なんでフェストゥムはテラにいるんですか?   作:野菜大好き丸

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うんうんと話の構成で悩みに悩んで時間がかかってしまいました。ホントは長期休みに入る前に出したかったなぁ。

今回アークナイツ6章、というよりフロストノヴァに関するネタバレ要素が含まれていますのでどうかご了承ください。



あとAFを強襲含めてクリアしたり、2円ガチャで何とか課金福袋の範囲内で2円を引き当てました。ついでにアッー!とウーン…も手に入れました。

でも育てる素材が無いの…。購買部を使ったり基地施設を上手く使っても映像と龍門幣と昇進素材が足りないの…。教科書は腐るほどあるがな(主要以外に使っていないだけ。今後枯渇する可能性あり)。


第8話 共有 ~いたみ~

(………………むぅ、ん?)

 

 

 

   

 

 

 体全体にひんやりと感じる地面の感触によって眠っていた意識が覚醒し、目を開ける。

 

 

 

 

(……あれ? クォクォア……?)

 

 

 

 

()()()()()()()倒れていた自身の体を起き上がらせ、周囲を見渡してみると四方八方黒まみれな空間にいた。そこは他の物体や生物の姿が見えず、光も通さない黒に塗りつぶされた異質な世界だ。謎の場所かな? 伝ポケが居そう(ポケモントレーナー並感)。

 

 

 

 

 

(……待て、手はともかく足だと?)

 

 

 

 

 

 何気なく感じ取った足の感覚に違和感を覚え自身の体を見てみると、そこには人間の手と足、命の温かみが感じられる皮膚の肉体が目に映った。しかもKRS君みたいにすっぽんぽんな裸で。とりあえず裸なのは置いといて、次に俺はその手で自身の顔をペタペタと触れて確かめる。指の感覚から目や鼻、口や耳といった顔の部位は欠けることなく存在していた。流石に鏡とかは無いのでどういった顔までかはわからないが、間違いなく俺は人間の体になっている。

 

 

 

 

 

(というか何で人間に戻っているんだ? それにここは……? 俺は死んだんじゃ……ん?)

 

 

 

 

 先ほどまで無かった後ろからの視線を感じ取り、すぐさま振り返ってみる。するとそこには……、

 

 

「………………………………」

 

 

「ファッ!?」

 

 

 金色に輝く人型の異形な存在、フェストゥムのスフィンクスA型がいつの間にかそこに佇んでいた。大きさは原作に出てくるようなのと同じくらいの大きさで、その圧巻の大きさによる迫力でつい汚い悲鳴を上げながら見上げてしまう。そんな存在が今、顔を俺の方へと向けて、じっとこちらを見つめている。

 

 

「………………………………」

 

 

「おわっ!?」

 

 

 突然現れたフェストゥムに驚き茫然と見ていると、フェストゥムが巨大な手でいきなり俺の体を掴み、そのまま捕らえられてしまった。幸い加減してくれているのか体は潰れたトマトのような事態にはなっていない。だが、いずれにせよこのまま握り潰されてしまうのか、はたまた同化されてしまうのか分からないが、どっちにしろ絶体絶命な状況だ。

 困惑と恐怖で混乱していた俺に体の異変を感じる。よく見るとフェストゥムの手ごと俺の体から緑色の結晶が生え始めていた。生成スピードは遅いものの、徐々に体が結晶に覆われていき、このままだと俺自身が砕けてバラバラになる未来はそう遠くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ってマジでシャレになんねー状況になったゾ! ライダー助けて! 嫌よ! 嫌よ! 無に帰るのは嫌よ~! …………ア゛ッ゛!? 

 

 

 身をよじって拘束に抵抗し暴れていると、一閃の雷撃のような痛みが突然頭を貫いた。そして極彩色の閃光が複数に瞬きながら目の前を覆い尽くし、今まで感じたことの無い眩暈に襲われる。それと共に、今度は頭の中に何かがが流れ込む。

 

 

「ぐぁっっっ!? 、ぐぅ……」

 

 

 脳を直接灼かれるような痛みと、閃光による視界の幻惑によって意識が朦朧とする中、歯を食いしばりながら頭の中に流れ込む何かの正体を探る。

 

 

(これ、は……、感情……か? 怒り、憎しみ……)

 

 

