイヨシノの美しさに惹かれて、再びこの子に花を咲かせてやりたいと思うようになったのは。

 

 脚立に乗り、パチパチと心地よい音を立てながら枝の選定を行うエンマ。

 その下でソメイヨシノの根に肥料を被せるべく、キリエとチカが不慣れな一輪車を利用して必死に身体を動かしている。

 

「エンマぁー、私達も手伝わないとダメ?」

「わたくしの誕生日をお祝いしてくれる気持ちは大変ありがたい事ですわ。ですがこちらもわたくしにとって、やらねばならない大切な事ですの」

「おかしくない? エンマのお祝い会の時間を伝えに来たら肉体労働させられるって!」

「力仕事が必要な時に来て頂いたキリエとチカには感謝いたしますわ」

「ケイトだってそこにいるじゃん! ワタシ達だけ肉体労働ってどういう事だー!」

「ケイトには既に頭脳労働をして頂いた後ですわ。これ以上、わたくしの為に肉体労働までさせてしまいましたら、胸が張り裂けるような思いですの」

「その労わりの心を私達にも少し分けろー!」

「そうだー! そうだー!」

 

 双子の姉妹かと思うぐらい息の合う抗議をしてくる二人。

 文句を口にしているが、それでも二人は手を止めるような事はしないのだから、本気の発言ではない事が分かる。

 

「とはいえ、元々は一人で行うはずの作業を三人に手伝って頂いている事も確かですわ」

「ケイトは何もしていない」

「そんな事はありません。私の我儘でソメイヨシノについて調べていただいたではありませんか」

「だが、情報量があまりに少なく、分かった事といえば枝だけでなく幹も剪定し、栄養の一点集中化。そして肥料を与える事ぐらいだけ」

「それでかまいませんわ。何かを始めなければこの子は枯れゆく運命でしたもの」

「ケイトもこの子が花を咲かせた姿を見て見たい」

「わたくしもです。子供の頃に見た、あの幻想的で美しい光景を、再び皆と分かち合いたいですわ」

 

 その願いがいつ叶うかは分からない。私の代では維持するだけで精一杯かもしれない。だけど、あの光景を再び見たい。私や両親だけでなく、コトブキ飛行隊の仲間たちと共に。

 

「すっごい綺麗な光景だったもんね!」

「あれ? なんでキリエが知ってんの?」

「小さい頃、ここでソメイヨシノが咲いたのを見た事があるんだ!」

「もう少し詳細に言わせて頂ければ、庭先に突如現れた訪問者。といった方が正しいですこと」

「へぇ! キリエって人の庭に忍び込んでまで桜の木を見てたんだ!」

「いやぁ……、それには深い訳があるような無いような」

「はいはい。それについては休憩しながらお話する事にしましょう。三人とも、お茶とお菓子は如何かしら?」

『異議なし!!』

 

 喜びを隠さずに、手持ちの道具をそこら辺に放り投げるキリエとチカ。そこに怒っても仕方ない。二人は元々こういう人間なのだ。

 キチンと手を洗ってくるのですよ。そう伝えると元気な声で返事が来る。

 

「さっ、食いしん坊達が戻ってくる前に、テーブルの設置を手伝ってくれるかしら? ケイト」

「了解した。エンマが用意してくれたお茶とお菓子に、ケイトは興味がある」

「用意したと言われましても、元はケイトと一緒に食べようと思って焼いたシフォンケーキですよ?」

「エンマの焼いてくれたシフォンケーキ。ケイトは好みだ」

「そう言って頂けると用意した甲斐がありますわ」

 

 ケイトは表情を表に出すのが苦手な子だ。でも内面はとても女の子をしている。自信の好物が関わればキリエ達と同じぐらいの行動力を引き出す。

 仕事終わりのビールも好き。ぼーっと過ごす事も好き。唯一の家族である兄のアレンの世話を焼くのも好きみたいだ。時々、毒を吐くけれど、それも兄妹のコミュニケーションの一つなのだろう。

 こうした事も、私がコトブキ飛行隊に所属するようになり、ケイトとコンビを組む機会が増えた事によって分かった事が多い。

 きっと、ケイトから見た私も、私自身では気づいていない事をケイトはたくさん知っているだろう。

 それが悪い気がしないのは、私にとってケイトは相棒であり、大切な仲間でもあり、コトブキ飛行隊は私の居場所なのだろう。

 キリエではありませんが、レオナ以外の人に命令されて空を飛ぶなんて想像ができませんもの。

 

 

