一応大陸版の情報(ゲームのサイハテ)で重い内容だということは知っていましたが、訳で分からなかったところが今回のではっきり理解できてしまった部分が出てきて心がクゥーン…(子犬)になったゾ。
……ロサ?来てるわけないだろ!いい加減にしろ!
選ばれたのは、厨二病満足飛竜のシェー!!シャ君でした。
「はぁ……」
一人の女性がポフンと自室に備え付けられたベットに倒れ込む。気分が浮かないのか、自慢の大きな尻尾も元気無く垂れ下がっており、手入れは欠かさず行っているのに毛艶も悪く見えてしまう。
天災トランスポーターである彼女はいつもせわしなく仕事を務め、さらに自分から率先して環境美化に努めており、普段なら多忙な日々を送っている。そんな彼女にも楽しみとしている貴重な休日がある。本来なら誰かとショッピングやパーティーをしたりするが、今はそんな気分が湧き起こらない。
普段とは違う主人の姿に心配なのか彼女と同じ青紫色の狼_グレープさんが顔を近づけて不安気な表情でこちらを見つめてくる。
「……あっ、僕は大丈夫だよ、グレープさん。うん……、大丈夫だから……」
ロドスで天災トランスポーターとして活動している彼女、プロヴァンスはパートナーの頬を撫でながら、まるで自分に言い聞かせるように呟いていた……。
あの一触即発の後、僕達はロドスへと無事に帰還した。彼のことを誤解していたスカイフレアは僕の説明を聞いた後、普段は自信たっぷりの顔が徐々に青ざめていき、必死に謝罪していた。確かに彼女のしでかしたことは、とばっちりとは言え関係ない命を奪ったから許されることではない。
許せない……けど、彼女が横暴な人じゃないのを僕は知っている。高飛車な発言でそそっかしいから勘違いしやすいけど、彼女は他人を見下すような人間じゃない。自らの過失には素直に反省する娘だ。
そして彼はおそらく彼女のことを赦すんだろう。確信しているわけじゃないけど、彼女が僕を助けようとしていたのを彼は分かっていると僕はそう思う。
だから僕は……、彼女を許すことにした。そして一つの条件を彼女に伝えた。
彼_せっくんに会えたら、絶対に謝るようにと。
……何でそんな条件を言い渡したのかって? それはもちろん決まっている。彼がまだ生きているということを僕は信じている。
あんな惨劇を見て何を根拠にと言いたいけど、それには理由がある。ロドスへ帰還する前に、僕は彼女達から少し時間をもらって、彼女の隕石の着弾地点を調べさせてもらっていた。
最初は彼の生存の可能性が無いと悲しみに暮れていたけど、調べていく内に僕はこの場所に違和感を感じた理由が二つ出てきた。
一つは焼き尽くされた焦土の状態だ。彼、もしくは地面に着弾した時を想定していた状態とは違って、地面の焦げが浅いことが分かった。
もう一つはあそこには彼の焼き尽くされた亡骸が無かった。彼の体が灰燼に帰したり、融けて無くなったということもありえなくは無いけど、それならそれで何かしらの痕跡があってもおかしくない。
薪を燃やした際に灰が出るように、硬いガラスが高温にさらされて形が崩れ融けるように。太陽のような全てを飲み込む熱でも無い限り全てを燃やし、熔かし尽くすことは出来ない。いくらスカイフレアのアーツが強力でも、以前本人から流石にそこまでのことは出来ないと述べていたのを覚えている。だから、必ず何かしらの痕跡が残るはずなんだ。なのにあの焦土からは彼の、彼が燃やされたという痕跡すら一つもない。
それらの考察から、彼はあの瀬戸際をどうにか切り抜け、脱出した可能性もあるはずだと僕は睨んだ。
ただ、どうやって彼があの場から逃げ出せたのかは分からない。調べていく内に爆心地の近くにある湖が気になったので、湖に顔を突っ込んで中を調べると、湖底に何処かに通じる洞窟のような穴が存在した。おそらく彼はあの状況の中、湖に飛び込んでこの穴に逃げ込んだのか、はたまた僕達には考えられない方法で逃れたのか。どうやってこの場から離れたのかは分からないけど、少なくても彼が死んでないと希望を持てる材料が分かり、その可能性に信じ込みたかった。
