魔法少女リリカルなのはINNOCENT-crimson the bellwether- 作:聖@ひじりん
昼食を終えてからレヴィとメールを数通やりとりすると、HRが終わる14時頃に校門に集合となった。
どうやら中学の方も短い時間割で、一時間ほど時間が空いた事を周りに伝えたら、女子バスケット部から備品の整理の手伝いを頼まれので、快く引き受けて軽く汗を流した。
そして現在、14時20分なのだが一向にレヴィが現れない。恐らくHRが長引いているのだろう。
先程、キングスとシュテルに遭遇し、行くのかどうか訊ねたが二人とも微妙との事。キングスはご飯の支度、シュテルは別に用事があるらしく、時間次第じゃ是非参加したいと言っていた。
まあどうせ、二人とも参加するはずだ。目がそう言っていた。楽しみなのはレヴィだけでなく、やっぱり二人もだったらしい。
一番楽しみにしているのは間違いなくレヴィなんだろうが、シュテルに参加する意思があったのは少し意外だな。同じセイクリッドという部分が気になるのだろうか。
「ごめ~ん!! 遅れたっ!!」
噂をすればなんとやら。25分遅れてレヴィが合流した。
「ああ、気にするな。HRが長引いたんだろう?」
「うん。高町なにょはに会うのが楽しみで、何の話かは聞いてないけどね!!」
「おい」
思わず即答してしまったが、レヴィらしいっちゃレヴィらしい。
本人は俺に怒られて──「えへへ」と笑っているが、まあ今日はお小言無しで良いだろう。楽しみなのは俺もだしな。
「それじゃ、早速行こうか」
「うん!!」
校門から出発し、レヴィとブレイブデュエルについて会話しながらT&Hに到着した。
昨日が開店初日で、ブレイブデュエルを置いて貰っているホビーショップ。正式名称は『テスタロッサ&ハラオウン』で、同時に『トレジャー&ホビー』という、趣味は宝物の意味を含んでいる。
そして、ミッドチルダスタイルのブレイブデュエルオーナーでもあり、フェイト・テスタロッサ。アリシア・テスタロッサの二人が所属メインプレイヤーだ。
フェイトの方はロケテスト個人2位の実力を持ち、姉のアリシアは個人戦には少し向かないものの、優れた対応力を持つ。二人とは何度も戦った事があり、その実力は身を持って知っている。
とはいえ、シュテルからすれば二人の評価はまだまだだとか。
「んー、少し早く付きすぎたかもしれないな」
「そだね……んんっ、カレーの匂いがする!!」
「……すまん、全くわからん」
俺には全然カレーの匂いなど感じ取れないので、流石はレヴィだ。犬並の嗅覚なのかも知れない。
「修行が足りてないんじゃない?」
修行すれば嗅覚が鍛えれるのだろうか。と思うが、意外とありそうで怖いな。
「それじゃレヴィ式、嗅覚トレーニングを教わろうかな」
「そんなのないよ?」
……レヴィってたまにだが、妙に現実的な事を言うよな。狙って言っているならネタになるのだが、絶対に素で言っている。今回の様にこちらの冗談が通じず、何回か反応に困った事があるし。
「そ、そうか。まあとりあえず、店に入って……お二人に挨拶しに行こう」
もちろん、今回も詰まった。
「二人? ……店長さん?」
「そう。プレシアさんと、リンディさん」
店に入ると、一階だというのに凄い熱気にを感じる。
目当てなのは最上階にあるブレイブデュエルなのだろうが、それにしてもかなりの人数だ。最上階にはどれだけの人がいるのだろう。
……ふむ、その流れで行くか。
少しだけ思考して、T&H行動プランを組み立てる。
「挨拶は俺がしておくから、レヴィは建物内を見て回るといい。まだ時間はあるだろうしな」
そう言いながらレヴィに顔を向けると、瞳がキラキラしていた。
「いいのっ!?」
俺の考えた通りの反応だ。
「ああ、好きに回って来い。ただし、くれぐれも最上階には行くなよ?」
ただし、しっかりと釘は刺しておく。
レヴィは意外としっかりしている所もあるが、基本的にはレヴィだからな。キングスが居ない現状で保護者になれるのは俺しかいないし、俺がいながら問題が起こるのが問題だ。
「なんで?」
「ブレイブデュエルがあるからな。皆が来るまでに暴れるだろ?」
「……あ、暴れないよ?」