 それは感情だった。生物が持つ自らの在り方を示すもの。

 本来持ち得るはずの無い目の前にいる無に帰す者(フェストゥム)はそれを体の内に滾らせ、俺にぶつけていた。

 

 

 

(……そうか。こいつは……、目の前にいるのは俺自身だ)

 

 

 流れた感情から目の前のフェストゥムは、フェストゥムとしての俺を司っている存在だ。おそらく(おれ)は俺がフェストゥムとして転生した時に生まれたんだろう。

 

 だけど、(おれ)は生まれた世界(テラ)を憎んでいる。何故俺がこんな理不振に合わないといけないのか、俺が何か悪いことをしたのかっと。

 

 

 

 

 

 あぁ、お前の主張(怒り)は間違っていない。俺だってあんな理不尽さには腹が立ってるんだから。でもな……、

 

 

「おい(おれ)、憎んでばっかだといずれ取り返しのつかない出来事に辿るゾ」

 

 

「………………………………」

 

 

 冷静に、そして静かに語る俺の言葉に対し(おれ)の返答はいらだちだった。ぐぐぐと俺を握り締める手の力が強まり、体からミシミシと骨がきしむような音が聞こえる。まるで「同じ痛みを受けたお前も分かっているのに何故?」と言いたげな反応だ。

 痛みに苦悶の表情を浮かべながらも俺は(おれ)をじっと見据え続ける。

 

 

「そりゃあ俺も思うところはあるけどよ、……一つ聞くぞ(おれ)。お前はあの娘、プロヴァンスのことが憎いか?」

 

 

「!?」ブンブンッ! 

 

 

 俺の問いに(おれ)は否定するかのように首を横に振る。

 

 

「まぁお前が俺ならそう反応するよな。なぁ(おれ)、世界には理不尽なことだけじゃないんだ。彼女はお前に交流という祝福を与えてくれたんだ」

 

 

「………………………………」

 

 

 小さな子供を諭すかのように語りかける俺に対し、(おれ)はただじっと、俺の言葉に耳を傾けた。おそらく(おれ)はまだ幼い、まるで昔の俺みたいに。物事の善し悪しは理解しているのだろうが、言ってしまえば極端なんだ。

 

 

「それは自身の存在を証明するかけがえの無いものなんだ。…………だがお前が世界を憎んで、その憎しみのまま世界を滅ぼそうとすれば、そんな大切なものを与えてくれた彼女を否定することになるんだゾ」

 

 

「!!!」

 

 

「たとえ自分の意思に関係あろうがなかろうが、憎しみは何もかも破壊し尽くす。俺もあっちでそれに囚われたこともあったが、幸い引き留めてくれる人がいたおかげで最悪な事態には陥らなかった」

 

 

「だから今度は俺がお前を引き留める。お前が憎しみしか知らない存在にさせないために何度でも引き留めてやる」

 

 

「………………………………」

 

 

 俺の言葉に何処か思うところがあったのか、体の拘束も少しずつ緩み始め、生えていたはずの結晶もいくつか砕け散った。

 

 

「…とまぁ、かっこいいことを言ったんだが死んだ今、どうしようもできないのもまた事実なんだが……」   

 

 

「………………………………」

 

 

「いや、そんな呆れた雰囲気で見ないで。事実を偽ったところで今置かれている現状は解決しないからさ…………って?」

 

 

「………………………………」

 

 

「えっ、マジ? まだ生きてんの俺? 死へと片足突っ込んでいる状態だからまだどうにかなるの?」

 

 

 俺の締まらない一言に呆れていた(おれ)が衝撃の真実ぅ~!を俺に伝えた。どうやら俺はまだ生きているらしく、今現在、あの兎耳の攻撃の際にできた氷塊を同化して無理矢理自己再生しているとのこと。やっぱフェストゥムってチートじゃね? 

