海軍は陸軍の外局ですか?   作:かがたにつよし

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です。


大戦前夜
プロローグ


 かつて、「帝国」という国家があった。

 

 新興国家にもかかわらず技術・経済・軍事、どれをとっても周辺列強諸国より頭一つか二つ飛び抜けており、もし今日まで存続していれば"人類は火星にさえたどり着けたであろう"と言われている。かつてのイルドア帝国の崩壊とまでは言わないが、人類史の後退であったことは間違いない。

 

 なぜ帝国は滅んだのか。

 

 確かに、"帝国"を冠する通り民主的な国家とは言えなかった。拡張主義を唱え、周辺諸国と係争地を抱えていたのも間違いない。軍人が文官に対して優越しており、産官学の全分野で軍人が権力を振るっていたことも事実だ。

 

 しかし、帝国が滅んだ"世界大戦"の引き金を引いたのは()()()()ではなかった。

 現在でこそ被害者面をして賠償金を求めつつ平和の尊さを謳っている協商連合、それが始めに帝国に殴りかかったのだ。同じく共和国・ダキア・連合王国・連邦――いずれも帝国から戦争を仕掛けていない。

 彼らが帝国に戦争を仕掛けたのだ。

 合州国は……少し事情が異なるので置いておこう。

 

 では、なぜ周辺諸国は帝国に戦争を仕掛けたのか。

 

 ここが帝国崩壊の原因であろう。つまるところ、帝国は中途半端に強かったのだ。

 

 合州国ほど隔絶しているのであれば諦めもついた。共和国程度の実力であれば周辺諸国も警戒せず、欧州のバランスが失われることもなかったであろう。

 しかし、囲んで殴ればなんとかなる程度でしかなかった。

 

 ――帝国は一度も戦争に負けたことがない――この文句は事実であった。世界大戦前に帝国は最大版図を記録するが、それは巧みな外交戦略により徹底した一対一戦争によって得られたものである。

 しかし、周辺諸国を相手に勝ちまくり領土と国庫を増やして列強まで上り詰めた帝国は、周辺諸国の恨みを盛大に買ってしまう。世界大戦前には、帝国と完全な攻守同盟を組む国家はなく、共和国を中心とする対帝国包囲網が出来上がっていた。それに対して、帝国は外交で包囲網を崩すのではなく、内線戦略による多正面作戦の完遂へと舵を切ってしまう。

 

 すなわち、次の戦争が始まった時点で帝国の敗北は必至であった。統一歴1900年以降の帝国は、前世紀のツケと外交戦略の失敗により、いつ敗北してもおかしくない状況だったのだ。

 

 次の問題は、"負け方"であった。

 

 前世紀の戦争――例えば帝国が最後に経験した帝国=共和国間戦争の共和国のようにさっさと負けてしまえば、帝国が滅ぶこともなかったであろう。周辺諸国が溜飲を下げ、包囲網を崩すことができたかもしれない。

 

 しかし、帝国は大真面目に戦争をしてしまった。中途半端に強かったがために国内世論は負けることを認めなかった。建国以来敗北を経験していないというのも大きかっただろう。

 悲しいことに、軍人達も同じような思いであったという。殴りかかってきた分からず屋に泥の味を教え込む以外に、帝国は紛争解決手段を知らなかった。

 

 結果、帝国を相手に戦った国々は無視できない人的及び経済的損失を被り、それを補填するため帝国の解体を是としてしまう。前世紀であれば考えられない愚かな行為であるが、終戦後もしばらく国家の理性を溶かすほど"世界大戦"は熱く眩しい劇薬だったのだ。

 

 

 

 そんな帝国にも、勝ちの目が無かったわけではない。帝国を救えたかもしれない、優秀な頭脳を持った輝かしい人材が存在したのだ。

 

 例えばゼートゥーア将軍。

 世界が経験しえない大規模戦争に戸惑っている間に多数の合理的かつ効果的な作戦を遂行し、連合軍に大きな打撃を与えた。合州国をして"我らの恐るべき敵"と言わしめたのは彼以外に存在しない。また、彼の下には参謀本部直属の魔導師部隊がおり、数々の前代未聞の作戦の成功に寄与したと言われている。

 

 だが、それはあくまでも戦術的なものでしかなかった。彼らは懸命に祖国の運命を回天させるべく行動したのかもしれないが、結局のところ負けるべくして始まった戦争の敗北を少し遅らせた程度でしかなかった。

 敗戦処理をより過酷にしたという意味では、逆効果だったかもしれない。

 

 根本的な問題として、戦争を始める前に何とかしておかなければならないことが多すぎたのだ。始まってから泥縄式に手当てしていたのではお話にならなかった。

 

 他にもルーデルドルフ将軍やロメール将軍等優秀な人材は多かったが、あまりにも戦術的過ぎた。しかし、帝国にも"始める前に状況を打開すべき"であることを理解している戦略的思考を持つ人間が存在しなかったわけではない。

 

 さて、今日でも"11番目の女神"等、情報の秘匿や散逸が絶えない帝国陸軍に対して、帝国海軍の情報は比較的揃っており、入手も容易である。事実、しかるべきところに要求したとある士官学校生の卒業論文は、この通り手元にある。

 

 ――統一歴1918年 エリカ・ブランデンベルガー著 『海軍建設の今後と仮想敵国について』――

 

 艦隊機動や砲雷撃戦等の戦術的な論文が多い中、余りにも巨視的な視点で書かれた本書。周辺諸国をそれぞれ仮想敵国とし、その全ての組み合わせにおいて海軍の果たすべき役割とそのために必要な装備や施設の建設計画及びその勝敗の予想を論じていた。

 

 もし、歴史のIFが許されるのであれば、この通り行動した帝国を見てみたい。

 きっと、今日まで国家の命脈を断たれることなく存在しているだろう。

 

 だが、それは果たされなかった。

 なぜならば、帝国において、海軍は陸軍の外局でしかなかったのだ。




執筆中で腐ってたSS投稿第二弾は幼女戦記。

~普仏戦争~日露戦争をだいたい史実通り起こした後、Great Warが10年遅れで勃発する平行世界線。

原作(漫画/アニメ)ではなんかとても近代的な(気がする)兵器群が出てきますが、いやちょっと待ってと。
WW1を経験してないのにWW2の兵器出る?
なので、フォッカーやソッピース、A7VやMk.1で大戦序盤を戦いながら、Bf109やスピットファイア、7号戦車やチャーチルが"決戦兵器"として登場する世界線を描きたいなぁって(当時は思ってた)。

あと、史実ではチョビを蜥蜴の尻尾にして切り抜けた国防軍がこの世界線ではどうするのかなぁって考えて、ライヒの黄金に疑問を投げかけるべく、オリ主ちゃんは海軍に。

漬物が後50kbくらいあるのでちょっとだけ続きます。
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