レヴィの顔が横に向いた。
「目を合わせろ、目を」
がしっと顔を掴んで目を合わさせる。
間違いない、この目は絶対に暴れるつもりの目だ。やっぱり、釘を刺して正解だったな。
「うぅ~」
「唸っても駄目だ……ただし」
今日は楽しむ事が一番の目的で、制限を付けるのは忍びない。
「ダークマテリアルズの斬り込み隊長なんだろ? なら、皆が来てから暴れるといい」
目を見て、笑顔でしっかりと伝える。
キングスに知られたら、間違いなく甘やかすなと怒られる様な気がするが……まあ、いいだろう。
さっきよりも瞳がキラキラしているレヴィを見たら、自然とそう思ってしまう。
「とりあえず手始めに、この建物に斬り込んでこい」
「うん!! 行って来まーす!!」
まさに雷の如し。レヴィはロケットダッシュで上の階に消えてしまった。
「俺も早く向かおう」
とはいえ、どこにいるだろう。スタッフルームはそれぞれの階にあるしな……メインスタッフルームの五階だろうか。
エイミィさんを含めて誰かスタッフに声を掛ければ早いが、少し見た限りでは誰も見当たらない。
そもそも、声を掛けるのも悪いか。これだけ忙しいと、人手が足りてないかもな。
「五階に向かってみるか」
結局、これで落ち着いた。いなければ根気よく探すだけだ。
レヴィよりは遅い速度で階段を駆け上がり五階に到着。スタッフルームに向かい、扉を三回ノックする。
「はーい」
返って来たのは、慣れ親しんだ女性の声。どうやら正解だったらしい。
「どうも。数日振りですね」
扉が開いて顔を出したのは、声で分かっていたがリンディさんだった。
そして、軽くお辞儀して伝える。
「真紅くん、来てくれたのね……あ、とりあえず入って」
「失礼しま──っ!?」
部屋に案内されて入った瞬間──
「真紅くん!!」
いつもの様に襲撃される。
見えない位置からの襲撃たっだので驚いたが、正面を向けて良かった。
下手な体制で受けたら、いくら俺でも体制を崩しかねない。
「こらっ!! 離れなさいプレシア」
「そ、そんな……私の楽しみが」
プレシアさんは少し涙ぐみながら、リンディさんに服の裾を掴まれ引き剥がされた。
「楽しみであっても、真紅くんに迷惑掛けるのは駄目でしょう」
「いや、俺は大丈夫ですよ? もう何度も受けてますし、今更迷惑でもないです」
一番最初は何事かと思ったが、フェイトやアリシアへの様子を見ていたのと、理由が割としっかりしていて納得はしているしな。
まあただ、二児の母なのにその行動力は子供に勝り、瞳の輝きがレヴィに匹敵しているのはどうかと思うが。
……役得? 知らない言葉だな。
「ほら、真紅くんはこう言ってるわよ」
「でも、私は許してません」
流石はリンディさん。プレシアさんを一瞬で落ち込ませた。親友として特徴を良く理解してらっしゃる。
「それじゃ改めまして……数日振りですね、今日は軽く挨拶しに来ました」
頭を少し下げて、用件を伝える。
「ええ、ようこそ。開店したT&Hに」
「歓迎するわ……本当に、なんで研究所のプレイヤーなのかしら。今からでもこっちに来ない?」
「それは、ちょっとお断りします」
何度目だろう、この勧誘。会うたびに毎回言われるので断るのはもう慣れているが、中々諦めてくれないな。
今、俺を勧誘した女性がプレシア・テスタロッサ。T&Hの店長であり、フェイト、アリシアの母親でもある。会う度に抱擁攻撃と勧誘をして来て、その理由は俺が息子の様だからとか。
その横で溜息を付いているのがプレシアさんの親友であり、同店長のリンディ・ハラオウン。息子が一人いて、少しだけ面識がある。
そして、二人に共通しているのがその異様な若さ。二人とも子供が居てもおかしくない大人な容姿をしているが、見た目は完全に20代後半。
初めて会った時は本当に驚いて、思わず──『ご冗談を』と笑っていた。それなのに本当に子供がいて、二度目のビックリだった。
「それじゃ……娘の旦那になる?」
「本気なら前向きに検討しますが、娘さんの気持ちを優先するのと、年齢を考えてあげて下さい」
して、めげないプレシアさん。どうしても俺を息子にしたいのか。
