荒野の空、イジツの片隅、ユーハングの情景 作:星1頭ドードー
イジツの綺麗な青空を、私たちハルカゼ飛行隊が編隊を組みながら飛んでいる。
久しぶりに全員と同じ空を飛んでいる事が素直に嬉しい! 最近は個別に割り当てられたお仕事で忙しかったから、なかなかみんなとこうして編隊を組む事は出来なかったけれど……これからも頑張って行こうという意思確認が出来る良い機会になる。
「何より! お腹を満たせなかったあの頃には、戻りたくない!!」
『ユーカ! 突然、大声を出さないでよ!』
「ごめん、エリカ! つい本音がポロッと漏れちゃったみたい」
『本音? 何かあったのか、ユーカ?』
「久しぶりに編隊を組んで飛んでいたら、ハルカゼ飛行隊が六人揃った時の事を思い出して……それで、仕事がなかった頃を思い出したというか……」
『あー、分かる分かる! みんなで丸いテーブルでご飯を食べてー、騒いで笑ってー、カードゲームして遊んだり!』
『それって今も大して変わらないんじゃ……。お給料をわけわけする時も昔と変わらないし……』
ダリアの一言に、他の仲間も無線機を通じて納得するように笑っている。
『でもそうね、何日もお仕事がなかった時もあったものね。あの頃は、隼の燃料から部品代も工面するのが大変だったことを思い出すわ』
「町中を走り回って、少しでも安い物を見つけに行ったよね!」
懐かしさの滲むみんなの話し方に嬉しく思えている私がいる。その時の苦労も含めて、今では良い思い出なんだけれども!
私は思わず笑顔になって話すのだ。だって久しぶりだしね! たまには話したいこともあるってものだよ。
そんな私の気持ちが伝わってきたのかな。みんなは優しい口調で私に応えてくれる。それがとても心地が良いから、余計に私も楽しくなるのだった。
やっぱり私の周りには、最高の仲間がいることを改めて実感できるのである。
そんな風に私も、皆と一緒に和気あいあいとした会話をしながら飛び続けていた。
『ユーカ。昔話もこれぐらいにして、訓練を始めましょう?』
落ちついた声のエリカの言葉が聞こえてきて、ハッとなると共に反省もしたくなる。
「確かにそうだね! 思い出に浸るのも良いけれど、今も大事にしないとね! 今日は新しい編隊の訓練も兼ねた飛行だから、みんな、頑張ろう!!」
『はい!!』
私の声にみんなが応えてくれたことで、更にやる気も出てきたのを感じる!
気合も十分に入れなおすと、操縦桿を握る右手が自然と動きについて行く感覚を覚えていくのを感じられた。
その勢いに乗るままみんなに話しかける。
「よし! それじゃ、今日の訓練を開始するよ!!」
みんなも自分の機体の発動機や、操縦に問題がないことを確認し終えると、私に向かって注目してくれた。
まず、いつものように基本である六機での編隊飛行を行うべく、それぞれが機体を操り、編隊をとるように合図を出す。
私を先頭に、左側にエリカが並んでいて、右側にはアカリの姿が見え、後ろではベルが中心となり、両隣にダリアとガーベラが位置を取る。
最初の頃に比べると、見違えるほど素早く動けるようになったと思うのだけれど、どうだろうか?
「次は二機編隊!」
私の声で三機一組となった機体が右へ左へと動いていく。
以前は機体を水平に保つのが難しかったのに、今では左右のブレがあまり無くなっているのを体感できて嬉しさを覚えると同時に、成長を実感することができる。
ただただ、前を見て突き進むだけの私たちだったけれど、少しずつ変化が出てきていることが嬉しいんだよね! みんなと相談したり、一緒に練習している内に身に付いた技術でもあるし!
特に、この二機編隊の時、エリカは機体操作のコツが少し掴めたと言っていた。それは、僅かに感じられる小さな違いでもあったりするんだけれど。
例えば、二機目の翼端を機体に対して斜めに入れるようにするのが難しく、何度もやり直しをしていると機体の動きが変わることがあるのだ。
もちろん操縦の精度を上げるための反復訓練が必要にはなるんだけど……、でもそういう些細なことに気が付くと、すごーく嬉しかったりしたわけですよ。何しろまだまだ下手っぴな方なので! うん! 自分で言ってちょっと悲しくなった……。
それからは、私も機体を操作しつつ指示を出し、みんながそれに応えるって感じの流れが出来ている。
当初は緊張気味なところもあったけど、慣れてくるにつれて次第に連携がスムーズになりつつあるんだよねぇ!
ふと、エリカの様子を横目で確認すると、彼女は私に視線を向けて微笑んでくれていて、私も同じ表情で返したのであった。
しばらくそのままの編隊で飛行した後は、機体を一列に並べ加速して飛んでみる。そうしてある程度、自由に動くことができたら、今度は左右に旋回する機動を行っていった。
機体制御もだんだん出来るようになってきて楽しい!! 隼三型のおかげもあるけれど、みんなと一緒の空を飛んでいる時の開放感は、本当にたまらないものがある。
それが楽しくて仕方ないせいだ。一息入れると、会話が止まらない私がいた。
「うん! 久しぶりの編隊だけど、手応えを感じるよね! ねっ!」
『そうね。己惚れるつもりはないけれど、私たちだって成長してるはずよ』
『アタシらも遊んでいたわけじゃないもんな!』
『アカリの言うとおりだよ! ウッズ社長にコキ使われた代わりに、飛行時間はたくさん増えたもん!』
『大変だけど、毎日頑張ってきてよかったよぉ……』
『そうね、最初は全然できなかった事も、徐々に出来るようになったんだもの。自信を持っても良いと思うわ』
「ベルの言うとおり! でも私はそれだけじゃ満足できないからさ、これからもずっと頑張れるように、みんなともっともーっと上を目指していきたい! いいかな!?」
私の発言をきっかけに、みんなが次々と同意してくれるのは嬉しく、自然とその言葉が出てくるのだった。
「わたしたちは見に行くんだ! もっともっと広い世界を!」