「エンマ! コレ! すっごい美味しいね!」

「あら、ありがとう。チカ。そう言って頂けると腕を振るった甲斐がありますわ」

 

 お茶よりお菓子なタイプのチカからお褒めの言葉を頂き、胸を撫で下ろす。

 久しぶりに作るシフォンケーキ。前回と同じように出来上がるか不安であったが、チカの笑顔と食欲を見ている限りでは、うまく出来上がったようだ。

 ポケットからハンカチを取り出し、チカの口元に付いたケーキの欠片を取り除いてあげる。

 

「慌てなくても、まだありますわよ」

「へへっ、ありがと! エンマ!」

 

 イジツの空に浮かぶ太陽のような眩しさを感じとれてしまうほど、可愛らしい笑顔を見せてくれるチカ。

 天真爛漫というユーハング由来の言葉があったが、チカに当てはめるのに最適な言葉ではないだろうか。

 喜怒哀楽の表現が豊かで、自分の感情にとても素直な子。喧嘩っ早いのは玉に瑕ではあるが、不思議と喧嘩をした相手と仲良くなる事が多い。

 意外な事に、と言ったら本人に失礼だが、見た目と行動に反して本を読むのが好きな子でもある。

 お仕事でラハマ以外の町に赴くことが多いが、その度に時間を見つけては図書館に足を運んでいる。

 もしかしたら、コトブキの中ではケイトの次に読書家なのかもしれない。

 

「んんーっ! パンケーキは言うまでもなく好きだけど、エンマお手製のシフォンケーキもふわふわで美味しくて好き!」

「そこで最初にパンケーキが出てくるのがキリエらしい」

「えへぇーそんな照れるなぁ」

「褒めてはいない」

 

 キリエはチカよりゆっくりと味わうように食している。

 一口サイズに切り分けたシフォンケーキを口にする度に頬が緩むキリエの姿を見ていると、昔の事を思い出す。

 空ばかり眺めている不思議な女の子と出会った、あの日の事を。

 

 ケイトも一口ずつ噛みしめる様に味わい、紅茶に口をつける。

 表情こそ変わりはないが、フォークを動かす速度は一定を保ち続けている。

 その姿を見ていると、お茶とお菓子を堪能してくれている事が分かり、作った甲斐があるというもの。

 

 三人とも、其々の味わい方をしている姿を見ていると、嬉しさと微笑ましさがこみ上げてきて私まで楽しい気分になる。

 自分で作ったお菓子がこんなにも美味しく感じられるのは、この場に三人が居てくれている事が理由なのは確かだ。

 レオナとザラが加われば、もっと楽しくなるのだろう。空の駅であるロータで、ザラのお弁当をみんなで頂いた時の様に。

 今度、提案してみるのもいいかもしれない。休暇を利用して、全員でピクニックに行くというささやかな夢を。

 目を閉じて想像するだけでも、楽し気な光景が瞼の裏側に浮かぶ。

 

「そうだ! キリエがエンマの庭に侵入した話しを聞くの忘れてた!」

「侵入じゃありませんー、ちょっと迷い込んだだけですー」

「なに? キリエってば無自覚で人の庭に入り込むの? その方がヤバくない?」

「うっさいよ! ヤバくないし! 理由はちゃんとあったし!」

「へぇー! じゃあその理由ってのを教えてよ!」

「ケイトもキリエがエンマの邸宅の庭に不法侵入をした事について興味がある」

「不法侵入って! チカよりも酷くない!? ケイト!」

 

 お腹を抱えながら口を開けて笑うチカ。必死に自分の行動について釈明をするキリエを尻目に、事実を知りたがるケイトの姿を見て、つい口元に手を置いてしまう。

 

「エンマぁ、笑っていないで少しはフォローしてよー」

「ごめんなさい、余りにも面白い光景でしたので」

「誤解されている側は面白くないよぉ」

「そうですわね、せっかくですしその時の事を少しお話しましょうか」

 

 

 私が小さい頃の話。

 今と同じく、庭にソメイヨシノの木があった。その木は私が生まれる前から花を咲かせておらず、このまま二度と花を咲かせる事無く枯れてしまうのではないか。両親の言葉が耳に残る。

 それでも私は見てみたかった。両親から聞かされたこの子の姿を。巨樹から生み出された美しい花と、枯れ際に見せる桜吹雪の光景を。

 子供ながらに、お母様に花の世話の仕方を聞き、お父様にはソメイヨシノの話をたくさん聞かせてもらった。

 教えてもらった事を元に、自分で出来る限りのお世話と、ソメイヨシノに向けてお喋りをしていた。

 とはいえ、会話は一方通行だ。植物が話しかけてくる事が無いのは、流石に理解している。

 この子が何を考えているのか、何を望んでいるのかはまったく分からない。ただ、それでも話しかけた。

 

