ベル君に「まだだ」を求めるのは間違っているだろうか   作:まだだ狂

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双雄狼槍(ベルセルク)

 

 朗らかな陽光が宝石のように煌めき、巨大な入道雲が空に城を築いている、晴天の早朝。

 

 普段の日課を終えてシャワーで汗を流したアイズが、くぅと可愛く空腹を訴える胃に操られて大食堂へ足を踏み入れた瞬間。

 

「あの、クソ狼ー! よくも団長を攫ってくれたわねぇええええええええええええええええええええ!!」

 

 夜の喧騒と錯覚するような、ティオネの大音声が黄昏の館全体に轟いた。

 

「こうなったら、ヤケ食いよ! 食って、食って、食いまくるのよ!」と叫びながら、ティオネは机に並べられた料理の皿を次から次へと空にしていく。

 

 髪を逆立て、怒髪天を衝いているティオネを怖れているのだろう。配膳係以外の、食事目的で大食堂を訪れた団員らは、最低でも四つ隣の席に座って恋に狂う女戦士(アマゾネス)の様子をちらちらと窺いながら食事を取っていた。

 

「……どうしたの?」

 

 ティオネがなぜ憤慨しているのかを、彼女の向かいの席に座っている双子の妹(ティオナ)に訊ねるアイズ。

 

「あ、アイズ。おはよう」

 

「おはよう。それで……」とアイズはティオネへ視線を向けた。

 

「いやー、実はね……」

 

 ティオナの話によると、今日ティオナはフィンを逢瀬(デート)に誘おうと密かに画策していたらしいのだが、陽も昇らない時間からベートと共に地下迷宮(ダンジョン)へ向かってしまったのだと言う。

 

「フィンを連れてったのが、ベートって言うのも、怒りが増してる原因だと思うよ」と若干、呆れ気味に言うティオナ。  

 

「ベートは最近、人が変わったように強さを求めるようになったからな」

 

「急な変わりように些か面食らっておるがなぁ」

 

 二人の会話に新たに加わったのは【ロキ・ファミリア】の良心(ママ)、リヴェリアと『三首脳』の一人であるガレスだった。

 

「フィンもアイツの影響を受けたっぽいよね。何だか貪欲になった気がするし」

 

「私も、そう思う」

 

 アイズが頷く。

 

「些か力を求め過ぎているきらいがあるがな。団長と幹部が意気軒昂なのは、他の団員にも良い影響を与える。今のところは問題ないだろう」

 

 無茶をするものには慣れておるしな、とガレスが付け加える。

 

「うっ……」

 

 否定できる材料が一つとしてないアイズは、恥ずかしそうに頬を赤らめさせた。

 

 アイズ自身、最近の二人は異常だと思っていただけに、自分もまた同族だと言うことに少なくない衝撃(ショック)を受けていたのだ。

 

「ま、流石にあの二人ほどではないけどね。アイズは」とティオナが慰めるように言う。

 

「ありがとう、ティオナ。あと、その……昔は心配かけてごめんなさい、リヴェリア、ガレス……」

 

 そう言って、アイズは頭を下げた。

 

「な」

 

「ほう」

 

「へぇ」

 

 一人は驚きの声を、一人は感心そうな呟きを、一人は嬉しそうな音吐を洩らした。

 

 これまでのアイズであれば、決して謝罪まで行き着かなかっただろうことを知っているリヴェリアとガレスは、少しずつではあるけれど無垢な少女が成長していることを実感した。

 

(これも、【未完の英雄(リトル・ヒーロー)】に恋をした影響か……)

 

(アイズの成長は嬉しいことだが……何だか寂しいのぉ……)

 

(やっぱり恋の力は偉大なんだね。むむむぅ……あたしも、負けていられない!)

