魔法少女リリカルなのはINNOCENT-crimson the bellwether- 作:聖@ひじりん
「第一段階は無事に終了であるな」
「みんな、お疲れ様よ~」
「キリエは何もしてないじゃないですか」
一般開放の第一プログラムが無事に終わり、現在は休憩の時間。シミュレータールームは現在も開いており、アナライズルームにてモニター越しにだがその活気が確認できる。
「客入りは想定より上の140%……上出来ですね」
「当然の結果だね!!」
キングス特製のケーキ等をお皿に乗せて持ってきたシュテルとレヴィが、丸いテーブルに着いてくつろぎ始めた。
テーブルにはキリエ、アミタの二人も着いており、キングスは忙しなくお茶の準備等をしている。
そして、俺とユーリは八神堂との通信を行っていた。
《ヴィータがやられたようやな……》
《やられてねえって!!》
……のだが、いきなり何か始まった。
《えーと……くっくっく。奴は我らヤガミドーの中でも最年少》
アインスさんがはやてのノリに合わせてか、メモを見ながら棒読みだ。
《そりゃそうだよ!!》
その後ろでは、先程からヴィータによる真面目な弁解がされているが、二人は完全に無視である。
《じょ~だんは置いといて。さっきまでウチも大繁盛やったし、この調子で盛り上がるとええね》
そして、涙目のヴィータをあやしながら、やっと本題に入ってくれた。
「そうですねー」
「本業の店の方は大丈夫なのか?」
《ブレイブデュエルはシステムチェックで一時間の休憩中。上の方はシグナムたちがやってくれているよ》
……今、何となくだが、シャマルさんの泣き言が聞こえたのは恐らく気のせいだろう。
《そっちはどうだい? ユーリ、真紅》
「うちも同じく休憩中です」
「システムチェックはこの後に──」
「僕たちダークマテリアルズは今日も大活躍だったよ!!」
俺の言葉を遮り、俺とユーリの椅子の間にレヴィがにゅっと身体を割り込んで来た。
「こら、真紅が話している途中であっただろう。それに、貴様は暴れまわっておっただけだろうが」
「俺は気にしていないよ」
こんな日常茶飯事に突っ込んでいたら、こっちの身が持たない。それでも突っ込むキングスはかなり律儀というか、真面目というか……とにかく、凄い奴だ。
「ほら、真紅もこう言ってるし。で、それよりヴィーたん。やられちゃったって、ほんと~?」
《だからやられてねえって!!》
モニターを割れそうな勢いで、レヴィの言葉にヴィータが反応。レヴィはにししと笑っているので、これはからかって楽しんでるだけだな。
ヴィータに少し悪いと思ったので、レヴィをポコンと殴っておく。
「あいたっ……お、親父にもぶたれた事ないのにっ!! このっ、このっ」
そのお返しだろう。だいぶ前にみんなで鑑賞したロボットアニメの主人公の台詞っぽいのと共に、ぽこぽこと殴ってくるが痛みはないので無視しよう。
「悪いなヴィータ。こいつはお茶目が過ぎるんだ」
《あ、ありがとうございます。ただ、そんな事は出会った時から分かって──》
「敬語。タメ口でいいって言ったろ?」
最初の部分を強調してヴィータの言葉を遮り、以前伝えた言葉をもう一度伝える。
《は……おう》
「それでよし」
前に戦った時に、敬語が苦手そうだったのでタメ口でいいと伝えたのだが……歳がかなり離れているし、まだ抜けきらないんだろうな。
「な~にがそれでよし。何だか」
キリエの声が聞こえた気がするが、恐らく幻聴だ。
《あはは、いつも優しくて助かってます。で、真さんは聞いてます? なんやええ感じの子が出てきたみたいやんねんけど》
「いや、初めて聞いたな」
