なんでフェストゥムはテラにいるんですか?   作:野菜大好き丸

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せっくんいつもボロボロになって不遇な感じがするけど、戦闘スペック自体ならアークナイツ世界では最高クラスなんだよなぁ…。まぁ元は争いとは無縁な場所で過ごしていた人間で、この世界での倫理的な感性の違いで精神的に苦労しているから多少はね?




第7話 雪怪 ~スノーデビル~

 一難去ってまた一難なフェストゥムライフ、はーじまるよー。俺のスローライフどこ……ここ……? 

 

 

 

 

 さて、なんか白づくめの集団が敵意剥き出しでこっちを見てるが、落ち着け俺。まだ慌てる状況じゃないゾ。ここで慌てたら余計に怪しまれるからな。先程命からがら逃げ延びたのに、また攻撃される展開はもう十分堪能したよ……。

 

 だが、このフェストゥムのせっくんは2度も同じ過ちは繰り返さないゾ。前回とは違い、今回はタブレットでこちらの意思を伝えることができるからな。これで敵意は無いことを伝えればどうとでもなる! 勝ったなガハハ! 

 というわけで、早速タブレット君の出番だz──

 

 

 

 

 

 

 バギィ!! 

 

 

 

 

 

 

(はっ?)

 

 

 タブレットを懐から取り出そうとした瞬間、何かが目に見えない程のスピードでこちらの方へと襲い掛かる。それに気づいた時には何かの破壊音がこの空間に響き渡った。物凄く嫌な予感を感じ取りながらも、おそるおそる音の鳴った自身の懐の方へと視線を向ける。そこには氷柱で見事に画面が貫♂通され、無残な姿に変貌したタブレット君があるじゃないですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ほんぎゃあああああ!!? 最後の希望(タブレット)がああああああ!!?   

 

 

 

 

 

 

 

 

「妙な真似をするな。先程の質問に答えろ」

 

 

 

 先程の一撃を放ったであろう目の前の兎耳が淡々と言い放つ。答えたいからタブレットを取り出そうとしたんだよ! それを無残な姿にしやがって、あーもうめちゃくちゃだよ。

 

 

 ってか唯一の対話手段が潰されちゃったよ。誰だよ勝ったなとか言ったやつ! これじゃあ前回と変わりないわね、ふざけんな! (発狂寸前)

 

 

 

「……あくまで沈黙を続けるつもりか? 先ほどの音はお前の仕業だろう」

 

 

 

 予想外の状況に困惑している中、こちらが喋れないのを余所にあっちがなんか変なことを言ってる。音って何のことだよ? 

 

 せめてものジェスチャーとして、俺は知らないと言わんばかりに首をかしげることで彼らに意思表示をする。その態度が気に食わなかったのか、兎耳が眉間にしわを寄せ、より不機嫌な表情をしていた。

 

 

 

「とぼけるつもりか。先ほどこの廃村に私たちが辿り着いた時、鉱山から凄まじい爆音と振動が鳴り響いた」

 

 

 

 あっ……(察し)

 

 

 

「あれほどの音と振動は今までの軍の兵器ではありえない威力だ。私たちはウルサスの軍がここで秘密裏に開発している特殊な戦略用兵装ではないかと疑い、その真偽を確かめるために先ほど潜伏をしていた。そして待っていたところで鉱山から出てきたのはお前だ。今一度問う、お前は何者だ?」

 

 

 

 えっとつまり、先ほど俺が増幅による試し撃ちで鳴り響いた音に警戒して、彼女達は鉱山から出てきた俺をウルサスっていう所の軍人かどうか疑っているってことか? 

 

 

 

 

 

 

 

 ……うん、軍人ではないけど完全に原因は俺の方ですわ。だったら尚更誤解と解かないと(使命感)。でもタブレット壊れているし、ジェスチャーで何とか伝えられるかこれ? 

