なんでフェストゥムはテラにいるんですか?   作:野菜大好き丸

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どうも作者です。

復刻燃ゆるも終わり、危機契約に突入しましたね。とりま開始から一週間以内に18等級取るともらえる勲章はゲットできました。ファントムの分身や先峰での足止めと、イフリータの配置変更が間に合ってどうにかファウスト君を削れたゾ。キツカッタ……(小並感)。

小説の方も平日の仕事(いつもの)で時間取られたり、何かとまとめるのに悩みすぎて時間かかっちまいました。ほんとは一月末に一回出したかったのにスマソ。首を長くしていた皆さま、それでは本編をどうぞ。


第15話 災害 ~だんざい~②

 仮面の存在(セツ)がデブ貴族の研究場に侵入しているその頃、

 

 

 

 

 

 ──ズシィィィン!!! 

 

 

 

 

 

「……隊長、どうやら金ぴかが侵入成功したらしいな」

 

「……ああ」

 

「でもセツさん、一人で大丈夫なのです……?」

 

「姉さんの言う通り、敵はたくさんいるんですよね? それをたった一人で相手にするなんて……」

 

「心配なのはわからなくないが、あいつを信じようぜ。あんな異質な見た目をしていてそう簡単にくたばるタマじゃないだろ」

 

 

 研究場エリア周辺を潜伏待機していたマドロック小隊が鳴り響く轟音を耳にし、突入する機会を窺う。その中にはマドロックと彼女の部下、そして共に戦うことを選んだリーベリの姉妹もそこにいた。

 

 潜伏していた彼らは陽動として先に敵地へと突入したセツの身を案じていた。拷問に晒されていたマドロックの救助、鉱石病の治療など底知れない彼の力を目の当たりにした彼らは、彼の実力をいやでも認めている。

 

 とはいえ、彼が引き受けている陽動が危険なことには変わりない。仲間が危険な場所で今戦っている事実に対し、奇襲作戦のためとはいえ安全な場所にいることに彼らは歯痒さを感じていた。

 

 

「皆の言う通り彼が危険に晒されるのは、私も不本意だ……。しかし、彼が今回の陽動として成功のカギとなるのも事実だ。……今はただ、彼からの連絡を待とう」

 

 

 部下たちを励ましながら、マドロックはこの作戦の大元を立案した彼の言葉を思い浮かべる。

 

 

 

 

 

『今回行う作戦なんだが、不安要素を潰すためにとりま俺が先行して強襲、陽動してくるわ。心配するな、私にいい考えがある(キリッ)』

 

 

 

 

(……何故か失敗しそうな気がしたのは気のせいだと思うが、最終的に納得したのは私達だ。彼が無事に上手くやってくれることを祈ろう)

 

 

 どことなく感じるフラグ臭にマドロックは心配になるも、彼の作戦の成功を祈っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──ホラホラホラホラッ、もっとかかって来いよオラァン!!』

 

 

「ぐぁ……、こ、凍った!?」

 

「ひぃ、つ、強すぎる! 何なんだよあいつはぁっ?!」

 

「何やっている! 奴をもっと攻撃しろぉ!」

 

「ンなこと言われなくてもわかってんだよ! だけどな、こっちの攻撃はあのマントで防がれて効かねぇし、それに奴の周囲に浮いているあの氷塊は何なんだ! 当たっただけなのにたった数秒で全身が凍り付くほどの威力なんて聞いてねぇぞ!」

 

「それでも貴様らは儂を守るために攻撃あるのみだ! ……それとも無理矢理言うこと聞かせぬと分からぬか?」

 

「…………くそぉ! やってやるよ畜生がぁぁぁ!!!」

 

 

 研究場ではセツが怒涛の勢いでデブ貴族の部下達を生み出した氷塊で凍らせていく。高台に陣取っていた狙撃部隊やアーツ部隊は既に全滅し、最初にいたはずの部下は既に二割ほど、氷像としてそこらに転がっている。

 

 嵐のような猛攻に対し部下達は怯え、主であるデブ貴族は肉壁として部下をセツにけしかけ、その間に自分が生き延びるためにこの場を切り抜ける対抗策を練っていく。歯が立たない相手に弱気になった部下を見れば、彼らの腕や首に着けている洗脳装置で無理矢理戦わせることを脅しにかけていた。感染者に無理矢理言うことを聞かせるために用いていたそれを、彼はもしもに備えて捨て駒となる部下全員にそれを無理矢理装備させていた。

 

 デブ貴族からの宣告に今までの甘い汁を啜ってきた自業自得が返ってきたことを理解しながらも、部下達は顔を青くし、半ば自暴自棄で特攻をかけていた。

 