それでも、彼が生きている証拠もまた見つからない結果に終わった為、彼の生存を信じたいのにそれが邪魔をして、僕の心に不安を掻き立てる。
そんな不安を掻き消したいがために、ロドスに帰還した後、僕はいつもの様に天災トランスポーターとしての仕事を務める傍ら、空いた時間は彼が生きている証拠が無いか調べていた。どんな些細な情報でも良いと、ニュース、新聞、果てにはトランスポーターの間で情報交換の場で有名な掲示板を使って彼について探していた。だけど、いくら調べてもこれといった情報は無く、さらに運の悪い出来事が今日起こった。
あの事件から数日後、突然医療部門から緊急要請で僕が呼ばれた。
普段は医療部門に呼ばれることは滅多に無く、仮にあるとしたらそれは鉱石病の深刻な事態について伝えることか、それに近い状況になる。だけど僕の場合、鉱石病は中期段階に入っているが症状自体は安定していて、むしろここ最近は何故か憑き物が落ちたかのように調子は良い方だ。だから深刻な異常で呼ばれたのではないと分かるが、それなら何事なのだろうかと僕は指定された医務室に向かった。
部屋に入るとそこには、
ロドスのCEOであるアーミヤちゃんと医療部門総責任者のケルシー医師、そしてロドスに在籍している医療オペレーターの中で古株なことで有名なワルファリンさんが神妙な顔で僕がやってくるのを待っていた。
余りにも異様な緊迫感が漂う空気に体が強張る僕に対し、アーミヤちゃんはそんな僕を落ち着かせるように優しく語りかけてきた。
「お疲れ様ですプロヴァンスさん。実は──」
彼女が言うには、この前の定期診断の際に僕の感染状況が今までの診察結果に比べ劇的に良くなっており、検査項目はほぼ全て非感染者と差し支えないレベルまで落ち着いていたとのこと。何故か鉱石病によって変異した尻尾はそのままだったが、身体に関して悪影響は及ぼしておらず、個人的にはこの尻尾は気に入っているので特に気にしてはいない。
だがそれでハイおしまい、と言えるほど楽観できる事態ではなかった。何故なら不可能と言われている鉱石病の治療が起きており、異常ともいえる事態だ。この結果を見た医療部門の人々は前回の検査フローで何かの不手際が無かったのか、機器のエラーが無いかと入念に再チェックを行ったらしいが、それら全てに異常は見受けられなかった。
この事態を重要視すべきと判断したロドス上層部は、念のため該当する患者の再検査と本人から詳しい話を聞きたいと意見が一致したことから僕を呼び出すことに決めた。
「────ということなのです、プロヴァンスさん。念のため再検査のご協力と、ここ最近、こうなった原因に思い当たることは無いでしょうか?」
おずおずとアーミヤちゃんはお辞儀をして、僕にお願いする。彼らの話を聞いて僕は思い当たるのはあれしかないと即座にあの光景が頭に浮かんだ。
彼が僕とグレープさんの治療を行ったあの時。彼は僕の体に蓄積していた源石を麻痺毒と一緒に取り込む……彼曰く同化という現象が今回の事態の要因だと推測する。彼は源石がどういったものかはあの時点で知らなかったのだろうし、それを詳しく知ったのは僕の説明を聞いていた時だ。少なくとも彼は意図的に鉱石病を治療したわけではないだろう。
この話を聞いて僕は、知らぬ間にまた彼に命を救われていたことを実感し、熱が胸の中から込み上がってくるのを感じ取った。彼への感謝の思いと、そのことを彼に伝えることが出来なかった後悔。二つの感情が僕の胸の内を熱く満たしていった。
……ただ、僕にとって問題はここからだ。彼の情報は間違いなくロドス……いや、この世界に衝撃を与える程のものだ。今回のことを彼女達に話せば今後の鉱石病の治療に大きな活路へと導けるほどの情報。
僕はロドスが全ての感染者のために精一杯尽力しているのは知っているし、僕もここで活動していてその苦労を共に分かち合っているから、彼らの力になりたいのは紛れの無い本心だ。
だけど……、彼の情報を話してそれでいいのか? 命を二度も救ってくれた恩人に対しろくに恩も返せず、むしろ仇で返すようなことをしていいのか?