 

 

 できることなら戦いたくないんだよなぁ。こっちの疲労も一つの理由だけど、彼らの心を読んでも悪意が感じ取れないから多分根は良い人達なんだと思う。悪意があるなら殺すことも辞さないけど、そうでないなら平和的に行きたいのが俺の主義なんで。あと殺害はこっちの気分が気持ち悪くなるので、できれば殺し合いはしたくない。こちとら人畜無害な一般ピープルなんだよ! 

 

 

 

 

 

 

 ……え? じゃあなんであのレユニオンの汚っさん達は躊躇無く殺せたのかって? あれはもう正当防衛に入るし、生かしたところでこちらにまた危害を加えそうだったからな。某ギアス使いの皇帝だって言ってるじゃないか、撃って良いのは、撃たれる覚悟がある奴だけだって言う名言。

 ちなみにアレ、元ネタはどっかのアメリカの小説にあるらしいゾ。詳しく知りたい兄貴姉貴は自分で調べて、どうぞ。

 

 

 

「…………まぁお前がウルサスの軍人かどうかはどうだっていい」

 

 

 

 ん? なんか流れ変わったゾ。これはワンチャン行けますかね? 完全勝利するためにUNICORN流さなきゃ……。

 

 

 

「……だがお前が今纏っているそのローブは同胞が着ていたものと似ている。どこで入手したのかは知らないが……」

 

 

 

 あれ? 同胞って……、もしかしてこいつらレユニオンかよぉ! しかもなんか目が据わってきてませんかね? 

 

 

 

「そのローブがもし同胞を殺し、奪った物ならば、お前を野放しにするのは危険だ。これ以上同胞に危害が出る前に、お前をここから生きて帰す訳にはいかない。……悪いが、ここで死んでもらう!!!」

 

 

 アーアーアーアー♪ アアアアーアー♪ アアアアーアーアー♪(完全敗北UCバージョン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!! 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 やっぱりこんな展開になるのかよおおおおおおおおお!!! そして話し終わった瞬間、こいつらいきなり襲い掛かってきてるし、お慈悲^~! 

 

 

 

 ちょ、なんか魔法みたいのが直撃して腕がまた凍った!? もう一回溶かさないと。……ってなんか長い刀持った奴が来たー! 回避―! 

 

 

 

 ってああああああ!!! 腕が切られてどっかに飛んでったあああああ!!! 痛いんだよおおおおおおおおおおおお!!! 早く再生しなきゃ……って、今度は氷柱が飛んできたー! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ふざけんじゃねぇよオイ! 誰が攻撃していいっつったおいオラァ! 

 

 

 本気で怒らしちゃったねぇ! 俺のことねぇ! おじさんのこと本気で怒らせちゃったねぇ! 

 

 

 

 

 こうなったら相手してやるから、じゃあオラオラ来いよオラァ!(逆ギレ豹変)

 

 

(≧Д≦)ンアッ──────!!!!(絶命)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(フェストゥム戦闘中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヌッ! ……ウッ、ハァ、ハァ、ハァ……。凍らされたり、腕が何本も落とされたり、氷柱で滅多刺しにされたりしたけど、どうにか奴らの猛攻を凌ぎきったゾ。というかあっちの攻撃が激しくて防戦一方だったんですがそれは。付け入るスキ無さすぎぃ!! 

 

 だけどあちらさんも流石にあれ程の猛攻をしたのか、疲れが見える見えるな状態になってる。だが気を緩めるにはまだ早い。いかんせん逃げるには奴らからどうにか隙を突かないと……。

 

 

「はぁ……、はぁ……、あいつ、まだ生きてんのかよ……」

 

 

「まさか、俺たちの連携を耐えきるなんてな……」

 

 

「凍結のアーツを何度も喰らってるのに! ……姐さん、どうします?」

 

 

「……まさか、ここまでしぶといとはな」

 

 

