甘党提督と響ちゃん   作:パティ

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秘書艦 響

「失礼します。あれ、響だけなのです?司令官さんは?」

 

執務室に入ってきた電が尋ねる。

 

「ああ、司令官ならキッチンにいるよ。午前中の間に今日の分は作っておきたいんだって」

 

「なるほど、そうでしたか。通りでさっきからいい香りがすると思ったのです。じゃあこの書類を司令官さんに渡しておいて欲しいのです」

 

「了解、そこの箱に入れておいて」

 

「ふふ。それにしても秘書艦が板についてきましたね」

 

「あんまり事務作業や書類作成は得意じゃないんだけどね」

 

「まあまあ、何かあれば電もお手伝いするのです。それじゃあまた後で」

 

笑いながらそう言い残して電が執務室から出ていく。

 

艦隊が稼働を始めてから1週間が経過した。仲間も駆逐艦を中心に少しずつ増えたし、海域の攻略もゆっくりとだが、着実に進んできている。

 

しかし最も驚いたのは、司令官の能力と軍属になった経緯だった。

 

司令官は軍に入るまでは、ごく普通のケーキ屋で仕事をしていたらしい。軍や艦娘とは関わりが無かったが、ある日司令官のケーキを買って食べたとある艦娘が戦意高揚、いわゆるキラキラ状態になった。

 

その事に注目した大本営は司令官のレシピを入手し、忠実に再現した。いや、しようとした。しかし、結果は失敗。何度挑戦してもキラキラ状態にはならず、司令官の手で作らなければ意味が無い事が証明された。

 

その後大本営は何を思ったのか、ケーキを作る人間がそのまま指揮をすればいいのではないか、という結論に至ったらしい。どういう意図なのか分からないが司令官も、

 

「毎日納品に行くのも大変だし、住み込み出来るから出勤時間0分でいいかなと思って。まさか鹿屋に来るとは思ってなかったけど」

 

と笑って話していた。ちょっと理解出来ない…。

 

でも悪い人ではないし、司令官としての勉強もコツコツやっているみたいだし、何より美味しいお菓子が毎日食べられるのはとても嬉しい。ただ、

 

「どうして私を秘書艦にしたんだろう」

 

1週間前、私を含めた数人が建造された次の日には、私が秘書艦に指名されていた。もちろん電が補佐に付くということだが、あまりにも早い配置転換に驚いた。司令官に理由を聞いてみたが、明快な答えは聞けなかった。

 

そんなことを考えていたら時計から正午を告げる音が響く。書類を揃え、軽く伸びをしてから立ち上がり、

 

「さて、司令官の様子でも見に行ってみようか」

 

1人呟き、1階に特別に作られたキッチンへ向かった。

 

・・・

 

キッチンの中では司令官が洗い物をしていた。軽くノックをして声をかける。

 

「司令官お昼になったけど、一段落したかい?」

 

「ああ、響。うん、もう一通りの作業は終わったよ。書類任せちゃってごめんね、助かったよ」

 

「それはいいけど。それより今日は何にしたんだい?」

 

「今日はね、シュークリームにしてみたよ。学生時代から思い入れのあるお菓子でね」

 

「それって得意だったってこと?」

 

「ううん、逆。失敗ばっかりでよく先生に怒られたよ。試験の課題もこれだったし、計量初めて間違えたのもこれだし。でもそのおかげで1番作ったのもシュークリームでね、だから思い入れのあるお菓子なんだ」

 

「へー、そうなんだ。じゃあ午後に美味しく頂くためにもまずはお昼にしようよ」

 

洗い物を済ませた司令官と一緒にキッチンを出て並んで歩く。今日は何を食べようか、そんなたわいもない話をしながら食堂へ向かった。

 

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