魔法少女リリカルなのはINNOCENT-crimson the bellwether- 作:聖@ひじりん
「雲行良好か」
一週目が始まり、どうやらこちらが優勢だった。
考えた作戦は、レヴィが一位を狙って、俺がターゲットを破壊する。残るチヴィたちは、一人がレヴィのマントを掴んで順位配当を目指して貰い、残りの一人は俺のターゲット破壊の補助。
俺のアバタータイプじゃ、フェイトとレヴィのライトニングタイプには追いつけないから生まれた作戦だ。
そのライトニング同士も、速度だけ見ればレヴィの方が上だし、チヴィ一人連れていようとフェイトに負ける事はない。
現在の位置取りは、レヴィ、チヴィ壱、フェイト、なのはちゃん、俺、すずか・アリサちゃん、チヴィ弐。
このままゴールすると、90対80くらいになるだろう。
それにしても……なのはちゃんの発想力。アリサちゃんの俊敏力。すずかちゃんの援護力。三人に驚きだ。とても、初心者。初めて二日目には思えない実力。
今回のルールはどちらかと言えば、遊びの要素が強いデュエルで、戦闘ではない。
戦闘で皆がどのぐらい動けるのかは分からないが、中堅レベルはあるだろう。これからどんどん強くなるはずだ。
「うかうかしていると、追い抜かれるかも知れないな」
スキルカード『
エアリアルジャンプは魔力を使って、空中または壁などに足場を作るスキル。主な使い方は、空中で急転回したい時など様々。
決して空を飛ぶのが苦手な訳じゃなく、エアリアルジャンプを使った方が破壊活動の動きが早いので今回は使用した。
もちろん、戦闘にも使えるので俺のメインスキルカードだ。
元々はレヴィの空中軌道を見て思いついたスキルで、指定した方向に素早く少しだけ進む『ショートダッシュ』というスキルの進化系。
二枚持っているので、一枚は飛行が苦手そうなアリサちゃんに渡そう。現にビルの間を跳んでいるしな。
よし、そろそろゴールに向かおうか。
ターゲットはあらかた破壊しつくしたので、今度は水面を蹴って空に出る。
ここでタイミングを逃すと、順位配当が減ってしまう。
『レヴィ・チヴィコンビがゴール!! それに続いてフェイトがゴール!!』
作戦通りだな。あまりにも上手く行き過ぎな気はするが……問題ないか。
『そして、なのは選手が4位でゴール!!』
終始『プロテクション』を使いながらゴールか。シュテルと同じセイクリッドだが、魔力量はなのはちゃんが上みたいだな。
確かユーリもプロテクションを持っていただろうし、なのはちゃん流の使い方を伝えよう。
この一週でかなりの収穫があったな。
『クリムゾン選手ゴール!! その少し後に、すずか・アリサコンビが見え……今、ゴール!!』
チヴィ弐は強制的に順位が決まったので、一週目が終了。
「よくやった」
「真紅もね」
まずはレヴィとハイタッチを交わす。
「皆もお疲れ様」
敵ではあるが、そんな事はどうでもいいので他の皆ともハイタッチをする。
「はい、お疲れ様です」
「お疲れ様、お兄ちゃん」
「おつかれー」
「お疲れ様でした」
まだなのはちゃんは硬いが、アリサちゃんはもう慣れてくれたか。すずかちゃんは元々誰に対してもこんな感じなんだろう。
『さてさて、集計が終わり……現在の点数はこちら!!』
アリシアの実況でモニターに点数が表示された。
『T&Hチームが80点。ダークマテリアルズが90点です!!』
「あぁー、負けちゃってるね……もっと頑張らないと!!」
点数を見て、なのはちゃんがシュンとしてしまったと思いきや、そこからの奮起。
「そうね、次で逆転すればいいのよ!!」
「うん、皆で頑張ろう」
アリサちゃんも、すずかちゃんも闘志全開だった。
三人とも間違いなくエースの資質がある。ここにフェイトとアリシアが加わったら、かなり良いチームになりそうだ。
これは本当に、油断してるとダークマテリアルズの一位の座が奪われるかも知れないな。