 あちらさんの会話を聞く限り、どうやらこっちの生存が想定外に思われているな。確かに読心で彼らの動きを読んでも、奴らの動きが速すぎて躱しきれない部分があった。人間のままだったら命がいくつあっても足りない状況だったな、フェストゥムの強靭さにまた感謝しないと。

 

 それと俺よりも遥かに戦い慣れている感じがしたから、おそらくこいつらって戦闘のプロなんじゃないか? フェストゥムとはいえよく生き残れたな俺。

 

 

「しかたない……、全員急いで安全圏まで下がれ。全力を出す」

 

 

「!? でも姐さん! それだと「いいから下がれと言っている!」っ! わかり……ました……。全員! 姐さんから離れろ! 巻き込まれるぞ!」

 

 

 ? なんか様子がおかしい。優勢なのはあっちなのに味方が兎耳から離れていく。それに兎耳の周りにエネルギーが集まってきているような……。

 

 

「できればこれは使いたくなかった。下手をすれば私の兄弟姉妹にも被害が及びかねないからな」

 

 

 兎耳が手を上空にかざす。

 その時、今まで感じていた以上の冷気が彼女から放出され、彼女の周りにあるもの関係なく襲い掛かった。周囲の建物や木々など、村にある物が瞬時に凍っていく。この村を、いや、あるいは国一つくらいは凍らせてもおかしくない程の冷気がこの空間を支配する。

 

 

 

 急激な変化に動揺する俺は何か嫌な予感を感じ取りふと、兎耳の頭上を見る。そこには膨大な冷気が巨大な球状の塊となって渦巻いていた。ってボーっとしてる場合じゃねぇ! 見るからに当たったらお陀仏なもんが出来て来てるんですけどぉぉぉぉぉ! 

 

 

 

 やべぇよ……やべぇよ……。疲労と冷気で動きが鈍くなっている今、あんなもん回避できそうもない。苦肉の策として残った力を振り絞ってアレに抗う方法もあるが、今の俺の状態でアレに対抗はできるか? 

 

 

 

「私に全力を出させたのは褒めてやる、お前は良い戦士だった」

 

 

 そう言い放つ兎耳は頭上のエネルギーを溜め終えたことを確信し、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せめてもの手向けだ、受け取れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強烈な冷気の塊を俺に向けて投げつけてきた。

 

 

 アカン、迷ったせいで直撃を避けようにも間に合わねぇよこれ。物凄い勢いで地面を破壊しながらこっちに向かって来てやがる! 

 正直ここまで来ると、切り抜けるにはもう真っ向から打ち破るしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……あーもう! こうなりゃ一か八か、やってみるしかない!!)

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 やけくそ交じりに心の中で悪態をつきながら、俺は右手の掌で小さなワームスフィアを発生させた。それを目の前に迫るエネルギーみたいに球体に保ちながら渦巻くようにエネルギーを回転させる。そして残った力をワームスフィアに凝縮させることで、某忍者漫画の螺旋丸もどきを何とか生成させた。

 

 さらに右手に結晶を生み出すことで増幅を発動させ、威力を底上げさせる。これで見た目以上に凄まじい破壊力が期待できるはずだ。あとはタイミングを合わせるだけ。

 

 

 

 即席の対抗策を用意した俺は、目の前に迫り来る冷気の塊をじっと見据えながら、反撃のタイミングを待つ。

 

 

(迎撃地点まであと5、4……)

 

 

 

 吹き荒れる暴風と共に凍てつく冷気が肌を刺すような感覚に襲われる。塊は地面を粉砕する音を立てながら迫ってくる。少しでもタイミングを間違えれば、俺の命はこの吹雪によって確実に消え去るだろう。

 

 身に纏っていたローブも暴風によってバタバタと音を立てながらはだけていき、いつの間にか自身の姿が露わになっていた。そして体もいつの間にか再び凍り付き、体を動かすのもやっとの状態。特に翼のオブジェは凍り付いていた一部分が砕けて破損していた。凍結による同化現象、これほどとは……。

 

 

 

 だが今はそれらに気を取られるわけにはいかない。頼む俺の体、もうちっとだけ耐えてくれ。

 

 

 凍った体を無理矢理奮い立たせ、右手に仕込んだワームスフィアをあの冷気の塊に撃ち込む態勢に入る。塊が迎撃地点に入るまであと3、2、1……、

 

 

 

(…………ゼロッ!!!)