 

 ままええわ、取りあえず生き返るとしますか。だけどどうすればいいんだ? ……えっ、何々? あっ、ふーん(察し)。そんじゃまぁ、やってみるとしますか。

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 イキますよー、イキますよ、イクイク…………ヌッ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識を元いたところに戻るよう強く念じる。そして最後の力んだ瞬間、頭上の空間に真っ白な穴が突然出現し、漆黒の空間ごと俺とフェストゥムを吸い込む。

 

 

 黒と白の奔流に流される中、俺たちは抵抗せずそのまま穴へと吸い込まれていき、俺はその感覚を感じるとともに俺の意識はゆっくりと閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ^~生き返るわぁ^~♨)

 

 眠っていた意識を起こし、カッチャマしながら目を覚ますと見覚えのある寒村に俺はいた。というかホントに生き返ったよ俺。すげーな再生(リバース)のSDP出来んのか。

 

 落ち着いて辺りを見渡すと周囲には散らばっている緑色の結晶、そして目の前には信じられない光景を見て立ちすくんでいる白づくめの部隊と……、

 

 

「やはり……、生きていたか…………」

 

 

 分かっていたと言わんばかりに、忌々しげにこちらを睨む兎耳が満身創痍で仲間から肩を借りていた。やはりあの一撃はあちらにとっても諸刃の剣だったらしい。見た感じ身動き一つも取れなさそうで、誰かが支えていないと今にも崩れ落ちそうな状態だ。

 

 

「ゴホゴホ、手を離せ。ここは私が囮にな…………がぁっ!?」

 

 

「「「「あ、姐さんっ!?」」」」

 

 

 な、なんだ? 急に兎耳が無理して立ったと思ったら、急に苦しみだして…………、おわ!? 兎耳の右腕から黒結晶が生えてきたっ!? 

 

 

「っ!? ま、まさか…………。お、おい! 撤退の準備だ! このままだと姐さんが…………」

 

 

「わ、わかった。なら何人かは俺と一緒にあの金ぴかの足止めをするぞ! 時間を稼ぐんだ!」  

 

 

「「「おう!」」」

 

 

 そう言って白づくめの彼らは慌しくも迅速に動き出し、その内の何人かはこちらの方へと向かってきた。いやいや、こっちは戦闘の意思はないって言ってんだろ! この人達おかしい……。

 

 それはそうと、どうしたものか。復活したおかげか、それとも体がさっきよりも動けるようになっている。このままサラダバー!してこの場から離れるように逃げるか、それとも今までのちかえしとして奴らに反撃してもいい。でもな……。

 

 

「ぐっ…………、うぅ…………」

 

 

「姐さんっ!? 気をしっかり持ってくれ!」

 

 

 苦しそうに呻く彼女。悲痛な声と共に黒い結晶、源石が彼女の体を蝕んでいくように次々と侵食していく。その周りには苦しむ彼女をどうすることもできず涙声で彼女を励ましている彼ら。そんな彼らの姿が俺の目に映り、脳裏に焼き付いて離れない。

 

 …………なぁ(おれ)、お前にとっては気に食わないことだけど、俺の我儘を手伝ってくれないか? 

 

 

 

 ⦅──────────⦆

 

 

 

 声は聞こえない。だが、少なくとも手伝ってくれることは受け入れてくれたようだ。ありがとナス! 

 

 

 

 じゃあいっちょ、人助け……する前に目の前の彼らをどうにかするか。

 

 

「──────ッ!」

 

 

 悠長に考え事をしていた俺に白づくめの一人が切りかかる。狙いすました切っ先は俺の命を刈取ろうとするが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(お前のそれが隙だったんだよ!(迫真))

 

 

「なっ!?」

 

 

 切りかかった白づくめが声を上げる。何故なら相手が先ほどまで避けられていなかった斬撃を余裕に紙一重で避けられたのだ。あの時も避けられたこともあったが、それは相手もかなり切迫した雰囲気が出ていた。だが今回のはもう喰らわないと言わんばかりに余裕をもって避けられた。

 

 確かに先ほどの俺だったら避けられなかった。だが、復活したおかげか、今の俺はほぼ全快に近い。それに、さっき死ぬ寸前まで痛めつけられたおかげでそっちの攻撃はもう見切ったし、動き方を学ばせてもらった。だから……、

 

(喰らえ! 邪拳『夜』!(TDN右ストレート))

 

 

「がはっ!?」

 

 

 攻撃が外れ、さらに驚きのあまり硬直していた白づくめの腹にすかさず拳をねじ込む。あっ、威力は何故瑠璃不審者(黒咲隼)を沈黙させるレベルで殴ったから白づくめは気絶しただけで済んだゾ。   

 

(彼女は瑠璃ではない)