というか、忙しくてそんな情報を聞く暇もなかったしな。
《T&Hに遊びに来た子の様ですね。ええと、名前は……》
「"てぃーあんどえいち"の"高町なにょは"だね」
レヴィはアインスさんの言葉に反応して俺への攻撃を止めて、それはそれは楽しそうな顔をモニターに向けている。
意外なのは、あれだけ暴れていたのに情報だけはしっかりと耳に入れていたレヴィの行動力? だな。名前を間違えていなければ完璧だが、レヴィらしいか。
恐らく高町なのは……ちゃんだろう。
「ぬっふっふっふ………」
そしてさらに、不気味な笑い声まで付け足した。
すぐ隣にいるユーリはレヴィのその様子を見て苦笑いだし、後ろのテーブルからは呆れ声が聞こえる。
《真さん、顔に出てますよ?》
「……出している事にしてくれ」
どうやら、俺も無意識の内に苦笑いだった様だ。
「さっきから何気に酷いよ!?」
「当然であろうが……ユーリよ、少し休むといい」
キングスがレヴィに突っ込みつつこっちに来て、ユーリに休憩を催促した。
時計を確認すると18時と少し……シミュレータールームがオープンしてから今までの大体3時間。ここで色々な事をユーリに任せていたので、確かにそろそろ休憩させた方がいいか。
こういう気遣いを出来るキングスを、俺ももっと見習わないとな。
「そうですね……真紅さんに任せても?」
「当然だ」
俺も同じ事と、時々シミュレータールームにて説明の手伝いをしていたが、このぐらいは余裕。それに加えて断る理由がないので即答した。
「それじゃあ、休憩してきますね」
「そのまま今日は休んでもいいからな?」
椅子からユーリが立ち上がった所でそう伝える。
「大丈夫です。真紅さんだけに任せる訳には行きませんから」
ユーリは可愛らしく両手でガッツポーズ。
「意気込みは分かるが、ユーリは時々無茶をするからな。このまま俺に任せてくれてもいいぐらいだ」
本当に大丈夫なんだろうが、ほっておくと頑張り過ぎるので釘を刺して置く。
「そ、それを言われると抵抗できないじゃないですか……うう、意地悪です」
「意地悪で結構だ。ユーリに無茶される方が……っと、行ってくる」
言葉の途中だったが、モニターに喧嘩している男の子たちが見えたので、直ぐに立ち上がる。
「ちゃんと休憩しておけよ」
部屋を出る前に、もう一度だけユーリにそう伝え、俺は現場に向かった。
◆ ◆ ◆
《なんや、えらいユーリにだけ過保護やね》
真紅が部屋から去った後、はやてがディアーチェに向かって言った。
「……頼まれても教えんぞ小鴉。あれは真紅とユーリの問題だ」
お菓子を取りに向かったユーリから、モニターに映っている真紅に視線を向けてディアーチェははやてに返す。
《悟ってくれるお姉ちゃんは嬉しいけど、どうしても?》
「だから、姉ではないと何回言えばっ……いや、今は良いか。で、どうしてもだ」
《お姉ちゃんのいけずー》
「ええい──」
その言葉に反射的に声を挙げたが、ディアーチェは自分を戒めて言葉を切った。そして、腕を組んで目を閉じて考えてみて、次第に言葉が思い浮かび口に出す。
「ふむ、我の口からは言えんが……どうしてもと言うのならば、直接本人に聞くのがいいかも知れん。ただし、くれぐれも慎重かつ聞く相手を間違えてはいけない。我のこれは、独り言であるがな」
ディアーチェの独り言は、もうはやてにとっては答えの様な物だった。
《そこまで念を押されてしもうたら逆に聞きにくいんやけど……うん、気になるから聞いてみるわ。ありがとう、王様》
「ふんっ……何に対しての感謝かは知らんが、受け取っておこう。それにだ、小鴉」
ディアーチェはモニターの越しのはやてに対して不敵な笑みを浮かべると──
