聖闘士星矢vs幽遊白書~Legend of Soldiers 作:シャンディ
SIDE星矢
光が指す方へ真っ直ぐに進め、その先に魔界はある……乙女座の黄金聖闘士ヤシャが俺たちにかけた言葉。
その言葉通り、真っ直ぐ進む俺と氷河。
光を抜けると、薄暗い森林へと出た。
魔界と聞いていたので、もっとおどろおどろしい場所なのかと思いきや、俺たち人間が住む世界と大して変わらないことに気づく……妖気や殺気があちらことらにプンプンする以外はだが……。
そして、さらに奥へと進むと、今回の参加者たちが大勢集まっていた。
人間と似たような奴から、異形の物まで様々だ……そして、早速、一匹の赤鬼のような妖怪に目をつけられた。
「オマエら人間か? 随分度胸がある奴だな 人間のくせに俺たち妖怪に勝てるとでも言いたいのか?」
「当たり前だろ。あんまり人間の力を見くびると、痛い目に遇うぜ?」
「おもしろい奴だな、オマエ。煙鬼様は人間たちに迷惑をかけるなと言うが、俺には関係がない。人間を殺すのになんの躊躇いもない」
「どうする氷河? いっその事まとめて叩きのめすか?」
「待て、殺るのはいつでもできる。今は相手がどんな強さなのか、誰なのかも分からない。おそらくこの大会で決勝まで残った奴がアテナと瞬をさらった本人だろう。敵の戦力や強さを確認する為にもここは大人しくしといた方がいい」
氷河の言う事はもっともだ……俺たちの目的は妖怪たちを倒すことではない。
あくまでもアテナと瞬を取り戻すのが最重要だ。
それさえできれば、こんな大会などどうでもいい。
挑発されてカッとなったが、氷河の冷静な判断のおかげで、怒りを収める事ができた……もし俺が1人でこの場に来ていたら、ここにいる妖怪を全員まとめてボコボコにしていたかもしれない。
俺は拳を緩めると、赤鬼が腹を抱えて笑い出す。
「やっぱり腰抜けか。そんなんじゃ1回戦でボロ負けするのがオチだ。ここは弱っちぃ奴が来る場所じゃないんだよ」
「何だと!?」
「落ち着け星矢。言いたい奴には言わせておけ……どっちみち大会が始まれば、あいつも黙るさ」
腹を抱えて大笑いしながら去っていく赤鬼を見ながら、俺は軽く舌打ちをした。
隣では氷河が涼しい顔をしているが、おそらくはらわたは煮えくり返っていることだろう。
そして、その後俺たちは船に乗ると、孤島に案内された。
その孤島には円形で野球場のような闘技場と大きく立派なホテルが建っている。
中は日本の高級ホテルと全く変わらない……冷蔵庫にベッド、ソファーにテレビにトイレとバスルームつきだ。
ホテルから出された食事も喉を通らず、ベッドに横になる。
「なんか今から闘うって感じじゃねーよなぁ……ホテルだなんて」
「人間で言う空手大会みたいなもんなんだろ。一応、武術会だからな」
「ホテルで呑気に寝てられるかよ……アテナと瞬がさらわれたって言うのによぉ」
「まぁな……だけど休んだ方がいい。これからどんな強敵と戦うかもわからないんだからな」
「そりゃそうだけど……ちょっと俺散歩して来るよ」
「外は危ないぞ星矢」
「あぁ、それは分かってる。散歩はホテルの中だけさ。すぐに戻る」
俺はベッドから起き上がると、部屋のドアを開けた。
いてもたってもいられなかった……動いてないと、どんどん不安になるばかりだ。
こうしている間にもアテナと瞬が……そう考えただけでさらった敵とアテナを……沙織さんを守りきれなかった自分にムカついてくる。
俺は1階に降りると、ホテルの外へ出た。
氷河にはホテルの中だけだと言ったが、やはり外が一番落ち着く。
森の奥へと進み、空を見上げると夜空に綺麗な星々が輝いている……こんな欝な時に皮肉なものだ。
「沙織さん……」
その時、後ろで気配を感じた。
「誰だ!?」
「驚かしてすまなかったねぇ」
暗い森の奥から歩いて来たのは、小柄でピンク色の髪をした老婆が現れる。
幻海SIDE
もう私はそんなに長くはない……昔から長らく、戦いに次ぐ戦いで己の身体をイジメ続けてきたのだ。
そろそろガタが来たとしても、不思議ではない。
私の土地は<アイツたち>に託した……人間と妖怪が共存する世界を実現させる為に……。
だが、その時までワシは生きてはいない……自分の身体の事は自分が一番分かる。
おそらく、末期の病に侵されている……だが病で死ぬなど、恥ずかしくて誰にも言えない。
武道家として、最期を遂げたい……だからワシはここへ来た。
この大会には弟子の幽助も出場するはず……幽助にトドメを刺されるのなら本望。
だが問題はワシ以外の4人の妖怪は雑魚同然で名声が欲しいだけのチンピラだと言う事。
少し強い敵と戦えば、彼らはあっさりとやられてしまうだろう……なんとか幽助のチームと戦う時までに耐えられればいいのだが……。
どちらにせよ、今は考えても仕方がないのだ……まだ暗黒武術会は始まってすらもいないのだから。
ワシがホテルに帰ろうと、来た道を戻ると、空を見上げてため息をついている少年がいた。