 

 

 

 

 

 いや何だこの幻聴? まぁそれはともかく、それと兄ちゃん、武器は借りて行くぜ(暗黒KMR)。

 

 そう心の中で呟きながら気絶した白づくめから剣を奪い取る。にしてもこれだと傷つけしまうからなぁ、ちょっと改造させて貰うゾ。

 

 手元に結晶を発生させ、俺は手に持っていた剣の刀身に氷を纏わせた。それも剣の形ではなくまるで棍棒の様な形へと氷を纏わせ、形状を変化させた。よし、あの時話を聞いてもしかしたらと思ったが、上手くいって良かった。これなら使いやすいし、相手を切り殺すといったことはないゾ。

 

 

 

 

 

 復活の際、同化した氷から凍結能力を獲得した俺は、強化した氷の棍棒の出来栄えに満足し、数回素振りをする。一方、俺の一連の動作に驚きを隠せないのか近づいてきた白づくめの部隊は動揺していた。動揺するのはいいけどさぁ、そんなんじゃ死んじゃうよオラオラ(死なせないけど)。

 

 彼らの油断を突いて俺は彼らの元へと急接近する。だが、流石に戦士としての経験は豊富なようで、彼らは俺が懐に近づく前には既に迎撃態勢を整えていた。まぁこの先の動きや考えは読ませてもらっているんで関係ないんですがね。

 

 

 このまま突撃し、彼らの攻撃を誘う。俺の誘いに乗った白づくめ達は俺に攻撃するが、攻撃は全て躱され、あるいは受け流させられる。そして攻撃の隙を狙った俺は棍棒を彼らの体に叩きつける。腕の距離的に届かない相手には棍棒を持っている腕を鞭状にしならせて、遠距離攻撃をする白づくめに攻撃する。

 

 だがしかし、棍棒の一撃を喰らった白づくめ達はよろめくも体勢を立て直す。そんなの当たり前だ。確かに攻撃は当てたが、手応え的に良いダメージを与えられなかった。

 

 だけど、今は()()()()()()()()()

 

 

「「「「っっっっ!?」」」」

 

 

 白づくめ達は自身に起きた現状に声も出せず目を見開いた。なんと棍棒に当たった個所から体が急速に凍り付き、すぐに氷が全身に広がり身動きが取れなくなっていた。予測できない事態に陥った彼らは脱出しようと身じろぎをするも氷はびくともせず彼らを封じ込めるように凍り付く。

 

 よしよし上手くいったな。何とか逃れようと身じろぎしてるけど、邪魔になるからそのままじっとしてろホラ。…………ん? 

 

 

 凍り付いた白づくめ達を軽く一瞥した後、兎耳の方へと見やると残りの白づくめ達がものすごい勢いでこの場から離れようと荷物と動けない兎耳を担ぎながら逃げ出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっ、おぃ、待てぃ(江戸っ子)。兎耳が逃げられたら意味ないダルルォ? じゃけん足止めしましょうね~。

 

 逃げ出す彼らに対し俺はすぐさま棍棒の先端を錐状に変え、彼らに向けて投擲する。こちらに向かってくる棍棒の存在に気づいたのか何人かはボウガンと氷のエネルギー弾で撃ち落とそうと反撃してきた。しかし、棍棒はそれらに当たっても勢いは衰えず、氷のエネルギー弾に対しては当たった瞬間にエネルギーが棍棒に取り込まれてしまった。

 

 撃ち落とせない棍棒に恐怖しながらも這う這うの体で逃げ出そうとする彼らだが、無慈悲にも棍棒は彼らに追いつき、彼らの誰かに…………ではなく彼らの中心の地面に突き刺さった。当たらなかったことに安堵する彼らだが、兎耳だけは棍棒を見開いた眼でじっと注視していた。

 

 

「────―!? ──────っ!!!」

 

 

 兎耳がハッと何かに気づき、必死に何かを叫んだが時すでに遅し。地面に刺さった棍棒は表面にひびを立てた次の瞬間、棒身は甲高い音を立てながら爆散し、棍棒から強烈な冷気が彼らに襲い、包み込んだ。

 

 もくもくと雪煙が立ち込め、次第に煙が晴れていくと、そこには全身を氷漬けにされた白づくめ達と、爆風で地面に転がされ体の一部が凍り付いた兎耳の姿であった。

 

