荒野の空、イジツの片隅、ユーハングの情景   作:星1頭ドードー

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 空は青く澄み渡っていた。

 抜けるような。という表現そのままに、空は高く、どこまでも遠くまで続いていた。

 眼下に拡がるのは、見渡す限り続く荒野である。その遥か向こうには、見慣れぬ山脈が見え隠れしていた。

 雲一つない空の下で、私の操縦する飛行機は、翼を広げた大鷲のごとく悠然と飛んでいく。

 発動機の掻き鳴らす音以外は、何も聞こえない静寂の中で、ただ、ひたすらに飛行を続けている。

 時折、風に乗ってプロペラが生む轟音が聞こえてくるが、操縦席で目をつぶり、耳をすませば、まるで自分自身が空を飛んでいるかの如く感じられるだろう。

 ここに座っていると、風を感じることができる。

 そんな錯覚さえ起こすくらい、私にとって操縦席は心地よい空間だった。

 

 空が好きな自分にとって、これほど幸せな瞬間はなかった。

 空と共に生きてきたと言っても過言ではないほど、この時間が至福の時であり、私自身が空を愛していることが誇りでもあり、また空の呪縛にも思えたりもする。

 空の呪い。という言い方のほうが適切であろう。

 なぜ、そう思うのかと。自分の存在価値を問うものであった。

 空の高みの果てへと飛翔することが、答えなのかとも思う。あるいは、それ以外の何があるのかという問いもある。

 だから飛べばいい、それだけのことが、難しい。

 

 私達の与えた技術により、この世界は驚異的な速度で変化を遂げている。

 ある種、誇らしい気持ちでもあるが、時に技術は、悲劇を生み、喜劇を生む。

 飛行機が空を支配する事によって、空を制する者が全てを制する事を、私達自身が証明してしまい、空は争いの場になった。戦争にまで発展した。

 空の覇を競う。その言葉が、正に相応しいだろう。

 

 私が望む、望んでいた姿はこんなものではない、というのが本心である。

 ただ、空に憧れ、自由で在りたいと望んでいた、あの日の姿とは変わってきてしまったことに、違いはない。

 私達自身、いつから変わったのか分からないが、気がつけば自分達の扱う物がどう使われるべきかを考えるようになり、それは次第に戦争の道具となっていく。

 戦争のために技術を磨いているわけではない。と叫びたくもあるが、現実は違うのだと言い聞かせて納得してきた部分も多い。

 それでも、空を愛する、自由に空を駆けるという思いだけは、変わらないはずだ。

 それなのに、何故こうなったのか。空への憧れを抱いた頃の自分を思い浮かべるだけで、泣きたくなるほど辛い。

 だが、ここで泣いてしまっては、過去と向き合うことができない。

 涙は我慢しなければならない。泣くべき時は、今ではない。

 

 今更、生き方を変えろと言われても、そう簡単に変えられるものではない。

 変えるつもりもないのに、変えねばならない状況に追い込まれたことを、恨みたいと思うこともある。

 ただ、嘆いたところで、誰かが解決してくれるものでもないことも、承知だ。

 自分が向かうべき方向への舵は、自分自身が切らねば、誰が取るのだろうか。

 誰も導いてはくれはしない。誰も責任など取ってくれはしないのが、世の常だ。

 ならば、自分で切り拓く他ない。

 蒼天と碧落に吸い込まれそうな大空。その下に広がる荒涼とした大地。

 

 畏日。この世界にその名を付けた者は、どんな思いで付けたのだろうか。

 私には、まだ分からない。




イジツに訪れた誰か。
タネガシに居た誰か。
もしくは。
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