「お笑いの流れだと、我を呼んだ最後の王様の部分は……姉でなくてはな」
からかいの言葉を発した。
《はっ、しまった!?》
はやての反応を見て満足だったディアーチェは、そのまま通信を終了し、視線を真紅に向ける。
「まあ、大した理由ではないが……どちらにせよ、素直に喋ってしまうであろうな」
今度は視線をユーリに移し、ディアーチェは少し微笑みながらテーブルへ向かった。
◆ ◆ ◆
「ふう……この手の喧嘩は絶対に無くならないだろうな」
子供たちの喧嘩の内容は、どっちが強いか等、戦いが関係している限り起こり得る喧嘩だった。
年頃の男子、男の子はどうしても勝ちや強さを意識してしまうんだろう。
誰だって、やるからには勝ちたいはずだ。
勝つ為には、その方法を試行錯誤して誰かに挑む。これをずっと繰り返すのが一番だと思う。
そして、その中で自分なりの強さや楽しさを見出して、更にレベルアップしていければなお良し。
負けて悔しいのは当たり前で、負けない人間なんて存在しない。
勝って嬉しいのは当たり前で、勝てない人間なんて存在しない。
ただし、勝負の世界は常に不平等だ。
努力が大事なのは誰にでも分かる。それでも、冷めた考えかも知れないが、最後に勝敗を決めるのは才能や時の運になる。
才能があって努力した人間に、才能がなくて努力した人間は勝てない。勝つ方法は、諦めずに時の運が味方してくれると信じる事。これに限る。
まあ、ブレイブデュエルはそれを考えて、無限の可能性を秘めた進化。自分なりの強さをどこまでも追及出来る訳だから、戦いの点ではほぼ平等になっているだろう。
運動が苦手な子でも、慣れてしまえば思い通りに動くようになるしな。
「ただいま」
『おかえりなさい / おかえり~ / 戻ったか』
相変わらず、この人数だと返事が多い。意味的にはおかえりと言っているから問題は無いが……統一はされる事はなさそうだ。
「して、喧嘩の内容はなんであった?」
「男の喧嘩だな」
「なるほど、小さくても心は男であったか」
そう言いながらモニターで仲良く対戦している男の子たちを見て、満足そうにキングスは笑った。
「ああ、そうであった。近い内、小鴉が真紅に迷惑を掛けるやもしれぬ」
「はやてが?」
渋い顔で俺に言って来たということは……キングスも関係しているのか。
「うむ。我の独り言を聞かれてしまってな」
なるほど。相変わらずキングスは優しいな。
恐らく、俺の事を間接的にキングスが答えたんだろう。
既に周知の事実だが、その優しさに嬉しくなったので右手でキングスの頭を撫でる。
「くすぐったいぞ、真紅」
「これが罰って事で」
目元をつり上げたキングスに笑顔で返す。
「……ふむ、良かろう」
渋々といった返事でキングスは俯き、顔が見えなくなった。恥ずかしかったのだろう。
まだまだ付き合いは長くないが、キングスにはこの手の責め方が一番効く事ぐらいは知っている。
さて、気づかれると面倒だし、そろそろ終わろうか。
「あぁぁぁ!! 王様も何か面白そうな事やってる」
『っ!?』
手を放そうと思ったら、ナイスタイミングでレヴィが気づき、声に合わせてみんなが一斉にこっちを見た。
その視線に反射的に手を放す。
「あっ」
「なーんてな。これは罰だから仕方がない」
微かな声だったが、しっかりと俺の耳に届いたので手を戻した。
「う、うむ。これは罰であるからな」
「罰? ねえ、罰って何? 王様なんかしたの? というか、僕にもしてよ!!」
近くに来たレヴィが主にキングスに詰め寄った。
「……っ」
あまり見ない光景だが……恐らくこれは、爆発一歩手前だな。
