仮面ライダーゼロワン Xenoverse   作:自称ゼロワンマスター

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副社長秘書で、飛電是之助のもう1人の孫

 

―――この世界を、頼んだぞ……

 

それが最期に残した言葉だった。

覚悟はしていた。

 

俺には両親はいなくて、物心ついたときからずっと一緒で、優しいおじいちゃんだった。義理の兄弟とも言える或人が『お笑い芸人』になるって言って家を飛び出したときにも、苦笑いしながら許した。本人は会社を継いでほしいと思っていただろうに。

 

人として生きる立場もその優しさも、じいちゃんは俺にくれた。

 

「……大丈夫か?」

 

遠くにある『跡地』をボーっと見つめていた俺に、福添副社長から声をかけられる。彼に仕える秘書の1人としては、余計な心配は与えたくはない。普段はなにかと叱られたり、身内贔屓の地位だと皮肉を言われたりするが、社員思いの心の広い人だ。

 

「はい、もう子どもではありませんから。」

「そうか。君には悪いが、休む間もないからな」

 

先代社長から託された飛電を守ることに、すでに覚悟を決めている。彼の決意に、俺は頷きを返した。

 

株式会社飛電インテリジェンスは、人工知能搭載人型ロボット『ヒューマギア』を開発・派遣している。創業者は祖父である飛電是乃助であり、一代で世界的な大企業にした手腕を持つ彼の告別式、さらに飛電の今後は広く注目を集めている。

 

「「「お帰りなさいませ、副社長」」」

「うむ。」

 

車から降りた副社長に、俺も続く。専務取締役の山下さんと、シェスタ(副社長秘書型女性ヒューマギア)、その他社員の人たちが飛電インテリジェンス本社の前で出迎えている。年齢層は少し上で、男性率は高い。

 

何人かの社員の視線は少し細められて、俺に向けられている。先代社長の息子の『愛人の隠し子』であり、若くして20歳で副社長秘書になった俺には、身内贔屓が無かったはずはない。2年経った今では少しはそういう視線は減ったが、後継者問題が起こっている時は再び以前の日々に逆戻りだろう。

 

いきなり存在が明るみになった俺は、会社のイメージを下げる可能性は十分にあった。まして、それがあの大事件の直後なのだから、当時の飛電の緊張感は途方もないものだっただろう。飛電に就職するまでどこに行こうとも、監視がつけられていた。

 

 

「是之様、お持ちします」

「気にしないで」

 

シェスタが俺の持つ鞄に手を伸ばしたが、手のひらで制した。黒いグローブと捲られた袖の間に露出している肌にはヒューマギア特有のマークが、俺の視界に入る。

 

副社長型ヒューマギアとはいえ、女性モデルをやってもおかしくはない体型であり、その細すぎる腕に任せるのは気が引ける。

 

「或人のやつは……ごほん……飛電或人様はもう来ているのか?」

「はい。社長秘書型ヒューマギアのイズがお迎えに上がりました」

 

ご苦労様、と声をかける。

 

これが人類とヒューマギアの立場の上下関係だ。同じ副社長秘書であっても、その立場は若くて知識的に劣っている俺の方が上だ。人型ヒューマギアは、他の人工知能製品より多くの誓約によって縛られている。ヒューマギアは人類に生涯尽くす道具として、生み出された。

 

「副社長、会議室までご案内します」

「ふっ、副社長と呼ばれるのは今日でもう終わりだな」

 

どこか嬉しそうにそう告げる。

 

「……失礼いたしました」

「そうですね。2代目社長」

 

シェスタはの複雑な発言にちょっとしたエラーを起こしながらも、謝罪を返す。そこで、彼女よりは知能や知識で圧倒的に劣っている俺が、人間らしい曖昧な発言に返答する。エレベーターに乗る前に、周りにアピールを残しておく意味にもなるだろう。

 

軽度の監視をつけられて育ってきた、そんな俺に全く野心はないと伝えているのだが、先代社長の実孫の1人を担ぎ上げようとする派閥も少なくはない。本来ならその席を老衰までに譲るのだろうが、先代社長はその最期まで後継者を明かすことはなく、正式な遺言状を書くだけに留まっている。

 

俺たちと共に、山田さんも乗り越んでくる。

 

「福添准次期社長、遺言に何が書かれているか気になりますね」

「そうだな。是之助先代社長もわざわざ焦らすなんて、人が悪い」

 

すでに先代社長から託された後継ぎ書類を、次期社長は読み込んでいる。病床に伏せっていた時に、代理として業務を行っていた彼は、社員の期待に応えることができるだろう。

 

 

打ち合わせ通り、すでに飛電の重役が集まっている。

そこにたった1人、私服の青年が座っていた。

 