◆ ◆ ◆
『五分の休憩の後、第二週目に入りたいと思いますっ』
「ふい~」
一週目の実況が終わり、アリシアは手元に置いておいた飲み物を取って喉を潤す。
「アリシアちゃん、実況ご苦労さま~」
労ってくれた解説のエイミィに、アリシアはブイサインを返す。
「あやつが参加しているおるとは……まあ、当然の結果ではあるか」
その直後、アリシアの横にダークマテリアルズのリーダ、ディアーチェが来て不敵な笑みを浮かべていた。
「あ、ディアーチェやっほ~」
「うむ、久しいな」
腕を組んで、少し偉そうに挨拶したディアーチェの顔はどこか嬉しそうで、その事に気が付いたアリシアは、すぐにからかいの言葉を思いつき口にする。
「お兄さんが活躍してるから嬉しいんだね」
「ち、違うわ!! ただ、真紅がいるならばこの結果は当然で、我がチームのエースとしてだな……その、示しになるというか──」
そこで言葉を切ったディアーチェに不思議に思い、アリシアは首を傾げた。
「……そんな"ちびひよこ"が試合に参加しておらぬのは、真紅に無様な醜態を見せるのが嫌だったからか。なるほど、だから勝負から逃げて実況なぞに逃げたか」
ピキッ──と、アリシアの心のリミッターが崩れ落ちる。
「ディ、ディアーチェは面白いこと言うなぁ……そのマンシンシン~な心を粉々にしてあげるよ!!」
アリシアは椅子から立ち上がり、ブレイブホルダーをディアーチェに突きつけた。
「ふんっ、返り討ちにしてくれるわ!! 何ならハンデも……ああ、もう五対三であったか」
ブレイブホルダーを突き返して来たディアーチェの言葉に、更にアリシアのリミッターが崩れ落ちる。
「ふふふ、ふふふふふ……」
「ふはは、ふはははは……」
アリシアの頭の中には、反撃のプランが着実に組み立てられているのであった。
◆ ◆ ◆
「後半の作戦は、同じ様に行こうと思うが……」
「エクストラターゲットが出るね」
「ああ」
作戦会議なので、T&Hチームと離れて聞こえない様に話す。
「理想はEXターゲットもしっかり破壊したいが、現状かなり不利なんだ」
「ん……どうして?」
レヴィは少しだけ考えてくれた様だったが、答えは出なかったらしい。
「簡単な話だ。俺とレヴィしかEXターゲットを破壊できない」
難しく説明すると、もっといっぱい理由はあるが、結論は至ってシンプルだ。
それに、レヴィに物事を説明するにはこれぐらい簡単じゃないといけない。
「なるほど、そっか~」
「シュテルかキングスがいれば、勝てるんだがな……」
ただ、このデュエルを始める前にメールを送ったが、二人から返信はなかった。
別に、勝ち負けにこだわっている訳じゃないので負けてもいいが、負け試合と決まっていて戦うのは相手に失礼だと思う。
もちろん、勝つ方法はある。
それは、俺が全力で戦う事なんだがいくらなんでも大人気ない。
T&Hの皆なら、全力を見せても心が折れる事はないだろうが……高校生でロケテストプレイヤー、さらに男。もはや全力を出してはいけない状況だ。
周囲の目を気にしないならそれもありだろうが、俺は外道にはなりたくない。絶対に。
「くっくっくっ……安心せい。我が来たからには、必ず勝利に導いてやろう!!」
突如、アリーナに響き渡った偉そうな台詞。
……全く、来るなら連絡して欲しかったな。
声の方向、一番近くのビルの屋上を見る。
「だ、誰!?」
そう、なのはちゃんが驚きを口に出した。
「ふんっ……貴様らに名乗る名などないわ!!」
「やっほ~」
屋上にいたのは、もちろんキングス。左手を広げて前に突き出したポーズの背景に、ドンッ──という文字が見えた気がした。
隣にアリシアがいたのは意外だったが、同じく参加するらしい。
「とうっ」
キングスの言葉で、アリシアも一緒になって屋上から飛び降りる。
その瞬間、俺はさっと体全体を反対に向けた。