その証拠に、手からはふるふると震えが伝わって来る。俺は一切手を動かしてないので、間違いない。
シュテル、ユーリの二人は近づいて来たものの、俺の背中でそっとこの様子を見ている。キリエ、姉貴はさほど興味がないのかチラッとだけこちらを向いて苦笑いだ。
冷静にこの部屋の状況を見ている今も、レヴィの責めは続いており、段々と俺の手に伝わる熱量も上がっている気がする。
「……や、やかましいわっ!! 二人を見習わんかっ!! 見守っておるであろう!! 大体──」
ついに雷が落ちてしまい、空いた手が特にそれを感じさせた。
今までにないくらいのキングスの怒りに、レヴィは一瞬で涙目になって部屋の角に連れて行かれ、キングスの怒り声はこちらにも聞こえる。
そう遠くない位置で広くない部屋だからどこでも聞こえるだろうが……かなり、怒っている。
「ん、なるほど。これは温かいですね」
「シュテル? ……いや、まあいいけどな」
怒られているレヴィの様子を眺めていたら、空いた手をシュテルが自分の頭に乗せた。
俺もそれに合わせて今度はシュテルの頭を撫でる。シュテルは家族の中で一番猫っぽいので、撫でているこちらが癒されるな。
「わ、私も!!」
そしてユーリも同じ様に俺の左手を頭に乗っけた。
……いや、なんだこの状況?
疑問を感じつつも決して嫌ではないので続けるが、本当になんだろう。
「癒されますね、ユーリ」
「はい、とっても」
まあ、いいか。良く分からないのはここでのデフォルトだ。
「なら私もして貰おうかしら。せ、ん、ぱ、い?」
「私にもお願いします!! 結構気になってしまったのKKSです!!」
なんて思っていたら、キリエと姉貴がこっちに来た。
「何も、面白くないぞ?」
「私もそう思ってるけど」
「お姉ちゃんは面白そうに感じて来ましたので、是非」
なら、とりあえずやってみるか。
シュテルとユーリから、キリエと姉貴に手を移し、頭を撫でてみる。
「……で?」
そして少し待ってから感想を訊ねた。
「悪くないって感じかしら」
「そうですね。かなり温かいですよ」
感想を聞いたのはいいが、自分じゃ分からない感覚だ。頭を撫でて貰う機会なんて、ほぼ絶対に存在しないしな。
……って、本当に何やってるんだ。俺たち。
この二年間で元々流される側の俺が、かなり流される様になったが……無問題か。決して楽しくない訳でも、面白くない訳でもないしな。
むしろ、普通に生きていたらこの空間にいなかっただろう。
等と考えつつ時計を見ると、休憩時間はとっくに過ぎていた。
◆ ◆ ◆
「……ん、朝か」
スマホのアラームを止め身体を起こし、少ししてから立ち上がってカーテンを開け、光を浴びて改めて目を覚ます。
ただ、いつもより眠たい。
昨日は夜遅く……といっても、時計の針が日付をまたいだ頃までだが、皆でブレイブデュエルの初日稼働が無事に終了したお祝いをした。
そして、後片付けは俺が全て担当したので寝たのが2時ぐらい。請け負った理由としては、女の子が寝不足なのは美容的に問題があるとキリエに押された為。それと、断る理由が特になかったから。
博士は博士で色々と忙しい人なので、後片付けはして貰わなかった。
「まあ、5時間でも大丈夫だろう。いつもよりかなり短いが、若いしな」
一つ問題があるとすれば、授業中に寝ないか心配……恐らく寝てしまうか。
幸い、今日はアルバイトもないので帰ったらゆっくり出来るし、ブレイブデュエルも出来る。昨日はレクリエーション、説明の時に少しプレイしただけで対戦はしてないしな。
本音を言えば、昨日の分を学校を休んででもやりたいなとも思うが、学生の本業は勉強だ。そこはしっかりとこなさないと。
