聖闘士星矢vs幽遊白書~Legend of Soldiers 作:シャンディ
SIDE氷河
もう少しだ……もう少しで決勝へ辿り着ける。
この試合にさえ勝てば、後は星矢が必ず大将戦を勝ってくれるはず。
そんな想いを胸に、俺が戦っている相手は呪氷使いの凍矢。
同じ凍気を操る敵だ……そんな奴に負けるわけにはいかない。
だが、状況は苦しい……凍矢は273.195度、つまり絶対零度に目覚めていて、動く速さも光速。
それに加え、俺は昨日受けた毒の影響でまだ眩暈と酷い頭痛がしてフラフラの状態……お世辞にも良いとは言えなかった。
俺と凍矢の凍気がリング上を覆い、リングは凍っていた……氷上は俺の得意ステージなのだが、それは凍矢も同じ事。
下手をすれば、この試合に負けてしまう……凍矢はそれくらいの強敵だ。
「もう少し、やると思ったんだがな……この程度か」
俺は渾身の力を込めたパンチは凍矢に簡単に受け止められ、逆にカウンターの蹴りを浴びせられる。
少し俺は自棄になっていた……ここで負けるわけにはいかない。
そんな気持ちばかりが先行してしまっていた。
「ダイヤモンド……ダァァァァ!ストォォォォォ!!」
ダイヤモンドダストは確かに凍矢に命中した。
しかし凍矢はダイヤモンドダストの凍気の中を平然と歩いてくる。
「そんな赤子みたいな凍気では俺には通用しない」
俺は凍矢の拳を顔面に受け、吹っ飛ばされるがすぐさま立ち上がる。
まだ戦える……どんなに傷ついてもこの試合だけは俺がなんとかするべきなのだ。
「通用しなくても、通用するまで技を放つまでだ!キグナス氷河、最大の拳を受けてみよ!……オーロラァァ……サンダァァァ……アタァァァァァァック!!」
俺の発生させたオーロラサンダーアタックは凍矢を呑みこんだかに見えた……しかし放ち終わった後に凍矢の姿はなかった。
吹っ飛ばされたのか……いや、違う!……俺は後ろに殺気を感じて振り向くが時遅し。
「魔笛霰弾射!!」
凍矢は手のひらに凍気の塊を数多く作り出し、それを散弾の如く吹いて攻撃してきた。
この技を浴びるのは4度目だ……普段なら実力差が離れてない限り、1度見た技は見切れるはずはずなのだが毒、毒のせいか身体が言う事を聞かないのだ。
それも今までとは違い、今度は超至近距離からまともに浴びてしまい、俺はかなりのダメージを負った。
魔笛霰弾射を浴びた直後、目の前が真っ暗になり、俺は意識を失った。
なにも見えない……なにも感じない……体も動かない……そんな暗闇の中で俺の名を呼ぶ声が聞こえる。
その声は当初、一人だったのが徐々に増えていった……そしてその声全員に聞き覚えがあった。
仲間である星矢、紫龍、瞬、一輝、かけがえのない大事な人マーマ、かつて戦ったベータ星メラクのハーゲン、聖闘士の先輩である水晶聖闘士、蠍座のミロ、こんな俺でも大切に思ってくれている絵理衣、フレア、兄弟子のアイザック、俺たちの希望アテナが……そして我が師カミュの声も聞こえる。
みんなの叱咤激励が俺の心に響く……その時、俺は力が沸いてくるような、小宇宙が一時的に高ぶっていくような不思議な感覚があった。
周囲は暗闇でまったく見えないが、みんなが俺を囲んでいる……我が師であるカミュも傍にいてくれている。
「我が師……カミュ……」
「お前はもう立派な聖闘士だ。既に師である私を超えている」
「私などまだまだです……」
「いや、今はベルが装着しているがゆくゆくはお前が水瓶座の継承者になるのだ」
「私が……この氷河が水瓶座を?……」
「だから氷河、こんなところで負けてはならん。思い出すのだ……かつての苦しくも、地獄のような戦いを何度も経験してきた事をな……この程度で立ち上がれなくなる弱い聖闘士ではないはずだ」
そうだ……俺たちは黄金聖闘士やライバルたちと戦い、冥王ハーデスを始め、神々との苦しい戦を何度も経験してきた。
それに比べれば、この程度の大会など子ども騙しにすぎない。
「光が見える……カミュ、必ずこの試合、勝ちます!」
「その意気だ、氷河!お前には仲間がいる……友がいる……そして私の魂もお前と共にある事を忘れるな!行け!聖闘士の力を見せつけてやるのだ!」
「はい!」
俺は光に吸い込まれるようにして暗闇から抜け出した……目を開くと、そこは闘技場。
審判の小兎がカウントを取っていた……今こそ燃え上がれ……俺の小宇宙。
【8!……9……おっと!氷河選手、凄まじい執念です!魔笛霰弾射を至近距離から浴びて立ち上がりました!】
「な、なんてタフな奴だ……俺の魔笛霰弾射を何度もまともに浴びて、立ち上がれる奴など見たことがない……何故だ……何故、そこまでして立ち上がる!?」
俺が立ち上がり、凍矢に向かって歩く……凍矢は信じられないような顔でジリジリと後退。
「ここで……同じ氷使いのお前に屈したら……我が師であるカミュや水晶聖闘士に面目が立たない!」
いや、それだけではない……アイザックやハーゲンは俺を叱咤してくれた……ここで負けては俺に倒された彼らの顔に泥を塗ってしまう事になる。