もし彼が生きているのなら、この情報によって彼はロドスに目をつけられ、息が詰まるような生活に強いられることになり、もし死んでいるのなら、彼の亡骸は鉱石病の治療のために貢献されるのだろう。
いずれにせよ、このまま彼の情報を話せば彼にとって望まない未来が来るのは明白だ。それは彼の特異性を間近で見た僕が一番よく理解している。
僕は彼のそんな未来を見たくない。それは彼の意思に関係の無いことであり、彼の在り方を踏みにじるようなものだ。
……鉱石病を患った感染者を救うためには仕方の無い犠牲? そんなのは理由にはならない。彼自身がこの世界の実情を憂いて選んだのならともかく、勝手に彼の運命を僕達が決めてはいけない!
人一倍優しい彼をこちらの身勝手に巻き込ませてはいけない。だったら僕がやるべきことは一つだ。
決意を込めた眼差しで目の前の彼女達を見つめながら、僕は口を開き、語り始めた。
(仮にもロドスのお偉方に対して嘘を言ったからなぁ……。これがバレたらおそらく僕はクビになるだろうね、ははっ……)
僕は医務室で自分が言った言葉を思い出してプロ失格だと自虐気味に笑う。お偉方の前で要求している彼の情報を知っているにも拘らず話さなかったんだから当然だ。それでも僕は後悔していない。逃れられない死の運命から二度も命を救われた身なんだ、これくらい彼のためになるならどうということは無い。
けど、これからどうしようかなぁ……。
「アーミヤ、どう思う?」
プロヴァンスが部屋を退出した後、ミステリアスな猫のような容貌を醸し出す白髪の女性、ケルシーが茶髪の兎耳、コータスの少女に問いかける。
「……少なくてもプロヴァンスさんからは、ロドスに協力する意思が伝わっていました。再検査の方は快く引き受けてくれますが、もう一方は……」
コータスの少女、アーミヤはプロヴァンスが話した内容を思い出す。
―再検査にはもちろん協力するよ。けどごめん、原因の方は……―
(……彼女は原因は分からないと語っていましたが、本当は違うと私はそう感じ取れて、それと同時に、私達に対して申し訳無いという想いも伝わりました。でも一体どうして……?)
アーミヤはプロヴァンスが嘘を言っていることが理解できたが、何故彼女があんなことを言ったのか理解できていなかった。嘘をついたのもロドスに対しての悪感情ではなく、何か強い決意があっての行動だと自身の能力で感じ取れていた。
その疑問は何か? と考えていると別の声が部屋の中で響き渡る。
「にしても流石に嘘が下手ではないか? あれではあからさまに何か知っていますと言ったものだ」
「……元々彼女は仕事ではプロ意識が高く、実力もある優秀な天災トランスポーターだ。誠実で責任感があるからこそ、何かを隠そうとして嘘をついても歪に見えてしまう」
髪も肌も雪のように白く、赤い瞳を持つサルカズ_サルカズの中でも特異個体であるブラッドブルードの女性、ワルファリンはプロヴァンスが語っていた嘘に痛烈な意見を述べていた。その意見にケルシーが淡々と答える。
「だがその歪さは、少なからず我々は彼女から信用を勝ち取れている証拠であるということだ。それは分かっているだろう?」
「しかしな……、鉱石病の治療に関わる重要なことだぞ。その情報の有無で左右される取り返しがつかないことが起きる前に、やはり少々強引でも──」
「それは駄目です、ワルファリンさん」
ケルシーの言いたいことは分かるが、何処か納得できないのかワルファリンは強硬手段を進めることを提案しようとする。だが、話の途中をアーミヤがきっぱりとした声ですぐさま否定する。
「貴女の考えも良く分かりますが、それをすれば彼女はロドスに対して不信感を急激に募らせます。それはここまで築き上げた彼女との関係を壊し、また、彼女を含むロドスに協力してくれる皆さんから非難を浴び、組織全体を危うくする結果に繋がります」
「古株やエリートオペレーターに比べれば彼女はここに来てからまだ間もないが、ロドス内で多くの人達から持ち前の明るさと誠実さで信頼を得ている。そんな彼女に特に理由も無く何か異変があれば、彼らは真っ先にロドスに対し疑いの目が向けられるだろう。それはいずれロドスを崩壊させる傷跡に繋がる、違うか?」