「ミラクルチェーンジ!!」
「
ここで、一つおさらいをしよう。
確かに、プレイヤースキャンの時点では、男女別になるので問題はない。先に変身して入る事も可能だ。
ただ、アリーナ上で変身すると、その中にいるプレイヤーと観客には見えてしまう。確か、男に対して見える割合。つまりは肌色の調整が出来る。極端に言えば、全く見えない設定もある。
そして、その設定を弄らない事も出来る。
もちろん、それで全部見えてしまう事はなく、精々水着のビキニ程度だとは聞いた。
……でだ、後ろで変身しているキングスは未設定。アリシアは不明なので、最低だとビキニほど。
それを見ても問題はない。決して問題はない。だからといって、凝視するのは問題じゃないかと考える。
俺はもう高校生で、腐っても男。性教育は受けており、興味がない訳じゃない。ただし、相手は小学生や中学生。普通に犯罪だ。
もっとも、この変身豆知識を俺に教えたのはキリエなのだが……全く、いい迷惑である。
更に付け加えると、キリエは俺の家の家訓。『女子の肌見れば、責任取るべし』の教えを知ってから、俺に教えて来たからな。
一対一でキリエと戦う時、毎回変身しないで入って来るのは、きっと俺への嫌がらせだ。
とはいえ、家訓の本当の解釈は違うので、変身なら大丈夫。それなのに、今回後ろを向いたのは他に理由があったからで……。
私服や制服でビルの屋上から飛び降りたら、流石に空気抵抗でスカートが捲れ上がる。
キングスもアリシアも恐らく調整はしているだろうが、万が一があっては困るので背中を向けた。
本当に無防備だよな。基本的に女性は"こういう"部分を気にするのにも関わらず、所々気付かないのはある意味テロにも等しい気がするんだ。
それを言ってしまうと、男も男でモラルというかデリカシーがないというか……何故、女子のいる前で"そういう"言葉を吐けるのだろう。
「──紅」
しかも、そんな男子に限って彼女が欲しいとか言っている奴が多いが、出来る訳がない。
多少、現実を舐めているのではないだろうか。
「──紅?」
いや、現実を理解出来ていない可能性はあるか。
もっとも、彼女もいない俺が考えるのも問題だな……ただ、今度クラスメイトには注意してみよう。
「真紅!! 聞こえておるか!!」
「……すまない、気が付かなかった」
どうやら名前を呼ばれていたらしい。
俺は振り向いて謝罪した。
「全く、我が参加すると言うのに腑抜けてもらっては困る。風邪の類ではないであろうな?」
「ああ、体調はばっちしだ。少し考え事をしていた」
これもそれもあれもどれも、総べてはキリエのせいだな。帰ったら何か仕掛けよう。
「ふむ、それならば良い。で、作戦は言わずとも分かっておるな?」
キングスは不敵に微笑んだ。
「もちろんだ」
俺はそれに笑顔で返す。
「シュテルとユーリがおらぬこの状況であるが……負ける事は許されんぞ」
「そうだな。チャンピオンチームの強さの片鱗を見て貰おうか」
言葉の通り、見せるのはあくまでも片鱗だ。キングスがいるなら全力を出さなくてもどうにかなるし、俺の役割も決まる。
先程までは、キングスのポジション。そのやる事を俺が行わないといけなかったので、効率が悪かった。
本来、俺とキングスのポジションは違うので、当然、得意不得意がある。
ここにシュテルとユーリを加えて完全なダークマテリアルズになるが、今はこれで十分だろう。
それに、完全形なんて卑怯すぎる。勝負にすらならない。こっちはチャンピオンで、あっちはほぼ初心者チーム。大人気ないを軽く通り過ぎて、もはや
『そろそろ、スピードレーシング後半戦を始めるよー。選手の皆は、スタート位置に付いてね』
エイミィさんの言葉に従って、皆揃ってスタートラインに立つ。
『スピードレーシング。セットレディ~』
前半戦より闘志を込めて身構える。
目標の最短ルート……ミスなく通る!!