付き合いがそんなに長くないとはいえ、プレシアさんの真意が少しは読めて来たと思いたい……が、本当に読めない。どんな理由があれば、実の娘を勧めるのだろう。
もっとも、その気持ち自体は嬉しいので完全に拒否する事もない。本当に理由は分からないが。
「残念だわ……きっと将来有望株なのに」
「その通りだと思います」
「そうよね!! 本当に二人の可愛さ、存在、どれをとっても──」
また、瞳がキラキラしている。本当の本当にぶれないな、この人。
「さ、座って話でもしましょうか」
「そうですね」
ゾーンに入ったプレシアさんをするっと無視して、リンディさんに従う。
「飲み物はコーヒーで良かったわよね?」
「問題ないです……って、俺がやりますよ」
慌てて立ち上がり、リンディさんの元へ向かう。
「いいのよ、今日は座ってなさい」
が、笑顔で制止された。
「……それじゃ、お言葉に甘えて」
そう言えば、前もこんな事あったな。
俺は高校生になってから、アルバイトという形でグランツ研究所に勤めている。
といっても、出来る事は限られているのでブレイブデュエルサポーターとして、設置店のヘルプ要請を受けてその店舗の仕事をこなす。
当初、受ける仕事はブレイブデュエル関連だけなのだが、困っているなら手伝うのが人としての基本だと思ったので、博士に言って受け入れる内容を大きくした。
そしてそのアルバイトで、T&Hが新装開店をするという事で準備を半年間手伝っており、ずっと同じ店舗を手伝っていると文句が来たらしいので、ペースは週に三回ぐらいだったが、それが終わったのが最近の事。
そんな中、同じ状況になった事があり、あの時はもう少し迫ったが、素直に甘えて貰う方が良いと言われ、最近では何事にも素直に甘える事が多くなった。
ちょうどキングスにも同じ事言われたしな……まあそれでも、手伝う時もあるにはあるが。
「はい」
ほどなくして、コーヒーが目の前に置かれた。
「ありがとうございます」
一度お礼を言ってから口を付ける。
数日振りに飲んだが、家のとまた違う味で美味しい。
「今日は一人……じゃないわね。レヴィちゃんと来てたのね」
「で、ですね。面目ない」
モニターにかなり目立つ水色の存在、レヴィがしっかりと映っていた。
そして、手に持っているのは日曜朝の戦隊番組の武器。レッドの奴だ。小さい子供たちに囲まれており、どうやらポージング等を見る限り、実演をしているらしい。
「いいわよ別に。盛り上がるのは大いに結構……ただ、親御さんが可哀想だけど」
どうやらレヴィの実演を見て子供たちの購買意欲が向上した様子で、親御さんたちに買ってとお願いしている。
レヴィはポカンとしてその様子を眺めており、どうすればいいのか分からないのだろう。
「助け船を出したいですが、レヴィの判断に任せますかね」
「こうなると、親は買う羽目になるのよね。例えそれが不要な物だとしても」
「なるほど……」
遠い目をしているので、恐らく昔に同じ経験をしたようだった。
現在の落ち着きからは考えにくいが、息子さんにもその時期があったんだな。
「っと、本題に戻りましょう。目的は何かしら? またアルバイトをしに来たわけでもなさそうだし、純粋に見学って所?」
「はい。正確には、高町なのはちゃんをメインとした見学です」
「なるほど。あの子を見に……セイクリッドタイプで白色の子だったわね」
セイクリッドで白……それは楽しみだ。
「ふふっ、真紅くんも楽しみになって来たのね」
「え? ああ、確かにそうですね」
指摘されて、自分が笑っていた事に気が付いた。
まだまだ俺と本気で戦えるレベルではないにしろ、セイクリッドに選ばれたのならいずれ同じ土俵に来るだろう。
「そう言えば、真紅くんの戦いって見た事ないんだけど、個人ランキングはどの位なのかしら?」
「ああ、個人戦のランキングはありません。弱くないと自負出来る程度に強くはありますが、まだまだですし」
もっとも、無限に進化するブレイブデュエルにおいて限界なんて存在しないから、どこまで行けば自己満足出来るかは分からないがな。
「そうなの……アバタータイプは?」
「インペリアルローブの男バージョン。インペリアルアーマーのカスタムですね」
「……インペリアルローブ? アーマー?」