 そんな日々も過ぎ去り、日課と呼べるぐらいの月日が経った頃、作業中に突如、侵入者が現れた。

 ショートボブの黒髪が頬に沿うように少しだけ内側に向いているその子は、とても可愛らしい笑顔をしていた。髪に葉っぱを付けたまま。

 

「あら、あなたは誰かしら?」

「キリエ! キリエっていうんだ! よろしくね!」

「これはごていねいに。わたくしはエンマと申します」

「エンマ! かっこいい名前だね!」

「名前でかっこいいと言われましても、男の子ではありませんからフクザツですわ」

「なんで? エンマってとっても可愛いじゃん! 髪とかサラサラでキラキラしててわたしは好きだよ!」

 

 そんな事を言われたのは初めてだ。慣れないお世辞に対応できず、もじもじと身体を動かしていると、キリエと名乗った子はソメイヨシノを見上げていた。

 

「えっと、キリエもこの子に興味があるのですか?」

「うん! 空を眺めながら街を歩いていたら、このおっきな木が目にうつったんだ!」

「そうでしたか。ですがザンネンな事に、この子はもう何年も花を咲かせていないのですよ」

「そうなの?」

「えぇ、わたくしもがんばってお世話をしているのですが、中々上手くいかず……」

 

 私が子供だからなのか、何もかも足りていないせいなのだろうか、この子は私が世話を始めた頃と変わらない姿のままであった。

 人と会い、想いを言葉にして口に出してみると、自分の無力さを感じてしまう。

 そんな私を余所に、キリエはこの子の周りを上を向きながらぐるぐると回る。足元には根が剥き出しになっている所もあるので注意をしようとしたその時、キリエが話しかけてきた。

 

「エンマ! エンマ! アレ! みてみて!」

「どうかしましたの?」

「いいから早く早く!」

 

 私にどうしても見せたい物があるらしくこちらに駆け寄ってくるが、途中にある剥き出しの根に足を引っかけて盛大に転んでしまう。

 

「んぐぇーーー!」

「だ、大丈夫ですの!? キリエ!?」

 

 キリエを立ち上がらせて、身体の状態を見る。掠り傷は出来ていたが、出血をする程の怪我はなさそうだ。地面が柔らかい土であったのも功を奏したのだろう。

 服についた土や埃を払いのけ、取り出したハンカチで顔を拭いてあげる。ついでに髪に付いていた葉っぱも。

 

「ありがと! エンマ!」

「どういたしまして。それでどうしたのです? いきなり呼び出して?」

「そうだった! エンマに見て欲しい物があったんだ!」

 

 私の手を取り、再び木の元まで走り出すキリエ。先程、転んだ根の部分は慎重に跨ぎ、再び走り出す。

 歩みを止め、キリエが上の方を指さす。何事なのだろうと思いながらも指先に視線を合わせる。

 そこにあったものは、つぼみであった。

 

「ほら! あれって花が咲く前のだよね! あそこにも! あんなところにもあるよ!」

 

 キリエの指さす方向に視線を合わせると、様々な所につぼみがある。

 先端部分はまだ茶色いが、確かに花が開く為に必要なつぼみだ。

 

「これが開いたらきれいなんだろうなぁ、ってエンマ! どうしたの!?」

 

 涙が止まらない。この子が再び花を開かせる可能性が出てきた嬉しさと、この子が精一杯、頑張ってつぼみを作ってくれていたのに気が付かなかった自分に対しての気持ち。

 心のどこかでは諦めていたのかもしれない。最初の頃のように、手入れをして、正面から喋りかけ、そしてほんの僅か顔を上げていれば答えはすぐに見つかったのに。

 

「グスッ、キリエぇ」

「泣いちゃだめだよ! エンマ! エンマがお世話をしたからこの子も応えてくれたんだよ!」

「それでも、わたくしはキリエに言われるまで、この子ががんばってくれていた事に気づきませんでしたわ」

「さっきまではそうだったかもしれないけど! 今はちゃんと気づいてあげられたんだよ! 泣く理由なんてないよ! エンマ!」

 

 私を必死に慰めようとしてくれるキリエの声が、私の心に染みていくのが分かる。

 今日、出会ったばかりなのに、どうしてここまで親身になってくれるのだろうか。

 どうしてここまで私の心は暖かな気持ちで覆われていくのだろうか。

 気が付けば先程とは立場が逆転しており、私の目元をキリエがハンカチで拭ってくれている。

 