年齢は幽助と同年代くらいなのだが、奇妙な光景だった。
赤色のTシャツにボロボロのジーパンを着て、背中には四角形の金色に輝く箱のような物をランドセルのように背負っている。
それにどうやら妖怪ではなく人間のようだが、この暗黒武術会に人間が参加することなど滅多にない。
それにその少年からは霊力や妖気ではないなにかを感じ取ることができた……それはまるで宇宙をエネルギー化したような存在。
いや……少年の身体から湧き上っているのは紛れもなく、宇宙そのものであった。
「誰だ!?」
気配を消して近づいたのだが、気づかれたようだ……この少年なかなかの遣い手だ。
「驚かしてすまないねぇ」
「妖気はしないし、婆さん人間なのか?」
「見ての通り人間じゃよ」
ワシが老いぼれババァとでも思っているのか、少年から殺気が消え、苦笑いを始める。
「もしかして婆さん、暗黒武術会に参加するつもりか? まさかそんな訳ないよな」
ジョークのつもりなのだろうか、後頭部を右手で掻き毟りながら、高笑う。
だが、次の瞬間に少年は笑うのをやめた。
「お主の言う通り、暗黒武術会に参加するんじゃよ。この大会をワシの武道家人生の集大成にしたいと思ってな」
「おいおい、正気かよ?……」
少年の顔がみるみるうちに曇っていく……当然と言えば当然だ。
今から戦うかもしれない相手がここにいるのだから。
「何故、お主はこの大会に参加する? 賞金か?それとも名声か?」
ワシの質問に少年は目を瞑り、鼻で笑う。
「そんなのいらねぇよ……俺は守りたい人を救う為にここに来たんだ。ただ、それだけだ」
幽助にどことなく似ている……その真っ直ぐな眼差し。
この少年はまだまだ強くなる……根拠はないが、そう確信した。
「その気持ちがあれば、お主はまだまだ強くなるじゃろう……精進を怠らんことじゃ」
「なんだよ急に?」
「まぁ気にするな……ところで、お主から発せられる霊力でも妖気でもない、その宇宙の塊のようなエネルギーはなんじゃ?」
「あぁ……それは小宇宙だ」
「小宇宙じゃと?」
「人間なら少なからず誰もが持っているものさ。俺はその小宇宙を爆発させることで常人を超えた力を発揮できるのさ」
「なるほどな……」
ワシは武道家として、人間が持つ不思議な力について研究し、戦いに活かす事に生涯を費やしてきた。
霊力や妖気、魔力などがそれにあたる。
だが、小宇宙など聞いたこともなかった……。
人間の持つ不思議な力については研究し尽くしたつもりだったが、まだ知らない未知の部分があると言うことなのか……。
「おっと……敵に喋りすぎちまったみたいだぜ。そろそろ俺はホテルに戻るよ。じゃあ大会でな婆さん」
「待つのじゃ」
「ん?」
「お主の名を聞いておきたい」
「武道家を名乗るんなら自分から先に名乗るのが筋ってもんじゃないか?」
「こりゃ一本取られたな。生意気な小僧め」
「あぁ。よく言われるよ」
「ワシの名前は幻海。霊気チームの大将じゃ」
「俺の名は射手座・サジタリアス星矢」
「星矢か……憶えておくぞ」
「まっ、戦う機会があったらお手柔らかに頼む」
あの余裕……自信過剰なところまで幽助に似ている。
おそらく、S級妖怪並みの実力にまで達した幽助とまったくの互角の強さであろう……死ぬ前に幽助と星矢の戦いをいち武道家として見てみたい……そう思った。
SIDE氷河
星矢には休んだ方がいいと言っときながら、そんな俺も落ち着かず眠れないでいた。
まぁ、この状況で落ち着いて休めと言う方が無理なのだ。
しかし、それにしても星矢の奴、すぐに戻ると言っておきながら、もう1時間以上帰ってこない。
「星矢の奴、遅いな。まさかな……」
嫌な予感が胸をよぎる……それは最悪の展開。
そんなはずはない……星矢が負けるはずがない。
自分にそう言い聞かせるも、時間が経つ事に不安は大きくなる一方だ。
星矢を捜しに行こうと、ソファーを立つと、部屋の扉が開いた。
「まだ寝てなかったのか氷河」
入って来たのは星矢だった。
「なにが寝てなかったのか?だ。心配したんだぞ?」
すると星矢は申し訳なさそうにして謝りながら、ソファーに腰かける。
「悪ぃ氷河……それが変った婆さんに会っちまってさ」
「変わった婆さんだと?」
「幻海とか言ったっけな? 暗黒武術会に参加するらしいぜ? 結構仲良くなっちまった」
呆れる……なんと言うか……敵として戦うかもしれない相手と話すなど警戒心が足りなさすぎる。
「星矢……その婆さんがアテナや瞬をさらった奴かもしれないんだぞ?」
「それはないだろ。武道家とか言ってたけど人間だし、瞬があんな婆さんにやられるわけねーよ」
「この武術会に参加する奴らは腕自慢ばかりだ。油断はできないぞ」
「そうは言ってもなにもされてないし、問題ねーよ。明日になれば分かる事さ」
「そうだな……今日はもう寝て、明日に備えよう」
そう……明日になれば全てが分かる。
なんとしてでも決勝まで残らねば……。