 

 

 

 次の瞬間、荒れ狂う吹雪に向かって俺はワームスフィアを叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────―ッ!!!!!!!!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白と黒、二つのエネルギーの衝突。

 

 

 

 

 

 暴風のように吹き荒れるエネルギーの流れ、それに伴い耳をつんざくような何かの咆哮に近い音がこの空間に響き渡る。

 

 

 

 

 二つのエネルギーは互いに食らいつかんとぶつかり合う。

 

 

 最初は巨大な白が矮小な黒を呑み込まんとしていた。しかし、黒が白を徐々に喰らい始めるかのように、白を無へと帰していき、白の力を弱らせる。

 

 だが、黒を生み出した彼の体はもう限界へと近づいていた。損傷によって鈍く輝く金色の肉体は、今にも膝をつかんとするばかりに地面に押し込まれていく。衝撃波によって既に彼の体の大部分は砕け、バラバラになっていた。

 

 しかし、彼の心の中で燃え盛る闘志はまだ消え去っておらず、彼は諦めていない。負けるわけにはいかないと。この一撃を耐え、生きるために。大地を踏みしめるかのごとく屈しかけていた体を再び立ち上がらせ、抵抗を続けていた。

 

 

 

(──────―っ! …………無に、帰れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!)

 

 

 

 体中の全ての力を振り絞らんと心の中で叫ぶ。同時に、それに呼応するかのように右手の結晶にも変化が起きた。手だけ覆われていた結晶が腕全体にまで広がり、結晶が放つ光はより強く輝きだす。

 

 

 輝きは強くなると同時に、黒はより貪欲に白を喰らい尽くしていく。押されていたはずの力が、対等へと近づいていく感触を味わいながら彼は白を押し切らんとする。

 

 

 あとちょっと、そう思った瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────―パリィンッ!!! 

 

 

 

 

 

 

(──────────ッ!?!!!)

 

 結晶が右腕ごと跡形もなく砕け散る。右腕が砕け散ったことで残された肩から大量の鮮血を撒き散らす。強烈な痛みを感じながらも存在しない右腕を見た彼は最悪な予感が脳によぎる。

 

 

 

 右腕が砕け散ったことでワームスフィアは消失し、均衡が破れたことによって白はそのまま彼を呑み込む。彼の命という灯を凍てつかせるために。

 

 それを見た彼はこう思ったであろう。

 

 

 

 

 

 

 

(あっ、これダメなやつだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 もはや避けようのない運命を直視したおかげか、彼の思考は不思議と澄み渡っていた。絶望もせず、自分の結末を淡々とした感情で目の前の現実に受け入れられたのは果たして救いだったのだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の最期の視界には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 命の息吹も感じられない白だけしか映らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideフロストノヴァ

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、やったか……?」

 

 

 その場に倒れ伏した私の目の前には巨大な氷塊がそびえ立つ。先ほど未知の存在を葬るために一時的に抑えていた冬を解き放った私だが、その代償として途轍もない疲労感に襲われていた。

 

 

 全く、ただの調査がどうしてこんな死闘へとなってしまったのか。心の中でそう独り言ちる私は先ほどまでの出来事を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は兄弟姉妹と共に軍によって滅ぼされ、そのまま遺棄された村の調査に向かっていた。この村は私がかつて居た場所と同じように源石採掘の鉱場であることを事前に調査をして知った。軍に滅ぼされてから数年も経っているためここに居た生存者はもはや絶望的だ。