現在、ロドスに所属しているオペレーターは過去二年で吸収したメンバーが殆どであり、プロヴァンスもその一人だ。彼女はロドスの理念と天災に立ち向かう困難な状況を打破したいという彼女の意志が一致し、天災トランスポーターとしてロドスに力を貸してくれている。そしてケルシーの言葉通り、彼女がロドス内で構築した天災研究者のコミュニティは大規模の物に比べれば小さいながらもそれなりに力があり、無視できると言ったものではないと。
「それはそうだが……、なら彼女はどうするというのだ、アーミヤ?」
流石にロドスの根幹を揺るがす事態に関わるならばと理解したワルファリンも反論もできず沈黙する。しかし彼女の処遇に対し納得する答えが聞きたいと思う彼女はアーミヤに問う。
「そうですね……。私は何もせず、彼女が本当のことを話すのを待つことにします」
「なんだと?」
「……理由を聞きたい、アーミヤ」
アーミヤの答えに二人は疑問に思い、彼女に理由を尋ねる。
「彼女が嘘をついた時、彼女は本当のことを
「……つまり、彼女が原因を話そうにも話せない、何か別の理由が関係していると言いたいのか?」
「はい。そしてこれは予想ですが、私達が介入するべきものではなく、彼女自身で解決しなければいけないことだと私は感じました。そうなれば私達の方で勝手にどうこうするべきではありません。ただ彼女を信じて待つしかないと」
「例えそれを待ったことで、取り返しのつかないことが起きてもか?」
ワルファリンがアーミヤに鋭いナイフのような通る声で問いかけを下す。
「なにもおかしいことではない。待つと言ってもそれは何時になるか分からんのだ。3日? 1か月? 1年以上? いずれにせよ、待てば待つほどその間、多くの出来事が起こり、救えたかもしれない人々を見殺しになるという結果は当然だ。それでもアーミヤ、お主は彼女を、プロヴァンスのことを信じて待つのか?」
「待ちます」
理屈を怒涛の勢いで並べ立てて問うワルファリンに対し、アーミヤはそんな彼女の問いに凛とした声で、意思のこもった瞳で応える。
「そのような結果が起きる可能性が分かっていても、彼女が、ロドスにいる皆さんが私達ロドスのことを信じてくれている限り、私は皆さんを信じます。私達が直面する困難は、協力してくれている皆さんと互いに補っていかなければ対処することが出来ませんから」
「そのために必要なのはロドスが彼らを信頼し、信頼されていくことだと私は思います。余程のことではない限り、少なくとも彼らが明らかにしてくれる秘密以外のことを勝手に暴いてはいけないんです。それを犯して彼らの関係が壊れるなら、私は彼らの意思を尊重し、話してくれるのを待ちます。幸い彼女はロドスに不利益をもたらそうとして嘘をついたわけじゃないことを分かっていますから」
それに……っと、続けさまにアーミヤは言葉を綴る。
「私達もただ彼女を待って手をこまねくことはしません。彼女が希望を持って来るまでに私達はその取り返しのつかないことを必死に食い止め続ければ、救える人々を救うことが出来ますから」
アーミヤの強い応えにワルファリンも両手を上げてやれやれと言った表情で口をこぼす。
「……わかったわかった、妾も意地悪なことを言った。お主がそこまで言うなら妾も言うことはない」
「ワルファリンさん……」
「ん? 何だ?」
「ありがとうございます、厳しいことを言ってくださったことを。おかげで私は協力してくれる彼女達のために何をすべきか見えましたから」
「ふん、礼などいらぬ。妾は医者として当然のことを問うただけのことだ」
アーミヤの言葉にツッケンとした態度を取るワルファリンだが、それでもアーミヤは笑顔で彼女の顔を眺める。その後アーミヤが壁に立掛けられた時計を見ると何かを思い出したかのようにハッとして声を上げる、
「あっ、もうこんな時間、そろそろ次の仕事に行かないと。それではケルシー先生、ワルファリンさん、私も失礼しますね」
「ああ。行ってこい、アーミヤ。こちらのことは気にするな」
二人の医師に退出の挨拶を述べた後、アーミヤは年相応な少女のように可愛らしい小走りで医務室から退出していった。
「……悪いな、憎まれ役を引き受けてもらって」
「なに、ブラッドブルードは他者から怖れられるのが常の存在だ、これくらい気にすることではない」