『GO!!』
そして、二週目が始まった。
◆ ◆ ◆
『さて、始まりましたスピードレーシング後半戦。前半と同じく、フェイト・レヴィ両選手は凄まじいロケットスタート!! その二人を追いかけるなのは選手と、新たに加わったアリシア選手。クリムゾン選手はターゲットの破壊を優先している様ですが……ちょっと面倒な位置のターゲットばかりを破壊していますね』
『何か崇高なる考えがあるに違いないわ。私の真紅ですもの』
プレシアさんの息子じゃないと突っ込んで欲しいのだろうか。それとも、ちょっと前にスルーしたからイケるとでも思っているのだろうか。
どちらにせよ、迷惑……でもないが、解説するなら試合中は真面目でいて欲しい。
「はっ!!」
ただ、その声にいちいち集中力を割いていられないので、破壊活動を続ける。
『なるほど。アリサ・すずか両選手はナイスコンビネーションで次々とターゲットを破壊していきます。一方のディアーチェ選手は、ポジションを取った後は動いておりません』
『彼女はダークマテリアルズのリーダーだから、間違いなく策があるわね』
少し思ったのだが、この実況で誰がどんな動きをしてるか理解できるから、ない方が良いのかも知れないな。
なんて考えながら、キングスとチヴィ弐にモニターを繋げる。
「ミッションコンプリートだ。チヴィ弐と合流してゴールを目指す。集合位置は五つ目のチェックポイント!!」
「良くやった。なら、動くとしよう……出番ぞ、紫天の書」
これで、第一目標は達成。次はエクストラターゲット。相性が良いの出てくれよ。
キングスへのモニターを消して、ターゲットから離れつつ集合位置に向かう。
ふと空を見上げると、無数の黒い剣で埋め尽くされていた。
キングスに報告してから全然時間は経っていないが、もう準備できているのは流石キングスと言った所。
敵チームからすれば、この上なく恐ろしいはずだが、これがチャンピオンチームのリーダーだ。
「レギオン・オブ・ドゥーム・ブリンガー!!」
空一面を黒く染め上げた剣たちが、キングスの掛け声にて発射され、アリーナ上に破壊の雨を降らした。
『ななな、なーんと!! ディアーチェ選手、超絶スキルで付近一体のターゲットを全て破壊!!』
『あれは彼女のアバター。"
……プ、プレシアさんが解説できているだと?
エイミィさんや、観客、T&Hの新人メンバーたちがキングスの技に恐らく驚いている中、俺はそんな事を思った。
確かに、リンディさんは深く読んでいないと言っていた。それなら、プレシアさんが読んでいてもおかしくはない。
ただ、娘命のあの人が……あ、なるほど。娘命だから熟読したのかも知れないな。
どのアバターになっても、娘たちの活躍を理解する為に。
「そう言えば、所々危ないだけで、普通に優しい母親でもあったな」
もっとも、その優しさを遺憾なく発揮した結果が、あの様子だとは思いたくはないが。
五つ目のチェックポイントを通過し、チヴィ弐と無事に合流。再度、キングスにモニターを繋げる。
「お疲れ様」
「うむ。そろそろ頃合いだと思うが……」
と、丁度その時。アリーナ上空にゲートが出現し、光ったと思うと新たなターゲットが出現した。
『出ました~!! 二週目のみに出現するエクストラターゲット!! その性能はランダムですが……』
巨体タイプと高速タイプか。
ビルよりも大きく、速度は無いが耐久度抜群の黒い要塞。見た目は鎧甲冑の頭の様だが、そこに付いている三つの赤い球体が、いかにもUFOらしさを演出している。これが三機。
普通のターゲットと大きさはほぼ変わらず、もの凄い速度で空を飛翔している、白い立体のひし形。光の羽が生えていて、伸びたダイヤの形をした足の様なものが付いている。これが十機。
「見事に、キングスの不利なタイプばっかりだな」
「うむ……魔力が回復すれば話は別だが、これでは無理だ。我はゴールを目指す」
「了解」
モニターを閉じて、チヴィ弐に背中にくっ付いていて貰うようにお願いして、足をターゲットに進める。
俺は俺で高速タイプを破壊するのに少し苦労するから、自然と巨体タイプが目標だ。
ポイントの総計だと、多いのは巨体三機より高速十機だろうな。
「ギリギリになるか……?」
恐らく、順位配当によって勝負が決まる。
こっちが巨体を一機倒すのと、このままレヴィとチヴィ壱がゴールに向かって、今の並びの順位でゴールすれば何とか勝てるはず。
『なのは選手、高速タイプを楽勝で破壊!! 残りは7機です』
……いやー、まじでエースだな。
空を見上げると、また二機が落ちていた。
