甘党提督と響ちゃん   作:パティ

5 / 7
初めての戦艦

「みんな揃ったね。それじゃあ製油所地帯沿岸、通称1-3攻略の作戦会議を始めようか」

 

司令官が集まった顔を見ながら会議を開始する。今回の参加艦娘は秘書艦の私、響。補佐の電。それに大淀さんと明石さんだ。

 

会議の先陣を切ったのは大淀さん。

 

「現状、我が艦隊には戦艦がいません。1-3敵主力には戦艦ル級が待ち構えており、今のこちらの戦力では撃沈は難しいかと」

 

「確かにねー。夜戦ならチャンスはあるかもだけど、その前に大破に追い込まれてるもんね。火力、装甲共に駆逐艦や軽巡でやりあうのは分が悪いよね…」

 

普段明るい明石さんも、多少テンション下がり気味で付け加える。

 

「あの…。それなら重巡の方に出てもらうのはどうなのでしょうか?先日加入した古鷹さんや摩耶さんがいますよね?」

 

電がおずおずとしながら発言をしたが、

 

「その2人は加入したてて、まだ練度に不安があるのよね。ぶっつけ本番ってのは整備の側からは避けてもらいたいものよ」

 

明石さんが困ったように話す。

 

うーんと考え込んでいると、

 

「じゃあ戦艦作ろうか」

 

突然司令官がそんなことを言い出した。

 

「遠征班の頑張りや、多少戦果を示したことで資材の備蓄には若干の余裕が出来ている。この辺りで戦艦の建造に挑戦してもいいんじゃないかな?」

 

「戦艦…!」

 

明石さんが目をキラキラさせて呟く。完全にスイッチ入っちゃったな…。

 

「響、今の資材で戦艦建造は何回くらい出来そうかな?」

 

司令官に問われ、手元の資料をめくりながら私は答える。

 

「ギリギリ2回かな。それ以上は艦隊運営に支障が出るね。ただ、できることなら1回にしてもらいたいね」

 

「それに戦艦レシピを採用したとしても、確実に戦艦の建造に成功するわけではありません。複数回の建造は私も反対です」

 

大淀さんが眼鏡を上げながら補足をする。

 

「えー!頑張って戦艦造るから何回もやらせてよー!」

 

明石さんが駄々っ子のように騒ぎ始める。そこへ

 

「ダメよ」

 

と大淀さんの一言。ヤバい、目がマジだ…。電も大淀さんの迫力に顔が引きつっている。

 

「まあまあ大淀さん。では1回だけ、戦艦建造に挑戦しましょう。明石さん、みんなが集めた大量の資材を預けます。よろしくお願いしますね」

 

大淀さんの迫力と司令官の言葉に明石さんも、

 

「は、はい…。ありがとうございます、が、頑張ります…」

 

と、納得するしかなかった。

 

・・・

 

工廠はいつも以上に熱気に包まれていた。先に明石さんが伝えていたのだろう、妖精さんも張り切っている。初の戦艦建造の噂をどこで聞きつけたのか、興味のある艦娘も何人か来ている。

 

「では、早速始めちゃいますね!」

 

すっかり元気になった明石さんが建造を開始する。そして表示された建造時間は、4時間20分。

 

「提督!戦艦です!この時間は…」

 

「明石さん高速建造材の使用を許可します!」

 

「りょ、了解です!」

 

司令官の許可を受けて明石さんが高速建造材を使う。そして現れたのは、

 

「扶桑型超弩級戦艦、姉の扶桑です。妹の山城ともども、よろしくお願い致します」

 

黒髪で巨大な艤装を背負った、艦隊初の戦艦がそこに立っていた。

 

「提督、やりました!戦艦の建造に成功しました!たくさん褒めてください!」

 

「流石です、明石さん!本当によくやってくれました」

 

明石さんと司令官は大喜びで、その場で飛び上がりそうな勢いだった。

 

当の扶桑さんはキョトンとその様子を眺めていた。

 

「騒がしい艦隊でごめんね。はじめまして、ここの秘書艦を務めてる響です、よろしくね。で、あそこで飛び跳ねてるのがうちの司令官」

 

「え、ええ。よろしくお願いします、響さん」

 

少し戸惑っているけれど、落ち着いた物腰の柔らかそうな人。そんな風に考えていると、ひとしきり喜んだ司令官がやって来た。

 

「すみません、ちょっとテンション上がっちゃって…。はじめまして、ここの提督を務めている佐藤です。よろしくお願いします、扶桑さん。期待しています」

 

「は、はい…」

 

「じゃあ早速、摩耶達と演習に行ってもらおうか。響、編成を確認したいから一度執務室へ行こう」

 

頷き扶桑さんに、「また後で」と声をかけて司令官と一緒に廊下へ出る。

 

「あ、あの提督…!」

 

廊下を少し歩いた所で扶桑さんに呼び止められる。

 

「提督は、本当に私を前線に出すおつもりですか?…私は不幸型とも欠陥戦艦とも呼ばれた存在です。艦隊にとってお荷物になります。私に期待して頂いても、それに応えることは出来ないんです…!」

 

震える声で扶桑さんは続ける。

 

「だから、私を艦隊から外してください」

 

確かに艦時代の扶桑さんの評価は良くなかった。そんなことを考えた時だった。

 

「それは出来ません」

 

司令官の強い声が扶桑さんの言葉を跳ね除けた。

 

「扶桑さんはうちの唯一の戦艦です。それをみすみす手放すことは出来ません。それに…」

 

司令官はまっすぐ扶桑さんの目を見て告げる。

 

「艦時代がどうだったか私は知りません。でも仮に欠陥戦艦だったとしたら、その評価を覆してみませんか?」

 

「え…?」

 

驚いて目を丸くする扶桑さんに、少し微笑みながら司令官は続ける。

 

「つまんない昔のレッテルなんてここには必要ないんですよ。扶桑型はここまでやれるんだって、みんなに知らしめるんです。昔の評価を引きずっている人たちを見返してやるんです。そんな下克上を達成できたら、とっても楽しいと思うんです。」

 

「わ、私にそんなことできるでしょうか?」

 

「私も提督としては欠陥だらけです。でもみんなが助けてくれるから、なんとかやってこられました。みんな助けてくれます。扶桑さんも出来ます。だからその火力でみんなを護ってください」

 

司令官の言葉に扶桑さんはしばらく考え込んだが、

 

「わ、分かりました。私、頑張ってみます」

 

と少しだけやる気になってくれたようだった。

 

 

 

その後、演習を重ねた我が艦隊は1-3の攻略に成功した。扶桑さんは高い火力で次々と敵を撃沈していったけど、敵戦艦の攻撃で中破してしまった。でもその後ろにいた摩耶さんと古鷹さんが無傷で夜戦に突入、見事に敵戦艦の撃沈に成功した。扶桑さんは、

 

「やっぱり防御力が欲しいですね…」

 

と自虐的に話していたけど、少しだけ自信が持てたみたいだ。

 

そうそうこれは余談だけど、その海域で出会ったのは妹の山城さんだったんだ。あっという間に扶桑姉妹を揃えた司令官は、実は運がいいのかもしれないね。

 




読んでいただきありがとうございます!お気に入りしてもらえると本当に嬉しいです。

それと2話、4話の誤字報告もありがとうございます。

今後もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。