二人だけになった医務室内で、ワルファリンに謝罪するケルシーに対し、ワルファリンは何ごとも無いと言った様子で答える。
「…………それにしてもお主はどう思う?」
「彼女が隠している秘密のことか……?」
「そうだ。何せ鉱石病の治療という前代未聞の事実、はっきし言って規格外な出来事だ。妾達が何もしなくてもそれはいずれ世界に台頭し、大きな注目を集める。そうなった際、それを巡っての世界を巻き込んだ大きな出来事、最悪な場合だと世界中を巻き込む大戦争が起きるだろう。そうなる前にこちら側でどうにか対策を考えておきたかったのだがな……」
「それは秘密を握っている彼女も分かっているはずだ。だからこそ、私達に嘘をついたのだろう。私達がその秘密に対し余計な手出しをしないように」
「どういうことだ?」
ケルシーの言葉に違和感を感じたワルファリンは彼女に問いかける。
「彼女は中々見ないほど真摯な性格だ。その秘密を握っているのがもし人物だとしたら、余程ひねくれていない限り、彼女はそいつをロドスに協力してくれるよう上手く橋渡しをしてくれるはずだ」
「……おい、もしかしてお主は、彼女が隠している秘密が
「まだ推測の域だが、私はその可能性が高いと判断する。もし秘密の正体が土地や気候、植物や動物、鉱石といった自然由来の物だったら、野外の専門家である彼女がそれを知らない筈が無く、我々に注意深く説明するはずだ。それが無い以上はまずそういったことはありえなく、そうなれば別の何か、私としては人物ではないかと思っている。ただ……」
「ただ……?」
言い淀むケルシーの言葉にワルファリンは疑問を浮かべる。
「仮に人物なら、社交性がある彼女が説明に困り、嘘をついてまで隠すことだからな。その理由が不明とは言え、そいつは
だが…、と続けさまに思案気な表情をしながらケルシーの口から言葉がこぼれる。
「彼女の様子からして、幸いにもそいつは彼女に気を許しているのだろう。そこに我々が介入すれば話が拗れてしまう可能性があり、最悪我々はそいつに敵意を持たれてしまえば、せっかくの希望をみすみす失わせる結果になるだろう」
「……………………」
漠然としているがケルシーの懸念は最もだとワルファリンは無言ながらも同意する。もしそいつに敵意があれば、既にプロヴァンスは口封じとして抹殺されていてもおかしくなかった。仮にわざと生かしたとしても洗脳などの何らかの方法で彼女に対し自分のことを喋らせない、あるいはより性質の悪いことをしようとした線もあり得るが、アーミヤの言葉からその線は無いと思っている。
とは言え、対人関係は良好な彼女でもそれの詳細が話せないとなると、下手をすれば厄介な存在だということ。そのため彼女は何かしらの理由を持って嘘をついたと思えば一連の行動は理解できる。
「……と言っても推測の範囲内だ、そもそもそれが人物かどうかは確信していない。だが、それの正体が分かったとしても私は、これらのことを唯一の繋がりを持つ彼女に任せてみたい。下手に第三者が関わるのは拙いと思っているからな、今の我々にできることは鍵を握る彼女の意志を尊重するぐらいだ」
「文字通り鉱石病の活路は彼女の手に委ねられた……か。やれやれ、彼女にはとんでもない重石を背負わせてしまったな」
「なに、もし彼女の交渉が上手く行き、……認めたくないが鉱石病研究者として名高い
「お、おい! 散々話しておきながら勝手に妾を置いていくな!」
話したいことはすべて話し終えたと言わんばかりにケルシーはすたすたと部屋から退出し始め、その後ろをワルファリンが慌てだしい様子で後を追った。
鉱石病によって引き起こされ続けている争いの連鎖の中で、一筋の祝福は彼らにどのような影響を与えていくのかは、まだ少し先の未来の話である。
元の本編キャラを書いていて思うのは、理由が無い時にキャラ崩壊させないような台詞にしているかどうか不安になりますね。前回みたいに語録を汚染させたスノーデビル達は意図的とキャラ付けとしてだから別にいいけど、今回そういう訳じゃないから中々難しいゾ。キャラ警察のお兄さん許して!
あと時系列なことを言うと、この小説ではまだチェルノボーグ事変は起きていません。一応うっすらとしたヒント(sideスカイフレア内で)は前々にありましたが。
この話は物語の半年~1年未満前から始まっている感じと思ってくれればOKです。