「凍矢……お前は確かに強かった……だが一つだけ間違っている事がある!お前はこの程度かと言ったな?だが、この氷河の真の凍気をお前は知らない!」
【氷河、選手の周りのリングがさらに凍結していきます!……そしてかなり寒いです……まるで私は氷の国にでもいるのでしょうか?……ハ……ハックション!】
「俺の事を大切に想ってくれている友がいる……仲間がいる……俺と戦い散った者も大勢いる!この身体が傷だらけになろうと、そいつらの分まで俺は戦う!」
「凄まじい凍気だ……今までの弱弱しい凍気ではない……これが氷河の真の力だと言うのか!?しかしあんなボロボロの氷河のどこにこんな力が!?」
「教えてやろう凍矢……俺たち聖闘士は追い込まれてこそ、最大の力が出せるのだ!」
「なるほど……誰かさんのチームとそっくりだな。俺だってここで負けるわけにはいかん!やはり、リスクを犯してでもトドメを刺しておくべきだった」
「決着を着ける時だ」
「そのようだな……呪氷剣!!」
凍矢は自らの右手に氷を張り巡らせ、その氷はやがて鋭い剣となった……その剣には凍矢の凍気が込められている。
あの剣を受ければ、聖衣を着ていたところで意味をなさない。
剣を振りかざし、俺に向かってくる凍矢……俺は目を瞑り意識を集中させる。
今は俺の小宇宙が最大限にまで高まっている……見える……凍矢が剣を振り上げ、そしてその瞬間に振り下ろした。
「氷河、お前!?」
俺は凍矢の呪氷剣を両手で掴んだ……真剣白羽取り。
そして左手でガッチリと、呪氷剣を掴み、右手で凍矢の腹部に拳をいれる。
腹を押さえて、後退する凍矢……その時、再びカミュの声が聞こえた……氷河、あの技を使えと。
俺は我が師カミュ最大の奥義を発動するべく、両手で水瓶の形を形成し、頭上に掲げる。
【氷河選手が両手を頭上に掲げました!まるで水瓶座を体で体現しているかのようです!】
「舞えぇぇぇ!白鳥よぉぉぉぉぉ!オーロラァ!エクスキューション!!」
その口から水が注がれるのが水瓶座……だがこの技はそんな生温いものではない。
黄金聖衣ですら凍結させてしまう程の凍気を放つ技……俺は感じる……カミュが俺の背中を押してくれている。
「こ、これは……絶対零度すらを遥かに凌駕した凍気!?ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
技を放ち終えると、凍矢が横たわっていた……俺は横たわっている凍矢を抱きかかえる。
「同じ……凍気を使う相手に……俺が負けるとはな……」
「いや、俺一人ではお前に勝つ事は不可能だっただろう……急所は外しておいた。今はゆっくり休め」
「幽助たちは……もっと強いぞ……」
「どんなに相手が強かろうと俺たちは絶対に勝つ」
凍矢は意識を失った……俺の勝利宣言が発表されたのと同時に、眩暈が酷くなった。
ボロボロの状態でどうやら小宇宙を燃やしすぎたらしい……決勝戦まで俺は暫く休む事にする。
星矢なら、負けるはずがない……。
SIDE幽助
ここは闘技場から少し離れた、洞窟。
「幽助か……」
俺は幻海の婆さんをずっと捜していた……螢子と蔵馬がさらわれ、何者かが暗黒武術会への出場を強要してきた。
本来は5人で戦うのが暗黒武術会は基本。
飛影と北神はすぐに俺の話に乗ってくれたのだが、それでも三人……だから婆さんに力を借りようと思ったのに、どこにもいなかった。
だから暗黒武術会で婆さんを見た時は驚いた……話をしに行こうとしてもすぐどこかに消えてしまうからだ。
「婆さん……こんな時になにやってんだよ?」
「懐かしい……そう言えば、ここでお前に霊光玉を継承したな」
確かにここは婆さんの霊光玉を継承した場所だが、そんな昔話をしに来たわけではない。
「幽助……次の戦いだが、命を賭けあおう」
「はぁ!?冗談だろ!?」
なにを言い出すのかと思えば、命を賭けあうなんてそんなバカな事できるわけがない。
ましてや相手は俺の恩師とも言える婆さんだ。
「冗談ではない!」
「婆さん……」
「お前が私を殺せないと言うのなら、私が殺すから覚悟しな」
「螢子と蔵馬がさらわれた……武術会に優勝しないと螢子と蔵馬の命が危ねーんだよ」
「じゃあ、なおさら私を殺す気で来ないとな」
「なんとも思わねーのかよ!?」
「ちなみにその試合は私とお前のタイマン。生き残った方のチームが決勝に進む、それでいいな?……じゃあ試合でな」
婆さんは死ぬ気だ……背中が物語っている。
婆さんと殺し合いなんて絶対にしたくない……でも婆さんは本気だ。
もし俺が手を抜くような事があれば、本気で殺しに来るだろう……。
この戦いは最早、とめる事はできないのか……本当に方法はないのだろうか……。
そもそも婆さんはどうして急にあんな命を捨てるようなバカな事を急に言い出すのだろうか……なにか理由があるはずだ。
その理由は婆さんは絶対に口では語ってくれないはず。
婆さんなら口ではなく拳で伝えてくる……だったら上等だ。
俺の拳で婆さんの考えを変えさせてみせる……俺は婆さんの背中を見ながらそう誓ったのだった。