首を傾げられてしまった。もしかして、知らなかったのだろうか。
「ご存じないですか? 説明書に書いてあったと思うんですけど」
「ええ、読んだはずだけど……」
リンディさんは難しい顔をしながら立ち上がり、棚に置いてあった段ボールの中から説明書を取り出し、冊子になっている少し分厚い説明書をパラパラとめくり、そして手が止まった。
「確かに書いてあるわね」
「なら良かったです」
どうやら自分の記憶が正しかったらしい。
「なるほど、セイクリッドより出にくいのね」
「そうらしいですね」
博士曰く、その人に合った適正アバターを選択してくれるらしく、出にくいのはその人の資質、素質が特殊である事が多いとか。
カラーも大体その様に決まるらしく、ランダムではない。
ただ、一つ問題があるとすれば、その原理は不明。極秘情報の為に知らされてないと思っていたが、ただただ不明で未知。ブラックな領域らしい。
別に深く突っ込む意味もないので俺は気にしてないし、当の開発者が気にしてない以上、永遠に謎のままだが……まあ、問題はないな。
「そうなのね…………ん? 出にくいって事は、それだけ性能が高いのよね?」
「そう思われがちですが、そうでもないですね」
その辺りの事も確か説明書に乗っていたと思うのだが、もしかして俺の気のせいだろうか。
「あ、そう言えば私は機器の取り扱いの方の説明書を熟読して、プレイの説明書は軽く読んだだけだったわ」
「それならしょうがないですね。アリシアかフェイトが代わりに熟読した感じですかね?」
「多分そのはずよ。最後の方に至っては、ブレイブデュエルの調整も二人がメインでやっていたし……ぶっちゃけ、私とプレシアはこの店の店長であるだけで、ブレイブデュエルとはあまり関わりが無いかもしれないわ」
ぶっちゃけの内容が、恐ろしくぶっちゃけだった。
……自分で言ってて意味が分からないが、本当にただのぶっちゃけだったと言う事だろう。
「と、まあプレイに関する説明は大体それに乗ってますね……で、先程の質問ですが続けても?」
「ええ、お願い」
「アバタータイプそれぞれに個性がある為、一概にどれが強いとかは決まってません。確かにセイクリッドは防御が硬く豪火力の遊撃型で並大抵では落とす事は難しいです。ただし、落とすのが難しいだけで、落とせない訳でもない。セイクリッドに選ばれるなら決して驕る人間ではないでしょうが、スペック頼りで戦っているといずれ大きな壁にぶつかります」
「なるほど。性能に頼る動きになるから、本人の動き自体が悪いままなのね」
理解が早くて助かるが、もしかしてリンディさんってゲーム自体には詳しいのだろうか。
「その通りです。家のシュテルが良い例ですが、精進を続けたセイクリッドはトップとして十分に君臨できる訳です。そちらのフェイトもどちらかと言えば普通よりのアバターですがロケテストでは2位。特殊、レアじゃなくても上位には食い込めます。もちろんランキングが全てではありません」
といっても、フェイトは特殊な武器を持っている訳で……実際には普通でもない。ただ、しっかりとした自分なりの強さを考えてあの形になったはず。努力を怠っていない証拠だ。
「そして、なりより大事なのが自分なりの強さ。無限の進化の可能性です。これはブレイブデュエルのコンセプトであり、一番の魅力と言っても過言ではない部分。これによって、不平等に思われがちなアバタータイプの性能差も、相性も無くなります……まあ、そうは言っても努力しなければ駄目ですが」
結局の所、ブレイブデュエルで大事なのは努力。こうなったのは博士の潜在意識で姉貴の事を考えて作られたのではないかと考えた事もあった。姉貴は友情とか努力とか根性とか、俺よりも熱い人間だからな。
それに毒されたのか二年の月日によって、俺も昔より熱くなってはいるが。
「で、結論を言いますと……俺のアバターは確かに珍しいですが、相性によって強くも弱くもなります。初期性能の設定はそちらの説明書にある通りです」
「えーと、全体的な防御力が高く、特に魔力攻撃に対して体制がある。その特性を生かしディフェンダー等の後衛として活躍しやすい。ただし、攻撃力が低めなので攻撃には向かない……ん? 攻撃に向かないのね」
