荒野の空、イジツの片隅、ユーハングの情景   作:星1頭ドードー

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船長と穴の存在 そのさん

 洞窟探索という言葉の響きは、幾つ歳を重ねても心が躍る言葉だと思うのだ。

 幼少の頃は、未知なる世界へと足を踏み込む事に不安など抱かなかった。

 ただし、それらはあくまで自分が行動した場合に限るという事を、私はこの歳になって知るのだが。

 

 フィオは、あの狭い隙間を抜けられなかった事に対して、地面に足を抱えながら座りガチ凹み中。

 ユーリアは、外でも使用出来る折り畳み式の椅子に両足を揃えて座るその姿は、生まれと育ちを感じさせる。

 私といえば、ガーベラ、アカリ、モアを送り出してから自分でも分かる程、落ち着かない。

 この為にご指名させていただき、送り出した張本人であるにも関わらずこの体たらく。

 持たせた無線からの応答が来なければ不安であるし、応答が有れば別の意味でも不安という。

 

「アンタもそんな所でいつまでも突っ立ってるんじゃないわよ。フィオもいい加減、元に戻りなさい」

「船長との秘密だったのに……。私の身体は、何故ここまで私の行動を邪魔するんだよぉ」

「大きくて良い事なんてないことを知れて良かったでしょう。少なくともアイツから話しを聞けるチャンスは得たじゃないの。アイツに聞きたい事は山ほどあるんでしょう?」

「まぁそうなんだがよ、船長が答えてくれるかどうか」

 

 足を抱えたままのフィオは、頭を上げてこちらに顔を向ける。

 そのままジっと見つめるだけならまだしも、様子を伺う様にチラチラと視線を送ってくるところが、なんともいじらしい。

 そうだな、待つだけでは味気ないだろうから、気になる事があれば質問してくれ。

 ただし、面白みの無い話になると思うが。

 

「そんな事はないぞ! 船長については、知りたい事が山ほどあるんだ!」

「あら、随分と情熱的ね。アイツの全てを知りたいだなんて」

「だだダレもそこまでは言ってないぞ!! というかユーリア議員だって船長から聞きたい事はあるんじゃないのか!?」

「ごめんなさいね。昨日の内に全て吐かせたから」

「ムキィー!!」

 

 凄く上から目線で意味深な事を言うユーリアと、それにまんまと乗せられるフィオ。

 私を置き去りにして二人で盛り上がっている。あ、フィオが半泣きに。

 ユーリアも中々大人げない。政治家を相手にフィオが口論で勝てるわけもないだろうに。

 そろそろ止めようと思っていた矢先、無線機から声が聞こえてくる。

 

『もしもし、みなさん聞こえますか? モアです』

 

 その声は、いつも通りの穏和な雰囲気を感じさせてくれるモアの声であり、私の不安を和らげてくれる。

 無線機を手に取り、応答する。

 

『あ、船長。よかった、ちゃんと通じましたね』

 

 何か問題でも発生したのか? 無理に進む必要はないんだぞ? むしろ危険だと感じたら直ぐに戻ってきていいんだからな? 

 

『あはは! せんちょーってば心配しすぎだよ!』

『船長から聞いてた通り、足元に気を付けて進めば問題ないってば。アタシらの事、もう少し信用してくれよ!』

 

 無線機を持つモアの傍にいたのだろう。ガーベラとアカリの声がこちらにも届く。

 

『お二人の言う通りです! 船長はもっと私達を頼りにして下さい!』

 

 私なりにこれ以上ないほど頼りにしているんだけれど、もっと頼って欲しいようだ。

 少なくともこうした会話が出来るという事は、問題なさそうだな。

 

『はい! こちらは順調に進んでいます! そちらの様子が気になって連絡をさせて頂いたのですが……』

 

 フィオならユーリアと口喧嘩するぐらいには、元気を取り戻したよ。

 こちらも特に問題は発生していないから心配ご無用だ。

 

『それなら良かったです! 船長に教えて頂いた場所の近くまで辿り着いたら、また連絡をしてもよろしいでしょうか?』

 

 もちろん、いつでも大歓迎するよ。

 三人なら大丈夫だと思うが、念の為、気を付けてな。

 無線機を通じて其々の応答が聞こえた事を確認して一度通信を終える。

 こちらもただ待っているだけじゃなく、別の入り口でも探してみようか。

 もし入口を見つける事が出来れば、三人の後を追って万全の体制であの空間を見せてあげる事が出来るだろうしな。

 今はどんな状態になっている事やら。誰も訪れていなければゴミで溢れ返っている事は確かだな。

 

「仮にもゲキテツ一家の首領代理なんでしょう? もう少し口が上手くなった方がいいんじゃないかしら?」

「マフィアに大事なのは口先じゃなくて義理と人情だ! それに困った時は船長に頼れってオヤジに言われたから問題ない!!」

 

 首領が穴へと向かう前に交わされた口約束が、フィオの中でとても重要視されている事に気が付くのであった。

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