 

 三人が胸中でどんな思いを抱いているのかわからないアイズは、くぅくぅと可愛くなかったお腹の音を聞いて、大食堂に赴いた本来の目的を思い出す。

 

 空腹に襲われ捨てられた子犬のようにしょんぼりとした表情を浮かべたアイズが「ご飯」と言って席から立ち上がったその瞬間。

 

「覚えてなさいよ、ベートォオオオオオオオオオ!」

 

 フィンと仲良く地下迷宮(ダンジョン)を探索しているだろう駄犬(ベート)へ向けたティオネの憎悪の絶叫がほとばしった。

 

英雄(ベル)君のことは大好きだけど、あぁはなりたくないかなあたしは……」

 

 姉の醜態を目の当たりにして、自分は恋慕に狂わないよう自戒の言葉を吐く(ティオナ)

 

「「え……?」」と驚愕の眼差しを向けるリヴェリアとガレス。

 

「どうしたの、二人とも」

 

「いや、なんでもない。気にするな」

 

「う、うむ。リヴェリアの言う通りだ」

 

 姉同様、既に手遅れであることをまるで自覚していないのが実にアマゾネスらしい、と思う二人。

 

「……?」

 

 未だ恋愛方面は成長途中(推定十歳)のアイズだけは、二人の言わんとすることが理解できず、不思議そうに首を傾げるのだった。

 

 ○

 

「あん?」

 

「どうかしたかい、ベート」

 

「いや、俺を呼ぶ声がしたと思ったんだが……気のせいだな」

 

「ここには今、僕たちしかいないんだ。助けを呼ぶ声だという可能性も、なくはないだろうけど、零に等しい。気のせいで間違いないさ」

 

 そう言うフィンに、だなとベートは頷く。

 

 太陽が地平線の底で眠っている未明、更なる高みを目指すべく、ベートとフィンは地下迷宮(ダンジョン)に足を踏み入れていた。

 

 二人が朝早くから探索を開始した理由は、更なる成長を望んでのことだった。現状に満足して胡坐をかいていれば、ベル・クラネルに追い抜かれるのは必然。二ヶ月も経たずにLv.3の高みへ昇って見せた英雄と肩を並べて戦いたいのならば、研鑽を積むしかない。

 

 血反吐を吐くような、研鑽を。

 

『流石だ、雷鳴の英雄(ベル・クラネル)! てめえなら、この程度のことはやって見せると俺は分かっていたぜ!』

 

『君が僕たちと並び立つ時が、待ち遠しいよ。早く、早く完成してくれ【未完の英雄(リトル・ヒーロー)】。君の光を見せてくれ』

 

 ベートは直接、フィンは間接的にベルの英雄としての生き様に魅了された。それは、例えるのならば光の亡者。

 

凶狼(ヴァナルガンド)】と【勇者(ブレイバー)】は、ベルという強烈な光に目を焼かれて、それ以外が見えなくなっていたのだ。

 

 ゆえに彼らもまた、更なる高みを望む。彼の英雄が歩みを止めないように。彼の英雄に恥じぬ者となるために。

 

 Lv.6ごときで足踏みなどしていられないのだと証明するように、ベートとフィンは『上層』と『中層』に蔓延る有象無象を灰燼と帰して、怪物(モンスター)が跳梁跋扈する『下層』へと下っていった。

 

 そして現在、二人は『白宮殿(ホワイト・パレス)』の異名を持つ37階層へ足を踏み入れた。

 

「相変わらず、目に優しくねえ場所だぜ……」

 

 視界一面、白濁色に染まる外観を見渡して、唾を吐くように言うベート。

 

「そういう場所だからね、37階層(ここ)は」

 

「んなことは、わかってる」

 

 37階層はこれまでの階層とは一線を画す規模であり、通路や広間(ルーム)、壁に道に天井と、ありとあらゆる要素(スケール)が巨大だった。

 

 複雑怪奇な構造。中心部に位置する下層と接続された階段。用意された正解の道順はったったの一つ。もしも迷ってしまえば、二度と出てはこられないだろう悪辣なる仕組みは正に迷宮。

 