 その状況に持ち込めたことを確認した俺はすぐさま兎耳の元へと急接近した。獲物の前に舌なめずりしながら悠長と近づくのは三流のやり方だってそれ一番言われているから。俺が彼女の元へと近づくと、俺の接近に気づいた兎耳がキッと睨み付け、呪詛をぶつける様に俺を罵る。

 

 

「お前……っ! よくも兄弟姉妹たちを…………!」

 

 

 一応加減をしてあるので彼女が心配せずとも彼らは死んでないと思うが、何も知らない彼女は当然のように怒り狂う。とりあえず同化(治療)するから暴れるなよ……暴れるなよ……

 

 俺は顔を彼女と同じ目線に合わせ、彼女の両肩に手を添える。触ってみて分かったが、彼女の体はとても冷たい。コート越しで彼女の体に触れているが、もし肌を直に触れたりすれば、触れた相手が酷い凍傷を負いかねないほどだ。

まぁフェストゥムにはあんま関係なんですがね。よく考えればあいつら本来宇宙にいるから多少の冷たさは何ともないんでしょうよ。でも元が人間だったので感覚はどうもそっちよりになるんだよなぁ。

 

 話がそれたが、添えられた手から結晶が発生させる。それを見た彼女の顔は恐怖で引きつらせていた。そりゃそうなるよね。でも我慢してくれ。

 

 驚き恐怖する彼女を余所に、俺は意識を集中させる。

 

 

(俺は、お前だ……。お前は、俺だ!)

 

 

 心の中で彼女に伝えんと言わんばかりにそう叫んだ瞬間、両手の結晶が眩い閃光を放ちながら彼女の体を、特に源石が生えている個所を中心に結晶で覆い尽くす。結晶が彼女を覆う中、俺の意識はどこかへと連れて行かれるような感覚に襲われ、視界が暗転し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くと吹き荒れる吹雪の中にいた。

 

 雪と強風で視界が悪い中、辺りを見渡すとそこには雪原に囲まれた採掘場の様な場所だった。

 

 採掘場の方を見ると、そこには二人の男女の大人がいた。しかしその姿はとてもぼけていて、何とか性別が分かるくらいの姿だった。男は女を守るように手を広げて立ちはだかり、女は胸の懐で何かを守るようにして抱え、うずくまっていた。

 

 男が見やる方向に目を向けると、そこには靄の掛かった黒い人影の群れがボウガンを取り出し、それをあの二人の男女に向けてきた。それを見て背筋に悪寒が走る。

 

 

(待っ―――)

 

 

 手を伸ばしながら声を上げようとした瞬間、人影達がボウガンを男女の方へと構え、大量の矢が彼らに向けて放たれる。矢の多くは針山のように男の体に刺さり、体は血みどろになって男は地面に倒れ伏す。だが男が身を賭して守ったおかげで女には一本も刺さらなかった。

 

 あまりの残酷な光景に俺は言葉を失う。しかし、人影達は女も殺せていないことに苛立っているのか、あるいはもう一回楽しめるかと言わんばかりに嬉々とボウガンの準備をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、俺の中の何かが切れた。

 

 

(うああああああああああっ!!!)

 

 

 一心不乱に人影達に向けてワームスフィアを放つ。あんな腐れた外道を生かしては置けないと言わんばかりに必死に放ち続ける。

 

 

(消えろっ! 消えろっ! 消えろぉぉぉぉぉ!!!!)

 

 

 怒りのあまり放たれたワームスフィア。これだけ喰らわせれば跡形も残らないはずと俺は考えていた。

 

 

 

 しかし、そんな俺の考えとは逆に、ワームスフィアが晴れた先には無傷の人影達……、いや、人影達がいた地面にも変化が起こっていなかった。

 

 

(まさか…………、これって…………)

 

 

 その事実にある仮定が浮かび上がる。そうしているうちに人影達は女の方に向けてボウガンを構える。

 

 

(っ! やめろっ!!)