 

 だがそんじょそこらの雑兵ではセツの相手にならないのは始めから決まっていた。僅かな期間だけとは言えあのスノーデビル小隊から戦い方を教わり、放浪している時には凶暴な獣や怪物等を相手にしてきた経験もあるのだ。加えてフェストゥムに元々備わってる戦闘力の高さも相まって、争いとは無縁だった彼も自身の戦い方が分かりつつある今では、大抵の敵には後れを取らない。

 

 

「くそっ、射撃戦がダメなら接近戦で──」

 

 

『遅いゾ、あらよっと』

 

「なっ、……ぐはっ?!」

 

「あん? ……ぐへぇ!?」

 

 

 せめて一太刀与えようとセツの懐に飛び込もうと接近する戦闘兵。しかし接近したまでは良かったが、その行動を読心で見抜いていたセツは腕を瞬時に伸ばして彼を掴み、適当な方向へと投げ飛ばす。投げ飛ばされた先にはよそ見をしていた別の部下がおり、投げられた部下はそのまま勢いに乗って彼にぶつかった。

 

 

 

 ちなみにぶつかって動けない二人を、セツはすぐに氷塊をぶつけて凍らせ、再起不能にした。無慈悲である。

 

 

 

 矢やアーツなどの遠距離は外套に防がれ、接近してもまるで先読みされたかのようにいなされ、反撃に凍らされてしまう。そんなスキのない相手に部下達の士気は下がる一方であったが、デブ貴族は敵の戦い方を見てある妙案を思いつく。

 

 

「……貴様ら、助かりたいのならしばらく儂を守れ! 執事、あれを全て持ってこい! アーツジャマーを起動させて奴のアーツを無力化させる!」

 

「全て!? しかしあれは効果は高いですが、一つでも貴重なもので……。それにそうすれば我々もアーツが使えなくなります!」

 

「奴のアーツを見ろバカもん! あの威力からして一機では抑えられないほどの力を持っている。出し惜しみしていれば一方的に負けるのはこっちじゃぞ! それにこちらのアーツが使えなくなっても、あの厄介な冷凍能力を封じればまだマシじゃ! はようせい!」

 

「……畏まりました」

 

 

 デブ貴族の作戦にこの場にいた全員は彼の命令に従うのは癪だと思いながらも、その作戦にわずかな希望を感じていた。デブ貴族が自身の研究を行う上での感染者対策として、その中で脅威だと考えたのはアーツだった。アーツで抵抗された時の損害は甚大ではないと考えた彼は、それを封じる手段もいくつか考案していた。

 

 こうして開発を重ね出来た彼の自信作の一つであるアーツジャマーは、今までの研究結果や他の研究資料、特性の似た装置から機能等をフィードバックし、完成させた代物である。マドロック達もデブ貴族が輸送艦の乗組員に渡していたこれによってアーツを封じられていた。

 

 

 彼らの目の前にいる敵は凍結能力に特化したアーツ使い。接近戦もそれなり出来るようだが、あのアーツが一番の脅威であり、多勢に無勢である状況を覆しているのだ。最初に見た緑の結晶の存在も不可解だが、あれもアーツの一種だと考え、とにかく敵の強力なアーツを封じてしまえばあとは数の暴力で押し切れる。しかも何故か敵は凍結による再起不能を狙っているばかりで、殺しはしてこないのだ。

 

 何が目的なのかは知らないが、不殺とかで舐めてかかっているならその余裕を歪ませてやると意気込む部下達は守りに特化した陣形を組み、セツの攻撃を凌ぐ。そして執事は奥の手であるアーツジャマーをデブ貴族の元へと持っていき、デブ貴族はそれの起動に急ぐのであった。

 

 一方でセツは敵の行動に変化が起きたことを知りながらも、気にせず彼らを順当に再起不能にしていき、数を減らしていった。

 

 

 

 そうして戦いは膠着状態になって数分後……、生き残っている部下の数が六割近く迫るその瞬間、意気揚々とした声が戦場に反響する。

 

 

「よし、アーツジャマー起動! お前の快進撃もここまでだ、化け物!」

 

 

 

 

 ────キィィィィ────―ン

 

 

 

 

『ん? 何だこの不快な金属音……、ファッ!?』

 

 

