聖闘士星矢vs幽遊白書~Legend of Soldiers 作:シャンディ
SIDEぼたん
幽助と飛影が暗黒武術会で必死に戦っている頃、あたしは霊界にいた。
すぐにでも駆けつけたかったのだが、霊界では脱獄が行われていて手が離せなかったのだ。
「コエンマ様、大変です!!
呑気におしゃぶりをしゃぶりながら、居眠りをしている。
「なんだ?……折角寝てたのに……」
「寝てる場合じゃありませんよ!脱獄です!」
「なんだ……脱獄か……脱獄だって!?」
コエンマ様は飛び起きると頭を抱える。
「えぇい!防衛隊はなにをしておる!?脱獄したのは誰だ!?」
「それが……下級と中級の闇闘士たちでして……」
「な、なんじゃとぉぉぉぉぉぉぉ!?」
闇闘士は圧倒的な戦力で主であるタルタロスの命により、かつて地獄から霊界、魔界、冥界、人間界を支配しようと企んだのだが、計画は失敗。
主であったタルタロスは神々の力によってどこかに封印され、霊界に進軍していた闇闘士たちは力を失い、霊界の牢獄の中で、凶悪な犯罪者が入ると言われている牢獄にまともて閉じ込めてあったのだが、どうやら力を取り戻したらしく脱獄を始めたのだ。
かなりの数を閉じ込めていた為に、選りすぐりのエリート集めた霊界の防衛隊でさえも対処しきれなくなっていた。
「まずいなぁ……幽助と飛影に助っ人頼むこともできんし、桑原は戦える状況じゃないし、蔵馬は行方不明だし……」
「コエンマ様が戦えばいいのでは?」
「うるさぁい!」
青鬼で秘書をしているジョルジュ早乙女がいつものようにコエンマ様に茶々を入れて、殴られている。
「このままじゃ収拾がつかなくなりますよ!?」
このまま全員が脱獄すれば、霊界は終わり……それ程闇闘士は怖ろしい力を持っている集団なのだ。
「アイツらに……助けてもらうしかないな」
「そのアイツらってまさか?」
コエンマ様が言うアイツらに心当たりがある。
それは幽助とも戦った相手、そして今、霊界で処分を審議中の神をも誑かした男。
彼らが霊界の為に働くとは思えないのだが……。
「仕方あるまい!ダメ元で頼んでみろ!じゃないと皆殺しにされて終わりだぞ!?」
「わ、わかりました!」
私は助っ人を呼びにその場を後にしたのであった。
SIDEヤシャ
暗黒武術会の準々決勝が終了後、会場を後にした。
今日の試合はここまでで、準決勝と決勝戦は1日のインターバルが空き、明日の早朝に行われる。
星矢たちの激励に行こうかとホテルの前まで来たのだが、この島のどこかに潜んでいる闇闘士を捜す方が先決だと思い、島中を歩き回っていた。
そして雑木林の中で懐かしい顔と妖気に出会う。
「久しぶりだな、ヤシャ」
「躯……」
雑木林の中で佇む、若き女性は躯……魔界を支配する三大妖怪の一人だ。
「この会場に来ていたとは……何年ぶりかな?」
顔の右側にレンズがついた布……中性的で整った顔……そして凄まじい妖気。
「さぁな……魔界で一度、戦った時以来だな。ところで、久しぶりに会ったんだ。少し話さないか?」
躯は横にあった岩石に腰掛ける。
「どうした?座らないのか?」
「立ちで結構です……なるべく手短に済ませてもらえますか?こっちは忙しいのです」
ゆっくり雑談をしている時間など今の私にはない。
一刻も早く闇闘士を見つけなければ、取り返しのつかない事態になりかねないからだ。
「まぁ、そう言うな……そう言えば、あの時の礼を言ってなかったな」
「その時の少女は、修羅の道へ進み、今では魔界の三大妖怪の一人にまでなりましたか……」
「あんたのおかげだよ……こうしていられるのはね」
それはまだ私が聖闘士になるずっと前の話だ……幼いころから奴隷として扱われていた名もなき少女を私は助けた。
私は迫りくる追っ手を排除し、彼女を必死で逃がした。
しかし、いつしか背後に逃げ道はなくなっていた……断崖絶壁……絶体絶命。
私一人ならまだしも、幼い少女を庇って戦うとなるとただでは済みそうにない人数だった。
だが、その少女は私が制止する暇もなく、崖から川へと自ら、身を投げた。
死んだと思っていた……それから数年後、魔界を旅していた私を衝撃が襲った。
魔界で形振り構わずに妖怪を虐殺している躯と言う妖怪がいると聞き、駆除しようと住んでいると言われる洞窟へ向かった。
洞窟には躯に惨殺された妖怪の死体が無数に転がっていた……こんな事をするのは悪い妖怪に違いない。
その昔、私は人間を喰らう魔神だった……しかしいつしか人間が持つ美しい心に魅かれ、改心。
罪を償う為になにか、できる事はないか……そう考えた時に私ができる事は一つ。
