魔法少女リリカルなのはINNOCENT-crimson the bellwether-   作:聖@ひじりん

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episode10

 

 

「真さん、ちょーっと、せこないか?」

 

「いや、何の油断もなく勝利しただけなんだが」

 

 試合終了後、八神堂の主に詰め寄られていた。

 

「確かに、真さん相手にしてヴィータは試合開始から油断してたけど、色々と聞いてへんスキルが多いような?」

 

「同じ所属ならまだしも、どちらかと言えば敵側のはやてに、そう簡単に情報を渡さないのが普通だろう」

 

 それでも、三つは見せたから、まだまだ甘いんだが。

 

「それはそうやけど……ヴィータがああなっていても、そう言えるん?」

 

「うぅぅ」

 

 誰がどう見ても。何千何億人に訊いても、あの様子はまさに……項垂れている、だ。

 

「そこはすまないと思わなくもないが、勝ちは勝ちだしな。ダークマテリアルズ、真の切り札としては、そう簡単に負けは許されていないし」

 

 チーム戦ならともなく、個人戦で負けてしまったら、なんて責められるか……ある意味、想像しずらい。何が起こるか分からないという、意味で。

 

「どこぞのデュエルの修羅と、同じ事言っとるな~」

 

「シュテルか」

 

 まあ、シュテルならそう言っていて当然だろう。

 

 もっとも、シュテルがもし負けても、責められはしない。彼女はそれ以上に自身を責めるからな。

 

「なんでも噂やと、その修羅にさえ敗北したことがない、まさに帝釈天……いや、常に真向から立ち向かう真さんには、覇王の方が正しいかも知れへんな」

 

 結局俺だと言い切っているじゃないか、はやて。

 

「噂は噂さ」

 

「火のない所に煙は立たんとも言うよ?」

 

 キングスの言う通り、やはり食わせ者だな。

 

「シュテルが燃え上がっているから、煙くらいは立つって事だろう」

 

 ただで情報を渡すほど、諜報に慣れていない訳じゃない。

 

 その辺りは、皆に鍛えられたからな。

 

「真さんの、いけず」

 

「いけずで結構。甘々なのは自覚しているが、矜持ぐらいはある」

 

 もちろん、俺個人ではなく、チームとしての矜持だが。

 

 その意思を、重なっていた目線を逸らさない事で強く伝える。

 

「……うーん。しょーがないなぁ」

 

 諦めてくれたのか、はやては肩をすくめ、そう呟いてから眼を閉じた。

 

「真さんはあんまり読まれへんし、素直に諦めるわー」

 

 どうやら、八神堂二回戦も俺の勝利らしい。

 

「なら、友人として、ちょーっと教えて欲しいんやけど」

 

「ん、なんだ」

 

 そう改めて来られると、応えざるをえないのは、俺の甘い証拠か。

 

「真さんが、ロケテスト大会個人の部にでえへんかった……ううん。なんで、本当のメインパーソナルカードを使わん理由、を」

 

「……好奇心か?」

 

「一切の嘘なしなら、好奇心も含まれてるよ。主にダークマテリアルズの異質さから、気になった事やし……アリシアちゃんが言ってた、深紅の先導者。そう言う割に、ダークマテリアルズがフルメンバーで戦った記録がゼロ。ロケテスト大会も不在やったし、ちょっと調べたら行きついてしもーたから」

 

 全く、これだから八神堂の主は……キングスに一目置かれる訳だ。

 

 配慮、目的、経緯、結果。織り交ぜて話されると、思わず答える気になってしまう。いや、なってしまったか。

 

「ロケテスト時代……といっても数ヶ月前だが、その頃の記録は、公式問わず後ほど消しているはずなんだ。一体どこから?」

 

「ごめん、ありがとうな。とりあえず、まずはリビングに案内するわ……二人きりの方が、ええやろうし」

 

 やっぱり、キングスとはやてはそっくりだな。性質というか、気質が。

 

「ああ、もっとも、あまり面白い話じゃないんだがな」

 

 ヴィータを横目に、俺とはやてはそっと、シミュレータールームを抜け出した。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「まずは、チーム大会に出ていない理由だが……正確に言うと、俺は準決勝にしか出ていない。ロケテスト大会は基本、エキシビションじゃないのは知っているよな?」

 