 

 

 奴らの動きから咄嗟に反応し、急いで女と人影達の間に割り込む。どうにか発射される前に割り込むことには間に合った。だが、奴らは俺のことを意も介さずそのまま矢を女に向けて放った。

 

 先程の男のように女を守るように俺は立ちはだかる。そして飛来してきた矢は…………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の体を通り抜け、無情にも女の体に突き刺さった。

 

 

 

 

 その事実に後ろを振り向いた俺が見たのは、

 

 

 

 

 男と同じく大量の矢を受け、血みどろになりながらもうずくまり、何かを守ることをやめなかった女の姿と、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女の陰からひっそりと覗かせた、目の前の現実を茫然とした表情でこちらを見る白い兎耳の少女の顔だった。   

 

 

 

 

 

 その顔を見た瞬間。視界が暗転し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び気が付くと、今度は荒れ果てた採掘所にいた。周囲には泣き喚く子供たちと、それをあやそうとする大人たち。何かの道具を持って慌しく駆け巡る大人たち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、一人の大男が目が覚めない小さな兎耳の娘に対し何かを呼び掛け、仲間に何かの指示を出していた。

 

 大男は巨大な一対の角を頭部に携え、顔は何かの動物に象られた兜を被っており、煌めく赤い眼光以外に表情は窺えない。だが、雰囲気と動作からして必死にあの娘の安否を案じていることはわかる。

 

 しばらくすると娘が目を覚まし、それに気づいた大男が嬉しそうにはしゃぎ、喜びのあまり彼女の体を力いっぱい抱きしめた。奇妙なことに彼女に接触している大男の露出した腕の一部分が赤く炎症し始めた。しかし彼はそのことを何とも思わずにただひたすら、寒さに震える彼女を温めようと抱きしめていた。

 

 

(やはり…。これは、あの兎耳の過去の記憶か?)

 

 

 そう思った瞬間、視界が暗転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度は戦場のような場所だった。“だった”というのはそこにいたのは全身が氷漬けにされた数多くの兵士のような人間と、

 

 

 

 

 

 

 白い髪をなびかせ、凍った兵士を一瞥しながら佇む兎耳の少女と、彼女のお供であろう白づくめの集団だった。

 

 

(これは彼ら……。いや、彼女だけがやったのか?)

 

 

 少女が生み出したと思われる目の前の異様な光景を眺めていると、兎耳がこちらの方角へと振り向き、何かを口にする。

 

 

『ワ・タ・シ・ヲ、ケ・ス・ナ』

 

 

 そう呟くや否や急に辺りが暗くなり、強烈な吹雪が俺に襲い掛かる。耐え凌ごうとするも風の勢いは強まるばかりであり、どこから紛れ込んだのか吹雪の風に乗って氷の刃が俺の体を切り刻み始める。

 

 

 

 

 

 やがて風の勢いに押し負け、俺の体は踏ん張りが効かなくなり、後ろへと吹き飛ばされる。

 

 一体何が起きた? 消すなとは一体どういうことだ? それに……、

 

 どうして呟いた兎耳が()()()()()()()()()()()こちらを見たんだ? 

 

 突然の拒絶に疑問が尽きない中、俺は体が暗闇に吸い込まれる感覚を受けながら、意識はそこでぷっつりと途絶えた。

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideフロストノヴァ

 

 奴が結晶から出てきた後、私は命に代えてでも兄弟姉妹達の撤退のために殿を務めようと動かぬ体を奮い立たせた。だが、体の方はとっくに限界だった。

 鉱石病の末期。私の右腕から今までよりも巨大な源石の結晶が発生し、痛烈な痛みが体中に駆け巡る。そして体の至る所に結晶が滲み出ていくのを感じる。

 

 

 

 

 彼らは苦しみ始める私を見て、血の気が引いた様子で撤退の準備を急いで行い、何人かはそれの時間稼ぎとして奴の足止めに向かった。

 

 だがそんな目論見は薄氷のように瓦解した。奴に切りかかった一人の攻撃を躱され、カウンターを喰らい、武器を奪われた。普通ならそこで怯むべきじゃないが、その時の奴の動きがさっきまでとは全くの別物になっていたことに私たちは驚いていた。

 

 

 奴の変化に戸惑いながらも兄弟姉妹たちは撤退の準備を急いで完了させた。だが、それと同時に、奴も足止めに向かった彼らを片付けていた。信じられないことに高性能な防寒用の装備を着た彼らが氷漬けにされた。おそらく奴の手に持っている氷の棍棒の効果だろう。奴の奪ったのは剣のはずだが、棍棒へと変化させてあれほどの威力を持つ武器へと変化させた。奴の棍棒と仲間の様子を見て頭にある予想がよぎる。

 

 

(まさか、奴は私のアーツを使える様になったのか!?)

