聖闘士星矢vs幽遊白書~Legend of Soldiers 作:シャンディ
幽遊白書はアニメの最終回の少し後。
第1話 全ての始まり
SIDEアテナ
ここは城戸邸……私が城戸沙織として育った思い出の場所。
私は小さいころに、お爺様と撮った写真を見つめていた。
そしてこの場所に来ると、いつも思う事がある……アテナではなく、普通の人間であったらどういう人生になっていただろう……。
私は地上の平和と人間を守る神であるアテナの化身……決してまともな生活には戻れないだけに、自分と同じ年代の女性たちを羨ましく思う時がある。
私だって普通に恋愛がしたい、お洒落もしたい、子どもだって欲しい……でも、それは叶わぬ夢。
人並みの幸せに私はなれない……それが宿命のだから。
もちろん自分の宿命は受け入れているが、現実逃避したくなる時だってある。
だから、そう言う時はこの城戸邸に戻ってくるのだ。
冥王ハーデスとの聖戦では黄金聖闘士12人全員が全滅……その後は冥王の剣の呪いにより3日の命となった星矢を救うべく、240数年前の過去にも飛んだ。
何とか星矢を救う事はできたが、残る聖闘士は私と幼いころから過ごした顔馴染みと白銀聖闘士のシャイナと魔鈴だけになっていた。
これでは、また邪悪な神の脅威が迫った時、守りきれないかもしれない。
私はすぐさま、聖闘士とサンクチュアリの建て直しに着手した。
まずは12人全滅した黄金聖闘士を何とかしなければならない。
まずは星矢をペガサスの青銅聖闘士から射手座の黄金聖闘士に昇格させた。
紫龍には天秤座、氷河には水瓶座、瞬には乙女座、一輝は獅子座の黄金聖闘士に昇格させようと思ったが、瞬と一輝は「今の聖衣の方がしっくる来る」、氷河は「まだ自分は我が師の聖衣を着れる程に至っていない」、紫龍は「一応、引き継ぎはするが、あくまでこれは老師の聖衣だから管理するだけ。あくまで自分はドラゴンの聖闘士でその聖衣が着なくなったときは聖闘士を引退する時」と全員が昇格を拒否。
なんとか獅子座、蠍座、乙女座、水瓶座、山羊座は確保したが、まだ半分しか確保できておらず、こんな時に本来は聖域を離れるべきではないのだが、今は少し休みたかった。
星矢は「ゆっくり気が済むまで休んできてくれ」と言ってくれた。
「じゃあ僕は隣の部屋にいるんで、なにかあったらいってください」
「あっ!瞬!」
緑がかった長い髪と女性のような美しい顔立ちの彼はアンドロメダの聖闘士である瞬。
私を警護するべく、城戸邸まで着いてきてくれたのだ。
瞬もまた私と幼馴染の聖闘士で長い付き合いだ。
誰よりも優しく、戦いを好まない性格……その美しい心が原因でハーデスに憑依されてしまったこともあった。
これは瞬に限った事ではないのだが、私が幸せになれない分、彼らには幸せになってほしい……これ以上彼らが傷つくのを見たくないと言う思いが私の心にはある。
「もし辛いのなら聖闘士を辞めても構わないのですよ?」
「どうしたんです急に? この前、乙女座の黄金聖闘士にならないかと言ったばかりでしょう?」
「それはそうなのですが……一般人に戻れば人並みの幸せが得られるかもしれませんし、これ以上貴方達が傷つくのを見たくはないのです」
「確かに聖闘士である以上、自分が人並みに幸せになるのは無理かもしれない……でも人の幸せを守る手助けはできる……それだけで僕は十分なんです。だから、これからも一生、僕は、いや……僕ら聖闘士は沙織さん、いや……アテナ、貴方についていきます!」
「ありがとう瞬」
その時だった。
それまで快晴だった空を雨雲が覆い、台風並みの雨風が発声し、雷が鳴り響く。
休む暇はないようだ……。
邪悪な気配を感じ取った私は椅子から立ち上がる。
瞬もその気配を感じ取ったらしく、オペラピンク色のアンドロメダの聖衣を装着し、武器であるチェーンを構える。
「間もなくこの地上は闇が支配することとなる……」
低く、威厳のある声が城戸邸全体に響いたかと思えば、不気味な高笑いが聞こえる。
「誰です!?」
私がそう言った瞬間、部屋の窓ガラスが割れたのだった。
その頃、時を同じくしてもう一つ事件が起こっていた……。
SIDE幽助
俺の名前は浦飯幽助、元はこの世で悪さをしている妖怪を退治する霊界探偵をしていたが、今は裏稼業のなんでも屋として妖怪と人間の間に共存する世界を目指して、彼らの間に起こるトラブルを解決している。
ちなみに俺の親父は数いる妖怪の中でも闘神と言われ、最強を誇った雷禅。
そして俺の父である雷禅が亡くなったと同時に魔界の王を決める魔界統一を行った。
大会の優勝者は親父の昔の喧嘩仲間である鬼の妖怪である煙鬼で「人間界に迷惑をかけないこと」を約束し、煙鬼が魔界の王となってからは人間界で生活する妖怪も増え、悪事もピタリと止まっていたのだが……。
「大丈夫か桑原!? おい、起きろ! 目を覚ましてくれ!」
横たわる親友、桑原和真の無惨な傷だらけの姿……凄まじい邪気を感知して、来てみた時にはもう手遅れだった。
「浦飯か……すまねぇ……螢子ちゃん守りきれなかった……」
「何も言うな! すぐに救急車が来るからな!」