「エンマぁ、泣き止んでよー」

 

 困り顔のキリエ。何か答えてあげたいのだが、溢れ出る感情のせいで口が動かせない。

 悲しみのせいではない。キリエの優しさが嬉しくて、心地よくて、幸せで胸がいっぱいになってしまった。

 その後もしばらく泣き続けた。私を泣き止ませる事を諦めたキリエは、そのまま私の傍に居続けてくれた。時折、頭を撫でて、私が泣き止むまで。

 

 

「へぇー、エンマって小さい頃は泣き虫だったんだ!」

「小さい頃のエンマはとっても可愛らしかったのになぁ。今じゃこんなんだよ」

 

 頭の両側に指を立てて角に見立てている。その姿は鬼か、般若か。

 紅茶を口にし、一息入れてキリエに笑顔で接する。

 

「キリエ、わたくしの事をその様に見ていらしたのかしら?」

「ソンナコトハ、アリマセン!!」

 

 しまった。といわんばかりに慌てて手を引っ込めるが既に遅い。

 後でキッチリとお仕置きをしてあげなければなりませんね。なんて本心でもない事が浮かんできて笑みがこぼれてしまう。

 

「その後の事も聞きたい」

「つぼみを見つけ後は、毎日キリエと二人で手入れを続けていましたわ」

「勝手に脚立を持ち出して、木に登って怒られた事もあったっけ」

「おまけにどこからか大きな剪定鋏まで見つけてきて、両親にこっ酷く叱られてしまいましたわ」

 

 あんなに叱られたのは、あれが最初で最後ではないだろうか。

 その時が私一人でなかったのは、とても心強かったですわよ、キリエ。

 

「でも、その甲斐もあったのでしょうか、この子はその年に私たちに素晴らしい景色を見せてくれましたわ」

「風が吹くと花が舞って凄い綺麗だったんだよ! エンマなんか飛んで行く花びらを必死に集めてたもん」

「あれは! その……、せっかく花が咲いてくれましたのにこれで終わりかと思うと寂しくて……」

「エンマ、可愛い」

「可愛いところもあるじゃん! エンマ!」

「もう! ケイトもチカも、余りからかわないでください!」

 

 幼い頃の行動とはいえ、恥ずかしさのあまり全身が熱を帯びてゆくのが分かる。

 

「ほら! 待ち合わせの時間は聞きましたから、また後でお会い致しましょう! 土弄りをしたのですから埃や汚れを落とさないといけませんわ!」

「ほほーい、それじゃまた後でねー、エンマ」

「集合時間、忘れるなよー!」

「楽しみに待っている。ご馳走様」

「はいはい、また後で」

 

 小さく手を振り三人を見送る。さて、片付けをしてシャワーを浴び、集合時間までに合わせなければなりませんね。

 

 

「キリエ、質問がある」

「んぁ、どったのケイト?」

「キリエとエンマが出会い、桜の木が咲くまでの話は聞いた。だが、キリエが何故、桜が咲く前にエンマの邸宅の庭に入り込んだのか分からない」

「えぇー、言わないとダメ?」

「駄目」

「ぐっ! ケイトがこんなに食いついて来るなんて予想外だよ」

 

 本音を言えば、喋りたくない。だって恥ずかしいもん。

 でも、ケイトから送られてくる興味津々な視線に打ち勝つことは出来なさそうだ。仕方ない。

 

「まぁ、その? 俯き加減で今にも泣きそうな顔をしながら木に喋りかけているエンマを見たら、放っておく訳にはいかない気持ちになるじゃん?」

「普通なら気味が悪くて近寄らない」

「ケイトひどっ!」

「いやいや、ケイトと同じ考えになるっしょ」

「チカ」

 

 同じ思考を持つ者がいた喜びからか、無言でチカを抱きしめるケイト。はいはい、といった態度をしながらも大人しく抱きつかれているチカ。

 こうして見ていると、コトブキの中ではケイトは身長は低い方で、二人の背丈はほぼ同じぐらいかぁ。なんて知る事になる。

 私達は、まだお互いの知らないところがたくさんあるんだなと、そんな考えが頭をよぎる。

 でも、そういった話も今日みたいに不意に聞く事ができたら楽しいんだろうな。なんて思うと心が高鳴る。

 

 二人の前に躍り出て、口に人差し指を当ててお願いをする。

 

「この話はエンマには内緒だからね! 恥ずかしいから!」

 

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