 

 

 最悪な予想を頭によぎらせ、兄弟たちに担がれながらも奴の姿をじっと見ていた私は、奴に底知れぬ恐怖を感じた。このままだと奴によって全滅すると警鐘を鳴らしていた。兄弟たちも奴の脅威に気づいたのか、準備を完了させた瞬間すぐさまこの場から撤退し始めた。

 

 私達が撤退している中、奴は撤退するこちらに気づく。しかし自ら追おうとせず、今度は手に持っている棍棒の先端を錐状に変え、こちらに向けて投擲してきた。兄弟の何人かはそれに気づき、矢やアーツで迎撃していた。だが、それでも棍棒の勢いは止まらず、それどころかアーツが棍棒に当たると、そのアーツのエネルギーが吸収されてしまった。

 

 回避しようにも避けるのは叶わず、誰かに当たると思ったが、棍棒は私たちの中心近くの地面に突き刺さった。それを見て兄弟姉妹たちは安堵するが、私には嫌な予感が引っ掛かったままだった。

 すると突然棍棒の氷がひび割れ始めた。

 

 

「これはっ!? 全員、今すぐ離れっ──!!!」

 

 

 兄弟姉妹たちに離脱の指示を放つも時既に遅し。氷が破裂し、私達を包み込むように強烈な冷気が襲い掛かった。

 

 もくもくと立ち込める雪煙の中、冷気によって氷漬けにされていく兄弟姉妹の姿が目に映った。私は爆ぜる寸前に担いでいた兄弟の機転により投げ出され、冷気の中心範囲から逃れた。しかし爆風の余波によって体の一部が凍りつき、動けない体は受け身も満足に取れず地面へと叩きつけられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地面に叩きつけられた痛みに苦しむ中、私は周囲を見渡す。だがそれは私にとって残酷な結末を知るに過ぎなかった。目の前の現実が夢なら覚めて欲しいと願った。

 

 

 周囲には一人残らず氷漬けにされて動かなくなった兄弟姉妹。

 

 

 アーツと鉱石病の反動で仲間も助けられずに身動き一つも取れない自らの非力さ。

 

 

 そして、この現状を生み出した元凶が私の目の前に立っている。ローブが無い奴の姿は金色の体を煌めかせ、神秘的な雰囲気を醸し出していた。しかし私にとって奴は私たちを滅ぼそうする悪魔にしか見えなかった。

 

 

「お前……っ! よくも兄弟姉妹たちを…………!」

 

 

 今の私が出来るのは奴に向けて睨み付けるくらいだ。だがそれは滑稽で、傍から見れば哀れなあがきにしか映らない。まるで小さな子ウサギが強大な肉食獣に威嚇するのと同じくらいに。

 

 しかし奴は私の威嚇を意に介さず、奴は私の両肩に手を添え、添えられた個所からあの翡翠色の結晶が生成される。その現象に身の毛もよだつような感覚に襲われ、顔を引きつらせた。

 

 

 ああ、私はここで死ぬのか。兄弟姉妹を助けることはおろか、仇を討つのも叶わないのか。

 

 

 目の前で起こる現実に現実に心の中でただ歯噛みし、私はこれから来るであろう痛みに対して目を瞑るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………? …………痛みが来ない? いや、それどころかさっきまで感じていた胸の痛みが引いていく? 

 

 不可解な現象に私はそっと目を開ける。目を開くと目の前には意識を集中している奴と、温かい光を放つ翡翠色の結晶に覆われた私の体だった。どういうことだ? 奴は何をしているんだ? 

 

 パリィン! 

 

 しばらくすると右腕に覆われていた異様に大きい結晶が音を立てて砕け散る。そこには先ほどまであったはずの源石の結晶が存在せず、破れた衣服から雪の様に真っ白な肌が覗かせていた。

 

 

(これは……!)