人間にとって障害となるべき、邪悪なものたちは排除する事だ。
しかし躯と言う妖怪の正体はかつて私が助けた少女の成れの果てであった……戦いに明け暮れ、ボロボロになった体が痛々しく思えた
こんな事をするのは間違っている……私は説得した。
しかし躯は決して受け入れようとはしなかった……こうなった以上人間に危害を加える前に躯を葬ろうと考えた私は彼女と戦った。
だが躯の妖力は凄まじく、鬼神と呼ばれていた私でさえ驚く程になっていた。
このまま野放しにすれば、手が付けられなくなる……死闘の末に私は躯をなんとか追いつめた。
ヴァジュラと言う聖なる武器を使い、躯にトドメを刺そうとしたのだが、私にはできなかった……まだ彼女は改心できる……そう信じていたから。
あの時の判断は果たして正しかったのか……人間には危害を加えてはいないが、その後も修羅の道を進み、今では魔界を牛耳る妖怪にまで成長している。
か弱き少女と思って助けたのに結果的には最強の妖怪となってしまったとは皮肉なものだ。
「俺は魔界三大妖怪の一人と言われ、あんたはアテナの聖闘士になった……お互いに望んだ道ではないが、こうなる運命だったんだよ」
「果たしてそうですかね?」
「なにが言いたい?」
私には運命だったと躯が自分に言い聞かせるようにしか聞こえなかったのだ……きっとまだ捨てきれてはいない。
「君は奴隷以下と扱われた過去の怒りをぶつけていたのだろう?女であることを忘れる為にな」
「やめろ……」
「君は私と2度目に出会った時、汚れた出来損ないだと言いましたね?それは君が女としての機能を失っているからなのでしょう?子どもが欲しい、幸せに暮らしたい……その思いを今でも諦めきれていないはずです」
「やめろ!あんたこそ何人の人間を殺したと思っている!?大方、どうせ聖闘士になったのもアテナの為ではなく、俺が人間界に出て悪さをした時の為の保険なんだろ!」
「それについては否定も肯定もしません……」
だが、図星だった……躯の言う通りだ。
私は躯が強大な妖怪になる事くらい薄々勘付いていた……聖闘士になれば、情報も得やすくなるからと思いつき、今に至る。
「悪かった……ついカッとなった」
「いや、私こそ酷い事を言いましたからね……話題を変えましょうか。何故、ここに来たのです?」
「部下が出ていてな……その応援だ」
「そうですか……私も似たようなものです。知り合いが出ているのでね」
「残念だが、優勝は俺の部下がいる浦飯チームに決まりだろうな。飛影と幽助はいずれ俺を凌駕する力を秘めている」
「それはどうですかね?聖闘士チームだってしぶといですよ?邪悪な神々と渡り合い、何度も奇跡を起こしてきた彼らなら優勝は間違いないと思いますがね」
背後に殺気を感じる……邪悪な気配だ。
「ヤシャ、お客さんのようだな」
「そのようですね……」
私たちは岩石から地面に飛び降りると周囲を警戒する。
ガサガサと音を立てて出てきたのは、ドス黒い聖衣を纏った数十人の男たち。
「我らはタルタロス様に仕える下級闇闘士だ!」
「ほう……貴様ら闇闘士か。やはりアテナをさらった黒幕はお前らだったか」
「ヤシャ、こいつらどうする?」
「片づけましょう」
「アテナがさらわれたんだろう?居場所を聞かなくてもいいのか?」
「構いません……」
「ヤシャ、手伝おう」
下級闇闘士と自称しているが、実際のところは雑兵だろう……雑兵の分際でアテナの居場所を知っているとは思えない。
「たった2人でなにができる!?死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
躯が掌を翳すと、地面が爆発し半分以上の闇闘士が餌食になる。
「な、なにが起こったんだ?……」
動揺する闇闘士たちに私も躯と同じく手を翳し、小宇宙を燃やす。
その小宇宙で電撃を発生させる。
電撃は残りの闇闘士たちを包み込み、全員を瀕死に陥れた。
「実力は衰えていないな」
「君こそ、さらに強さを増しましたね」
「話しにならない弱さだったが、闇闘士とはなにものだ?」
「地獄の神であるタルタロスの下僕たちの総称です……今のは雑兵。上級を相手にすれば、私とてただでは済まないでしょうね」
「なぜ闇闘士はアテナをさらい、あんたを襲う?」
「地上はおろか、霊界、魔界、冥界……全てを支配するために動き出したのですよ」
刺客が来ると言う事は敵が本格的に動き出した証拠だ。
命に代えてもタルタロスの復活だけは阻止しなければ……しかし何故、闇闘士は暗黒武術会に参加するように指示を出したのか……奴らのメリットはなんだ?。
やはり指示を出している上級闇闘士を捜すしかない。