「うん。研究所オンリーでやってたロケテストやから、通称ゼロ大会のチーム参加数も少なめで、準決勝以上は勝ち残った四組しか知らんって」

 

 はやてが参加していた記録はないはずだが、それでも情報を知っているのは流石という所だ。

 

「なら、話が早い。参加チームは、8組。その中で勝ち残ったのが……身内ばかりで申し訳なかったが、まずダークマテリアルズ。フローリアン姉妹、テスタロッサ姉妹……そして、身内外、五人チーム」

 

 少し口にするのを躊躇ってしまったのは、まだ自分自身で、負い目を感じているのだろうか。

 

 はやては聡いから、気づかれてもおかしくない……気づかれたが、どうやらスルーしてくれる様だ。目が、優しい。

 

「順位はダークマテリアルズ、テスタロッサ、五人、フローリアンだ。一応ブロック分けされていたから、俺の準決勝での対戦相手は五人チーム……それが、俺の唯一参加したチーム対戦だな」

 

「そーなると、テスタロッサ姉妹はチーム大会二位さん、やったんか」

 

 ロケテスト大会の情報があまり流れていないから、ダークマテリアルズが一位ってのもあまり知られていないだろう。

 

 もっとも、それでも流石に一位なので、二位以下より知られているが。

 

「自分たちから言い広める二人でもないからな。そもそも参加チームが少なすぎて、オマケ大会みたいだったし……まあ、そのオマケで波乱の幕開けな訳だ。はあ」

 

 肩をすくめ、一つ、ため息をつく。

 

「事の発端は……ユーリがチーム大会の開始早々で倒れたから、でもないが、波乱のスタートはそこだな」

 

「なるほど。どーりで真さんがユーリにだけ過保護やねんな」

 

 逆になるほど。そこから今回の話まで発展させたんだな。キングスの言っていた独り言もこれが関係している様だし。

 

「そうは言うが……前日準備で一番起きていたのは、困った事にユーリなんだ。軽いとは言え、それなりに病弱を持っているのにも関わらずな」

 

 症状として体力が一般より無いってだけなんだが、無理をすると発熱やめまいで倒れる。

 

 最近では、研究所内での気配りを含めた環境。食生活の改善等で日に日に、体力は増えて良くなっているそうだが。

 

「それは困ったさんやなあ。私も時々アインスが心配になるし、同じ様な感じやね」

 

「ああ、その通りだ。無茶して倒れられると、こっちの方が心配になるしな。アインスさんが倒れた時も、本気で心配になった」

 

 たまたま俺がその場にいたから対処。といっても、寝室に運んで容体確認しただけだ。武術の助けになると思って、昔から勉強しておいて良かった。

 

「あの時はお世話になりました。開店準備で焦ってたし、アインスが無茶してくれてんのは分かってたんやけど……寝不足って怖いんやね」

 

 人間の身体は頑丈に見えて、その実、一緒に脆さを背負ってるからな。表裏一体。悪い方に天秤がぶれた瞬間、一気に影響が出る。

 

 しかも、それをある程度は気力で補えるからこそ、頑張れる人間は唐突に倒れるんだよな。 

 

 病は気からというが、時にその言葉が迷惑にも感じてしまう。

 

「と、話を戻すが……それの付き添いで俺とキリエが離脱して、大会が進んだ訳だ」

 

 何が凄いって、姉貴が一人で準決勝まで進めていたのだが、一対多の戦いに滅法強いのかも知れない。

 

「それから少しして、ユーリの容態が安定したから俺は大会に戻った。もちろん心配ではあったが、そのせいで俺が大会に不参加って知る方がショックだろうとも思ってな」

 

「なーるほど。優しい子やもんね」

 

「全くだ……で、その気遣いが仇となってしまったのか、相手が悪かったというか……」

 

 俺は一度、俯き溜息をついてから、改めてはやてに向き合った。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「悪い、遅くなった……が、当然無事だな」

 

 キングスの元へ到着し、対戦表を一瞬だけ確認した。

 

「たわけ。負けるはずがなかろう。ふむ……真紅が来たなら、ユーリは大丈夫という訳だな」

 

 あの観察眼には恐れ入るな、いつもいつも。

 

「そっか~、良かった良かった」

 

「ええ。心配で思わず、相手チームを殲滅してしまいましたし」

 