 そんな、厄介極まりない白濁色の迷路(ホワイト・パレス)を淀みなく駆けていく道化師の子が二人。

 

新しい武器(コイツ)がどこまでやれるか、実験と行くかァ!」と叫びながら敵へ驀進していくベートが、両腕に嵌めている銀の籠手の名を《ヴァンレーシング》。

 

 最上級鍛冶師(マスター・スミス)椿・コルブランドが、ミスリルを鍛えて造り上げた第二等級特殊武器(スペリオルズ)に分類されるこの武器には、魔法効果を吸収する《フロスヴィルト》とは違った細工(ギミック)が施されている(今はまだ披露する必要はなさそうだが)。

 

「ちっ、弱ぇ。この程度の雑魚を相手にしても、コイツ(ヴァンレーシング)の実力は測れねえな」

 

 失望が、吐息とともに洩れる。彼の足もとには、怪物(モンスター)死骸(ませき)が散乱していた。

 

「しょうがないさ。今のベートの相手をするには、37階層の怪物(モンスター)じゃ役不足だよ」

 

「はぁ……フィン、帰ったら模擬戦するぞ。37階層の奴らがこのザマじゃ《ヴァンレーシング》がどこまで無茶できるのか把握できねえからよ」

 

「あはは、そう言うと思ったよ」

 

 欲求不満だと、相好にありありと浮かんでいるベートを見て、苦笑しながらも了承するフィン。

 

「んじゃ、ここから暫く流れ作業だな」

 

「折角だし、どっちが怪物(モンスター)を多く倒せるか、競争でもしてみるかい?」

 

「抜かせ」

 

 はっ、と鼻で笑ったあとベートは至極真面目な表情を作って平野駆ける狼のごとく大地を蹴った。傍からに勇者を連れて。

 

 ○

 

 道中、ミノタウロスを彷彿とさせる厳めしい巨躯をした怪物(モンスター)の『バーバリアン』や、19階層を跋扈するリザードマンの上位種である『リザードマン・エリート』などを、赤子の手をひねるかのごとく魔石へ変えていくベートとフィン。

 

「おらよっ!」

 

 振るわれる雷滅の拳撃(ヴァンレーシング)

 

『グァ……』

 

 散華する、命。

 

「ぜぁあっ!」

 

 放たれる勇気の一槍(フォルティア・スピア)

 

『ギャ……』

 

 粉砕する、命。

 

 狼と勇者が戦意を言葉で放つたびに、命が血飛沫、骸が踊った。

 

 断じて、37階層の怪物(モンスター)が惰弱であるわけではない。寧ろ彼らは地下迷宮(ダンジョン)の中でも上位に位置する脅威。判断一つ誤れば、L.6とて命を落としかねない危険性が生まれるほどの力を持っているのだ。

 

 ゆえに、異常なのは二人の側だ。ここに到達するまで数え切れないほど戦闘を行ってきたにもかかわらず、息切れ一つ起こさず。武器を振るう姿からは疲労をまるで感じ取れない。

 

 常識の埒外を堂々と闊歩する存在が、ベートとフィンだった。

 

「雑魚が、俺の道を妨げるな」

 

 邪魔だ。

 

『!?』

 

 喜怒哀楽が漂白された無機質な言葉は、鏖殺の予告。彼の英雄(ベル)に勝るとも劣らない速度で地面を駆ける銀狼は、肉体が黒曜石で構築された生きる鎧とも呼べる『オブシディアン・ソルジャー』を拳一つで粉砕する。

 

「僕も負けていられないね」

 

 縦横無尽な戦い振りを披露するベートを横目に、道化師の頭領たる小人の勇者は群れて襲いかかってくる骸骨の容貌を模した『スパルトイ』を次々と斬り伏せて、骨の山を築き上げた。

 

「らぁ!!」

 

「はぁっ!!」

 

 光の亡者を止める手段は無く、逃亡する権利さえ与えられない怪物(モンスター)たちは、訪れる無慈悲な運命(さだめ)を唯々諾々と受け入れることしか許されない。

 

