「みんな揃ったね。それじゃあ製油所地帯沿岸、通称1-3攻略の作戦会議を始めようか」
司令官が集まった顔を見ながら会議を開始する。今回の参加艦娘は秘書艦の私、響。補佐の電。それに大淀さんと明石さんだ。
会議の先陣を切ったのは大淀さん。
「現状、我が艦隊には戦艦がいません。1-3敵主力には戦艦ル級が待ち構えており、今のこちらの戦力では撃沈は難しいかと」
「確かにねー。夜戦ならチャンスはあるかもだけど、その前に大破に追い込まれてるもんね。火力、装甲共に駆逐艦や軽巡でやりあうのは分が悪いよね…」
普段明るい明石さんも、多少テンション下がり気味で付け加える。
「あの…。それなら重巡の方に出てもらうのはどうなのでしょうか?先日加入した古鷹さんや摩耶さんがいますよね?」
電がおずおずとしながら発言をしたが、
「その2人は加入したてて、まだ練度に不安があるのよね。ぶっつけ本番ってのは整備の側からは避けてもらいたいものよ」
明石さんが困ったように話す。
うーんと考え込んでいると、
「じゃあ戦艦作ろうか」
突然司令官がそんなことを言い出した。
「遠征班の頑張りや、多少戦果を示したことで資材の備蓄には若干の余裕が出来ている。この辺りで戦艦の建造に挑戦してもいいんじゃないかな?」
「戦艦…!」
明石さんが目をキラキラさせて呟く。完全にスイッチ入っちゃったな…。
「響、今の資材で戦艦建造は何回くらい出来そうかな?」
司令官に問われ、手元の資料をめくりながら私は答える。
「ギリギリ2回かな。それ以上は艦隊運営に支障が出るね。ただ、できることなら1回にしてもらいたいね」
「それに戦艦レシピを採用したとしても、確実に戦艦の建造に成功するわけではありません。複数回の建造は私も反対です」
大淀さんが眼鏡を上げながら補足をする。
「えー!頑張って戦艦造るから何回もやらせてよー!」
明石さんが駄々っ子のように騒ぎ始める。そこへ
「ダメよ」
と大淀さんの一言。ヤバい、目がマジだ…。電も大淀さんの迫力に顔が引きつっている。
「まあまあ大淀さん。では1回だけ、戦艦建造に挑戦しましょう。明石さん、みんなが集めた大量の資材を預けます。よろしくお願いしますね」
大淀さんの迫力と司令官の言葉に明石さんも、
「は、はい…。ありがとうございます、が、頑張ります…」
と、納得するしかなかった。
・・・
工廠はいつも以上に熱気に包まれていた。先に明石さんが伝えていたのだろう、妖精さんも張り切っている。初の戦艦建造の噂をどこで聞きつけたのか、興味のある艦娘も何人か来ている。
「では、早速始めちゃいますね!」
すっかり元気になった明石さんが建造を開始する。そして表示された建造時間は、4時間20分。
「提督!戦艦です!この時間は…」
「明石さん高速建造材の使用を許可します!」
「りょ、了解です!」
司令官の許可を受けて明石さんが高速建造材を使う。そして現れたのは、
「扶桑型超弩級戦艦、姉の扶桑です。妹の山城ともども、よろしくお願い致します」
黒髪で巨大な艤装を背負った、艦隊初の戦艦がそこに立っていた。
「提督、やりました!戦艦の建造に成功しました!たくさん褒めてください!」
「流石です、明石さん!本当によくやってくれました」
明石さんと司令官は大喜びで、その場で飛び上がりそうな勢いだった。
当の扶桑さんはキョトンとその様子を眺めていた。
「騒がしい艦隊でごめんね。はじめまして、ここの秘書艦を務めてる響です、よろしくね。で、あそこで飛び跳ねてるのがうちの司令官」
「え、ええ。よろしくお願いします、響さん」
少し戸惑っているけれど、落ち着いた物腰の柔らかそうな人。そんな風に考えていると、ひとしきり喜んだ司令官がやって来た。
「すみません、ちょっとテンション上がっちゃって…。はじめまして、ここの提督を務めている佐藤です。よろしくお願いします、扶桑さん。期待しています」
「は、はい…」
「じゃあ早速、摩耶達と演習に行ってもらおうか。響、編成を確認したいから一度執務室へ行こう」
頷き扶桑さんに、「また後で」と声をかけて司令官と一緒に廊下へ出る。
「あ、あの提督…!」
廊下を少し歩いた所で扶桑さんに呼び止められる。
「提督は、本当に私を前線に出すおつもりですか?…私は不幸型とも欠陥戦艦とも呼ばれた存在です。艦隊にとってお荷物になります。私に期待して頂いても、それに応えることは出来ないんです…!」
震える声で扶桑さんは続ける。
「だから、私を艦隊から外してください」
確かに艦時代の扶桑さんの評価は良くなかった。そんなことを考えた時だった。
「それは出来ません」
司令官の強い声が扶桑さんの言葉を跳ね除けた。
「扶桑さんはうちの唯一の戦艦です。それをみすみす手放すことは出来ません。それに…」
司令官はまっすぐ扶桑さんの目を見て告げる。
「艦時代がどうだったか私は知りません。でも仮に欠陥戦艦だったとしたら、その評価を覆してみませんか?」
「え…?」
驚いて目を丸くする扶桑さんに、少し微笑みながら司令官は続ける。
「つまんない昔のレッテルなんてここには必要ないんですよ。扶桑型はここまでやれるんだって、みんなに知らしめるんです。昔の評価を引きずっている人たちを見返してやるんです。そんな下克上を達成できたら、とっても楽しいと思うんです。」
「わ、私にそんなことできるでしょうか?」
「私も提督としては欠陥だらけです。でもみんなが助けてくれるから、なんとかやってこられました。みんな助けてくれます。扶桑さんも出来ます。だからその火力でみんなを護ってください」
司令官の言葉に扶桑さんはしばらく考え込んだが、
「わ、分かりました。私、頑張ってみます」
と少しだけやる気になってくれたようだった。
その後、演習を重ねた我が艦隊は1-3の攻略に成功した。扶桑さんは高い火力で次々と敵を撃沈していったけど、敵戦艦の攻撃で中破してしまった。でもその後ろにいた摩耶さんと古鷹さんが無傷で夜戦に突入、見事に敵戦艦の撃沈に成功した。扶桑さんは、
「やっぱり防御力が欲しいですね…」
と自虐的に話していたけど、少しだけ自信が持てたみたいだ。
そうそうこれは余談だけど、その海域で出会ったのは妹の山城さんだったんだ。あっという間に扶桑姉妹を揃えた司令官は、実は運がいいのかもしれないね。
読んでいただきありがとうございます!お気に入りしてもらえると本当に嬉しいです。
それと2話、4話の誤字報告もありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。