中盤と終盤コースの高速タイプは、なのはちゃんの手の中だった。
「とりあえず、俺もコイツを倒して……余裕があればもう一機だ」
ゴールに二番目に近い巨体タイプ。今の順位をキープするなら、ゴール手前より微妙に離れているのを倒す余裕は怪しい。
「とにかく、さっさと倒そう。いくぞ、ダインスレイフ!!」
【やっとでば~ん!!】
愛機のデバイスを待機状態を解除する。
俺のデバイス、ダインスレイフは両手の籠手でそこそこゴツイ。カラーリングは赤と黒でしっかりとこの服装に合っている。
もっとも、初期のカラーリングは、デバイスも服も全然違うんだがな。
「カードロード」
ちなみに、スキルカードの読み込み。使用方法は大きく二つ。
指定されたデバイスの箇所にカードをスラッシュするか、そのままデッキから呼び出すか。慣れていないとデッキからの読み込みができないので、初心者は大体スラッシュで使用する。
デッキは最大で30枚まで入り、そうなるとスキルカードは最高で29枚。その中から一つを選択して、頭で読み込むのだからそこそこ練習が必要だ。
あと、声に出す必要は特にない。声に出す場合、掛け声は実は何でもよい。
良い例として、キングスはそれっぽい詠唱をしている。
【愛の新必殺技、行っちゃおう!!】
ダインスレイフの発言は無視。巨体タイプに右腕を向け、右籠手の上部が左右に開き、銃口が現れる。
そして、拳の前に赤黒い魔力球が出来て、段々と大きくなっていく。
俺の数少ない射撃魔法。その中でも威力は恐らくトップクラスだ。
元になったのは広範囲殲滅魔法の一つで、改良には中々手こずった。
【ダーリンてば、冷たい】
「頼むから集中させてくれ」
今回が初公開のスキル。チャージに時間が掛る為に、少しでも気を緩めるとさらに時間が掛ってしまう。
【はーい……チャージ完了。いけるよっ】
シュテルのデバイスみたいに、静かなデバイスが良かったな。
もっとも、必要な仕事はしてくれるし、うるさいとも思ってないが……ちょっと騒がしいタイプに縁が多いのかも知れないな。
「了解。グラビティ・インフェルノ!!」
直径1mくらいになった魔力球が、吸い込まれる様に巨体タイプに飛んで行き、外装を貫通して内部に侵入。
その直後、着弾点から轟音が何回か鳴り響いた後に魔力球が拡大、巨体タイプを完全に包み込み爆散した。
『クリムゾン選手の大技炸裂!! 巨体タイプを撃破です』
『あれは初めて見るスキルね……とにかく格好良かったわ!!』
一回、真面目にプレシアさんと話そう。うん。
「中々の威力だな」
【ご不満?】
「チャージ時間を短くしてもいいな」
新スキルの改善点も見つかったので、結果としては十分だろう。
さて、ゴールに向かおうか。
エアリアルジャンプを使って、壁蹴りの用途で加速する。
『これはすごーい!! アリすずコンビの合体技で、残っていた五機を全滅です!!』
『さしずめ、氷と炎の二重奏ってところかしら』
実況と解説が入り、チームのピンチを察する事が出来た。
やはり、あの二人もエースって事か。巨体タイプを倒す余裕は完全に無くなったな。
「ハリセンスマーッシュ!!」
ここから少し距離が開いたところにいる、アリシアの大きな声が聞こえて、巨体タイプが遥か上空に消え去った。
『説明しましょう。ハリセンスマッシュとは、アリシアの超絶キュートなハリセン技である!! ……以上よ』
説明になってないが……ある意味間違ってはいないのだろうか。
俺も威力が凄い事しか分かってないし、原理は不明だ。
「チェーンジスライサー!!」
「……なっ!?」
この付近にいないはずのレヴィの声が聞こえ、思わず声の方向を見る。
「奥義。光翼斬!!」
巨体タイプが真っ二つになっていた。
その様子を見て、俺はゴールに向かう速度をさらに上げる。
ゴール手前にはフェイトとなのはちゃんの姿。この速度だと、ギリギリであちらの二人の方がゴールするのが早い。レヴィが前に居ない事からの余裕か、速度は全速力じゃないがやはりそれでもゴールは早い。
点数が俺の予想通りなら、あの二人がゴールすると順位配当によって負けてしまう。
何か、何かないか!?
デッキの中のスキルカードを思い出すが、ライトニングタイプの様な高機動になるスキルはない。もちろん、これ以上速度を上げる事も不可能。
そもそも、俺は前衛で戦うのでAJを除けば攻撃と防御のスキルしかない。
これは……負けてしまうな。レヴィの動きを予想できなかった、チームの敗北か。
「ん?」
背中にくっ付いていたチヴィがポン──と、背中を叩いた。恐らく、お前は良くやった的な労いなの……チヴィ?