「弱い」と狼が呟いた。

 

「ああ、弱い」と勇者もまた呟く。

 

「てめえらじゃ、Lv.3()雷鳴の英雄(ベル・クラネル)だって倒せやしねえよ」

 

 灰燼と帰した有象を見て、ベートは落胆する。

 

「君たちじゃ、【経験値(エクセリア)】にすらならないよ」

 

 地面に転がる無象を見て、フィンが失望する。

 

 もっとだ、もっと。遙かな高みへ。胸を焦がす憧憬が、光の亡者に無限の力を与える。

 

 しかし、時間の流れは平等だ。英雄も、悪人も、冒険者も、市民も、神でさえ、時の理には抗えない。

 

 光の亡者もまた、時間の理から脱却することだけはできなかった。

 

「ベート、そろそろ帰還しないと、地上を出た頃には夜になってしまうよ」

 

「んじゃあ──」

 

 ベートは獰猛な笑みを浮かべて言った。

 

「最後にアレやってくか」

 

「そうだね」

 

 闘志ほとばしらせる光の亡者たちは、37階層の支配者(おう)が坐す謁見の間(ルーム)へ向けて歩を進めるのだった。

 

 ○

 

 広大な『ルーム』に侵入者が二人。

 

 謁見の申し出なく、土足で踏み入った犬と子供に憤激するように地面が揺れて、震えて、戦いて。

 

 やがて。

 

 ビキ、ビキ、と泣く地面の岩が砕けると、漆黒の巨人が墓から蘇るがごとく姿を現した。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 先ほどまでの雑魚とは比較にならない、生命の危機を直感させる圧倒的な威圧感。

 

 対峙すれば自然と恐怖で四肢が震悚(しんしょう)してしまうほどの凄絶な気配を放つこの怪物(モンスター)こそ、37階層に君臨する絶対的存在。暴虐の秩序を敷く、化生。

 

迷宮の孤王(モンスターレックス)』、Lv.6。

 

 名を、『ウダイオス』。

 

 頭部に鬼がごとき二本の角を生やし、朱色の魂火を眼窩に飼う、漆黒の餓者髑髏(がしゃどくろ)が二人の前に鬼気森然と立ちはだかる。

 

「はっ! この日をずっと待ってたんだぜ、骸骨野郎。誰にも殺られてねえみたいで安心したぜ!」

 

「君には随分と待たされた。少しばかり復活するのが遅すぎると思ってしまうのは、人として落第かな?」

 

 他の怪物(モンスター)と隔絶した存在である『迷宮の孤王(モンスターレックス)』は、一度撃破されてしまうと、一定期間が経過するまで姿を現さない。

 

 前回、期間にして約三ヶ月前。【ロキ・ファミリア】総出で相手をして何とか斃した存在を前にしても、ベートとフィンの表情は翳らない。

 

 寧ろようやくマトモに闘える敵を前にして、戦意に満ち満ちた凶悪な笑顔を浮かべているぐらいだ。

 

「んじゃ」

 

()ろうか」

 

 少しは本気を出させてくれよ、と煽るように嗤う二人の表情に、ウダイオスは憤激の咆哮をほとばしらせた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 怒、怒、怒。大気さえも畏怖させる咆哮から感じ取れるのは、天地を焦がすほどの嚇怒。

 

 絶対に殺す。眼窩で揺らめく魂火がそう叫んでいるのだ。

 

 ──法螺貝の音は鳴った。戦いは、今。

 

「上等だ!」

 

 恐怖の概念を知らないとでも言うかのように、突貫するベート。永久凍土さえ燃え上がらせるほどの殺意の業火を真正面に受けてなお、獰猛。

 

 逃げる兎を追う狼のように、ウダイオスへ臆せず接近していく。

 

「【──吼えろ、黄昏の神狼よ。英雄が鍛えし我が雷牙(きば)をもって──噛み砕け】」

 