『それはいつもの事』

 

「そ、そんな」

 

 それでもある程度の動揺はあったんだな……僅かにだが、チームとしての空気が乱れている。

 

 俺はそう感じ、とりあえずシュテルの頭を撫でた。

 

「ん、気持ちいいです」

 

「そして、レヴィ!!」

 

「ほいっさー」

 

 次にレヴィとハイタッチ。

 

「次も殲滅するぞ、キングス」

 

「言われるまでもない」

 

 キングスと拳をぶつけ、空気の正常化を試みる。

 

「よし」

 

 やはり、ユーリの分が足りないが、十分だろう。

 

 足りない部分は、補えなくても問題ない。それでやっと視界に収まるからだ。

 

「さて、次の相手はチーム、デス・パレード。うん、知らないな」

 

「もちろん、我も知らん」

 

 キングスが知らないなら、知る必要性はゼロだな。

 

『試合終了。勝利チーム、フローリアン姉妹』

 

 館内アナウンスが響き、別ブロックの無事も理解した。

 

「って、姉貴一人だよな?」

 

「そうだよ。アミタが一人で勝ち進んでる感じ」

 

「まさかアミタが、あれほどの対多人数戦術を身につけているとは……武器の特徴もありますが、私では難しいです」

 

 一対一なら、他を寄せ付けない強さを持っているシュテルが、そう思うのか。

 

「意外だな」

 

 正確には、それを難しいと考えているシュテル自身に驚いているんだが。

 

「む、悪い気を感じました。難しいだけで、出来ないとは言っていませんよ。それに魔力量を徹底的に抑える運用が完成すれば、余裕になります」

 

「シュテルなら、そう言うと思ったよ」

 

 やっぱり、シュテルはシュテルだった。

 

『次の対戦チーム、シミュレーターにどうぞ』

 

 呼び出しのアナウンス。電光板に表示されていたのは、ダークマテリアルズの文字だ。

 

「では、行くぞ」

 

「ああ」

 

「うんっ」

 

「負けません」

 

 それぞれがシミュレーターに入り、ダイブを開始した。

 

 俺は少しだけ、空いている右隣を見てから、意識を集中させる。

 

 ユーリの為にも、勝つ。

 

「あの五人か」

 

 ダイブが完了し、広がる青空と、まばらな雲。ステージは、文句なしの空だ。

 

 その開けた視界で、捉えたのは相手チームのメンバーたち。

 

「であるな」

 

 対戦前挨拶の為、武装解除してから、ゆっくりと近づく。

 

 だが、何故か相手チームは近づいてこないし、武装解除も行っていない。

 

 罠。という言葉が頭に浮かんだが、ただのマナー問題だと首を振った。

 

 なにせ、試合は始まっていない。正式に開始されるまで、攻撃は禁止だからだ。 

 

「やぁやぁ、ごめんね。格上チーム相手だと、近づく魔力すら惜しくてさ。ダークマテリアルズ……ぶっちぎりの下馬評トップ、反則レベルのチームだ。そんな相手と戦える事は光栄だけど、同時に恐れ多いよね。僕たちはまだまだ新参で無名。ちょっとの油断すら出来ないから、待たせて貰ったよ」

 

 頼みもしていないのに、ぺらぺら喋る奴は胡散臭いと……キングスに言われた事を思い出す。

 

 恐らく、大学生ぐらいだろう。それなりに顔が整っていて、間違いなく彼がリーダーだ。残りは、その取り巻きって感じか。失礼だろうが、誰もぱっとしない雰囲気だな。

 

 俺は、視線をそっとキングスに向けてみるが、顔を背けられた。

 

 どうやら、コイツは面倒な奴なのだろう。

 

「いや、気にしなくていいですよ。俺が逆の立場でもそうしたはずですし」

 

 と言っても、絶対。間違いなくしないが。

 

「やっぱりそうだよね。で、君がリーダー?」

 

「はい。俺がリーダーですよ」

 

 意図が読めない意味不明な質問に、面倒だったのでそう答える。

 

「じゃ、よろしくね」

 

 どうやら、ただ握手をする相手の確認らしい。

 

「正々堂々、よろしくお願いします」 

 

 応えないもの失礼なので、ちゃんと握手に応じておく。

 