 

 

 まぎれもなく源石の消失。奴は私の鉱石病を治していた。大地の呪いであり、不治の病である鉱石病を敵である私に対して治療を行っていた。

 

 私に気にすることもなく奴は懸命に意識を集中し続ける。その姿から私は、奴に対して大きなすれ違いをしたのでは?と考える。思えば奴は私たちを殺そうとしてこなかった。初めからさっきのように動けば、奴は私たちをいともたやすく殺せたはずだ。

 おそらく奴は性格はとても温厚なんだろう。しかし私たちが仕掛けてきたことで向こうも仕掛けざるを得なかった。そうだとすれば、これは私たちに非がある。

 

 奴……いや、彼には謝らねばならないな。そう思ったその時、再び体に違和感が覚える。体中に湧き上がっているはずのアーツの感覚が弱まっていく。どういうことだと疑問に思うも、これまでの現象から私はある仮定が浮上する。

 

 彼によって起きているのかは不明だが、鉱石病の治療はもしかしたら源石を消すとともに患者のアーツ能力も消しているのでは? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………それは駄目だ。

 

 

 彼の厚意を無碍にしてしまうことは百も承知だが、私はまだ感染者の立場を捨てるわけにはいかない。お父さんと兄弟姉妹、数知れぬ多くの同胞を置いて、私だけがのうのうと自由になるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らのために、私はまだレユニオンからいなくなるわけにはいかないんだ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感染者として秘めた思いを心の奥底から叫んだ瞬間、異変が起きた。突然私の体を覆っていた結晶が全て砕け散り、目の前の彼が頭を抱え苦しみ始めた。痛みが引いた体を起こしつつも何が起こっているんだと困惑する中、彼の右腕から源石の結晶が発生し、次第に金色に輝く彼の体から源石の結晶が染め上げるように散らばって発生する。まるで先ほどまでの私と同じ状態と同じだ。

 

 

(まさか彼は治すのではなく、源石を自身の体に移し替えたのか!?)

 

 

 苦しみ悶えていた彼は数分もがいた後、苦痛のあまり気を失ったのかゆっくりと地面に倒れ伏す。彼が倒れたその時、周囲に何かが砕けたかのような音がした。

 

 

「う~ん……、あれ? 俺はあの時凍らされて……」

 

 

「何だ何だ? 急に氷が砕けたぞ?」

 

 

「あっ! 姐さーん! 無事ですかー!!」

 

 

 それは氷漬けにされた兄弟姉妹の氷が砕けた音だった。おそらく彼が気を失ったことで効力が無くなったのだろう。何が起きたと言わんばかりに周囲を不思議そうに見渡す彼ら。そのうちの一人が私に気づくと皆一斉に私の元へと駆け寄った。

 

 

「姐さん! 体の方は大丈夫なんですか?」

 

 

「うわっ! 金ぴかが倒れてる! もしかして姐さんが……?」

 

 

「私ではない。それと、彼は敵ではない」

 

 

「えっ? 姐さんそれってどういうことだ? それに彼って……?」

 

 

「詳しいことは後で話す。とりあえず彼を運びながらあの鉱山の中に避難するぞ。村の建物は先ほどの戦闘のせいで半壊しているのがほとんどだからな」

 

 

「いやそれって姐さんのせいじゃ「何か言ったか?」イエ、ナンデモアリマセン。じゃあ金ぴかは俺と……。ビッグベア、手伝ってくれるか?」

 

 

「わかった」

 

 

 そうして私達は彼を寂れた鉱山の中に運びながら、鉱山の洞くつで身を休めることにした。

 

 

(頼む、絶対に目を覚ましてくれ。お前には色々と話したいことがあるんだ)

 

 

 私は担がれていく彼の傍に近づき、彼の顔をそっと撫でる。彼からは生物が持つ温かみが感じられず、無機物の様な冷たさが手袋越しに伝わる。それでも彼が目覚めることを、私はただ信じるしか術がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 

 

 

 フロストノヴァの治療中、気を失ったせっくん。目が覚めるとそこは鉱山の天井が目に映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目覚めたせっくんに気づいたフロストノヴァとスノーデビル隊は彼との対話を試みる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 対話を望む彼らにせっくんは……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そんじゃまぁ、俺の歌を聞けぇぇぇぇぇぇ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第9話、和解 ~クロッシング~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 

 

 

 

 




せっくん「ダイナモ感覚!ダイナモ感覚!YO!YO!YO!YEAH!」
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