「ええまあ……スペックの高さはセイクリッドに軽く劣りますからね。防御性能は流石に上ですが、簡単に言いますと特殊です」
一言で済ますのはあれだが、本当に特殊だ。プロフェッサーと良い勝負だが、あっちは援護を重視しているので純粋な援護力では負けてしまう。
それを補うのは、もちろん努力と思考とプレイヤーの腕。言葉にすれば簡単だが、実際にはこれが難しい。
「特殊……そうなると、真紅くんってどのくらい強いのかしら? って、この質問は無駄ね」
本当にリンディさんは理解が早い。
「そうですね。強さをどこで見るかによって変わりますから」
個人戦、チーム戦、タッグ戦。それに加えてゲームの対戦方式。色々な対戦種類があるブレイブデュエルの中で強さを決めるのは難しい。
……と、普通ならそう言えるんだが、家のデュエルの修羅は全部に強いっけ。
「うーん、分かってはいたけど、ブレイブデュエルは奥が深いわね。今のこの段階でも人気なのは分かるけど、もっと人気になるわね」
「そうなってくれると、信じてますよ」
最上階が映るモニターを見て、そう返す。
「そうね」
リンディさんも、俺の視線につられてか、同じモニターを見た。
「……あ」
そして、間抜けな声を発した。
「どうかしましたか?」
固まっているリンディさんの視線を追うと、モニターの右下辺り。物は近くにないので、見ている先と言えば……なるほど、時間か。
「軽く休憩のつもりが、そこそこ休憩しちゃったわ。ごめんなさいね、仕事に戻るわ」
「いえ、お気になさらず」
元はと言えば、俺が長々と説明したのが問題だしな。
「戻って来なさいプレシア」
リンディさんは椅子から立ち上がると、そのままプレシアさんの元へ行き、肩を軽く揺さぶった。
……薄々、話に参加して来ないから、もしやまだ続けているのかと思っていたが、本当に続けていたとは。流石はプレシアさんだ。このまま放置したら、永遠に続くんじゃないだろうか。
「はっ!? 私は一体何を……なんだ、ただの娘自慢をしていただけね」
「ええ、その通りよ。ただ、時間を見て欲しいわ」
呆れ顔でリンディさんが自分の腕時計を見せた。
「……あら、かなり良い時間ね。もう直ぐ娘たちが帰って来る頃かしら」
「それも大事だけど、先に仕事の事を連想して欲しかったわ」
「だって、私は娘命なのよ? 優先対象は娘たち!!」
いや、本当にプレシアさんはぶれないな。この信念は姉貴に通ずるものを感じる。この場ぐらい仕事を優先しろよとは思ったが。
「今は仕事にしてちょうだい。二人分の仕事がオーバーしてるのよ」
「……それは大変ね。いっそ真紅くんに手伝って貰うという選択肢は?」
「え?」
蚊帳の外だったからモニターでレヴィを探しつつ、話を聞いていたらプレシアさんから思わぬ攻撃? を受けた。
そのせいで生返事になってしまったが、手伝ってもいいか。
「そんなの悪いわよ。真紅くんはお客様よ?」
「いえ、別にいいですよ。どうせ高町なのはちゃんが来るまで暇で──っ!?」
そこまで言って、大事な事に気が付いた。
「だ、大丈夫? 舌でも噛んだ?」
「あ、いえ、そうじゃなくて……変なタイミングでちょっと思いついた事がありまして、思わず言葉が止まっただけです。手伝いに関しては問題ないので、何でも言って下さい」
いやー……本当になんで気付かなかったのだろう。レヴィにつられて深く考えてなかったのが原因か。
「そう、それならお言葉に甘えちゃうわ」
「うんうん、流石は真紅くん。おばさん感激しちゃったわ」
椅子に座った状態で、胸が頭に押し付けられる形でプレシアさんに抱きしめられた。
「だから、いい年して抱き付くのは止めなさい」
「そ、そんな。私の楽しみの一つが……」
……まあ、いいか。深く考えるのはよそう。
今はとりあえず二人の仕事を手伝って、アリシアとフェイトの帰宅。
それに、高町なのはちゃんの来店を待つだけだ……例え、用事や病気で来られない可能性を無視しようと。
……きっと、来るよな。
直ぐ近くでワイワイ言い合っている二人の大人が居る中で、モニターの中にやっとレヴィを見つけ、五階の食堂にいたレヴィは、何とも不思議そうな顔でカレーを食べていた。