俺は洗面所に向かって顔を洗い、部屋に戻って学校に行く準備を整てリビングに向かう。
「おはよう」
リビングには、いつもの様に朝食の準備をしているキングスとユーリがいたので、朝の挨拶をする。
そして、机の長い一辺の角。キッチンから見て一番奥の左側、俺の定位置に座った。
「おはようございます」
「起きたか。昨日、いや夜はすまなかったな」
「夜……ああ、後片付けか、気にするな。キリエの意見は最もだし、俺は朝に強いから問題ない……と言いたいが、少し眠いな」
挨拶と共に謝られ、俺の気持ちを素直に伝える。
「そのお詫びと言ってはなんだが、今日の弁当は少し豪華にしてある。楽しみにしておくがよい」
いつも豪華で、キングス特性弁当のおかず一つで友達からパン一つ。場合によっちゃ現金で買う奴までいるんだがな……さらに豪華になったのなら、三日ぐらい飯に困らなくなるんじゃないだろうか。
ちなみに、おかずを売って手に入った現金は、その日の内に何か買い物をしてキングスに渡している。キングスには貰い物だと言って渡している。
流石に現金を渡すのはアレだしな……それならそもそも現金で売るなよって話だが、断ると結局物で交換になり、キングスの嫌いな食べ物はなかったはずだが、それと交換になると嫌だ。確実性がある方がいい。
更に、数百円の金額なので大した物も買えない。良くてもワンコインだ。
「いつも楽しみだから問題ない」
「そ、そうであったか……なら良いのだ」
キングスはそう言って、ぱっと後ろを向いて電子レンジを使い始めた。その隣ではユーリがくすくすと微笑んでいるんだが、何か面白い事でもあったのだろうか。
「おはようございます!!」
一瞬、扉が勢いよく開いた様に思えるほど元気な挨拶でリビングに姉貴が入ってきた。
いつもの事なので驚きはしないが、最初の頃は扉が頑丈なのか、なんて考えていた。実際には普通に扉は開いてるんだが、そう錯覚してしまう勢いがある。
間違いなく、姉貴のその雰囲気、オーラはこの研究所の中でもトップの力強さを持っていると思う。つまりはパワフルだ。
「皆はまだの様ですね」
「昨日は夜遅くまで楽しんでたからな……とはいえ、いつもの事だが」
決して、他の三人が遅い訳ではない。ただ単に、キングスとユーリがかなり早く。俺と姉貴がそこそこ早い。もうじきキリエとシュテルが来て、最後にレヴィ。
いつも全員が揃うのが7時半頃。今は10分なので、20分もすれば全員集合だろう。
「それじゃあ時間もある事ですし、アニメでも見て盛り上がりましょう!!」
「分かったよ」
これも毎朝の、いつもの事だ。
◆ ◆ ◆
そして時間は進み、昼。
朝に貰った大層なお弁当箱。具体的に言うと三段の重箱なんだが、それを開ける以前の問題が発生していた。
「それじゃ、寄り道せずに帰れよ。俺の部活の人は速やかに用意して向かうように」
今日は短い時間割だった様で、お弁当が必要ない日だったらしい。忘れていただけならまだしも、完全に知らなかった。つまりは昨日のブレイブデュエル稼働に意識が行き過ぎて、他の事は頭に入って無かった様だ。
一応、部活組は必要だが生憎と俺は帰宅組。朝から好奇の目に晒されつつやっと放課後になった。
もちろん食べないなんて選択肢はない。
「ん、手紙か」
包みを解いた所で蓋の所に手紙があった。恐らくはキングスからのメッセージだ。直接、俺に言いにくい事があると毎回こうして手紙が用意されている。
内容は短いので手紙よりかメモに近い。
『本当は我も手伝うつもりだったのだが、夜は助かった。皆を代表して感謝を伝えておく。』
朝に聞いたが、やっぱり律儀な奴だなキングスは。