『試合ルールはチームバトル。相手チームのメンバー全てを倒す。または、チームリーダーの降参宣言によって勝敗が決まる、シンプルなバトルです。何か質問はありますか?』

 

 事務的過ぎるシステムボイスだなと、ふと思ってしまった。やはり、実況やアナウンサーを用意するべきだな。

 

 適性が高そうなのは……大体、軽く熟しそうな奴らばっかりか。手始めに、アリシア辺りにお願いしてみよう。

 

「僕は特にないよ」

 

「同じく、ありません」

   

『では、互いに距離を取ってから試合開始です』

 

 どうせ動かないのだろうと、思い、素直にこちらから離れる。

 

「……レヴィ」

 

 その道中、レヴィにだけ聞こえるように、耳元でささやく。

 

「試合開始と共に、最大速度で開始位置から離れてくれ」

 

 もっとも、この行動の意図を二人は分かっているはずだが。

 

 大事なのは相手に、俺とレヴィが、何か仕掛けてくるかもと情報を与える事。

 

 罠がある。

 

 そう、罠を張っている相手チームに対して、思考のリソースを割かせる。

 

「ビリビリおっけー。出来るだけ、相手の方向に逃げるね」

 

 そうすれば、多少の分散が可能だろう。

 

 問題は、どれだけの罠が仕込まれているかだが……。

 

 先にフィールドにいた事や、多い雲の量。シューターなどを隠しているなら、周りの雲、全てが罠とも考えられる。

 

 あのチーム配分。リーダーがライトニング。他の四人が、全員プロフェッサーなのも気掛かりだ。

 

 援護特化のワンマンチームなら、対処も余裕なんだが。

 

「さて、これぐらいでいいか」

 

「ふむ。飛んで火にいる夏の虫……は、ちと違うか」

 

「背水の陣……とも違いますね」

 

 やっぱり、理解してくれていたか。

 

 まあ、罠があるのはバレバレだったし、問題はその種類だからな……そこを見極めて先導するのが俺の役目だ。

 

 相手の作戦は読み切れていないが、そこはキングスに任せよう。

 

 俺の仕込んだ、レヴィという火種があれば、今回は乗り切れるはずだから。

 

「一応、これだけは言っておくが……気を付けてくれよ」

 

「不明瞭な物に気を付けるのは、世の理ですよ、真紅」

 

「全くだ。うぬは、自信を持って行動するが良い。後陣は、我が支えよう」

 

 本当に、頼れる仲間を持ったものだ。

 

「なら……そうだな、勝つぞ」

 

『心得ました / 言われるまでもない / 了解っ』

 

 さて、相手の出方はどうだろうか……一死でも報いる事が出来れば、上出来だな。

 

『それでは、バトルスタート』

 

 空に、スタートの文字が浮かび上がった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「とまぁ、寸分の油断もなく殲滅した訳だ」

 

「いやっ、長い前振りの意味はなんやったん!?」

 

「普通に考えて、負ける訳がないからな」

 

 そもそも、負けていたらチャンピオンチームですらないし。

 

「相手さんが、どういう作戦で来たとか、もの凄く気になんねんけど」

 

「ああ。雲の中にシューターと、開始位置にいたのは幻影スキルで作ったメンバー。開始早々で奇襲があった感じだ」

 

「……たった、プロフェッサー四人掛りで?」

 

「ああ」

 

 あの時は本当に、こんな雑な作戦を誰が思いついたのだろうとか思ったな。

 

 確かに、ある程度のランクを相手にするなら……とりあえず、勝つだろうが。

 

「王様のチームに対してぶつける戦力としては、無駄と言い切れる無謀さんやねぇ。逆に、それを考え付いた思考力に、驚きとも言えるかも知れへんけど」

 

「はやての言う通り、驚きの余り、レヴィが作戦を止めて速攻で全員を迎撃したな。一切の無駄なく、的確に」

 

 ある意味で、レヴィのそんな動きを引き出した事については、三人で大絶賛していた。

 

 当のレヴィは、その時の動きを覚えていないらしいので、またいつか見れると信じるしかないが。

 

「避雷針に落ちる雷そのものやね……と、そんな無謀さんより、話の続きをお願いします」

 

「残念な事に、話はその無謀さんが原因なんだ」

 

「え、そうなん」

 