 デブ貴族の言葉と突然鳴り響く金属音を訝しげに思いながらも氷塊を敵にぶつけようと放った瞬間、異変が起きた。放った氷塊が瞬く間に砕け、塵となっていく。砕けた氷を目の当たりにして驚くも、セツは再び氷塊を生成しようとしたが、何故か生成が上手くいかない。しかもあの不快な音のせいなのか彼に身体が重くなったかのような感覚に襲われる。それでも何とか氷塊を生成しアーツジャマ―と呼ばれた機械に放つが、威力が格段と下がっており、機械に被弾しても先ほどまでの凍結力が無い。

 

 

「ぬぅ……、まだアーツを放つことができるのか……。ならば最大出力で──!」

 

『くそ……、力が、封じられた……? ぬぅ……』

 

 

 まだ悪あがきができるセツに対し、デブ貴族が装置の出力を最大に上げる。これでこのエリア全ての者がアーツを使うことが出来なくなったが、それと同時にセツの氷塊を生成することもできなくなった。そして無理に力を使った反動が来たのか、セツは体勢を崩してその場でうずくまった。

 

 

「よし今だ! あの不届き者を包囲し、そして奴を拘束しろ!」

 

「わーってるよ全く」ポイッ

 

 

 ──パァン!! ギュルル!! 

 

 

『 ちょ!? 流行らせコラ(離せコラ)!』

 

 

 完全にアーツを封じ、消耗したのを確認したデブ貴族はセツを包囲し、捕えようと部下に命令を下す。号令と共に部下の何人かはセツの周囲に立って包囲し、持ってる武器を彼に突き付ける。

 

 敵の動きに警戒しながら部下がセツの方へ何かを投げる。それは瞬時に破裂して中身から帯状の物が飛び出し、セツの身体を締め付けて拘束する。彼が投げたのは拘束用の手榴弾であり、内部に強化ゴムで出来たゴムバンドで目標を拘束する一品。

 

 

 バンドの締め付ける力が強く、抜け出そうにも過剰なまでの圧迫感がセツの動きを妨げる。そんな彼の姿を見てニタニタと笑みを浮かべる。

 

 

「ふっふっふ、ようやく追い詰めたぞ侵入者よ」

 

「お見事です旦那様」

 

「うむ、何所で儂らの所業を嗅ぎ付けたのかは知らんが、単身で来るだけの知恵の無い愚か者であったか。腕に自信があったようだが、自信の元であるアーツを封じてしまえばどうということは無い。全く馬鹿な奴だ」

 

 

 地に伏すセツを見下ろすように勝ち誇った笑みを浮かべるデブ貴族。それにつられて彼の部下達もスカッとした表情でセツを見下ろす。苦汁を舐めさせられた相手が封じられ、先ほどまでの余裕を歪ませられたと思うと全員が胸がすいた気分に包まれていた。

 

 

『ちぃ、拘束が……。しかも力が、でねぇ……』

 

「もはやこれまでじゃな。まぁ最初に儂らの肝を冷やさせたのは誉めてやろう。今後その力は儂の研究材料として役に立てるのを思うがいい」

 

『……ああ、全くだよ──』

 

 

 勝利を確信し、敵が目の前の事実を受け入れた瞬間、彼らは今度こそ勝利を確信していた。最初のあの時とは違い、敵は完全に弱り、拘束されている。もはや覆すことの出来ない状況にデブ貴族は部下に命じ、セツを完全に封じ込めようとしたその時──―、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──ここまで計画通りに事が進むとはな』

 

「「「「「「「……はっ?」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 上手くいったと言わんばかりにセツが呟き、その言葉に一同がその言葉の意味に疑問に思う。刹那、彼から突然眩いほどの白い閃光が爆ぜ、全員の視界が純白で覆い尽くされる。

 

 

 

 

 爆風のように広がるそれは彼の周りにいた部下全てを飲み込み、範囲外付近にいた部下がそれに触れると、触れた個所が瞬時に凍結し始めた。閃光だと認識していたそれが、極限までに冷え切った冷気であることを全員が気づくのは時間はかからなかった。そして冷気が晴れたその先に──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ふぃーよっこらせっと、いやー疲れた疲れた。猿芝居するのも一苦労だったよ』

 

 

「な、ななな‥‥‥‥!?」

 

 

 そこには氷像と化した部下達と、凍ったゴムバンドを砕きながら拘束を自力で解き、氷像となった彼らを押しのけて姿を現すセツが。しかも先ほどまで消耗していた姿は嘘だったかのようにピンピンしている。デブ貴族はあり得ない光景にわなわなと声を震わせて動揺し、それはここにいる彼の部下達全員が同じ気持ちを抱いていた。

 

 デブ貴族の側には相変わらず不快な金属音を立てているアーツジャマーが。それはすなわちアーツを封じる機能はまだ生きているという証拠。それなのにアレはアーツを使うことが出来ている。