『PS.トレードで得たお金は真紅が好きに使ってくれて構わぬ。ただし、我の為に使わんで良いからな。』
……なんだ、ばれていたか。
学校の場所はほぼ同じで兄妹設定で通っているからか、三人の情報はしっかりと入る。そうなると、俺の情報もしっかりと伝わってた訳だ。
キングスにこう言われちゃ、フォローの仕方を考えないといけないな。
「ふふっ、本当に律儀な奴だよ」
手紙を内ポケットにしまい、スマホで時間を確認する。
12時半……ご飯を食って一時間。帰宅に三十分で研究所には14時前頃だな。
と、スマホを直そうとした所でスマホが震え、画面にメールが一件と表示された。差出人はレヴィの様だ。
この時間にレヴィからのメールなら、もしかしなくてもブレイブデュエルの誘いだろうか。
内容を予測して、メールの本文を確認する。
『放課後、高町なにょはを見に行くよ!! 皆も来る?』
期待を裏切らないレヴィ。一斉送信でシュテル、キングス、ユーリ……とグランツのメンバーにも送っている様だったが、参加するのは恐らくキングスだけだろう。
キングスの性格上、レヴィが心配でまず見に行くからな。過保護と言えばそうだが、あれはどちらかと言えば優しさだ。
もちろん、俺は参加する。キングスと違いただの好奇心だ。どちらかと言えばレヴィに近い。
「で、早く開けろと言う事か」
部活組のクラスメイトが、俺の机の周りに集結していた。目当てはもちろん、ディアーチェのお弁当だろう。
「当たり前だ!! 毎日毎日美味しい弁当を用意して貰っているのに、今日は更にグレードアップしてるじゃないか!!」
「そうだそうだ!! それに加えてあのビジュアル。なんでお前だけ良い思いを!!」
「そんな事はどうでもいいから、早く中身見せてよー」
最後の意見が最もだった。
……まあ、俺もゆっくりしている意味は特にないし、開けるとしよう。
周りの視線にせかされながら蓋を外すと、目に飛び込んだのは焼けた肉の色。
「まさか一段目がハンバーグのみとは……やるな、キングス」
クラスメイトも驚き一色だ。
ただ、これはかなり嬉しい。俺の一番好きな食べ物がハンバーグだから。初めてキングスに伝えた時は──「意外であるな」と言われたな。
ちなみに、レヴィがカレー。シュテルがエビフライ。ユーリはなんと俺と同じハンバーグがそれぞれの一番好きな食べ物。キングス、キリエ、姉貴はこれが一番好きって食べ物はないが、逆に好き嫌いはない。
そして、一段目をどけて二段目を確認する。
「お、お前これ……どんだけ豪華なんだよ」
「正月のお節より豪華じゃねえか」
「相変わらず凄いね、ディアーチェちゃん」
俺もかなり驚いている。今日は気合いの入り方が違うな。
研究所でやるイベントの料理を、事あるごとにキングスが準備しているし、その時の豪華さも知っているのでまだ周りの驚きよりはましだが。
「さて、それじゃ最後の三段目だな」
先程と同じように、三段目を確認する。
「……なるほど、罰か」
白いご飯の上に、ピンクのハートマークだった。
「お前、愛されてんな」
脳裏に、にやりと微笑み腕を組んだキングスが浮かんだ。
いつもみんなの前で食ってると知っているから、この攻撃か。中々やってくれる。
ただ、ある意味で反撃に使える事に気が付いてはいないだろう。
「愛と言えばそうだと思うよ。それじゃ、いただきます」
今は美味しく頂いて、早くレヴィに合流するとしよう。
この量だとは言え、俺がメインで食べるのは一段目と三段目。どうせ、二段目はトレードになるだろうしな。
今日の換金額は過去最高になるかも知れない……もちろん、全部キングスに使ってやる。
そう心に決め、昼食の時間は過ぎて行った。