「皆様に集まってもらったのは他でもない。この飛電の後継者についてです」

 

ニコニコと話し始める副社長に、重役たちもニコニコする。先代社長亡きこれからの飛電も、安泰なのだと。

 

俺の顔を見て、或人はこちらに助けを求めるような仕草をオーバーに行っていた。出会った時は養父の死から塞ぎこんでいたらしいが、無理して笑おうとしている姿が印象に残っている。立ち直った頃から彼の表情豊かさは変わってはいないようだ。

 

「さて、その前に先代社長から預かった遺言状を読み上げねばなりません。そのために孫である彼もここに呼んでいる」

 

一気に視線を向けられ、身体が縮こまっている。お笑い芸人の時に集まる視線とは全く違い、先代社長の孫を『評価』しようとする視線だろう。蛙の子は蛙というように。

 

「君が渡したまえ」

「わかりました」

 

俺が顧問弁護士から預かり、丁重に『或人宛ての遺言状』を渡す。その姿に、現副社長への期待は高まっていた。先代社長の孫すらも人心掌握し、それも息子の隠し子ということを意に介していない心の広さがあるのだと。

 

「なんで、俺が……」

 

嫌な表情をして、慣れない手つきで封を開けた。その遺言状を読み上げる彼の目線は真剣なものとなり、やがてどんどん青くなっていく。

 

「なんだ!一体、何が書いてあった!?」

 

現副社長は思わず、静止している或人から遺言状を奪い取った。

 

「そう遠くない未来……わが社は重大な危機に直面する。ヒューマギアが心無き存在に悪用され、その暴走によって人類を滅亡させんとする」

 

会議室は『会社の危機』という言葉に騒がしくなり、1つの方向を見て静かに後退りを始める。副社長型ヒューマギア、シェスタから少しでも距離を取ろうとしていた。

 

「その対抗手段は……」

 

副社長の重々しい言葉に、息をのんだ。

 

「……その対抗手段はただ1つ、ゼロワンドライバーとプログライズキーだ。人類とヒューマギアを守る仮面ライダーとなってほしい……」

 

社長秘書型ヒューマギアのイズが、或人にそのジュラルミンケースを差し出した。その中身は何の素材からできているのかわからない四角い箱と、俺には見覚えのあるカセットテープらしきもの。

 

「我々人間の手によって、ヒューマギアをコントロールするための新時代セキュリティシステムが内臓されている。その使用権限があるのは我が社の社長のみ……その社長に……」

 

ここから続くのは、その社長の名だろう。

誰もが、手が震えている副社長の言葉を待っていた。

 

 

「飛電或人を任命する!?」

「俺ぇ!?」

「或人ォ!?」

 

思わず。

猫被ってたのに素が出てしまった。

 

 

「社員一丸となって、危機を乗り越えてもらいたい……以上」

 

「ま、待ってくれ! 俺が社長なんてやるわけないだろ!!」

 

自分の手荷物を持った或人は少しずつドアに向かって、後退りしていた。実の祖父から託されたゼロワンドライバーとプログライズキーを置いたままで。

 

「俺の夢は、お笑いを取ることだから……じゃ」

 

現社長はそのまま去っていく。

ジュラルミンケースを持ったイズは追いかけていく。

 

 

「くそっ!」

 

副社長から荒々しく俺へ手渡された遺言状は、効力を持っている。正式な手続きで次期社長は決められており、先代社長の意志と後継する義務を放棄した。しばらくして『呼び戻せ』という声が会議室に響き始めた。

 

「副社長。もう一件内容が」

「うるさい!! 少し1人にしてくれ」

 

「ですが……」

 

ジュラルミンケースを持ったシェスタが押しとどめようとするも、副社長は会議室から出ていった。もちろん、山田さん含めて、俺たちも追いかけるしかない。

 

1階まで降りていこうとする副社長は、もしかしたら昼から居酒屋でやけ酒をするつもりなのだろうか。

 

 

 

「おいおい……」

「い、一体何が!?」

 

飛電インテリジェンス本社ビルとはいえ、凶器を持って真正面から殴りこんでくることまで想定していない。日本にいることによる平和ボケということもあるだろう。

 

ヒューマギアや人間の区別なくガードマンが、飛電ビルのエントランスに駆けつけているが、その日本刀を振る男に対して、全く相手になっていなかった。前衛を務めるヒューマギアは破壊されているが、人間の死者まではまだ出てはいない。

 

 

「副社長の福添准だな」

「そうだが……な、なんなんだ、お前は!?」

 

 

侍は、刀をこちらへ向ける。

 

「飛電インテリジェンスには、先代社長が残した対抗手段があるはずだ。それを渡してもらおう」

 

副社長たちを守るべく、俺は前に出た。

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