「もしかしなくても、まだ勝てる!!」
AJを使い、速度を維持したまま一つのスキルを読み込む。
「カードロード!!」
ちょっと特殊な攻撃スキル。本来の用途は近距離迎撃用で、銃口から高圧縮の空気を打ち出し相手を吹き飛ばす。いわゆる空気砲撃。
これを普通に使うと、ただの吹き飛ばし。
だが、これをチヴィに使ったのなら……恰好の加速装置になるのではないか。
「チヴィ!! 後は頼んだ!!」
左手でチヴィを掴んで、前に放り投げて右腕を向けた。
「エア・ブラスト!!」
空気を打ち出し、チヴィを吹き飛ばす。
俺の意図が分かったのか、にやりと笑いながら敬礼してゴールに向かって一直線に飛んで行った。
「ジャンプとブラストのダブル加速。後はなる様になれだ」
勝負は半々……俺はチヴィを信じてゴールを目指した。
◆ ◆ ◆
『集計の結果が出ました!!』
二週目が終わり、エイミィさんの集計終了の宣言。どこからともなくドラムロールが聞こえる。
『246点対247点で、勝者T&Hチーム!!』
ああ、足りなかったか。
『やった~!!』
チーム戦初参戦の三人の歓喜の声。その声と様子に、悔しさはどこかに霧散した。
『イベントデュエルを盛り上げてくれた両チームに、盛大な拍手をお願いします!!』
観客たちからの拍手の音が耳に届き、晴れやかな気分になった。
負けてしまったが、これはこれで良かったな。やっぱりブレイブデュエルは心から楽しめる。
「にゃはは」
「なんか照れちゃうわね」
「でも……本当に嬉しいね」
笑顔のなのはちゃん。頬をかくアリサちゃん。頬に手を当てて喜びを噛み締めているすずかちゃん。
それぞれ、本当に嬉しそうだった。
そんな様子を眺めながら、背後ではキングスのお怒りの声がする。
チラッと視線を向けると、案の定レヴィに雷が落ちていた。
当然なのは確かだが、キングスの肩に手を置き振り向いて貰い、目配せする。
「どう? チーム戦って楽しいでしょ」
『うん!!』
そしてT&Hの元へ向かい、言葉を発する。
「これでもまだ、ブレイブデュエルのほんの一端にしか過ぎないんだ」
「うむ。初めてにしては中々見事な闘技であったし、これからも研磨するとよい」
どうやら俺の意見が通った様で、レヴィへのお叱りは済んだらしい。
「そっちも流石というか……凄かったわ」
「アリサちゃん、敬語じゃなくなってるよ」
「あ……凄かったです」
すずかちゃんに指摘され、慌てて敬語に戻すアリサちゃん。
『気にするな / 気にするでない』
ただ、俺もキングスもそんな事を気にする人間じゃない。
「むしろ、タメ口の方がありがたい。同じデュエリストだからな」
「真紅の言う通りであるぞ」
「そ、それなら合わせるわ」
にこっと笑顔になるアリサちゃん。
何となく、姉貴の笑顔に似ている気がした。
「私は誰にもこんな感じですけど、もうちょっと頑張ります」
「慣れている話し方でいいよ」
「えぇ!?」
「何をしておる」
すずかちゃんの雰囲気が一瞬ユーリと被ってしまい、思わず頭を撫でてしまった。
そのせいでキングスから呆れた視線を感じる。
「悪い。ちょっといつもの癖で」
「あ、いえ。驚きましたが、全然嫌ではなかったです」
「それなら良かったよ。で、ブレイブデュエルはどうだった?」
話を戻し、二人にそう訊ねる。
「ブレイブデュエルって、あんなことまで出来ちゃうんですね」
「そうそう。二人の魔法とか、すっごい威力だったし」
「まあ、我等ほどの大魔法を扱える者はそうそうおらぬがなっ」
キングスは腕を組んではいるが、満更でもない様子。もちろん、俺も素直に嬉しい。
「勝ったの私たちだけどね~」
「ぐぬっ」
あっちの会話が終わったのか、アリシアがこっちに来てブイサイン。
中々痛い所を突いてくる。
「まあでも……ありがと、ディアーチェ。お兄さん。楽しかったよ」
俺とキングスの間に入って、アリシアは俺たちの腕を抱き締めた。
「ふんっ」
「ああ。俺も楽しかったよ……約一名は、まだ息消沈してるが」
俺がレヴィに視線を向けると、みんなも一斉にレヴィを見た。
涙を滝の様に流し、そこそこ反省している様子。
ただ、バカと書いてある紙切れが、キョンシーみたく貼ってある様に見えたのは、きっと気のせいだと思いたい。