 

 だが、今回の目的はそれではない。流浪の果てにこの村で一時避難している感染者の調査、保護が今回の目的だ。

 

 感染者は世界中で迫害を受けている。彼らは安住できる居場所が欲しくても、国や政府、非感染者による迫害によってそれすらも叶わない。故に行く当てもなく世捨て人のように世界を放浪する感染者は珍しくない。レユニオンはそんな彼らを共に戦う同胞として勧誘、受け入れを行っている。いずれ身を落ち着ける場所を手に入れるために。

 

 

 

 そうしてこの村に辿り着いた私たちだが、村に入った直後に突然大きな爆発音と振動が村にある鉱山から鳴り響いた。急な事態に私たちは即座に周囲の警戒をした。もしかしたらここは軍が秘密裏に兵器実験を行っている場所ではないかと。

 

 急遽私たちは鉱山の張り込みをし、先ほどの首謀者が出てこないか村に潜伏していた。もし潜伏して時間がある程度たったら斥候を送り偵察をするつもりだったが、予想より早く鉱山から何者かが出てきた。ボロボロのつぎはぎなローブを纏った何かだ。“何か”と言うにも奴には足が無く、ふわふわと宙に浮いていた。あれは何だ? 見たこともない存在を見ても私は顔色を変えずにいたが、内心驚いていた。そしてそれを見た兄弟姉妹も奴の姿に驚き、何人かは「姐さん! あれ絶対お化けだよー!?」と小声で泣き喚いていた。

 

 

 

 流石に軍の人間には見えないが、それでも奴を見逃す理由は私達には無い。もしあの現象が奴によって引き起こされたのならば、ここで何をしていたのか問いたださなければならない。私は奴を逃がさないためにアーツで四肢を凍らせて動きを封じようとした。奴の体は凍り付いたが、異変に気付いた奴が取った行動に私は驚愕した。まさか体に付いた氷を体温の熱で溶かしてしまう荒業に私は目を疑った。加減をしているとはいえ、私のアーツは生半可な熱のアーツでは溶かせないほど強力な力だ。

 

 

 もしいるとするならば、私の知っている限りはタルラくらいしかいない。レユニオンのリーダーで私とは対をなす強大な灼熱の力を持つ彼女なら氷を溶かすどころか、そのまま私に反撃を加えてくるだろう。だがそれを易々と溶かす奴は何者だ? まさか彼女と同等の力を持つ存在がここに居るとは……。

 

 

 私は底知れない恐怖を感じながらも奴の危険性に対しすぐさまアーツで生成した氷柱を奴に放った。しかし軌道を読まれたのか寸前のところで氷柱が叩き落される。

 

 おかしい、吹雪で視界が悪く何も見えないかつ、音も吹雪の音で聞こえづらい筈だ。体捌きも素人臭く先ほどの攻撃を避けられなさそうな筈なのに、当たる寸前でのところで対処された。奴はいったい何者なんだ? 

 

 

 

 そう思った私は兄弟姉妹と共にすぐさま奴を取り囲み、奴の動きを警戒しながら奴に問いかけた。

 

 

 

「お前は何者だ? 何処からここへ来た?」

 

 

 

 私の問いかけに対し、奴の答えは沈黙……いや、懐で何か探っていた。妙な真似をしていたので懐に目掛けで氷柱を飛ばした。そしたら奴は氷柱で貫かれたタブレットを見てすごく動揺していた。どうやら奴の目論見を潰せた様だ。いい気味だ。

 

 

 

 再び問いかけると腕を上げ怒ったような反応を見せたが、その後何故か諦観に近い反応へと変わった。どういうことだ? そのまま先ほどの音について奴に問うたが、何故か首をかしげて分からない?といった反応を見せた。……なんかその態度に何故かむかついた。

 

 

 

 しかし、このままでは埒が明かず、仕方ないが奴に説明することにした。説明を終えた後、奴はどうやら心当たりがあった反応を見せ、なんか悩んでいた。それにしてもなぜ奴は話さないんだ? もしかして奴はこちらと会話ができない? 