 

 

「何故だ!? 何故アーツが使える!? アーツジャマーが作動しているんだぞ!!」

 

『ん~~? あぁ、そのポンコツのことか。確かに動いているからアーツは使えないな?』

 

「そうだ! だからこそ『でも、一つだけ言わせてもらうゾ』──む?」

 

 

 デブ貴族が捲し立てるようにセツに疑問をぶつける。セツはその反応に舐め腐った態度から真面目な雰囲気に切り替えながら彼の疑問に答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()?』

 

「なん……だと……?」

 

『そもそもおかしいと思わなかったのか? 俺は既にアンタらの調べはついていると言った。ならお前達がアーツを封じる手段があるのは分かっているんだよ。なのにアンタら、何故そこまで考えが思い至らないんだ?』

 

「な、なら貴様が使ってきた能力はアーツではないとでも言うのか!」

 

『当たり前だよなぁ? でなきゃこんな馬鹿げた特攻なんてしないって、はっきりわかんだね』

 

「ば、馬鹿な……」

 

 

 彼らは小馬鹿にするようなセツの言葉に衝撃を受けていた。アーツが力として絶対的な常識であるこの世界に、まさかそのような異端なモノが存在するとは思ってもいなかった。だが今起きている現実を考えて、奴の言ってることが真実だと受け入れなければこの現象はどう説明すればいい。デブ貴族とその部下達は現実と自身らが培ってきた常識の狭間に困惑していく。

 

 

 部下は困惑する中、デブ貴族は命の危機を感じながらもある野心が芽生えていた。

 

 

 目の前で見せつけられたアーツでないあの力。そしてそれを操る謎の存在。あれは一体何なのか? 目の前に存在する者の謎に対し研究者としての血が騒いでいた。ぜひとも研究をし、この世の真理に近づきたいと。

 

 だがそれを解明するにも自信が生きてなければどうにもならないことを彼は理解していた。口調こそは穏やかだが、アレは間違い無く我々全員生かして返す気は無いだろう。最早部下やこの研究場の全てを捨ててでもしなければ生き残れることはできない。

 

 

 どう切り抜けるかと再び策を考えようとするその時、セツが再び喋りだす。

 

 

『そうそう、何でこんなにベラベラと喋っているのはな──―、こっちはもうチェックメイトってことだ!!』

 

 

 そう言ってセツがアーツジャマ―に目掛けて黒くて小さい何かを高速で放つ。そのスピードに誰も反応できず、機械に刺さったそれは楔状の黒い物体であった。

 

 機械に刺さったことに気づいたデブ貴族は執事と何人かの部下を連れて、楔を引っこ抜こうと機械に近づいたその瞬間──、楔が爆ぜた。楔は膨張し、爆風のように球状で広がる黒いエネルギー体はアーツジャマ―全てと、機械の近くにいた人間全員を飲み込もうと広がり続ける。

 

 

「何っ……、ぎゃああああぁぁぁぁ!!?」

 

「がぁあああああ!!? 旦那様ぁぁぁ、助け──」

 

「う、腕がぁ!? 俺の腕と足がぁ!!?」

 

「待ってくれ! 俺を置いてく──―」

 

 

 絶叫と共に広がっていた黒い球体が消えると、そこにはあったはずのアーツジャマーの機械が欠片一つも無く、地面をスプーンで掬ったかのようなクレーターしか残らなかった。同時に完全に巻き込まれた執事や何人かの部下はもうどこにも存在していない。何とか逃れて生き残ったデブ貴族と部下達も手足を失い、失った箇所から血を吹き出し、どくどくと流れ出していった。

 

 

『よしよし、アーツジャマ―ってやつは無事に全部消滅したな。それと迂闊に近づいて巻き込まれたのはご愁傷様なこった、同情はしないけど』

 

 

 一発の楔によって引き起こされた事態に淡々と述べるセツ。敵とはいえ人間を消したことに気に留めない冷徹さに、デブ貴族と部下達は吐き気を催すような恐怖に包まれた。

 

 

「こ、この人でなし!! 悪魔め!! なぜ儂がこんな目に合わねばならんのだ!!!」

 

『は? 何言ってんだお前? そっちこそ散々感染者を見て見ぬふりして殺してきたんだろう? それも女子供、助けを求めてる者関係無くな。身勝手な都合で関係無い人達を鏖殺しておいて、それはちょっと虫が良すぎるんじゃねぇか?』

 