 はやての反応はもっともだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「いやー強いね、君たち」

 

 レヴィ以外は特に何もしていない……とは、口に出さずに飲み込む。

 

「いえ、まだまだですよ。見事な作戦でした」

 

 とりあえず、適当に話を切り上げよう。

 

「見事? あんなに無様に負けといて?」

 

 突然、男の雰囲気がすっと変わる。

 

 どうやら、言葉の選択を間違えたらしい。

 

「挑発か? ふざけんなよ卑怯な手を使っといて。お前らはこの研究所のお抱えだろ? 卑怯も卑怯で、まったく対等じゃねえだろうが!! 出来レースだよ、出来レース!!」

 

 なるほど、こういう人間か。

 

 どうりで、取り巻きの雰囲気も悪い。いや、萎縮してしまっているのか。

 

「そうですね、出来レースかもしれません。でも、そちらが負けた事に変わりはないでよね。その過程で、下手な仕込みがあったとしても、俺たちはそこを責めませんし……ここは、熱くならず、不幸だったと割り切って頂きたい。ここには、この試合を見ていた中には、小さい子供もいますので」

 

「……ちっ、しらけた。帰るぞ、お前ら」

 

 どうやら、公衆の面前だと思い出してくれたらしい。

 

 これで何とか穏便に済んだだろう。

 

「あーあ、あのどうにもお荷物っぽい、金髪の鈍間がいたら俺たちの勝ちだったなあ。なあ?」

 

「あ、あぁ、そうだよな」

 

 隣にいた仲間と肩を組み、さも当然のように意見を強要している。

 

 やはり、いわゆるクズ側の人間だ。

 

「ムカッ」

 

「よい、レヴィ。帰るぞ」

 

 キングスが、そっとレヴィを制した。

 

「こんな中学生やら、ガキの集まったチームに本来負けるはずねえし。やっぱり卑怯な手を使われてなきゃ、勝ちだろうし。パーソナルカードとか弄ってるんじゃね?」

 

「不正をお疑いなら、今ここでお見せしましょうか?」

 

「シュテル……?」

 

 怒っているのかと思ったが、顔色を窺うとそうでもないらしい。

 

 むしろ、呆れ全開だった。

 

「とか言って、見えない様になってるんだろ? いいって別に。お前らが不正は、ほぼ断定してもいいレベルだしな」

 

「そうですか」

 

「やっぱ、クソゲーだなこれ。こんなゴミみたいなゲーム、一瞬で終わっちまうよ。ロケテストで不正が出回ってたり、礼儀を知らねぇで対戦相手を煽ってくるガキが多かったりな」

 

 はあ、くだらないな、本当に。

 

「では、俺たちはこれで」

 

 一度、頭を下げてからダイブを終了する。

 

 シミュレーターが停止し浮遊感が消えた後、安全が確認されたので、外に出た。

 

「良かった……」

 

 そう呟いたのは、シュテルだ。

 

「ああ。誰の判断かは後で確認するとして……ナイスだったな」

 

 ギャラリーの熱気は変わっていなかった。

 

 どうやら、早めに画面接続を切ったらしい。

 

「ただ、確実に分かった事が一つある。ブレイブデュエルには、問題がまだまだありそうだな」

 

「それを見極め、受け入れるのが理想の王政であろう。我らが突き進むべきは、元より茨の道であり、一筋縄では無理難題だ。しかし、それを実現させる……か、家族はここにおるし、仲間も多い。だからせめて──」

 

「最強であり続け、群衆を盛り上げないと、だろ?」

 

 キングスの言葉を遮り、その続きを想像して繋げてみる。

 

「ふんっ、分かってるのならよい」

 

 すっと背を向けたキングスの頭に、ゆっくりと手を置く。

 

「だから、任せる。俺たちはヘイトを集めるダークマテリアルズだ」

 

「最強の矛は、私が」

 

「最速の翼は、僕が」

 

「最硬の盾は、ユーリが。最後の砦には俺がいる。だから、キングスは──」

 

 頭から手を離して、キングスの言葉を待つ。

 

「いや、続きとかやらんぞ……」

 

 返って来たのは、最高の呆れ顔だった。




思ったより長くなりそうな予感。

なので、前編・後編に分かれます。


次の更新も未定ですが、気長にお待ちください。
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