 

 

 そんな疑問を胸に抱きながら奴の様子を見ていると、ふと気づいたことがあった。どうも奴が身に纏っているものがレユニオンが着ているものと似ていた。いや、継ぎ接ぎで縫合されているが、あれは間違いなく同胞が着ていたものだ。何故奴が……とそれを見て思った私の脳裏には最悪な考えがよぎった。

 

 

 

 もし奴はすでに同胞を手に掛けたとすれば……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このまま生かしておくわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思い至った私は奴を始末することにした。意思疎通が出来ないのならば尚更、奴を放って置くにはいかない。この先奴によってこれ以上同胞に危害を加えられるのを見逃すこともできない。

 

 

 

 奴に宣戦布告した後、私は兄弟姉妹と共に連携で奴を追い詰めた。だが、奴は予想以上にもしぶとかった。凍らせても奴はまた氷を溶かしていき、凍った部位を溶かされる前に私たちが切り落としても、そこから翡翠色の結晶が元々あった部位を形取るように生成され、失ったはずの部位が再生した。その生命力の高さにはある種の恐怖を感じた。

 

 だが、私はそれに怯まず兄弟姉妹に渇を入れることで戦意を鼓舞し、怒涛の攻撃で奴に反撃の隙を与えず防戦一方に維持することで消耗戦へと陥らせた。そのおかげで奴の動きは徐々に鈍くなっていったが、こちらも奴に有効打を与えられず疲労が蓄積するばかりであった。正直ここまで耐え忍ばれたのは称賛に値する。

 

 

 

「しかたない……、全員急いで安全圏まで下がれ。全力を出す」

 

 

 

 その一言に兄弟姉妹たちは目を丸くしたかのように驚く。そのような反応をするのは当然だ。私の全力は下手をすれば彼らを巻き込みかねない威力を持つ。だが彼らはおそらく別の心配をしているのだろう。

 

 

 今の私は鉱石病の後遺症でひどく蝕まれている。それなのに鉱石病をより悪化させかねないアーツを、それも全力で発動すればどうなるか私がよく知っている。だが、ここで奴を仕留めるにはこれしかない。私は兄弟姉妹たちに離れるよう強く言い放ち、彼らも私の意図を汲んでくれたのかすぐさま退避し始める。

 

 

 

「できればこれは使いたくなかった。下手をすれば私の兄弟姉妹にも被害が及びかねないからな」

 

 

 

 手を空にかざし、アーツのエネルギーを上空に練り上げる。弱っている今の奴ならこれを喰らえばひとたまりもない筈だ。だがアーツを発動している私にも体に大きな負担が圧し掛かってくる。おそらくこれを撃ったら私はもう動けないだろう。

 

 

 

「私に全力を出させたのは褒めてやる、お前は良い戦士だった」

 

 

 

 それでも、同胞たちのために刺し違えても奴を倒させてもらう。

 

 

 

 

 

 

「せめてもの手向けだ、受け取れ」

 

 

 

 

 

 

 エネルギーを溜め終えたことを確信した私は巨大な冷気の塊を奴に向けて放った。地面を引き裂きながら迫る冷気は奴を凍りつかせると思ったが──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石にそう都合良くはいかなかった。どうやってやったかは知らないが、奴はあの冷気に抵抗していた。その証拠に冷気は周囲に拡散せずエネルギーの塊のまま奴を呑み込もうとしている。本来なら冷気が爆散し、目の前に巨大な氷塊が出来ておかしくないはず。

 