「それのどこが悪い!? 感染者なぞ生きる価値の無いクズ共だろう! 儂はそのクズ共を有効活用しているだけで、むしろクズ共を処理することで面倒な感染者問題を解決してやってるのだぞ! 感謝して欲しいのものだ!!」

 

「感染者問題を解決、ね……」

 

 

 セツの所業にデブ貴族は非難の声を荒げる。まるで自分のことを棚に上げたかのような理論に、セツは苛立ちを募らせながら正論を吐き捨てていく。負けじとデブ貴族も反論するが、感染者を侮蔑した聞くに堪えないその内容にセツはまるで話にならないと言いたげな態度を取る。

 

 

(感染者を免罪符代わりにして自分は悪くないってわけか……。態度から見て分かっちゃいたが、最早救いようがねぇな。となれば──)

 

 

 

『…………あー、もういい。これ以上の話は無駄ってことが分かった。どちらにしろお前らは私欲で人の命を食い物にしていったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──―そう楽に死ねると思うなよ? 

 

 

「「「「「──ゾクッ!!」」」」」

 

 

 彼の身体から放たれる絶対零度のような鋭く、無慈悲な殺気。

 

 それはまさに蛇に睨まれた蛙のように、彼らの心をへし折るには十分だった。部下達は恐怖のあまり声が掠れて絶叫も出来ず、デブ貴族に関しては腰を抜かして放心しかけており、ズボンの股にじんわりと生温かいシミを作っていた。

 

 彼らは生き残るために、脳内に思考を張り巡らせる。このままでは殺される、逃げなくては。しかし逃げるといっても何所へ? 

 

 だが逃げるなら今しかない。あのデブは放心している。普通なら腕や首輪についてる洗脳装置によって操られるが、今はその心配は無い。後はあの怪物が追ってくることが懸念だが、そんなことに構っていられない。

 

 

 

「「「「「に、逃げろぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」

 

 

 無理矢理喉を動かし、掠れながらも精一杯出した絶叫と共に部下達は一斉に走りだす。一刻も早くこの場所から離れるべきだと、脇目も振らずに脱兎のごとく逃げていく。離れる間際に彼らはちらりとあの化け物を見やるが、追跡してくる気配はしない。

 

 何故追ってこないことに疑問に思いながらもその理由を考える余地は彼らには無かった。今は生き残るのが先だと、息を切らしながら走っていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………逃げたか。はっ、殺される覚悟も無いくせにこんな惨い所業をするなら、初めからしなきゃいいんだ)

 

 

 セツは彼らの行動を眺めながら率直な感想を心の中で述べる。もし彼らが自身の行いに罪の意識を感じ、犠牲にした命の重みを理解していれば少しは温情は与えていた。

 

 だが実際は殺された犠牲者に対して何一つ思わないどころか、犠牲者は感染者だから何をしても自分達は悪くないという身勝手な理論を抗弁し、反省の色も無かった。この世界の常識による影響も大きいだろうが、セツにとってはそんな理由を、この世界の常識を認めたくなかった。認めれば感染者がより虐げられていく結末になってしまうからだ。

 

 

 だからこそ迸るほどの殺意を込めた怒りを奴らに向けた。犠牲になってる感染者が悪であることを否定するために、自分の知ってる優しい感染者達がこんな奴らによって犠牲にされる未来を否定するために。それこそ全て無に帰してでも────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ⦅(`・д・´)!!! ⦆

 

 

 

(──ッ!? ……悪いアルタ、助かった。()()やらかすところだったな……)

 

 ⦅ε-(´∀`*)⦆

 

 

 ドス黒い感情に支配されそうな所をもう一人の自分であるアルタの呼びかけで正気を取り戻す。よく見ると周りの地面が過剰なほどに凍てついたり、引き裂かれたかのような跡が残っていた。

 

 

 我に返ったセツは自身の力の強大さを思い出す。怒りのままにそれを開放すれば何も残さず、放浪していた時に一度そのミスを犯したことを。その時、危うく関係無い人も傷つける事態になりかねなかったのを覚えている。

 

 

(とりあえず逃げた奴らのことは放っておこう。まだここでやることがあるからな。……それに逃げた所でアイツらが()()()()()()()()()()()()()()()()()()())

 

 

 冷静さを取り戻したセツは立ち去る逃亡者の方角に踵を返しながら、まだやるべきことがあると自身に言い聞かせながら思考を切り替えた。

 

 

 




果たして、逃亡者たちは無事にこの場から逃れることが出来るのでしょうか?(フラグ)


なおポロポロ出てきてるせっくんの放浪時の話は幕間である形で出したいと考えてます。
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