雪村螢子……俺の最愛の人……俺が来るのが遅かったばっかりにこんな事になってしまった……俺の怒りのボルテージは最高点に達し、両手の拳をグッと握りしめた。
「蔵馬も一緒に連れて行かれちまった……」
「何だと!? 蔵馬まで……どんな奴に連れて行かれた!?」
蔵馬はこの世では借りものの肉体で活動している為、魔界でのようにとはいかないが、それでも高い実力を誇る妖怪で、俺たちの仲間として共に厳しい戦いを乗り越えてきた。
その蔵馬、そして桑原がいても、あっさりやられてしまう程、敵は強い……俺はゴクリと唾を呑んだ。
「分からねぇ……一瞬の事でよぉ……でもあの妖気はただもんじゃねぇ……2人を返してほしければ今度開かれる暗黒武術会に出場して優勝しろだとさ……」
「暗黒武術会……だと?……」
暗黒武術会と聞いて思い出すのは地獄のような戦いだ。
かつて俺と蔵馬、飛影、桑原、そして幻海の婆さんと共に出場し、戸愚呂などの強敵と戦い、優勝を果たした。
あの時は武術会と言うより、ただの殺し合い……煙鬼が魔界の王となってからは武術会と言う言葉通り、技を競い合い、己の力を試す大会となっており、殺し合いは禁止となっている。
何故、暗黒武術会なのか……もしやその武術会に出場する中に螢子と蔵馬を連れ去った奴がいるってことなのか?……。
今は考えても仕方がない……罠かもしれないが、この大会に出場して優勝するしか方法がない。
3日後……
SIDE星矢
「なんだって!? 辰巳、それは本当なのかよ!?」
聖域全体に俺の声が響き渡る。
俺だけでなく、その場にいた聖闘士全体に衝撃が走った。
「アテナが……沙織さんがさらわれただと!? 瞬は……瞬はどうした!?」
「恐らく瞬も沙織お嬢様と一緒に……」
俺は責任感から聖域の壁を殴る。
あの時、休んで来いなんて言っていなければ、こんな事にはならなかったはずなのに……。
「俺のせいだ……」
「星矢、お前のせいじゃない」
ブロンドの長髪と青い瞳……白鳥星座の氷河が俺の肩に手を置く。
「氷河の言う通りだ星矢! さらわれたのならさらった奴を捜しだして倒すまで」
「しかし、敵はどんな奴でどこにいるのかも分からないのだぞ?」
沙織が自らスカウトし10年に一人と言われる逸材と言われていたる獅子座・レオのシャインの言葉に山猫座の白銀聖闘士から昇格した女聖闘士の蠍座・スコーピオンのアンドシアが疑問を投げかける。
「そう言えば、沙織お嬢様を返してほしければ、暗黒武術会に参加し優勝しろと言ってた!」
辰巳の言葉に全聖闘士が顔を見合わせる。
「暗黒武術会? なんだそりゃ?」
黄金聖闘士シュラの弟子であった山羊座・カプリコーンのハリソンが首を傾げる。
「このヤシャ、聞いたことがある……武術会に招待状が届いた5人の者たちに拒否権はなく、武術会と言うのは名ばかりでただの殺戮の場」
「それは前の話よ……今は自分たちこそ最強と自負する腕自慢の妖怪たちが集まって自身の力を試す場になっているわ」
自らを金剛夜叉明王の化身と称する乙女座・バルゴのヤシャの言葉にアイスランドに住む雪女であった水瓶座・アクエリアスのベルが訂正する。
「だったらその大会に出るしかない」
「星矢……これは罠の可能性が高いと思われますが?」
「ヤシャ、そんなの言われなくても分かってるさ。それでもなにか掴めるかもしれない……だから俺はこの大会に参加する」
「そうですか……そう言うと思ってました しかし、私はいきませんよ? わざわざ危険と分かってて行くなんて馬鹿馬鹿しすぎますからね」
「ヤシャ、貴様……それでも聖闘士か!? アテナが心配じゃないのか!?」
シャインがヤシャに掴みかかるがヤシャはそれを冷静に躱す。
「落ち着けシャイン……私とてアテナは心配だ……しかし敵がなにか分からぬ以上、迂闊に罠に飛び込んでは命を落としかねない。聖闘士の数も少なく、ここで我々が参加して黄金聖闘士が全滅する訳にはいかんだろう」
ヤシャ以外は行く気満々のようだが、俺の心の中は決まっていた。
「俺と氷河だけで行く。後の皆はもし俺たちになにかあってもいいようにここで待機しててくれ」
俺の言葉に黄金聖闘士全員が驚く。
そりゃそうだろう……暗黒武術会の参加人数は5人それを黄金ではなく青銅である氷河と2人だけで出場すると言うのだから。
「敵は強いわ……2人じゃ無謀すぎる……」
「ベル問題ない。必ずアテナと瞬は連れて戻る」
「そうか……ならば魔界への道はこのヤシャが開いてやろう」
「あぁ、頼む」
「承知した……オーム!!」
聖域の真ん中に円形の裂け目ができる。
中の色は真っ赤でまるで血の色だ。
「さぁ行け。この先が魔界だ」
「待て星矢、紫龍と一輝にも伝えないと!……」
「いや氷河、紫龍と一輝には伝えなくてもいい」
「なぜだ?」
「あいつは父親になるんだからな……それに一輝はなにも言わなくても来てくれるさ」
そう……紫龍は幼馴染の春麗と結婚し、春麗は妊娠していた。
聖闘士の戦いはいつ死ぬかも分からない……俺たちは父親の顔も知らない孤児……だからその悲劇を繰り返してはならない。
「そうか……なるほどな。よし行こう!」
「星矢、死ぬなよ?」
「あぁ、俺たちに任せておけシャイン」
俺と氷河はヤシャの開いた魔界へと続く裂け目に飛び込んだ。