 唱えるは、省略詠唱式。ヴァンレーシングとフロスヴィルトが纏う(エンチャントする)は英雄の雷光。

 

「俺を捉えられるか?」

 

 そう言った瞬間、ベートの姿がウダイオスの視界から消える。忽然(こつぜん)と、須臾(しゅゆ)にして。

 

『!?』

 

 目標を見失ったウダイオスは、咄嗟に周囲を見渡して敵の姿を再度捉えようとするが、そうは問屋が卸さない、と邪魔が入った。

 

「君の敵はベートだけじゃないってことを、忘れたのかい? だとすれば、愚かとしか言いようがないね」

 

『ヴォ!?』

 

 人間の言葉に訳せば、いつの間に!? といったところだろう驚愕の声を挙げるウダイオスは、足もとで槍を振るおうとしているフィンを叩き潰さんと、右手を振り下ろした。

 

「遅い」

 

 巨体であるがゆえの緩慢な動作(モーション)は、フィンからすれば止まっているのも同義。中指と人差し指の間に滑り込んで回避すると、

 

「上半身だけでも転ぶのか、試してみようか」

 

 ティル・ナ・ノーグ。

 

 小柄な体躯から放たれる願いの投擲が、夜空を流れる流星のようにウダイオスの顔面に突き刺さった。

 

 ビキ、ビキ。

 

 漆黒の髑髏に生じる亀裂。

 

 一秒後、粉砕。

 

『ウオオオオオオオオオ!?』

 

 悲痛な叫びを挙げる孤独な王は、腕を振り乱して暴れ回る。その行動に意味はなく、また捕食者たちにとって価値は無かった。

 

「恐慌状態、か……」

 

 既に、ウダイオスの命運は決まっている。二人が『ルーム』に足を踏み入れた瞬間から。否、地下迷宮(ダンジョン)に潜ったそのときから。

 

 ウダイオスでこの程度なのか。

 

 ぼそりとそう呟くフィンの表情は失望に濡れていた。

 

「ベート、もう終わらせよう。ウダイオスからは、何も得られない。長引かせるだけ時間の無駄だ」

 

 声を掛けられた狼は空中。

 

 仰向けに転倒した、顔無し、下半身無しの骸骨を詰まらなそうに見下ろしながら、一言。王を処刑する断頭の言葉を告げる。

 

「死ね」

 

 雷が大地に落ちるように、雷狼の顎門(ヴァンレーシング)の鉄拳がウダイオスの(ほね)を貫き(ませき)を砕き、勝敗は決した。

 

『────』

 

 謁見の間に、王の姿はなく。

 

 王だったモノの証である巨大な魔石の欠片(ぎょくざ)の上で胡坐を掻きながら、銀狼は深い溜息をついた。

 

「時間の無駄だったな」

 

 同意するように、勇者が肩を竦めた。

 

「だね」

 

 両者の心に勝利の昂揚はなく。ただ、虚しさだけが渦巻いている。

 

 これならば、二人で模擬戦(ころしあい)をしていた方がずっと有意義だったかもしれない。そんなことを考えてしまうほど、37階層の『迷宮の孤王(モンスターレックス)』は弱かった。

 

「もっと下じゃねえと駄目か」

 

 更に『下層』へ潜りたい欲求が心のうちで暴れ狂う。しかし、団長と幹部が誰にも告げず一日を空けてしまえば、大問題に発展するのは明らか。

 

 責任ある立場に就く人間は、自由気ままとはいかないのである。

 

「はぁ……帰るぞ、フィン。腹が減っちまった」

 

「それじゃあ早く帰って、ご飯にしよう…………でも、どうしてだろう。夕食のことを考えると、親指が疼いて仕方がない……」

 

「なに? お前の親指が疼くのなんて、久しぶりじゃねえか」

 

「あ、ああ。今日は一段と疼きが強い……一体、何が待っているというんだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 帰還後、親指が疼いた原因を嫌というほど思い知ることになるのを、二人はまだ知らない。

 

 

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