 何故? と考えている中、目の前の冷気が少しずつ弱まっているのを感じ取る。強烈なエネルギーの奔流に目も開けていられないが、おそらく奴が冷気を相殺しているのだろう。このままでは拙いと、私はすぐさまアーツで冷気のエネルギーの強化を始めた。既にボロボロな体に鞭打つがごとくアーツを発動させる。体は軋み、腕や足の一部には源石が滲み出し、その源石から黒い氷の結晶へと生成される。

 

 

 そんな体を顧みず私は僅かに残ってる力で冷気を強化する。焼け石に水程度だが、それでもと力を込める。

 

 

 

 

 

 力と力のぶつかり合い。

 

 

 

 

 

 だがそれは永遠と続かなかった。突然奴の力が消え失せ、均衡が崩れた。その瞬間を逃さず私の冷気が奴を呑み込み、巨大な氷塊へと変えていった。

 

 

 

 激闘の末、勝利を勝ち取ったのは…………、私だった。

 

 私はその光景に安堵し、緊張が解けたのかその場で倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姐さーん!! 無事ですかー!?」

 

 

 後方から先ほど待機させた兄弟姉妹たちが私を呼ぶ。倒れ伏しているため彼らの顔は見えないが、切迫した声から察するに。彼らにとても心配をかけてしまったようだ。

 

 私が倒れているのを知った彼らはすぐさま私の元へと駆け寄り、今にも泣きそうな声を上げながら私を抱き抱える。

 

 

「姐さん! しっかりしてください!!」

 

 

「……聞こえているからそんな大声で叫ぶな、体に響く……ごほっごほっ!」

 

 

「姐さん!」

 

 

 全く心配症な奴らだ。彼らは馬鹿だ。だが、私には勿体無い位の良い馬鹿(きょうだい)だ。  

 

 

「──―心配するな、ただの咳だ。………それよりも、早くここから離脱するぞ」

 

 

「え? でも奴はもう凍って……」

 

 

「……こんなことを言いたくもないが、どうも嫌な予感がする。早くここから「────―!」ッ!?」

 

 

 離脱の指示を出す途中、かすかな音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 方角は、あの氷塊。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、姐さん?」

 

 

「……お前たち、さっきの聞こえたか?」

 

 

「え? 何を言って「────―ッ!」……聞こえました。まさか……」

 

 

「お、おい! あれを見ろ!」

 

 

 兄弟姉妹たちが動揺する中、そのうちの一人が巨大な氷塊に指を指して叫んだ。全員が氷塊に目を向けると、そこには目を疑うような光景があった。

 

 氷塊の内部で、翡翠色の結晶が氷を侵食するかのように生成されている。そのスピードは桁違いに早く、瞬く間に氷塊のすべてが翡翠色の結晶へと変化した。

 

「まさか……、そんなはずはっ!?」

 

 兄弟の一人が呟く。あの結晶は見覚えがある。奴が生成する結晶だ。何故今になって……という疑問は野暮だ。これが現実なら奴はまだ……。

 

 

「ッ! 撤退だ! 私を置いてでも行け!」

 

 

「な、なに言ってんだ姐さん! 姐さんも「早くしろ! 奴は……」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────―ピキピキピキ、パリィン!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「ッ!」」」」」」」

 

 

 

 彼らに怒声を上げながらも命令する中、巨大な結晶は音を立てながらひび割れていき、最後は大きな音共に砕け散った。

 

 私たちは散った結晶の先を見ると、そこには……、

 

 

 まるで何もなかったかのように悠然と佇む奴の姿が目に映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 寒村の激闘で倒したはずのフェストゥムがまだ生きていたことに驚くフロストノヴァとスノーデビル隊達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び倒そうとフロストノヴァが体を奮い立たせようとするも、先ほどのアーツで急激に活性した鉱石病が彼女を蝕む! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼らの様子を見たせっくんは選択する。逃げるか、倒すか。それとも……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺は、お前だ……。お前は、俺だ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第8話、共有 ~いたみ~

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 




最後の方BGMの「禁忌」が流れてそう(小並感)
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